緊張感漂う会議室
私は提督の秘書官としてここにいる
ここでは最近現れるようになった獣竜深海悽艦、船舶型バタリオン
その対策が話し合われていた、だが情報が無く難航しているようだ
会議室の中には先日の獣竜深海悽艦の侵攻による怪我人もいる
食事音を鳴らす者は誰も居ない
これといった案も出ずに難航していると、
最近治療法が確立された"深海悽艦の毒"で入院していた加賀が入って来た
その時に噛まれて折れた腕はまだ吊ったままだ
「失礼します」
「猫月から報告です」
部屋がざわざわする
猫月、●●鎮守府に忍び込んだエージェントである
その正体は私の姉妹の一人、多摩である
加賀が携帯端末をスクリーンに繋げる
スクリーンに猫月の顔が映る、何処かに隠れているようだった
「報告しますにゃ。コホン...失礼、報告します。」
「忘れてください」
大粒の汗を流しながら猫月が話し始める
「まずは、◆◆襲撃についてですがいくら調べてもアレを隠せる様には思えません」
「鎮守府の見取り図を送ります」
猫月から資料が送られてくる
猫月が様々な調査結果を報告する
よくもこれだけ集めた物だ
「そして気になることが一つ」
「作戦でもないのに艦娘や人員が何処かに行っている時が多々」
「...」
急に猫月が黙り辺りを気にする
しばらく黙るとまた話し出した
「他にも気になることが...他の鎮守府の艦娘や憲兵隊、傭兵の様な者の出入りが多くッぅ!」
「ぢにゃ゛
青白い光が写ったかと思うと映像が途絶え
ノイズ混じりの音声が聞こえる
[ぇ、浜風さん...えーと...」
「猫月さん?ここでなにをしているのでしょう]
[ひぃ!何でもないにゃ!」
「こんな場所でケータイとは..いいご身分で...少々お話を...]
音声が途切れた
●●の駆逐艦に見つかったようだ
正体がバレなければいいが
猫月からの報告によれば●●は獣竜深海悽艦の独自調査をしているらしい
他にも前々から解っていたことだが艤装を以上とも言える程改造していることもハッキリした
しかし今の問題に対する答えにはならなかった
ここである少将がある提案をした。
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会議から二日後、私は●●鎮守府にいた。
加賀も一緒だ、これでは北上さんを探せない
「行きましょうか大井さん」
門の前で手続きを済まし、加賀が門を潜る
「ご、ごゆっくり~」
「ねぇ、ちょっといいかしら?」
「な、なんでしょうか...」
「北上さんのいる場所ってわかるかしら?」
「え、えっと...今日は○○鎮守府だったと思います...」
なんたることか
私が困っていると加賀に急かされた、気の短いやつめ
鎮守府の中に入り、執務室の扉を叩いた
「ああ、入ってくれ」
木曾の声だ
「あれ、大井姉。北上姉さんならいねぇぞ」
「...」
「ここの司令官に会いたいのだけど」
加賀がさっそく本題を切り出す
木曾が執務室で仕事をしているのを見るに●●の提督は居ないだろう
「アイツなら留守だ、残念だったな」
やっぱり居ない
「そうですか、何時頃帰ってきますか?」
「俺は知らないよ、」
「あのメンバーなら日が沈んでから昇る前には帰ってくるクマ。」
「いたのか姉さん」
「あら姉さん、いつのまに」
「日が昇る前...5時間は待つかしら」
「もしかして...加賀さん本気で待つ気?」
「任務ですので当然です」
ハッ!そうだ、北上さん!これはチャンスよ!
「ハッ!そうだ、北上さんはいつ帰ってくるの!?」
「そうクマね~、あの様子なら朝になる前には帰って来るクマ」
「夜明け前...」
「7、8時間はかかりそうですね」
加賀が残酷な時間を告げる
「いや、9時間は硬いクマ、あれは騒ぎ倒す時の北上クマ」
嘘だ...こんなことがあるわけ
「残念だったな大井姉」
「楽しめるような物は大してないがゆっくりしていけよ」
こいつ...
「まぁ食堂にでも行って時間を潰すといいクマ」
「食堂ですか...行きましょう大井さん」
「え...他にも見る場所ありますよ」
「ここの食堂は一部では評判なんですよ!私も一度来たかったんです!」
一部ってどこ。”も”って誰。
「大井姉~、他にも余所の客が居るから大人しくしててくれよー」
「はいはい、分かってるわよ」
難なく食堂についた
「見てください、大井さん」
こんな加賀さん見たくなかった
加賀が指した方を見ると黒板が有りチョークで文字が書かれている
今日は鮫の肉が安いらしい
値段を見るとカレーはおろかライスより安い始末だ
なにが有ったらフカヒレの値段がライスに並ぶのだろう
そして厨房で鮫を捌いていると書かれているのは本当だろうか
「速吸さんの話では蟹でしたがまぁいいでしょう」
「いつの間にそんな交友関係が...」
「てか、アナタその腕で蟹食べる気だったの?」
固定された腕を掴む
「...まぁ、そうなりますね。」
加賀はそう言うと注文のカウンターに歩き始めていた
私もそれに続くとなんとなくどこかで見覚えのある顔が並んでいた
格好からして潜水艦だ
「それにしても58が無事でよかったの...んぐ...おいしいの!」
「もっと早くに連絡くれてもよかったのに」
「一人で残るから心配したんだよー」
「本当に申し訳ないでち...事情がありまして...あ、本当に美味しいでち」
「わぁ、紫色のケーキなんて始めて食べました、スースーします!」
「北上さんが作ったハーブが入ってるでち」
たしか今は亡き◇◇の潜水艦だ、報告書の束の中で見た覚えがある
ここしばらくの混乱でのお互いの無事を確かめ合っているのだろう。ケーキを囲んで楽しげだ
計画では私も北上さんとケーキを囲んでいた筈なのに
今潜水艦の誰かが北上さんの作ったハーブと言わなかったかい? 今日食べる物が決まった
加賀の後ろに並ぶ
赤い三角巾の女に注文を訊かれる
「はい、ご注文は?」
メニューを見てそれらしい物を見つける
「パープルアイスケーキを一つ」
「ピースですか?ホールですか?」
ホール...魅力的だが冷静にピースにした
「はい、少々お待ちください。直ぐに持ってまいります」
薄紫色のケーキと紅茶を受け取り机に着く
私が座った隣には既に加賀が座っている、時間が掛かるのか番号札を持っている
「夕食がケーキ、大井さん甘い物が好きなんですね」
「別にそんなのじゃないわ」
ケーキを一口食べると口の中に清涼感が広がり舌が雪の様に冷たくなった
冷たさと甘さに微かな苦味が隠れている
何口が食べると身体に広がる冷たにフォークが止まり、一緒に付いてきた紅茶を飲む
流石北上さんの作ったケーキ、効き目抜群で夏にはピッタリだ
さっきから加賀の視線が気になる
「向かいに失礼するよ」
「失礼します」
私が紅茶を飲んでいると前に料理を持った二人の艦娘が座る
二人とも見覚えのある顔だった
神通とその姉妹で有名人の川内だった
「退院おめでとうございます神通さん」
「神通じゃない、●●で会うなんて思ってなかったわ」
「神通の知り合い?」
「××の大井さんと加賀さんです」
「そうなんだ、妹がお世話になってます」
「いやいや、こちらこそ――
慣れない挨拶が続いたあと話し始める
二人は××に獣竜深海悽艦が襲撃してきた時に●●の奴らに助けられたらしい
あの時の会議にいたブルーノともう一人だろう、名前は忘れた
それにしても律儀な姉妹だ
加賀が番号を呼ばれ、何人かの艦娘と大量の料理を運んで来た
周りの視線が恥ずかしい程の量だ
「うわ~、食べるねぇ」
「加賀さんは病み上がりなんですから...」
「問題ありません、ご心配なく」
「そうそう、食欲が無いよりマシだって」
私は早く他の場所も見たかったがまだまだ待ちそうだ
加賀が動く片手を器用に使って食事をするのを見てそう思った
せっかくだから私も何か食べようか...
そういえば猫月もとい多摩姉は大丈夫だろうか...
私は思い出したように姉の心配をした