春雨-1 猫
私は信じられない物をみた
●●周辺海域で深海棲艦同士の戦いを見た
その中で深海棲艦と共に戦いに興じる●●の艦娘を観た
そして自分の視た物が信じられない内に日が過ぎ、次の定期報告で報告することにした
だが定期報告の前に●●に大きな変化が起きた
妙な艦娘がいつの間にか増えていた
不気味な程に白い肌と黒くグロテスクな艦装、中にはどことも知れない国の言葉を話す者もいた
それはまるで深海棲艦のようだった、いや本当にそうかもしれない
ここではよくある事だが他にも些細な事が目に付いた
不気味な艦装を着けた艦娘や怪しげな音のする部屋、小さな囁き声、不気味な詠唱、ぎこちない機械音、どれもが感情を逆なでするような物ばかりだ
定期報告の日がきた
なんとか都合を付けて隠れ、端末を取り出す
"応答してください..."
"定期報告です..."
"はい..."
"まずは..."
"了解しました..."
報告が始まろうとした時、端末が軍刀に掠め取られ、壁に釘付けになる
木曾の軍刀だった、後ろを振り向くと木曾が軍刀を此方に突き出している
鋭い眼差しを此方に向けて木曾の口が開く
「なーにしてんだ?」
「べ、別になにもしてない...にゃ...」
「じゃあこいつは何だ?」
串刺しの端末を軍刀ごと持ち上げる
「え、えっと~...」
「個人で持つようなものじゃねぇし、支給もしてない筈だぜ」
「なぁ多摩姉」
その言葉と共に冷や汗が背中と額を冷す
何時バレた?それともカマを掛けただけか?
「タ、タマ?そんな娘知らないにゃ」
どうか騙されてくれ、サンタクロースを信じてた時みたいに!
「とぼけても無駄だ」
「うっ...」
「なんで球磨姉の真似してるか知らないけどぉ?」
「ぅ...」
「猫月なんて駄洒落みたいな名前使いやがってさぁ」
「艦娘としての名前は自分で決めれないから...しょうがないから...」
このままうやむやになって終わってくれ!頼む!
「さぁ、話は終わってないぞ。姉さん」
「こいつで何をしようとしてたのかは知ってるし何処から来たのかも調べられる」
「...っ!」
木曾が軍刀を振って端末を床に投げ出し、剣先を此方に向ける
「●●で嘘はいけねぇぜ、嘘をついちゃ情報も引き出せない」
「俺が浜風みたいに短気ならとっくに生首だったかも知れねぇ」
「俺は姉妹のよしみで来てやったんだ」
「...」
「あまり変な事報告されちゃ困る」
服に盗聴マイクでも入れておくべきだったか、今はこの場を脱せねば
死ぬ必要のない所で死にたくはない
「わわ、わかったにゃ」
「”にゃ”はいらない」
「...で、アタイはどうすればいい訳?」
「変わらねぇなぁ、姉さん」
「姉さんはいままで通り、しょうもない報告をしてればいい」
「もしかして筒抜けだった?」
「まあな、なんどか浜風が来ただろ?」
「馬鹿らしい...ニャンニャン言ってたのが馬鹿みたいじゃん」
「似合ってたぜ、”多摩ちゃん”」
「やめて木曾、やめて」
「ここに居る限りやめれないぜ、姉さん」
困った
「あと、この会話――」
「なに?」
「聴かれてる、リン先生も聴いてるぜ」
「...え、マジ?」
「猫月~...ちょーとおいで~」
「あっ、あっ、せ、先生」
「駄目だね~、もっと自分らしくしなきゃ~」
「ぅ...」
「返事~?」
「わかったにゃ...」
今、たった今理解したッ!この世にッ!神は居ないッ!
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「軽巡、多摩です。猫じゃないにゃ。改めてよろしくにゃ」
「え、なに?あのニャンって素なの?演技じゃ無かったの?」
「た、多摩はあんな娘じゃなかったクマ」
球磨が震えた声を出す
「しかもなんか目が据わってるよ...引き返せなくなってる奴だよ...痛々しいよ...」
北上が呟く、聞こえてるぞ
「きっと辛い事があったんだクマ、そっとしておくクマ」
演技だよ、気付いて
「クックク...クク...フフッ...」
木曾が声を押し殺しながら笑っている、なに笑ってんだ
「まぁ、なんだ、うん、宜しくな多摩」
「よろしくにゃ」
●●の提督が歯切れの悪い挨拶をする、私との接し方を探っているようだ
ぜひ普通に接して欲しい