「ふーるーたーかー、古鷹いるかぁ?」
「木曾さん?どうしました?」
「どうしても外せない予定が有ってな、少しばかり執務室を任して良いか?」
「いいですけど、また提督居ないんですか?」
「いや、居るぜ。ただサボってる。」
「サボってる...ですか?」
「ああ、サボってる、まぁ多目に見てやってくれ」
「多目に...なんだか提督には甘いですよね」
「アイツは俺は付いてやらないと駄目なんだ、それだけの事さ」
「さぁ、執務の詳しいことは執務室の誰かに訊いてくれ、俺は急ぐ」
「俺が居ない間に何か有ったら直ぐに連絡しろよ!」
木曾が装飾品や軍刀をガチャガチャ鳴らしながら走り去る
(忙しい人だなぁ)
「失礼しま~す...」
執務室に入ると提督が膝に若葉を乗せてだらけている
その横では球磨と着ぐるみの熊がモタモタと書類を片している
いや球磨はダラダラと書類を片している
もっと良い人選があっただろう
「ぁ~、やっと来たクマ~」
「えーと、よろしくお願いします」
球磨からやんわりと執務の説明を受け
書類に向かい、筆を走らせる
しばらく筆を走らせていると執務室の扉が開け放たれる
三つ編みの髪を揺らし、軽空母のミナミが顔を出してきた
「やっほー!司令官遊ぼっ!」
司令官を遊びに誘いに来たらしい
「今は忙しいからムリィ~」
「えぇー若葉載せてるだけじゃん」
「だけじゃないぞ、触ってる」
「うひ~、じゃあ球磨さんでいいや、プレステしよプレステ」
「ん~、分かったクマ、ここは古鷹とヴォイテクに任せるクマー」
提督のキャラが大分イメージと違った
すたすたと球磨が執務室から出ていく
またしばらく筆を走らせていると大人しかった若葉が声を出した
「そろそろ時間だ、行かねば」
「ほ、いつの間にかそんな時間か」
若葉が体を揺すり、手の中から抜けようとすると提督が手を離す
若葉がとことこ部屋から出ていく
提督の方をみると腕を組み、何かを考え始めている
ただの考えるフリかもしれないが
また少し書類を片付けると提督が話し掛けてきた
「なぁ、」
「なんですか急に?」
「●●って艦娘が少ないと思わないか?」
「そうですか?確かに周りの鎮守府と比べたら少ないですけど」
「充分ですよ」
「戦艦は足りてないんじゃないか?」
「え?」
急に声がした
その方向を見るとこの鎮守府の所属ではない艦娘がいる
「えっと...どちら?」
「××鎮守府の日向だ」
「××がなんのようだ?」
「今日は××の用事ではなく、個人的な用事でな」
「用事?」
「ああ、●●には何度も世話になったからな、何か礼をしたくてだな」
「何かって?」
「ああ!この日向に出来る事ならなんでも言ってくれ!」
こうゆうタイプは苦手だ
「そうだなぁ、じゃあ訓練の相手でもしてもらうか」
提督が適当に答える
「任せろ!この日向が戦いのなんたるかを叩きこんでやる!」
日向が扉に手を掛ける
「で、その訓練はどこでしてるんだ?」
「ヴォイテク、そいつをリンの所に送りつけて来てくれ」
「んお?わかっただぁ」
「後、届けたらユウを見ててくれ、今日は利根が見れなくなるから」
「お?ユウちゃんと遊ぶん?任せてけろ~!」
ヴォイテクが戦艦を連れて楽しそうに出ていく
遂に書類と戦うのが私だけになってしまった
私が積み上がった書類と孤独な戦いをしていると扉が開け放たれる
「司令かーん!ご飯食べ行こ!」
ミナミだった
「もうそんな時間か」
「アタシ麺食べたい!麺!」
「お前また奢らせようとしてるな」
「エヘヘ、いいーじゃん!お金余ってるでしょ!」
提督がため息をする
時計を見ると正午をとっくに過ぎていた
「古鷹もどうだ?」
お言葉に甘える事にした
食堂で少し豪勢な定食を食べていると隣に座る提督に誰かが話し掛けた
「テートクー、ちょっといい~?」
「んぁ~?なんだよ」
北上だ
「今度からこいつ付けてていい?」
北上が背負った艤装を指差す
よく見なくても本来より白く流線的なデザインだ
「なんだっけそれ」
「いつぞやの兆級巡航艦だよ~、ほらユキの遺作」
「べつに死んでないだろ...たしか兆のコンパートメントで出来てるヤツだろ?」
1兆...一体どれ程の時間が掛けられた艤装なんだ
「正確には1兆より142少ないけど」
「お前さぁ、そいつで戦って中破したら誰が直すんだよ」
「利根...?」
「1兆も有ったら、艦首砲一つ壊れただけでも大変だぜ?」
「利根なら平気だって~」
「お前も技術者だろ、自分の装備くらい自分で直せよ」
「えぇ~、めんどくさいなぁ」
「自分で直すなら使っていいぞ~」
子供が犬を拾ってきたみたいな会話が始まってしまった
食べ終わるまでに終わるかな
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結局、北上が修理をする事で落ち着いた
北上が立ち去ったあと再び提督に誰かが訪ねてきた
「司令官さん、兆級の艦装見てませんか?」
「なんだ急に」
「千百二十五型接続橋を繋げようとしたら無くなってまして、」
「...」
「何か聞いていませんか?利根さんが倉庫に仕舞ったとか...」
「北上が持ってたけど、何も聞いてないのか?」
「ボク何も聞いてませんよ...それで北上さんは何処へ?」
「さぁ?」
「もー!北上さーん!何処に行ったんですかー!」
「ホントに勝手なんですからー!」
「接続橋ってアイツ何する気だ?」
「ユキって磯風部に来ても結局機械弄ってるんだよね」
「魔導力学と生体工学がからっきしで...そろそろ戻してあげたら?」
「まぁ、アイツなら何処でも大丈夫だろ、シロの避雷針にも丁度良いし」
「えぇ...そんな理由が...ズルルッ!ズルッ!これもおいひい!」
「人の金だとよく食うなぁ」
どうやら北上は艤装を勝手に持ってきたらしい
自身に合わない場所に左遷されたユキも大変そうだ
「古鷹もどうだ?」
「あぁ~、遠慮して置きます...」
「ミナミも古鷹のこうゆう所を見習えよ」
「んっ、ゴメン、何だって?」
提督が溜め息をつく
食事を終え、執務室に戻って書類に向かう
今度はゆっくりながら提督も書類に向かっている
だがそれも長くは続かなかった、今日はやけに人が来る
執務室の扉がノックされる
「司令官さん居ますか?ヒマァ=リィです」
「ヒマワリか、入って構わないぞ」
聞いたことのない名前だ
執務室に憲兵隊の腕章を巻いたおそらくミリ姫が入ってくる
誰かの軍規違反でもバレたのだろうか
「失礼します、モノさん居るでしょうか?」
モノ、誰だったか名前は聞いたことある
「アイツならアシュリーのとこ、居なかったら俺かアイツの部屋」
「はい、分かりました」
「それでも居なかったらまた来てくれー」
またしばらく書類との格闘をしていると清霜が入ってきた
その小さな手には丸めた書類が握られている
「司令官ちょっといい?」
清霜が提督に書類を渡す
私からはよく見えないが戦艦と巡航艦が何かをするらしい
「んん?こうゆう書類はあんまり曲げるなよ」
「あはは、ゴメンね」
提督が書類に目を落とす
「俺はダメとは言わないが本当に大丈夫か?」
「それにこの相方はどうするんだ?」
「それがまだ居なくて...いい巡航艦いない?」
「巡航艦?お前この戦艦役やる気なのか?」
「あったり前じゃん!」
「お前駆逐艦以外の適性ないだろ」
「もぉ~、やめてよ~、出来るって!ここ見て、ここ!」
清霜が書類を指差すと提督が再び書類に目を通す
「確かに...巡航艦側の負担を増やせば...出来ないこともない...のか?」
「ね?」
「こんな名ばかりの戦艦でいいの?」
「ふふふ...これは足掛かり...ッ!」
「一度戦艦になれば適性が出来るのも時間の問題よぉ!」
「それに名ばかりだろうと戦艦をやるチャンス!逃す理由もナーイ!」
「そうか」
「じゃあ司令官!いい娘見繕ってね!」
「ん~、ちょうど軽巡と重巡が沢山入ってくるけど...」
「ほんと!?」
「本当だ、来たら選ばしてやるよ」
「やったぁ!司令官大好き!」
「はいはい」
清霜が帰り、また暫く執務が続く
扉がノックされ、木曾が入って来た
「スマンな古鷹、任せちまって」
「いえいえ、お構い無く...」
「今日の分は終わってる見たいだな」
いつの間に...
仕事の引き継ぎを済まして執務室を出る
妙に時間の流れが速い1日だった気がする
部屋に戻る途中、ボロボロになった日向がヨロヨロ歩くのを見た
大変な目にあっていたようだ