●●の一角
人型の深海棲艦達が規則正しく並んでいる
その前にはフィ=ゾアと●●の司令官ヘロドトスと木曾
そしてそれを覗く数名
「ゾア、話せないのはこれだけなんだよな?」
「はい、このコタチだけデス」
「こいつらに言葉の意味は伝わるのか?」
「バッチリデスよ、ミンナワかります、ベンミョウさせたデス」
「勉強か?まぁ指示が通るならそれでいい」
ヘロドトスが並ぶ内、1人の深海棲艦、駆逐古鬼と分類される者に話しかける
「深海棲艦にも階級があるのか?」
「ボコボコ..ムシャグチャグチ...ミチッ...チッ」
声を掛けられた者は黒い殼に覆われた手の奇妙な口から何かを練るような鳴き声を出す
「話せないやつに訊いたってしょうがないぜ」
「にしてもこっちの口を使うかぁ、予想外だな」
ヘロドトスが駆逐古鬼の白すぎる唇に指を当てる
「噛まれるぞ」
「そんなまさか、イテッ」
口に近付いた指に駆逐古鬼が噛み付く
「随分前にみた報告書だと駆逐古鬼は喋るって訊いたけどなぁ...」
「ハなせないコはゲンシテキなブブンにキノウがアツまってるデス」
「機能?」
「シャベったりカンガえたり...のキノウデス」
「だからそっちで喋るのか?でも食べる機能は共通みたいだな」
ヘロドトスが納得するような声を出す
駆逐古鬼の口から血が染み出す
「この子腹減ってんの?ムッチャ噛んでくるぞ」
「どうせ怒ってるだけだろ」
「ほぉらチョコ食うかぁ~甘いぞぉ」
なんとか指を引き離しヘロドトスが缶に入ったチョコを渡す
「部屋に戻ったら皆で食えよ」
「チョコレートっ!アトでワタシのブンもノコしておいてクダさいデスよ...エ」
フィ=ゾアが目を見張る
ヘロドトスが缶を空けようとする駆逐古鬼を制して話かける
「話を戻すぞ、階級があるのは判ったがゾア以外だと誰の階級が一番なんだ?」
「......ギチ...オエッヂギャギャギャ...ゲプッ」
「キィ=ガディラ?どいつのことだ?あとそんなこと言っても缶は開けないぞ」
「アイツ深海語判ってるのか?」
「みたいデスね...タシかにキィ=ガディラはカイキュウがタカいです」
「俺にはわかんねぇなぁ...なんて言って缶を開けようとしたんだ?」
木曾が目を細める
「ガディラってどいつ?あの軽巡か?」
「グエッ...」
駆逐古鬼がある一人を指差す
他の深海棲艦よりも一回り大きい深海棲艦だった
「デカイ潜水艦、なんて種類だっけ、潜水棲...鬼?姫?」
木曾が疑問に答える
「姫の方だな」
「そうか、え~とキィ=ガディラ?ちょっと来い」
「あの...シジならワタシがトばすデスよ...」
キィ=ガディラがヘロドトスの目の前にやってくる
鯨じみた黒い塊の口から高音の口笛のような音がでる
「キィ――ッ、ピィ―ッ」
「可愛い声してんなぁ、なぁ」
「キュキュキュ―..」
「そうだったか?それは済まなかったな」
木曾が目を細める
「どんな返しだったんだ?」
「キィ=ガディラ、こんなトコロでハレンチデスよ、ワキマえるデス」
「えぇ...スッゲぇ気になるんだけど」
「また逸れたな、戻すぞ」
「キュキュキュ...ピュ――ッ」
「その話は後にしような、ほら、なっ」
「そうデスよ、イマはヘロドトスがハナしてるデス」
「マジでなんて言ったの」
「えーとだな、俺的にはコイツらに最低限喋れるようになって欲しいんだよな」
「ん~、ムズカしいですね...」
「発音器官は着いてるだろ?ここに」
ヘロドトスが駆逐古鬼の喉笛をさする
駆逐古鬼が腕に噛み付く
「タシかにそうデスけど...クグツシンケイがトオいデスから...」
「傀儡神経...脳みたいなものか?」
「ノウミソにメイレイをダすシンケイデス」
「まるで寄生蜂だな、痛ッ!おーい!血が出てきたぞ~!離れろ~」
「キィ=テョ、いいカゲンハナすデスよ、キゼツしちゃうデス」
フィ=ゾアが何重もの装甲に覆われた腕でキィ=テョを引っ張る
「痛いから引っ張らないで...」
「あ、スみません...ァ」
「ほら、バームクーヘンやるからな、こっち噛もうな、蜂蜜で美味しいぞー」
「オア...ハプッ」
キィ=テョが離れバームクーヘンに噛み付く
「やっぱり腹減ってただろ」
「さっきタべたデスよね...?」
「チョコもバームクーヘンも何処に入ってた?」
木曾が顎に指を当てる
「また逸れたな」
ヘロドトスが腕を消毒されながら話を戻す
「別に流暢じゃなくていいんだよ、いくつか単語が話せれば足りるし」
「複雑な会話は文章でいい」
「聞いてなかったけどこいつらって文字書けるの?」
「ミンナヨめますがカけるのはショウスウのコだけデス、ワタシもニガテデス」
「アト、ニンゲンとモジがチガうかもデス」
「そうか、なら文字も勉強だな」
「べ、ベンキョウするデスか?」
「マジかよ、深海棲艦に誰が教えれるんだよ」
「話せるやつはUの奴に任せとけば良いだろ?」
「いいのか?」
「話せない奴は...そうだなカレンに丸投げしよう、字が読めるなら大丈夫だろ」
ヘロドトスの無茶ぶりが飛ぶ
「可哀想だな、また心労でぶっ倒れるぞ」
「優秀な医者が居るから平気だ」
「あの...ハナせないコタチだけにするのはタイヘンでは...?」
「じゃあ喋れる奴を2、3人一緒にすればいいな」
「んな適当な」
「指導やら教育はよく解らん」
「お前司令官向いてないよ」
「ア、ジョウカンにそんなことイってはダメデスよ」
「向いてないのを知ってるから執務を木曾にやらしてるんだぞ」
「お前もフィ=ゾア達みたいに勉強したらどうだ」
「柄じゃない」
「取り敢えず決まった事を纏めて指示出しといて」
「うげっ、メモとってねぇぞ」
「ケケケ...ケケ...」
「ん?」
並ぶ深海棲艦の中から不可解な象形文字が書かれたメモが渡される
木曾が目を細めるとヘロドトスにメモを見せる
「ああ、書き留めててくれたのか」
「ウィヒヒ...」
「えらいぞー、将来有望だな」
ヘロドトスがその深海棲艦の頭を撫でる
木曾が耳もとで囁く
「読めるのか?」
「読めるだろ、読めないの?本当?マジ?」
「ムカつくなぁ...」
「ここに居る中で読めないの木曾だけだよ?」
「そらそうだろうよ、逆になんで深海語が読めるんだ」
「これルウエ語だろ?発音は知らんが普段から本読んでれば意味くらい解るだろ」
「ルルエゴ...?ニンゲンにはそうやってヨばれてるんデスか?」
「そうだぞ、多分...」
「な、木曾」
ヘロドトスが木曾の肩に手を乗せる
「ルウエ語なんて聞いたこともないわ!どんな本読んでんだ!まったく」
「そんなこと言う前に指示を出してきてくれ」
ヘロドトスがメモの裏に訳した文を書き殴って渡す
すると木曾が文句をこぼしながら去っていく
「ゾアは書けない奴らが下手でもルウエ語を書けるようにしてくれ」
「...?ワかりました、ナンニンかのコにオシえるようにシジをダしとくデス」
「頼んだぞ~、あ、後、ここに居る奴らの識字率を調べてくれ、言語ごとに頼むぞ」
「はい、ワかったデス、マかせるデス」
「後は清霜だな」