骸の島(艦これ二次創作)   作:トウトウ@脳缶

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黒い帽子

重い帽子を顔に載せ、考えを巡らせる

ここに運び込まれる深海棲艦のこと、それを治療する深海棲艦のこと

沈んだ春雨と桜色の駆逐棲姫のこと、緑色の軽巡棲姫のこと、白い帽子のこと

海図に無い奇妙な海流のこと、黒い島のこと、黒い怪物達のこと、深海棲艦のこと

仲間達のこと、自分のこと

考えが纏まる前に顔に乗った帽子が持ち上げられる

口角を吊り上げてギザギザした歯を露にする異常な笑みと黄色く燃える瞳

それはキシキシと笑声を漏らしながら私の顔を覗き込み、何度も首を傾げている

何故かその恐ろしい顔も怖くなかった

払いのけることも手を伸ばすこともせずにその無邪気とも言える表情を眺めていた

「ニシシッ...ベチャチャ...コエッ」

 

私を覗き込んだそれが私を指差しまるで言語のような音を口から発する

当然私に意味は解らない

辺りを見るとベッドに寝ていた他の深海棲艦はいつの間にか居なくなっていた

 

今この部屋にいるのはこの一体だけだ

私を指差しながら繰り返し同じ音を発する

その横から他の深海棲艦がやって来るとその頭を押さえ付ける

「ハフフッ!コエッ、コエッ」

「ノラ、ウルサイデス」

緑色の光を灯す軽巡棲姫だ、黄眼の深海棲艦を引っ張ると私の顔を見た

「ウルサクテ、ゴメンナサイ、アオバ」

黄眼の深海棲艦の頭を押さて辞儀させながら軽巡棲姫が頭を下げる

「いえお構い無く、大丈夫ですよ」

「ドウイタシマシテ...?」

「ど、どういたしまして...」

「...」

「...」

「...ンギャ?」

 

気不味いような、妙な空気になってしまった

···

その空気を掻き消す声が簾の向こうから聞こえた

「青葉、おなかすいてない?」

聞き覚えのある声だ、聞き親しんだ声だった

その声は白い帽子を被った桃色の駆逐棲姫が出していた

手にはきつね色の長方形が乗った盆を2つ持っている

その一つを軽巡棲姫と駆逐棲姫に渡して部屋を追い出す

「え?えっと...」

「こういうのはキライだった?」

駆逐棲姫が長方形をかじる

食べ物なのだろうか、ザクザクと咀嚼音を立てながら頬張っている

「嫌いではないですが...その...」

「なに?」

「その声は...」

「あ~、アー、コッチガスキ?ダッタ?」

「ぇッ」

親しんだ声が変貌した

「ドウシタノ?」

「こ、声が...」

「アー、あ~、おどロいちゃった?ごめんネ」

「声、変えれるんですか?」

「うまくしゃべれないし、すぐつかれるの」

「それなら気を使わなくていいですよ」

「アリガト、」

 

「ア、アー···コレ、タベテ?」

盆に乗った長方形の何かを手に取り口に運ぶ

クッキーやビスケットの類いだろう、口が渇く

「アオバガ、タベレソウナモノガ、ホカニナクテ...」

私の口事情を察したのか申し訳なさそうな顔になる

「いえいえ、食べれるだけで有難いですよ」

「ミズ、モッテクルネ?」

 

駆逐棲姫が部屋から出ていくと簾から黄色い眼が覗いている

さっき私を指差していた深海棲艦だろうか

簾を捲って部屋に入ってきた

今気が付いたがその全体像はいわゆるレ級と分類されるモノであった

私に顔を近付けたそれはこちらを見ながらニヤニヤしている

何か言うでもするでもなく、ただ笑みを浮かべながら私の顔を見ている

伝えたいことがあるのだろうか?ニヤニヤとした笑みを見つめ返す

「あの、なんでしょう...?」

「シシッ!...オエッ、オゲッ、ギョロギョロ..」

「すいません、よくわからないです...」

「ギチギチ...ゥ~」

 

どうにか意志疎通が出来ないものだろうか

 

「ミズ、モッテキタ...」

「ありがとうございます、」

渡された水を飲む

「レア?ドウシタノ?」

「その子レアって言うんですね」

「ハイ、メイワクジャナカッタデスカ?」

「大丈夫でしたよ?良い子にしてました」

「ウシシッ」

「ソウデスカ、ヨカッタ...」

 

「あ、そういえば何て言ってたんですか?」

「”お話しよう”、トイッテマシタ、ダイタイソンナカンジ、デス」

「”大体そんな感じ”ですか?」

「ニンゲンヨリ、コトバノイミガコマカイノ」

「はぁ、そうなんですか...」

「ソウナンデス」

「クシシ...ププッ」

「今のは?」

「ワラッタダケデス」

「そうですか...」

「ソウデス」

 

...

 

「アオバ、」

駆逐棲姫が真剣な顔になる

「なんですか?」

「青葉は帰りたい?」

「え...?」

 

「青葉、たぶんだけど...」

「もう遅いの、たぶん...」

遅い?何故?

「遅い...?どうして...?」

「...」

駆逐棲姫が俯き、口をつぐむ

 

「...今のは忘れて?」

「え、でも」

「青葉は帰りたいんだよね」

「はい」

「帰りたいです」

「そっか...よかった」

良かった?

 

「もう帰る用意は出来てるから、少し待っててね?」

 

「あ、はい」

 

 

 

暫くすると私の生命維持装置が運ばれてきた

バッテリーは満タンに近い

「コレダケアレバ、ダイジョウブ」

「ありがとうございます」

「アトコレ、テイトクニトドケテ?」

駆逐棲姫が白い帽子を外し、私に手渡す

「イマノワタシニハ、コッチガニアウカラ」

駆逐棲姫が黒い帽子を被る

「ワタシタチノコトハ、ナイショ、ダヨ」

「...春雨さん」

「フフッ、私はピィ=ノラ」

 

「そうですか、必ず届けます」

「さあ、私に捕まって」

 

「長い航海になるからね」

駆逐棲姫の艤装に足を掛け、ワイヤーで体を固定する

海に出ると2つの音が私を追ってきた

振り向くと黄色の灯を纏うレ級と緑光を灯す軽巡棲姫

 

「紹介するね?緑の子がノィ=フゥ、黄色い子がフ=レア」

「っ、那珂さん...それに...」

姿は違うがあの二人も間違いなく私の古い友人だった

「違うよ、フィとレア。私のトモダチなの」

「そう...ですか...」

いったい何が

彼女達はどのような物なのだろうか

本当に私達とまったくの別の物なのだろうか

深海棲艦はどこから来たのか、どのような存在なのか

私には見当もつかないことだった

 

ポケットに入れた白い帽子に手を添える

これだけは絶対に 落とさないようにしなければ

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