「え? ヴィヴィオさんのお母様方も模擬戦に……?」
「はい! ガンガンやってますよー!」
ルーテシアたちがオフトレ用に用意した、レイヤー建造物の模造都市で構築された訓練場へと向かう道すがら、アインハルト、ヴィヴィオ、ノーヴェらが会話をしていた。この三人は、スバルたちの模擬戦を見学しに行くところなのだ。
しかしアインハルトは、それになのは、フェイトも参加していると聞いて意外に感じた。
「おふたりとも家庭的でほのぼのとしたお母様で素敵だと思ったんですが」
アインハルトは頭の中で、今朝見た二人の食卓に立つ平和的な様子を思い返した。
「魔法戦にも参加されてるなんて少し驚きました」
と語ると、ノーヴェがブルブルと震えて笑いをこらえた。ヴィヴィオも苦笑を浮かべている。
「えと参加というかですね……」
ヴィヴィオが何かを言いかけた時……遠くから雷が落ちたような轟音が発生した!
「えっ!?」
「こんな天気がいいのに……落雷!?」
反射的に振り返る三人。その方角の、豊かな森林の真ん中より……大怪獣サンダーダランビアが身体を起こした!
「グワアァァァ! ピィ――――!」
「か、カルナージに怪獣が!」
「お、大きい……! 生で見るの初めて!」
唖然とするアインハルトとヴィヴィオ。ノーヴェは二人の背中を押しながら言い聞かす。
「ヴィヴィオとアインハルトはお嬢一家のロッジへと避難しろ! あたしはチンク姉たちと合流する!」
「ダイチさんたちは無事なんでしょうか……?」
心配して尋ねるアインハルト。
「わからねぇ。通信に障害が出てて、連絡が取れないからな」
ノーヴェはサンダーダランビア出現とほぼ同時にダイチたちと連絡を取ろうと試みたのだが、立体映像は砂嵐を映すばかりだった。どうやら膨大な電力をその身に宿すサンダーダランビアの周囲では強力な磁界が発生していて、それが通信障害を引き起こしているようだ。
「けどあの二人のことだから、大事には至ってないだろ。それも確認してくるから、お前たちは今は自分の身を守ることを第一に考えろ。いいな?」
「は、はい」
ヴィヴィオたちが返事をすると、ノーヴェはジェットエッジとバリアジャケットを装着してサンダーダランビアの方角へとまっすぐ急行していった。
「アインハルトさん、行こう!」
「はい……」
ヴィヴィオに促されて移動しながらも、アインハルトは音信不通のダイチたちの身を案じ続けていた。
「タイプG、ネオダランビア……いや、サンダーダランビア!」
「まずいな……! まさかスパークドールズを用意していたとは……!」
ミジー星人が封印を解いてしまったサンダーダランビアと面前としているダイチとチンクは、怪獣の威容を至近距離から目の当たりにして、迫力とプレッシャーにひるんでいた。サンダーダランビアの全身からは電気エネルギーがスパークしていて、近くにいるだけで危険を感じる。
「うははははははッ! どうだ、恐れ入ったかぁ! 我々の知略は完璧なのだぁ!」
ミジー星人のリーダーは二人がたじろいていることに気を良くして高笑い。そしてダイチたちに視線を向けたまま、サンダーダランビアに命令を飛ばす。
「サンダーダランビア! まずはそこの連中から薙ぎ払ってやれぃ!」
だが……サンダーダランビアが二人へ攻撃する気配が一向になかった。
「ん? どうしたんだ? 何故攻撃しない」
「あ、あの、リーダー……」
オネェがおずおずとリーダーに呼びかける。
「何だ、この大事な時に」
「ダランビア……めっちゃアタシたちをにらんでるんですけどぉ~……」
「……へ?」
振り返るリーダー。そして彼も視認する。サンダーダランビアの五つの眼が、全て自分たちへと向けられていることを。しかも穏やかならぬ気配。
青髪が問いかける。
「……そういえばリーダー、購入する時にダランビアの制御方法って聞いたんですか?」
「……あっ」
リーダーが短く発すると、青髪とオネェは途端に慌てふためいた。
「ど、どうするんですか~!? まずいっすよこれぇッ!」
「やっぱり無理に値切ったのがいけなかったんですよぉ~!」
「う、うるさぁ~いッ! おのれ、マーキンド星人めぇ~!!」
「グワアァァァ! ピィ――――!」
サンダーダランビアは四本のコイルからバチバチと火花を散らし、放電攻撃をミジー星人たちに放った!
「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――!!!」
ミジー星人三人はそろって薙ぎ払われた。
「うわぁっ!」
「くぅっ!」
放電の勢いは凄まじく、余波の突風がダイチとチンクの身体を大きく煽った。
「グワアァァァ! ピィ――――!」
ミジー星人たちを吹き飛ばしたサンダーダランビアは、ドスドスと足音を響かせながら進行を開始した。それを見て叫ぶダイチ。
「まずい! 次元港のある方角だ!」
このままではサンダーダランビアが次元港を襲撃し、観光客や職員の命が危ない。しかし通信障害によって、次元港へ危険を伝えることが出来ない。
そのためダイチはジオブラスターを構えながらチンクに告げる。
「俺がどうにか進行を遅らせる! その間にチンクは港に先回りして、民間人を避難させてくれ!」
「大丈夫か!? 今の装備で……!」
ここまでの事態になるとは想定していなかったので、今回は対怪獣用の装備を持ち合わせていない。またカルナージは無人世界なので、いつものようにXio本部からの支援は望めない。マスケッティも、どんなに急いでも一時間以上は掛かる。
「でも、やるしかない! チンク、頼む!」
「……わかった! 無茶はするなよ、ダイチ!」
うなずいたチンクが次元港の方角へと急いでいく。それを確認したダイチは、ブラスターからエクスデバイザーへと持ち替えた。
「エックス、ユナイトだ!」
『よぉし、行くぞっ!』
デバイザーのスイッチを押して、エックスのスパークドールズをリードする。
[ウルトラマンエックスと、ユナイトします]
「エックスーっ!!」
X字の輝きに包まれるダイチ!
「イィィィーッ! トワァッ!」
[エックス、ユナイテッド]
ダイチから変じた光はサンダーダランビアを飛び越え、その面前にウルトラマンエックスがきりもみ回転しながら着地した!
「グワアァァァ! ピィ――――!」
「シェアッ!」
突然目の前に降ってきたエックスに驚いたサンダーダランビアは足を止める。そして次元港を背にするエックスは、この先には行かせまいと堂々とした戦闘の構えを取った。
アルピーノ家の前まで避難してきたヴィヴィオとアインハルトは、そこでリオとコロナと鉢合わせる。
「ヴィヴィオ、アインハルトさん!」
「よかった、二人とも無事だったんですね」
「そっちこそ、無事でよかった」
お互いに何ともないことを確認でき、ヴィヴィオたちは胸を撫で下ろした。
その時にエックスが降り立ち、サンダーダランビアと対峙したのであった。
「あぁー! ウルトラマンエックスだぁ!」
「わたしたちを助けに来てくれたんだ……!」
リオとコロナは遠くのエックスの姿に、途端に興奮した声を出した。この四人とも、エックスを直接目にするのは初めてであった。
「アインハルトさん見て! エックスさんだよ! すっごく大きい!」
「はい……!」
「エックスさーん! 頑張れー!」
精一杯声を張ってエックスへと声援を発するヴィヴィオ。それに呼応するように、彼女のぬいぐるみ型のデバイス、セイクリッド・ハートがパッパッと手拍子を送った。
次元港を目指し森の中を全速力で駆けていくチンクの元へエアライナーが伸びてきて、その上をノーヴェが走ってきた。
「チンク姉、無事だったか!」
「ノーヴェ!」
更にウィングロードも伸びてきて、スバルも駆けつけてきた。
「チンク、ノーヴェ! ダイチは?」
「ダイチは怪獣の足止めに残った。しかしエックスが来たのだから、心配はいらないだろう。私は怪獣の進行先の次元港へ危険を伝えに行くところだ」
「チビたち四人はお嬢ん家に避難させたぜ」
三人は手早く情報を交換し合う。
「なのはさんたちは一足先に港の方へ避難誘導しに飛んでった。あたしたちも港へ行って、民間人の安全を確保してからエックスの援護に回ろう!」
「よっしゃ!」
「了解した!」
スバルの指示にノーヴェ、チンクがうなずき、三人はすぐに次元港へと急行していった。
「グワアァァァ! ピィ――――!」
「デヤァッ!」
咆哮を上げるサンダーダランビアへとまっすぐに接近を試みるエックス。だがダランビアの背のコイルから電撃が放たれ、エックスの足元を撃つ。
「グッ!」
咄嗟に横跳びでかわしたエックスだが、サンダーダランビアのコイルは四本ある。その一本一本から電撃が不規則に放たれ、エックスを狙う。
エックスは電撃の連続攻撃を回避するので手一杯で、前に進むことが出来ない。
『「サンダーダランビアのコイルをどうにかしないと、ジリ貧だよ!」』
『よぉし、任せろっ!』
ダイチが告げると、エックスは右腕を振りかぶって遠距離攻撃の構えを取った。
『Xスラッシュ!』
指先からくさび状の光弾が放たれ、サンダーダランビアのコイルの一本に命中した。
「グワアァァァ! ピィ――――!」
攻撃のショックでコイルがスパークし、電撃が途絶える。
『「今だ、エックス!」』
『ああ!』
すかさずエックスは地を蹴り、宙を舞って片脚を突き出し、両腕をピンと斜め上に伸ばした。
『Xクロスキック!』
足の一点にエネルギーを集中し、強烈な飛び蹴りをサンダーダランビアに見舞った! ダランビアはキックの勢いに押されて後退する。
「グワアァァァ! ピィ――――!」
『このまま決めるぞ!』
着地したエックスはザナディウム光線発射の構えを取ろうとする。だが、
「グワアァァァ! ピィ――――!」
サンダーダランビアの右腕がムチのように長く伸び、エックスの身体に巻きついて拘束した!
『うっ! し、しまった!』
巻きついた腕を通して高電圧の電撃が流し込まれ、エックスを襲う!
「ウワアァァァァァッ!」
身動きが取れない状態で電撃を食らい続け、一気に苦しい状況に追い込まれてしまったエックス! カラータイマーも点滅してピンチを知らせる!
『「うあぁっ……! こうなったらモンスジャケットを……!」』
ダイチも苦しみながらもデバイス怪獣カードをエクスデバイザーにリードさせようとしたが、デバイザーはエラーを起こし、モンスジャケット展開が出来なかった。
『「こ、この電撃の影響か……! このままじゃ、まずい……!」』
モンスジャケットも使用できない。エックス、大ピンチ!
「ああっ! エックスさんが危ない!」
エックスの窮地は、望遠の魔法で戦いを見守っていたヴィヴィオたちの知るところにもなった。ヴィヴィオらは慌てふためく。
「ど、どうしよう! わたしたちで何か出来ることはないかな……!」
「お気持ちはわかりますが、私たちではどうにも……」
「わたしのゴーレムをぶつけることでどうにか……!」
「危ないってコロナ! 遠くからコントロールは出来ないでしょ!?」
焦るコロナをリオが押し留めた。と、その時、ヴィヴィオが戦場の空に「人影」を発見した。
「あっ、なのはママだ!」
それはバリアジャケットと杖の状態のデバイス・レイジングハートで武装したなのはであった。民間人の避難は完了したようで、上空からサンダーダランビアを見下ろし、レイジングハートの先端を向けている。
なのはの姿を確かめたアインハルトが大いに慌てふためいた。
「えぇっ!? ヴ、ヴィヴィオさんのお母様、あんなところで何を!? バリアジャケットを纏ってても、危険すぎます! 確か、怪獣は魔導師ランクがS以上でないと個人単位ではとても太刀打ちできないとダイチさんが……!」
「あー、そのことなんですが……」
ヴィヴィオが言いかけたところで、なのははカートリッジを消費し、桃色の砲撃を発射する。
「エクセリオンッ! バスタ―――ッ!!」
放たれた、膨大な魔力の砲撃がサンダーダランビアの胸部の中央に炸裂した!
「グワアァァァ! ピィ――――!」
その衝撃でサンダーダランビアは大幅にひるみ、エックスへの電撃攻撃が停止した。
「えっ、えぇ!?」
なのはの砲撃で怪獣が悶絶したことに目を見張るアインハルト。ヴィヴィオは言いかけた台詞の続きを告げた。
「ママのランクはS+なんです。ジオマスケッティが出来る前までは、対怪獣戦の主力の一人でした」
「そ、そうだったんですか!?」
「ちなみに普段の役職は、航空武装隊の戦技教導官です」
ヴィヴィオから告げられたことに度肝を抜かれたアインハルトは言葉をなくした。
ダランビアの攻め手を止めたなのはは声を張り上げる。
「ウルトラマンエックスの援護作戦、開始!」
「了解っ!!」
(♪Take off!! スーパーGUTS(インストゥルメンタル))
なのはの号令に応えたのはウィングロードを走るスバルとティアナ、そして空を駆けるフェイト、飛竜に跨るエリオとキャロであった。
「あれはアルザスの飛竜……!?」
アインハルトは飛竜を目にして驚いた。彼女にコロナ、リオ、ヴィヴィオが説明する。
「キャロさん竜召喚士なんです」
「エリオさんは竜騎士!」
「フェイトママは空戦魔導師で執務官やってます。ランクもなのはママと同じS+。自慢じゃないですけど、ママたちは管理局屈指のエース、そしてストライカーズ! ママたちが駆けつけたからには、エックスさんはもう大丈夫ですよ!」
熱を込めて語るヴィヴィオの一方で、アインハルトはすっかり驚き果てて口が閉まらなかった。
サンダーダランビアに立ち向かう魔導師のエースたちの内、フェイトがエックスを縛る触手へと一直線に飛んでいく。
「バルディッシュ!」
[Sonic form]
フェイトのバリアジャケットが軽装の真・ソニックフォームと変化し、更にバルディッシュが大剣型のライオットザンバー・カラミティとなると、光の刃をうならせながら触手に振り下ろした!
「はぁぁぁぁぁっ!」
一閃、触手は真っ二つに断たれてエックスは解放される。
サンダーダランビア本体の方には、スバル、ティアナ、エリオ、キャロが一斉攻撃を仕掛けていく。
「ディバインバスタァァ―――!!」
「クロスファイア・フルバーストッッ!!」
「フリード! ブラストレイッ!!」
魔力の砲撃、射撃がサンダーダランビアの眼球付近に直撃していく。さすがになのはほどのダメージはないが、攻撃で視界が隠されるのでサンダーダランビアは足止めを食らう形となる。
更にそこになのは、フェイトも射撃に加わり、ダランビアの行動を阻止する。
「グワアァァァ! ピィ――――!」
ろくに動けなくなって苛立つサンダーダランビアは電撃を彼女らに向けたが、六人は息のぴったりと合ったチームワークで巧みに飛び回ることで、電撃の雨を難なくかわしていった。
その間にエックスは体勢を立て直すことが出来た。
『怪獣を相手にあんな大立ち回りを……。彼女たちはすごいな』
『「ああ……! 俺たちも行くぞ!」』
[デバイスエレキング、スタンバイ]
ダイチが改めてデバイスカードをリードし、モンスジャケットを展開した。
『キイイイイイイイイ!』
[エレキングミラージュ、セットアップ]
『「電撃には電撃だ!」』
エレキングミラージュを纏ったエックスは、即座に二丁拳銃からオレンジ色の電撃波を発射する。
『「ヴァリアブル電撃波!」』
「シェアァァッ!」
電撃波がサンダーダランビアに直撃する!
「グワアァァァ! ピィ――――!」
その攻撃は決め手とはならなかった。だが、モンスジャケットの攻撃には魔力が宿っており、しかも莫大なエネルギー量なので、周囲に散布される魔力量は通常の何十倍もある。
そのため、なのはの代名詞とも言える最強の一撃を放つのに十分すぎるほどの魔力がたった一発で補われたのだった。
「スターライト……!」
レイジングハートをブラスターモードに変形したなのはが、それを放つ。『星の光』の名を冠する、収束型の砲撃魔法!
「ブレイカァァァ―――――ッッ!!」
極大の魔力砲撃が、サンダーダランビアに決まった!
「グワアァァァ! ピィ――――!」
一瞬巨体がくの字に折れ曲がったダランビアは、ドズンッ! とその場に両膝を突いて昏倒した。
「す、すごい威力……! 怪獣がダウンした……!」
スターライトブレイカーの成果を目の当たりにしたアインハルトが、最早呆気にとられながらつぶやいていた。
『「これで終わりにしよう!」』
[デバイスゴモラ、スタンバイ]
いよいよエックスが勝負を決める時がやってきた。デバイスゴモラのカードをリードして、ゴモラキャリバーを展開。
『ギャオオオオオオオオ!』
[ゴモラキャリバー、セットアップ]
ローラーブーツでサンダーダランビアへと直進し、両腕のスピナーを激しく回転させる。
『「超振動拳!!」』
「イィィィ―――ッ! シャァ――――――――ッ!」
エックスの突進がサンダーダランビアを貫く。爆散したダランビアの破片が一点に凝縮されていき、スパークドールズへと戻っていった。
ゴモラキャリバーを解除したエックスは、自身を助けてくれたなのはたちに敬礼する。言葉は通じなくとも、感謝の気持ちは通じると考えて。
果たして、なのはたちも達成感を湛えた笑顔を浮かべながらエックスに敬礼を返したのであった。
『――了解した。よくやってくれたな、ダイチ、チンク』
事件解決後、ダイチとチンクは回復した通信回線を用いて、Xio本部のカミキへと顛末を報告した。カミキはダイチたちの労をねぎらう。
「俺たちだけの力によるものじゃありません。なのはさんたちの助けがあってこそです」
ダイチが言うと、映像の中のカミキはなのはらの方を向く。
『うむ。高町戦技教導官らも、ダイチたちへの助力、感謝する』
「いえ、管理局員として当然のことです」
なのははどこか熟練の戦士の風貌を思わせる佇まいで、代表してカミキに答えた。
「逮捕したミジー星人とサンダーダランビアのスパークドールズは、これからチンクとともに本部へ護送します」
とダイチが言うと、カミキはそこで意外なことを返した。
『いや、護送はチンクだけで問題ないだろう』
「え?」
『ダイチはそちらで一泊してから帰ってくるといい。ちょうどいい機会だ、温泉にでも浸かって骨を休めてくるんだな』
「えっ、えぇ!?」
その言いつけに、ダイチのみならず一同が驚きを見せた。
「そ、そんな! 俺だけ遊んで帰るなんて出来ませんよ……!」
『いや、ダイチが一番休暇を取った時間が少ないだろう。一日程度帰りが遅くなっても、誰も文句など言わんさ』
ダイチは特捜班であると同時にラボチームという特殊な立ち位置なので、その役割を引き継ぎできる人員がなかなかいないので休暇日数は最も少ないのだった。それを考慮したカミキの粋な計らいだった。
戸惑うダイチの背中をチンクも押す。
「私に遠慮することはないぞ。ダイチはここ最近、疲労が溜まってるようでもあるしな。むしろここらでリフレッシュするべきだろう」
「でも……」
「わぁ~っ! ダイチさんもここに泊まっていくんですね!」
「せっかくだから、あたしたちにゴモラ貸して下さい! 一緒に遊ぶんです!」
「あらあら、早速ダイチくんの分のおもてなしの用意をしなくっちゃね、ルーテシア」
「任せて、ママ!」
ヴィヴィオらに純真な笑顔を向けられ、アルピーノ母娘の張り切る様子を目の当たりにしたら、さすがに断ることは出来なかった。
「り、了解しました。お心遣い、ありがとうございます、隊長」
『うむ。しっかり身体を休めて、また次から一層励んでくれ』
ダイチの件の話が纏まると、ティアナがスバルの肩に手を置いた。
「よかったじゃない、スバル。ダイチさんと宿泊できて」
「えぇっ!? べ、別にダイくんと一緒だからって、あたしに嬉しいことなんてないよ?」
素知らぬ顔をするスバルであったが、ヴィヴィオたちに纏わりつかれて苦笑いしているダイチの顔を見つめて、やんわりと顔をほころばせた。
その夜……ダイチはエリオとともに、アルピーノ家の温泉にその身を浸からせていた。
「ふぅ~……隊長が言った時は驚いたけど、実際ここに泊まれてよかったよ。特にこの温泉の湯加減は最高だね」
「そう言ってあげたら、ルーテシアも喜びますよ。この浴場の設計も、温泉掘ったのもルーテシアですから」
「……ルーテシアちゃん、日に日に建築にのめり込んでいくよね。本人はお遊びを自称してるけど、絶対その範疇を超えてるって……」
「ははは……」
ダイチと会話するエリオは苦笑を浮かべた。
「エリオくん、自然保護隊の仕事の調子はどう? 君とキャロちゃんにはスパークドールズ発掘でもお世話になってるけど、何か困ったことがあるなら相談に乗るよ」
「いえ、今のところは順調です。お気遣いありがとうございます。ダイチさんの方こそ、例のデバイス怪獣の進展はどうでしょうか」
「それが、どうにも上手いこと行かなくってさ……。特捜班との二足のわらじでなかなか時間が取れないというのもあるけど。でもモンスジャケットというものが出来たし、デバイス怪獣自体もいずれ完成できると思うんだ……」
息を吐きながら語ったダイチは、ふとエリオに頼み込む。
「そうだ、エリオくん。ちょうどいい機会だし、あとで君のストラーダのデータを取らせてもらっていいかな。最新のデータが欲しいんだよ」
「構いませんけど……」
側の岩に立てかけているデバイザーから、エックスがダイチに尋ねかける。
『ダイチ、また新しいデバイス怪獣カードを作るつもりなのか?』
「ああ。それもモンスジャケット用のをね。今度のはベムスターの能力に主眼を置いて、防御重視のものを……」
言いかけたダイチが、女湯の方で何か異常が起きているのを察知した。
「うん? 向こうがさっきから騒がしいね……」
「ほんとですね。どうしたんだろう……」
そのひと言の直後に、垣根の向こうから派手な水飛沫が舞い上がった! ただの悪ふざけの範囲ではなさそうだ。
「!? まさか、ミジー星人の仲間か何かが襲撃してきたんじゃ! スゥちゃんたちが危ない!?」
『あっ! おい、ダイチ! 今のは……!』
焦ったダイチはジオブラスターを引っ掴み、エックスが止めるのも聞かずに飛び出していってしまった。
「みんな、大丈夫……!」
我を忘れて女湯に突撃したダイチが目にしたものは……!
「あっ……」
温泉の水面に浮かぶセインの姿であった。教会から差し入れにやってきた彼女が、皆に悪戯を仕掛けて思い切りこらしめられたのが先ほどの水しぶきの真相だったのだ。
そして、温泉にはスバルやノーヴェ、ティアナ、ヴィヴィオらが当然ながら裸でいる……。
「……きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――――――――――――っ!!!」
当たり前に、悲鳴の合唱が巻き起こった。
「このバカヤロー! さっさと出てけ、変態がー!」
「ダイくんのエッチー!」
「わぁぁぁっ! ご、ゴメ―――――――ンッッ!!」
ノーヴェやスバルに風呂桶などを投げつけられながら、ダイチは慌てて退散していった。
『全く、何をやってるんだか……』
彼の悲鳴を聞き止めながら、エックスはデバイザーの中でため息を吐いたのだった。
真夜中のミッドチルダ市内の、人気のない歩道を三人の男たちが歩いている。その中央の、ジュリ扇を持ったオネェが左右の二人に呼びかけた。
「ねっ、ハルキさん、イカリさん。今年のインターミドル・チャンピオンシップの開催が二ヶ月後まで近づいてきたわ。ジークちゃんの晴れ舞台よ! 都市予選から応援に行きましょうね」
ハルキと呼ばれた男の方が、それに肩をすくめた。
「別に応援なんて必要ナッシングじゃねぇのか~? ジークの奴、あんだけストロングなんだしよ。応援なんかなくたって、あいつの優勝で決まりだろ」
「もう、冷たいわねぇ! 必要不要関係なしに、みんなでジークちゃんの戦いぶりを見届けましょうよ。同じ星雲荘に暮らす仲間でしょ?」
「うんうん。みんなで盛り上がるの、実にいいんじゃなイカ」
変なイントネーションでしゃべるイカリという男。三人でやいやい話しながら歩いていたら……前方の暗がりから、ぬっ、と怪しい人影が現れた。
「……!」
その人影を目の当たりにしたオネェが絶句する。
人影は奇怪な模様のポンチョを纏い、真っ赤な眼を爛々と輝かせている。額の部分には赤い結晶体。首から下にも赤い半球がポツポツとくっついている。……明らかにミッドチルダ人ではない。
『ふッ……まさかこんな辺境の星でお前を見つけるとはな』
「なっ! ナックル星人……! ナクリと同じ……!」
ハルキが怪人の姿を目にして驚愕した。そして、ナクリというオネェの方も、いつの間にか人間の姿から、顔は違えども同様の怪人の姿に変貌していた。
「バンデロちゃん……久しぶりね」
「えっ? お知り合イカ?」
「ええ……」
ナクリがイカリにうなずき返すと、バンデロと呼ばれた怪人が告げる。
『ちょうどいい。お前にも儲け話に一枚噛ませてやろうじゃないか』
「儲け話?」
『ああ。この星のXioとかいう組織が、スパークドールズを一時別の場所に持っていくという情報を暗黒星団の情報網で掴んだ。そこを襲って、スパークドールズを根こそぎいただこうって計画さ!』
「!!」
バンデロの話したことに、ナクリたちは驚愕する。
『スパークドールズは最近価値がうなぎ登りだ。大儲け確実だぜ! 昔のよしみで儲けは山分けにしてやろう。どうだ、久々に組まねぇか?』
バンデロの誘いに……ナクリは毅然とした態度で答える。
「バンデロちゃん、ワタシもう悪いことからは足を洗ったのよ」
『あぁ?』
「今はもう、この星で静かに暮らす人間の一人なの。バンデロちゃん……あなたももう戦場を渡り歩いて、争いの種を撒くのはやめにしたらどうかしら」
と、ナクリは説得を試みる。
「聞いてるわよ。あなた、例の「彼」に追われてるそうじゃない。あの「彼」からは、いつまでも逃げ切れるものじゃないわ。結局、悪いことって続けられるものじゃないのよ。昔馴染みとして、バンデロちゃんが破滅する姿は見たくない。今からでも遅くないわ、悪事からきっぱりと縁を切ればあなたも……!」
話している途中で……ナクリは膝の皿を、バンデロの銃で撃ち抜かれた。
「あぁっ!?」
「な、ナクリ! おいユー! いきなり何しやがる!」
「ひどいじゃなイカ!」
抗議したハルキとイカリにもバンデロは発砲。二人は足をばたつかせて必死にかわす。
「おわあぁぁっ!?」
『ガッカリだ! しばらく見ない間に、まさかこんな腑抜けになってたとはなぁ。この俺が破滅するだと? 馬鹿を言えッ!』
バンデロは親指で自身を指し、豪語する。
『俺は百戦錬磨のバンデロ様だぞ! 「あの野郎」だって、いずれは排除してやるとも! そしてこの俺の名を、宇宙中に恐怖とともに知れ渡らせてやるのさ! 未来の宇宙の裏社会は、俺が支配するんだ! テメェには愛想が尽きたぜ、いつまでもうずくまってな! あばよぉッ!』
ポンチョを翻したバンデロは、そのままミッドチルダの闇の中へ消えていった。その後で、ハルキとイカリで人間の姿に戻ったナクリに肩を貸す。
「ナクリ、大丈夫か? さっきの奴、何なんだよ」
「乱暴な奴だったじゃなイカ」
ナクリは顔をしかめながら、バンデロの消えていった闇を見つめた。
「バンデロちゃんは故郷の士官学校の同期よ。訓練じゃ、一度も勝ったことがないんだけれど……。今は宇宙のあちこちで武器や危険な怪獣を売りさばく、死の商人をやってるのよ」
「死の商人……。それでスパークドールズを狙ってるんだな」
「さすがのXioも、今度ばかりは危ないわ。バンデロちゃんはナックル星最強の戦士でもあるのよ。格闘技能だけでも、ジークちゃんにも引けを取らないほどなのよ」
ナクリの説明に、ハルキもイカリも驚く。
「そいつはベリーデンジャラスじゃねぇか!」
「ええ。こうしてはいられないわ。ワタシたちの素性は明かせないけど、Xioに危険が迫ってることだけでも伝えないと……」
「でも、その前に傷の手当てするべきじゃなイカ。星雲荘に帰ろう」
ハルキとイカリがナクリを支えながら、三人はひょこひょことその場から離れていった……。
『ダイチの怪獣ラボ!』
ダイチ「今回の怪獣はバードンだ!」
ダイチ「バードンは『ウルトラマンタロウ』第十七話「二大怪獣タロウに迫る!」から登場した鳥型怪獣! 何とタロウ、ゾフィーを立て続けに退け、三話に亘って登場した恐ろしく強い怪獣なんだ!」
エックス『シリーズで初めての三部構成だったな』
ダイチ「元々の予定だと前後編だったけれど、主演の篠田三郎さんが多忙のために、一話分伸ばしたからだというよ」
エックス『そのせいか、タロウは全五十三話と一話分多いんだよな』
ダイチ「『ウルトラマンX』では第二話に早くも登場! ゴモラアーマーの初陣の相手になったんだ」
エックス『初モンスアーマーの相手に相応しい強豪怪獣だった』
ダイチ&エックス「『次回も見てくれよな!」』
ナックル星人バンデロの手によって、はるか彼方の次元に連れ去られてしまったスバルとアインハルトちゃん。俺とエックスの力だけじゃ、救出に向かうことは出来ない。だがそこへ、俺達も知らないウルトラマンが降り立った! 次回、『イージス光る時』。