光輝巨人リリカルなのはX   作:焼き鮭

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イージス光る時(A)

 

「『ザナディウム光線!!」』

「あの光線でスパークドールズにしたのか……!」

『正確には、君と私の力だ』

「ファントン光子砲、発射!」

「ファントンレールキャノン、発射!」

「名付けて、ウルトライザー・カートリッジ!」

「ウルトライト・ブレイカー!!」

[ゴモラキャリバー、セットアップ]

[エレキングミラージュ、セットアップ]

「Xioでは、人類に友好的な宇宙人に、研究活動を手伝ってもらっています」

「Xioのスーパーテクノロジーの多くは、あのグルマン博士のご協力の賜物です!」

 

 

 

『イージス光る時』

 

 

 

 オペレーションベースXのラボで、シャーリー、マリエルが、ヴィヴィオたちとある話をしていた。

 

「へぇ~。じゃ、四人ともインターミドルに出場するんだね」

「みんな、その歳ですごいチャレンジ精神ねぇ。確かに出場可能年齢は10歳からだから問題はないけど、実際にその歳で出場しようって子はなかなかいないわよ」

「えへへ」

 

 シャーリーが聞き返し、マリエルは感心したように息を漏らした。ヴィヴィオらはにこにこ笑ってうなずく。

 インターミドル・チャンピオンシップ。DSAA(ディメンション・スポーツ・アクティビティ・アソシエイション)公式魔法戦競技会の種目の一つで、10歳から19歳までのティーンエイジが限りなく実戦に近いスタイルで格闘技能最強を競い合う、次元世界でも人気の高いスポーツ大会だ。ヴィヴィオたち四人は、その女子の部への参加を表明しているのであった。そして二ヶ月後に控える予選に向けて、ノーヴェからの指導を受けるために最近はXioに足しげく通っているのだった。道場も使わせてもらっていて、隊員たちの格闘訓練にまで混ざったりも。

 

「あの、ところでダイチさんは?」

 

 ふとアインハルトがシャーリーたちに尋ねかけた。

 

「ああ、ダイチくんならあそこで、グルマン博士とお話し中だよ」

 

 シャーリーが示した先、グルマンのスペースで、ダイチがグルマンとちゃぶ台を囲んでいた。

 

「何? 未発見の次元へ移動する方法かね?」

「はい。博士なら何かいい知恵を貸してくれるんじゃないかって思いまして」

 

 ダイチはグルマンにその質問をしていた。彼は十五年前に、どこかへ消えてしまった両親の行方を突き止めることも目標としている。そのために、グルマンに相談を持ちかけたのだった。

 

「ふむ、まずは次元航行の基礎理論を簡単におさらいしよう。いいかね?」

 

 グルマンはちゃぶ台の上に並べてあるパンの一切れと、ナイフをそれぞれ両手に持った。

 

「このパンの一枚が、我々の住んでいる次元世界の一つとする。ナイフが次元航行船だ。そして、こうすることで……」

 

 グルマンはパンの何枚かを、ナイフで一気に貫いて一まとめにした。

 

「次元の壁を通り抜け、一つの世界から別の世界へと移動することが可能となる。これが次元航行の基礎理論だ。現在の航行船は全てこの理論で飛んでいる」

「しかし、博士の元々住んでいた次元は、ミッドの船ではたどり着けないところなんですよね」

「その通りだ。たとえるなら、パンが遠い場所にあって……」

 

 グルマンはパンを刺したナイフから離れたところに一切れのパンを置き、間に皿を一枚立てる。

 

「このようにナイフでは貫けない固い壁があるといったところか。ウルトラ・フレアの影響がなければ、互いの次元がつながることはなかっただろうな」

「でも今なら、そういう遠くの次元世界への移動も決して不可能ではないのでは……」

「いやぁ、無理に行こうとするのはやめた方がいいだろう。危険だ」

 

 グルマンはパンを一つずつ口に放り入れながら警告した。

 

「本来次元渡航は大きな危険が伴う。ましてや、未知の次元に飛び込もうなどというのは自殺行為だ。次元船の耐久値を超えるような過酷な環境に出てしまうことも十分あり得るんだぞ」

「そうですか……」

 

 残念がるダイチ。その時に、スバルがラボにやってきてグルマンに呼びかけた。

 

「博士、そろそろお時間です」

「おお、もうそんな時間か。シャーリー、準備を頼む」

「了解です、博士」

 

 呼ばれたシャーリーがテキパキと、ケース入りのスパークドールズを特殊金属製のトランクに仕舞い込んでいく。

 

「さぁみんな、お出掛けしますよ~」

「スパークドールズをどこに持ってくんですか?」

 

 コロナが質問すると、マリエルが説明する。

 

「ウルトラマンエックスのザナディウム光線には未知の粒子が含まれていて、それが怪獣をスパークドールズに圧縮することが分かったの。つまりスパークドールズを測定器にかければ、付着してるその粒子を検出できるはず。今からその研究に向かうのよ」

 

 リオだけはちょっと理解が追いついていない様子だ。

 

「えっと、要するに……それが応用できれば、Xioの皆さんの力で怪獣をスパークドールズ化できるようになるってことですか?」

「その通りよ」

「わぁ~! すごいですね、それ!」

「うん……」

 

 ヴィヴィオが声を弾ませ、アインハルトも感動を覚えたようにうなずいた。その研究が成功すれば、人間が怪獣を殺すことなく共存する道に一歩近づくことになるのだ。

 スパークドールズが全てトランクに収まると、ラボチームにノーヴェが呼びかけてきた。

 

「こっちの準備は完了しましたよー。早くちび怪獣たちをアラミスに積み込んで下さい」

「ノーヴェも一緒に行くの?」

 

 ヴィヴィオが尋ねかける。

 

「あたしだけじゃないさ。特捜班総出で護送だよ」

「えっ? みんなでですか?」

 

 子供たち四人は意外そうな顔になった。

 

「ああ。怪獣は良くも悪くもあまりに強力な力だ。それを狙う悪い奴が後を絶たねぇ。実際スチール星人とか、Xioのスパークドールズを盗もうとしてきた奴らをもう何人もやっつけてる。それに、匿名だがやばい奴が今回の搬送を狙ってるってタレコミもあった。それで用心って訳さ」

「そうだったんですか……」

 

 ノーヴェからの説明を聞いてヴィヴィオたちは、特にアインハルトが心配した。それを察して、シャーリーが申し出る。

 

「よければ、みんな実験の見学についてくる?」

「えっ、いいんですか!?」

「あのなのはさんの娘さんとそのお友達なら、カミキ隊長も許可してくれるでしょ」

「ちょっ、シャーリーさん!? 本気かよ!?」

 

 ギョッと驚くノーヴェ。道中、本当に危険があるかもしれないのだ。

 

「まぁまぁ、いいじゃない。ノーヴェたちがついてる訳なんだし」

「けどなぁ……」

 

 逡巡するノーヴェだったが、ヴィヴィオたちはもうすっかりとその気になっているので、実に反対しづらかった。

 そういうことで、ヴィヴィオたち四人もスパークドールズの移動に同行することとなった。

 

 

 

 スパークドールズの素粒子研究所への移送が開始された。アラミス、ポルトスの二車両が地上ルートで研究所へ向けて走り、アトスと合体したスカイマスケッティが空から二車両の周辺区域を警戒する。

 

「そっちは異常ないか?」

 

 郊外の未開発エリアに出たところで、アラミスを運転するワタルが、スカイマスケッティのハヤトとディエチに問いかけた。

 

『ああ。天気は快晴、雲ひと……ん?』

「おい、どうした?」

『ちょっと待って……進行先の土中から熱源反応!』

 

 ディエチの報告の直後に、アラミスの前方の切り立った崖が内側から砕け散り、中から漆黒の巨大怪獣が出現した!

 

「グアアアアァァァァ!」

 

 ワタル及びダイチがすぐに本部へ連絡する。

 

「エリアT-9に怪獣出現! こっちへ向かってきます!」

「怪獣はタイプG、推定……体長55メートル! ブラックキングです!」

 

 怪獣ブラックキングの出現に、本部からカミキとクロノの指令が発せられる。

 

『怪獣の市街地への接近を阻止しろ!』

『ハヤト、ディエチは上空から怪獣を牽制しろ! スバル、ノーヴェは地上から援護、残りはスパークドールズを保護せよ!』

「了解!」

「みんな、しっかり掴まっててね!」

 

 後部座席の子供たちに呼びかけるダイチ。そしてアラミスがブラックキングから離れ、マスケッティが攻撃を開始する。

 

「ファントン光子砲、発射!」

 

 ディエチの射撃で光子砲がうなる。光弾がブラックキングに全弾命中。

 

「グアアアアァァァァ!」

 

 だがブラックキングに応えた様子は全くなく、口から熱線を吐き出してマスケッティに反撃する。すんでのところで回避するマスケッティ。

 

「おわっ!」

「気をつけて! すごい熱量……当たったらひとたまりもない!」

 

 地上付近へ降下したマスケッティは一旦アトスと分離、次いでポルトスがジョイントした。

 

「今度はあたしたちの番だよ!」

「ああ! ファントンレールキャノン、発射!」

 

 ノーヴェがレールキャノンを撃ち込むが、これも効果が見られず、ブラックキングは振り回した尻尾で山を崩し、岩雪崩でランドマスケッティを攻撃した。

 

「うわぁっ!」

 

 マスケッティが回避行動を取っている隙に、ブラックキングは熱線でアラミスを狙う。

 

「くっそぉっ!」

「私たちも応戦せざるを得ないな……!」

「チビっ子たちは外に出ちゃダメっスよ!」

 

 ワタル、チンク、ウェンディ、ダイチの四名がアラミスから降車し、ブラックキングに立ち向かおうとする。

 

「俺は別角度から攻撃します!」

 

 ただ、ダイチだけはそうとだけ言い残してどこかへ走り去っていった。

 

「おい、ダイチ!」

「構ってる暇はない! 来るぞ!」

「グアアアアァァァァ!」

 

 ブラックキングが徐々にアラミスへ接近してくる。ワタルたちはジオブラスターにウルトライザー・カートリッジを装填して射撃準備をする。

 

[チャージ完了]

「トラーイっ!!」

 

 ワタルの掛け声で三人一斉に光線を発射したが……ブラックキングは交差した腕で完全に防御した。ダメージはない。

 

「これも効かないっスか!?」

「何て奴だ……!」

 

 特捜班が苦戦する一方で、安全のためにポルトスから降ろされていたグルマンが、林の中へと駆けていくダイチの姿を目撃した。

 

「ん? ダイチ?」

 

 直後に、林からウルトラマンエックスが飛び出してブラックキングの前に立ちはだかり、アラミスの盾となった!

 

「シュワッ!」

「おぉ!?」

 

 グルマンはあんぐりと口を開け放った。

 

「グアアアアァァァァ!」

「ヘアァッ!」

 

 ブラックキングは現れたエックスに即座に狙いを移し、エックスも敢然と飛びかかっていく。エックスの飛び蹴りを、ブラックキングが腕を交差して防御。

 

「グアアアアァァァァ!」

「テェイッ!」

 

 そのまま格闘戦を展開するエックスとブラックキング。ブラックキングの前に折れ曲がった黄金色の角が襲いかかるが、エックスはかわしてブラックキングの首を脇に抱え込み、地面に投げ落とす。

 

「グアアアアァァァァ!」

「デヤァァァッ!」

 

 それからエックスはローキック、パンチを次々に見舞い、隙を作ったところで大技を仕掛ける。

 

『Xクロスチョップ!』

 

 エネルギーを集中した手刀をX字に振るい、作り出した光の軌跡を押し出して攻撃!

 

「シェアァッ!」

「グアアアアァァァァ!」

 

 攻撃の勢いで後ずさったブラックキングだが、これでも持ちこたえる。

 

「エェヤッ!」

 

 そこでエックスは、相手の右足に飛びかかってブラックキングを転倒させた。

 

「あいつ、かなりのタフネスっスね……」

「エックス、頑張れ!」

 

 エックスが怪獣に組みついている間は攻撃できない。警戒しながら戦いを見守るウェンディとワタルたちの背後から……何者かの気配がしてチンクが真っ先に振り返った。

 

「誰だっ!」

 

 彼らの背後からは、怪しい模様のポンチョを纏った真っ赤な眼の怪人がおもむろに歩いてきていた。

 

『ほぉう……いい玩具を持ってんなぁ、小僧ども』

「動くな! 出身星と、名前を名乗れ!」

 

 即座にブラスターを突きつけるワタル。チンク、ウェンディもそれぞれの武装を出す。

 

『ナックル星人バンデロ……!』

 

 そう名乗った怪人は、ポンチョに隠した腰のホルスターから銃を抜く。ワタルたちですら反応できないほどの早撃ち!

 

「うわっ!?」

 

 ワタルとチンクは武器をはね飛ばされ、ウェンディはライディングボードから撃ち落とされた!

 

「くそっ!」

 

 武器を失っても肉弾戦を挑むワタルたちだが、三人はそれぞれ一発ずつ腹に拳をもらって宙を舞った。

 

「ぐはぁっ!?」

「ワタルさん!? チンク、ウェンディ!」

「くっ!」

「み、みんな!?」

 

 ワタルたちはたった一撃でダウン。三人が一蹴される姿を見せつけられ、ヴィヴィオたちはシャーリーの制止も聞かずにアラミスから飛び出した。

 

「セイクリッド・ハート! セット・アップ!」

「武装形態!」

「ソル!」

 

 ヴィヴィオ、アインハルト、リオは身体強化魔法で大人モードへと変貌した

 

『ガキどもが一気に大人に? 面白い曲芸だな』

 

 四人が敵意を向けても、ナックル星人バンデロは不敵に笑うばかり。

 

「ふざけないで! スパークドールズは渡さないんだから!」

「ヴィヴィオさん、行きましょう!」

 

 ヴィヴィオとアインハルトが同タイミングで飛び出し、バンデロに拳を突き出す!

 ――しかし、バンデロの差し向けた手の平で二人ともパンチを軽々と止められた!

 

「えっ!?」

「止められた!?」

 

 間髪入れぬバンデロの蹴り上げで、二人とも弾き返される。

 

「うぁっ!」

「ヴィヴィオ! アインハルトさんっ!」

「つ、強い……! 以前の異星人とは、全然違う……!」

 

 ヴィヴィオたちまでも、一発だけで起き上がれなくなる。苦悶しながらのアインハルトのつぶやきで、バンデロが勝ち誇った。

 

『その辺の雑魚と同じにするなよ! 俺は数多の戦場を渡り歩く死の商人! 百戦錬磨のバンデロ様だ!』

「くっ……! ゴライアス!」

 

 コロナの魔法で、巨躯の青いゴーレムが召喚された。ゴーレムマイスターの心強き相棒、ゴライアスだ。

 ゴライアスが巨大な拳を向けても、バンデロは鼻で笑った。

 

『下らねぇ。ブラックキング!』

「グアアアアァァァァ!」

 

 バンデロに命令で、更に巨大なブラックキングがエックスとの戦いの合間を縫ってゴライアスへ熱線を撃ち込んだ。

 その一撃により、ゴライアスは爆破されてバラバラに砕け散る。

 

「あああぁぁぁぁぁっ!」

 

 そして爆発の余波で、ヴィヴィオたちは四人とも散り散りに吹き飛ばされた。

 

『ハッハッハッ……人間なんぞ相手にもなんねぇぜ』

 

 ヴィヴィオたちも退けたバンデロは悠々とアラミスに接近する。その前にシャーリーが立ちはだかる。

 

「来ないで!」

『おらッ!』

「きゃあっ!?」

 

 だが彼女も一瞬で殴り飛ばされ、バンデロはアラミスに積まれてあるスパークドールズのトランクを開け放った。

 

『ヒュー! お宝がザックザクだぜ』

「グアアアアァァァァ!」

 

 そのままトランクを奪い取ろうとするバンデロだったが、ブラックキングの咆哮が耳に入って手を止める。

 顔を上げると、ブラックキングはまだエックスと格闘中であった。

 

『ブラックキングめ、あんな野郎に手間取りやがって。仕方ねぇ……』

 

 ポンチョをその場に脱ぎ捨てたバンデロは、一瞬にしてブラックキングと同等クラスに巨大化した!

 にじり寄ってくるバンデロの方へ振り返るエックス。

 

『「お前は誰だ!?」』

『へッ……その質問は聞き飽きた!』

 

 エックスへ襲いかかるバンデロ! 彼の殺人パンチとキックがエックスを襲う!

 

「グゥッ!」

 

 更にバンデロは側の岩を鷲掴みにして、エックスの顔面に投擲した!

 

「グァッ!?」

 

 顔に岩をぶつけられたエックスがひるむと、ここぞとばかりにバンデロが飛びかかる。どうにか持ち直して対抗するエックスだが、打撃は簡単にバンデロに止められる。

 

『でぇあぁぁぁッ!!』

「グハァァッ!」

 

 逆に回し蹴りを胸に食らって、大きく蹴り飛ばされる。

 

『こいつは出来るぞ……! 油断するな、ダイチ!』

『「わかってる!」』

 

 立ち上がるエックスだが、敵はバンデロだけではないのだ。

 背後からブラックキングが上腕に噛みつく!

 

「ウアァァァッ!」

『おらぁぁッ!』

 

 ブラックキングを振り払っても、前からバンデロが殴り掛かってくる。それを押しのけた隙を突かれ、ブラックキングに羽交い絞めにされた。

 

『おらッ! おらッ! おらッ! おぉらぁぁぁぁッ!』

「グアァァァッ!」

 

 動けないのをいいことに散々殴りつけ、強烈な蹴りを入れるバンデロ。倒れたエックスのカラータイマーが赤く鳴り出す。

 

『おらぁぁぁッ!』

 

 バンデロはうつ伏せのエックスを容赦なく踏みにじる。この暴挙に、スバルとノーヴェが怒りを見せる。

 

「やめろぉっ!」

「チンピラ野郎が! 食らえっ!」

 

 レールキャノンが発射されたが、光弾はバンデロの手の甲で弾き返された。

 

『邪魔だぁッ!』

 

 逆に両眼からの怪光線でマスケッティが撃ち抜かれる!

 

「あああああああっ!!」

 

 マスケッティは今度こそ機能停止してしまった。

 二対一の苦境に打ちのめされるエックス。Xioもまた、これまでとは訳の違う強敵に次々倒れた。最早エックスを助ける者はいない……!

 だが、その時! 突如として空の一部に穴が開き……銀色の鎧を纏った光り輝く巨人が猛然と飛び出してきた!

 

「シェアッ!」

 

 ハッとその方向を見上げたバンデロが舌打ちする。

 

『面倒な奴が来やがった……! こんな宇宙の果てまで追ってきやがるとは……』

 

 何事かと起き上がるエックス。彼の目に、大地に降り立った新たなる巨人の姿が映った。

 それは紛れもなく、自身と同じ「ウルトラマン」であった。

 

『ナックル星人バンデロ! やっと見つけたぜ』

 

 鎧を纏った第二のウルトラマンの勇姿を見上げたグルマンが、名を口にする。

 

「あれは噂に名高い、ウルトラマンゼロ!」

『知っているのですか、博士!?』

 

 尋ねたカミキに、グルマンはこう答えた。

 

「ウルトラマンの中でも、特に腕の立つ超一流の戦士だと聞いている!」

『超一流……!?』

 

 バンデロは新たなウルトラマン、ゼロをにらみながら、ブラックキングに命令する。

 

『ブラックキング、やってしまえ!』

「グアアアアァァァァ!」

 

 一直線にゼロへ突撃していくブラックキング。対するゼロは鎧を解除して、それが変じた一対のスラッガーを逆手に持って立ち向かう!

 

「シェアァァァッ!」

 

 ゼロはエックスが散々苦しめられたブラックキングの太い腕からの打撃を難なくいなし、スラッガーで相手を斬りつける。そして後ろ蹴りでひるませたところで、高く跳躍。

 

『ウルトラゼロキーック!』

 

 赤く燃える飛び蹴りが、ブラックキングの角を根元からへし折った!

 

「グアアアアァァァァ!」

『ワイドゼロショット!』

 

 着地して振り返ったゼロは、L字に組んだ腕から光の奔流を放った! ブラックキングは先ほどまでと同じように交差した腕で防御するが……。

 

「グアアアアァァァァ!」

 

 その勢いを抑え切れず、後ろへ吹っ飛ばされて山の岩肌に叩きつけられた!

 

「す、すごい……!」

「ああ、すげぇ強さだ……」

 

 マスケッティから脱出したスバルとノーヴェは、あのブラックキングを圧倒するゼロの戦いぶりに唖然とした。

 だがゼロがブラックキングと戦っている間に、バンデロが怪しい動きを見せる。

 

『ふんッ!』

 

 何もない空に向けて銃を撃つと、弾丸が空間に穴を開けたのだ。

 

『さてと……』

 

 そしてバンデロはアラミス――その中のスパークドールズへ目を落とす。

 それを察知したアインハルトがハッと顔を上げる。

 

「スパークドールズが……ダイチさんの夢が奪われる……!」

 

 たまらずにアインハルトは駆け出し、アラミスにその身を滑り込ませる。

 

「アインハルト!?」

 

 それを目撃したスバルも走る。

 

「おい、スバル! うあっ!?」

 

 ノーヴェも追いかけようとしたが、その前にバンデロの巨大な足が降ってきて足止めを余儀なくされた。

 アインハルトとスバルが逃げる間もなく、バンデロの手がアラミスに伸びる。二人はやむなくアラミスの車内に身を隠した。

 そしてバンデロはアラミスを掴み、空に開けた穴の方へと向かっていく。

 

『や、やめろ……!』

 

 倒れ伏したままのエックスが腕を伸ばすが、バンデロは無視して去っていく。

 

「グアアアアァァァァ!」

 

 主の逃避に合わせて、ブラックキングも戦場から脱け出そうとする。それをゼロはむざむざと見逃したりはしない。

 

『逃がすかよ!』

『待ってくれ!』

 

 バンデロとブラックキングへ光線を放とうとするが、それをやっと起き上がったエックスが押し留める。

 

『車の中に人がいるんだ!』

『何ッ!?』

 

 ゼロが攻撃をためらった隙に、バンデロとブラックキングは穴をくぐり抜けてどこかへと消えていってしまった。空中の穴が閉じ、空が元に戻る。

 

『くッ、放せ!』

 

 ゼロはエックスの手を払うと、再度銀色の鎧を纏って空に飛び立った。

 

『待てぇッ!』

 

 ゼロも空間に穴を開けて、バンデロたちを追いかけていく。

 

『「スバル……アインハルトちゃん……!」』

 

 後に残されたエックスの中で、ダイチが愕然とつぶやいた。

 

 

 

 ――スパークドールズの移送は、異星人犯罪者と怪獣の襲撃により失敗。スパークドールズが全て奪われ、更にはスバルとアインハルトがどこかへと連れさらわれてしまうという最悪の結果になってしまった。

 

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