「くっそー……ほとんど全員捕まっちまったのか……」
レイビーク星人やダダの光線によって縮小化され、半透明のベルトで拘束された状態で箱の中に閉じ込められた魔法少女たち。悪態を吐いたハリーは、首を横に向ける。
「おい、ヘンテコお嬢様。人のことを粗野だの短慮だの言ってくれたが、あんたも捕まってんじゃねーか」
「うるさいですわよ、ポンコツ不良娘」
ヴィクトーリアとコロナもまた、同じように磔にされて捕まっていた。
「わたくしたちは、大量の使い魔に囲まれて身動きが取れなくなり、仕方なく応戦しているところを背後から撃たれてしまいましたの。あの状況ではどうしようもありませんでしたわ」
「使い魔? ってことは異星人ども、どっかの魔導師と組んでるってのか?」
「いえ、仲間という様子ではありませんでしたが……。お互い牽制し合ってましたし」
ハリーとヴィクトーリアとは別に、リオ、コロナ、アインハルトが話し合う。
「あたしたちの中でまだ捕まってないのは、ヴィヴィオとミウラさんだけか……。二人は無事だといいんだけど……」
「ノーヴェさんたちは、この事態に気づいてくれてるかな……」
「ダイチさんも無事でしょうか……。まさかあんなにも大勢の敵が侵入してくるなんて……」
それぞれが危惧していると、箱の蓋のガラス窓から、レイビーク星人のボスが魔法少女たちの様子を見下ろしてきた。
『ククク、ご機嫌は如何かな? かわいらしいお嬢さんたち』
「いいわけあるかっ! オレたちを解放しやがれ! さもなきゃただじゃ済まさねーぞ!」
吠えるハリーだが、ボスは嘲笑を返すだけだった。
『ハッハッハッ! 格闘大会では上位選手でも、今のお前たちは人形と同じなのだ! 強がったところで無駄だ』
「ちっくしょう……!」
悔しさを噛み締めるハリーの隣で、エルスがボスに問いかける。
「私たちをこんな姿にして捕まえて、どうするつもりですか!」
それにボスは、次の通り答える。
『我々は人身売買を専門としているグループだ! お前たちのように外見が良く、なおかつ腕っ節も強い少女というのは高く売れる。しかも集団! これは相当な金になると、お前たちを捕らえるチャンスをずっと狙っていたのだ。この閉鎖された空間はまさに捕獲に打ってつけ。この機を逃す手はないと、行動に移したという訳だ』
「じゃあ、ウチらをどこかよその星に売っ払おうってわけなん!? そんなぁ!」
ジークリンデが悲痛な声を出したが、ボスは当然ながら同情などしない。
『嫌がったところでもう遅い! 残り二人も捕獲したら、すぐにでも撤退する。それまで、せめて最後の故郷の景色を目に焼きつけてでもおくんだな』
「はてさて、それはどうかな?」
唐突に、ボスの背後から少女の声が発せられた。レイビーク星人たちは一斉に振り返る。
『ぬッ!? 貴様は!』
そこに現れていたのは、セイクリッド・ハートとアスティオンを連れたルーテシアだった。
「わたしもインターミドルの選手だけど、本業は時空管理局嘱託魔導師のルーテシア・アルピーノ! あなたたちは未成年者略取の現行犯だねー。とりあえず、その子たちはこっちに返してもらうよ」
『ちッ、お前のような奴が紛れ込んでいたとは』
舌打ちするボスだが、特に動じた様子はなく部下たちに手振りで指示を出す。
『だが一人で何が出来るものか! 貴様も我々の商品の一つにしてくれるわ!』
多数の縮小光線銃を向けられるルーテシアだが、こちらも動揺を見せない。
「やれやれ。素直に言うこと聞くくらいなら、初めからこんなことしないか」
ぼやきながら、セイクリッド・ハートとアスティオンを自分から離れさせる。
「クリスはヴィヴィオのところに行ってあげて! ティオはわたしがご主人様を取り返すまで、安全なところまで下がってね」
「にゃっ!」
レイビーク星人たちが一斉に光線を撃ってきた! ――が、ルーテシアは軌道だけを残すほどの超スピードで難なく光線から逃れた。
『何だと!?』
「相手を小さくして無力化……食らえば確かに恐ろしいけど、時代はスピードなんだよね」
瞬く間にレイビーク星人たちとの距離を詰めたルーテシアは、魔力弾の攻撃で片っ端から敵を吹き飛ばしていく。
「キキキィィッ!!」
「このまま全員無力化させてもらうよ」
ルーテシアの動きにまるでついていけず、次々薙ぎ払われるレイビーク星人。それを見て舌打ちするボス。
『なるほど、流石にやるものだ。――が、こちらとて想定外の事態の用意がない訳ではないぞ! 出番だ、ケムール人ッ!』
ボスが呼び声を発すると、この場に新たな怪人が出現してルーテシアの前に立ちはだかった。頭頂部にチョウチンアンコウのものに似た触角を生やした、三つの眼球が円筒状の頭部に歪な位置についている異様な外見だ。
「フォフォフォフォッフォッフォーッフォ――ッフォ―――ッ!」
「っ!」
『スピードならばこいつも負けていないぞ! やれ、ケムール人!』
虚空を走り出すケムール人。ゆっくり足を動かしているように見えるのに、不思議なことにルーテシアの速度にぴったりとついてくる! ルーテシアが射撃魔法を放っても、レイビーク星人と違って回避する。
「速い……! こんな奴もいたなんて!」
「フォフォフォフォッフォッフォーッフォ――ッフォ―――ッ!」
ルーテシアを追いかけながら、ケムール人は触覚からドバァッ! と液体を放出した。
飛び散った液体の飛沫に、ルーテシアの肘が当たってしまう。
「あっ……!」
その瞬間に、ルーテシアは声もなく消失してしまった! 目を見張る魔法少女たち。
『ハハハハハ! ケムール人の消去エネルギー源は相変わらず恐ろしい威力だな。触れただけでアウトなのだからな』
「そ、そんな……ルーちゃんまで……」
助けの手が消されてしまい、コロナたちは絶望感を覚える。
一方で気を良くしたボスは、箱をケムール人に託してこの場から離れていく。
『私は残りの二人を探して捕らえてくる。お前はそれまでそいつらの見張りをしていろ。邪魔立てする奴は誰であろうと消してしまえ! さっきの小娘のようにな!』
「フォフォフォフォッフォッフォーッフォ――ッフォ―――ッ!」
引き受けたとばかりにドンと胸を叩くケムール人を残して、ボスは光線銃を抱えてこの場から立ち去っていった。
「にゃっ……!」
この一部始終を見ていたアスティオンは、こっそりどこかへと姿をくらましていた。
「シェアァァッ!」
ダイチから変身したエックスは、無重力空間の中を自在に飛行してレイビーク星人を翻弄。元々飛行能力のないレイビーク星人はエックスの動きに対応できず、狼狽えるばかり。
「デアァーッ!」
エックスは突進しながら突き出した拳でレイビーク星人を一挙に殴り飛ばした。
「キキィ――――――ッ!!」
『よし、ここの敵は倒したな』
『「エックス、急ごう! 子供たちのみんなが今どうなってるのか、心配だ。早くしないと手遅れになるかもしれない!」』
『うむ、心得た!』
魔法少女たちの行方を捜すべく飛んでいくエックスだが、その行く手に次々とレイビーク星人たちが現れ立ちはだかる。
「キキキィッ!」
『何が何でも私たちを行かせまいというつもりのようだな。いちいち相手にしていたら、エネルギーが持たないぞ』
『「ああ。ここはパワーで一気に突破だ!」』
ダイチはデバイザーにデバイスゴモラのカードをセット。
『ギャオオオオオオオオ!』
[ゴモラキャリバー、セットアップ]
モンスジャケットを装着し、ウィングロードをレイビーク星人の向こう側まで一気に伸ばす。そしてその上を走っていき、
「シャアァ―――――――ッ!」
レイビーク星人たちをボウリングよろしくはね飛ばした。
敵の陣を突破し、先に進むエックス。だがその前に、これまでとは様子の異なる者が現れる。
『む?』
ふと顔を上げた先に、箒に乗った『魔女』の格好の小さな少女がいるのだ。向こうもまた、こちらをじっと見つめ返している。
『「あの子は確か、インターミドル選手のファビア・クロゼルグ。どうしてこんなところに?」』
ダイチがつぶやいた時、ファビア・クロゼルグはエックスの視線を敵意と見て取ったか、口を開いて言った。
「ウルトラマン……何者であろうと、私の邪魔はさせない」
差し出した手の平の上には、コウモリ型の使い魔。その瞳がエックスを凝視する。
「ウルトラマンエックス――これを見て」
「?」
『「! 駄目だエックス!」』
ダイチが警告したが、遅かった。使い魔は突然巨大化し、大口を開いてエックスを呑み込もうと飛びかかってくる!
「フッ!」
――が、エックスはクローで使い魔の口を受け止めた。
「!?」
「デェェェェェイッ!」
そのまま捕らえ返した使い魔を振り回し、壁に叩きつけた。使い魔はショックで目を回し、元の大きさに戻っていく。
エックスはファビアに視線を戻す。ファビアは一瞬ビクリと震えたが、術が通用しなかったことで分が悪いと見たか、あっという間に横道にそれて飛び去っていく。その後を使い魔が追いかけていった。
逃走しながら彼女は、こうつぶやいた。
「……ウルトラマンエックスが名前じゃないの?」
一方、ダイチはエックスの中で安堵の息を吐く。
『「危なかった……。さっきのは相手の真名を呼んで術をかける、古典魔術の一種だよ。嵌まってたらどうなってたことか」』
『そうだったか……。ウルトラマンエックスは私の本名ではないから、術が通らなかったのだな』
ファビアのことは気がかりではあるが、今は子供たちの安全の確認が急務だ。エックスはファビアとは別方向にウィングロードを伸ばし、走っていく。
『「……そういえば、エックスの本名は何て言うの?」』
『教えてもいいが、ミッド人には発音できないぞ』
走行しながら、ダイチとエックスはそう言葉を交わした。
(♪Theme of GUTS(M-23))
「たぁぁぁっ!」
「おりゃあっ!」
「キキキィ―――――ッ!!」
エックスとは別の場所では、スバルとノーヴェの姉妹コンビがレイビーク星人の軍団を相手に大立ち回りを演じていた。入り口の隔絶を力ずくで突破してから、機動力に優れる二人がはやてから先行して迷宮内を突き進み、子供たちを捜索しながら異星人たちと戦っているのだ。
ウィングロードとエアライナーで宙を自在に駆け回り、ぴったりと息の合った連携で一分の隙も見せない二人の連撃を前に、所詮雑兵のレイビーク星人たちは相手にならず、次々吹っ飛ばされていく。
「ダ―――ダ―――!」
そこに現れたのは神出鬼没のダダ。出現してすぐにノーヴェに向けて縮小光線を発射する。
「ノーヴェっ!」
背を向けているノーヴェに代わり、スバルが回り込んで障壁を展開。光線はそれに阻まれて二人まで届かない。
「ダダッ!?」
驚くダダ。スバルたちは敵が特殊な光線を使用していることを悟ると、こちらも特殊カートリッジを使用したのだ。
ラボチーム謹製の、あらゆる波長の光線を通さない特製プロテクション・カートリッジ。如何なる効果があろうとも破壊力のない光線では、これの前に全て封殺される。
「ダ―――ダ―――――!」
正面からでは攻撃が通用しないと見て取ったダダは、テレポートと顔面の取り換えを駆使して撹乱を図る。
「三人いる!?」
「いや、よく見ろ。この状況で三人同時に現れない理由がねぇ! 顔を変えてるだけのまやかしだ!」
しかし鋭い洞察眼を見せたノーヴェにタネを見破られてしまった。落ち着きを取り戻した二人は、テレポートした直後を狙ってすかさず回し飛び膝蹴りを仕掛ける!
「ダブル・リボルバースパイクっ!」
「ダダァ――――――ッ!!」
二人の膝が顔にめり込んだダダは、迷宮の奥深くまで綺麗に吹っ飛んでいった。
ダダとレイビーク星人を退けたスバルたちは、そのまま先へと突き進んでいった。
並み居る敵を蹴散らしながら、エックスはとうとう魔法少女たちが閉じ込められている箱のある部屋にまでたどり着いた。
『キイイイイイイイイ!』
[エレキングミラージュ、セットアップ]
「シェアァッ!」
ジャケットを取り替えたエックスが、箱を見張るケムール人へと颯爽と飛びかかっていく。
「フォフォフォフォッフォッフォーッフォ――ッフォ―――ッ!」
だがケムール人は高速移動でエックスの飛びかかりをかわし、消去エネルギー源を発して反撃。エックスまで消されてしまう!
しかし、液体を浴びたエックスの姿がかき消えた。幻影だったのだ。
「フォオッ!?」
ケムール人が動揺したところに、本体のエックスが飛び出してきて銃口を向ける。
『「ヴァリアブル電撃波!」』
「シェエアァッ!」
二丁拳銃からうなる電撃波がケムール人に直撃した!
「フォ―――――――――――――ッ!!」
感電したケムール人はポーンッ! とロケットのようにぶっ飛んでいった。
「にゃっ!」
エックスの肩に乗っているアスティオンがひと声鳴いた。アスティオンはエックスをここへ導くとともに、ケムール人の情報を事前に伝えていたのだ。
ケムール人がどこかへ消えるとともに、ルーテシアが虚空から放り出されて帰ってくる。
「あたっ! ここは元の場所……?」
頭を振りながら身体を起こすルーテシアは、ジャケットを解除して箱を抱え上げたエックスの姿を目にしてギョッと驚く。
「ウルトラマンエックス! えっ!? その大きさは……!?」
エックスは何も答えず、箱を持って無限書庫の入り口へと向かう。ルーテシアは慌ててその背中を追いかけていった。
辺りを索敵しながらも、迅速に先へ進んでいくスバルとノーヴェ。と、いきなりスバルが停止してつぶやいた。
「……ウルトラマンエックスだ……」
「へっ!?」
ノーヴェ、咄嗟に上を見上げたが、そこにあるのは天井ばかり。
視線を前に戻すと――その先から、箱を抱えたエックスがアスティオン、ルーテシアを連れてこちらへと飛んでくるところだった。
ノーヴェは思わず自分の目をこすった。スバルもぽかんと呆けている。
「フッ!」
エックスはやはり何も答えず、スバルに箱とアスティオンを託した。反射的に受け取るスバル。
「あ、ありがとう、エックス……」
「お、お嬢……これどういうこと?」
「さぁ、私にもよくわかんない……」
呆気にとられている三人だが、エックスが顎をしゃくってここを離れるようジェスチャーすると、我に返って少女たちを入り口まで運んでいく。
『むっ!』
スバルたちを逃がしてから、エックスは背後に気配を感じて振り向く。そこに現れたのは、レイビーク星人のボス。
『貴様、余計なことをぉ……!』
ヴィヴィオとミウラを捕らえに行ったボスだが、異常を察知して舞い戻ってきたのだ。
魔法少女たちを取り返されて怒り心頭のボスは、光線銃を早撃ちしてエックスに浴びせかける。
「ウッ!?」
途端に縮小されたエックスは、銃の内部へと吸い込まれてしまった!
「ムッ! トワァァァッ!」
だがウルトラマンは伸縮自在なのだ。エックスが力を込めて右腕を振り上げると、急激に巨大化して銃を内側から破壊! 元の大きさまで戻る。
『ぎゃああッ! おのれぇぇぇぇッ!』
光線銃を失ったボスはますます激昂して、エックスに殴りかかってくる。
「テヤァッ!」
立ち向かうエックスだが、流石はボスだけあって一兵士とは異なり、格闘技能はなかなかのもの。エックスと互角の勝負を見せ、エックスを手の平で突き飛ばす。
『カァァァッ!』
更にボスは赤い両眼から針状の光線を放ってきた! エックスは前転して回避するが、執拗に狙ってくる。
この時、ダイチはデバイスベムスターのカードをセットする。
『ギアァッ! ギギギィッ!』
[ベムラーダ、セットアップ]
相手が光線を撃ってきた瞬間、エックスは槍の盾でそれを受け止めて吸収。穂先をボスに向けて光線を撃ち返した。
「イィッ! シャア―――――!」
『ぐぎゃああああッ! くそ、覚えてろよぉッ!』
自分の光線を食らったボスは、最早ここまでと見たか、テレポート装置でこの場から離脱した。
それを見たダイチ、ジャケットを取り替える。
『ピポポポポポ……』
[ゼットンケイオン、セットアップ]
巻き返すのは不可能と判断したレイビーク星人のボスは逃走を図っていた。ドーム型の円盤に乗り込むと、部下たちを見捨てて自分だけで無限書庫、管理局本部から脱出する。
円盤は次元の間の超空間を、全速力で飛んで逃げていく。その中でボスが吠える。
『このままでは済まさんぞ! 戦力を整えたらまた戻ってきて、今度こそ娘どもを手に入れてやるッ!』
ボスはまだ諦めておらず、エックスたちに復讐するつもりであった。
だが――その時に円盤自体を大きな揺れが襲う。
『な、何ぃッ!?』
モニターを見れば、円盤の上に巨大化したエックスが仁王立ちしている。
『何だとぉぉぉぉぉ――――――――――!?』
このまま魔法少女拉致を狙うグループの主犯を逃してはならない。エックスはゼットンケイオンのテレポート能力で円盤に追いついてきたのだ。
「シェアアァァァァ―――――ッ!!」
エックスは円盤に貫手を突き刺し、装甲を突き破った!
その一撃により、円盤は爆散!
『ギィィィヤアアアアァァァァァァァァァ―――――――――――――――ッッ!!!』
レイビーク星人のボスの絶叫が超空間にこだました。
ウルトラマンエックスの大活躍により、魔法少女誘拐は未然に防がれた。レイビーク星人はボスから手下に至るまで一網打尽にされたが、ダダとケムール人は恐ろしい逃げ足の速さを見せ、追跡をまいてしまった。もっとも、主犯を捕らえた以上はもうヴィヴィオたちを狙うことはあるまい。
異星人たちの犯行が、古代ベルカ王族の血脈が目的化と一時は疑われたが、レイビーク星人はそのことに関して何も存じていなかった。ただ、インターミドルの選手だからというだけで付け狙っていたようだ。これでヴィヴィオらの出生が異星人に広まっていないことが明らかとなり、スバルたちはほっと胸を撫で下ろした。
もう一つ、ファビアの方はエックスが戦っている間に、ヴィヴィオを中心として解決がされていた。彼女もまた古代ベルカ王族の関係者の子孫であり、先祖の復讐を図ってヴィヴィオたちを狙ったということなのだが、そのことについては色々と錯綜しているものがあるようで、根本的な解決には諸王時代の真実が必要となるようであった。
その真実を紐解くガギ、ではなく鍵となる『エレミアの手記』なのだが――。
「じゃーん! 多分これが、お探しの『エレミアの手記』だと思いますっ!」
何とリオが発見していた。事件がひと段落を見せた頃合いに、偶然見つけたのだという。
何はともあれ早速手記を読み出すヴィヴィオたち。その様子を、異星人犯罪者たちの連行のために場を離れるノーヴェが一瞥し、一瞬顔をしかめた。
「ん? ノーヴェ、どうかしたの?」
それに気がついたスバルとダイチが振り返る。
「いや……ちょっと、アインハルトのことが気がかりでさ」
ノーヴェの視線はアインハルトに注がれていた。
「あいつ、ジークリンデとの試合で、過去にこだわるあまりに突っ走っちまったことを気に病んでるんだよ。別に何も悪いことじゃねぇけど、あいつああいう性格だからな……。根を詰めて、ヴィヴィオたちから距離を取ろうとすんじゃないかって心配なんだ」
アインハルトのことを案じて目を伏せるノーヴェに、ダイチは告げた。
「――多分、大丈夫だと思うよ。何たって、ヴィヴィオちゃんたちがいるんだから」
「ダイチ?」
「ヴィヴィオちゃんたちは優しくて、仲間想いで、何より強い子たちだ。アインハルトちゃんだって同じ。だからどんな経緯があったとしても、ヴィヴィオちゃんたちが歩み寄った時にはその想いに応えてくれるはず。俺たちはそれを信じて、見守ってるだけで十分さ」
ダイチの言にスバルがうなずく。
「そうそう。ノーヴェはあの子たちの指導者でしょ? ノーヴェが育てた子たちは、とっても立派な子たちだよ。だから他ならぬノーヴェが、あの子たちのことを誰よりも信じてあげなよ」
二人の言葉で、ノーヴェの表情が明るいものとなる。
「――そうだよな。あたしが信じないで、誰が信じるってんだ。……ありがとな、ダイチ、スバル」
「ふふっ、お構いなく」
ノーヴェや、手記に熱心なヴィヴィオたちをながめ、ダイチたちは微笑えんだ。
……管理局の手から逃れたダダとケムール人は、ある暗闇に覆われた空間にいた。
『お馬鹿たちッ! このババルウ様のお断りもなしに、勝手に別のグループに協力するなど勝手が過ぎるねぇ! 二度とこんな真似しないよう、しっかり反省なさいッ!』
二人を叱っているのは、ギラギラと光る悪趣味なスーツを纏ったケムール人似の一つ目の怪人。その名はゼットン星人。あのゼットンの出生地の民族である。
ゼットン星人が「ババルウ様」と呼んだのは、鬼のような二本角を生やした鈍い金色の怪人。そのままババルウ星人だ。
『ああ、全く! 俺たちの本来の目的を忘れて小遣い稼ぎとは、いい身分じゃねぇか! 今度やったら、ただじゃあ済まさないからな!』
散々怒られて、ダダとケムール人はしょんぼりと肩を落とした。
説教をしているババルウ星人の後ろでは、燕尾服にシルクハットの男が幾枚の写真を手にながめている。それは――ヴィヴィオやアインハルトの写真であった。
「この娘たちが、レイビーク星人の狙っていた標的ですか。確かヤプールの配下も目をつけてましたね。ふむ……」
何やら考え込んで顎を撫でる黒ずくめの男に、ババルウ星人が振り返る。
『おい、さっきから何やってるんだ?』
「いえ、レイビーク星人の標的ですが、この娘たちは――」
言いかけたところで、黒ずくめの男は思い直し、写真を収めて隠した。
「いえ、何でもありません。こちらの私事です」
『何だぁ? おかしな奴だな。まぁそんなことより、例の奴の居場所は特定できたか?』
ババルウ星人の問いかけに、黒い男はこう答える。
「詳細なところまではまだ。しかし、この星に逃げ込んだことだけは確実ですよ」
それを聞いたババルウ星人は上機嫌に肩を揺する。
『そうかそうか! 今度こそ奴を捕まえてやるぞ! 何せ、あれはこの星のチンケな人間なんかよりもずっと価値があるからなぁ! 必ず俺たちのものにしてやる! サメクジラッ!!』
豪語して高笑いするババルウ星人の背中に、黒い男は冷笑を向けた。
「ふふ……果たしてそうですかねぇ……」
『ダイチの怪獣ラボ!』
ダイチ「今回はスラン星人だ!」
ダイチ「スラン星人は『ウルトラマンマックス』第四話「無限の侵略者」に登場した、マックス初の宇宙人! 環境破壊を口実に、地球を侵略しようと狙ったんだ!」
エックス『一番の特徴は高速移動能力。残像が分身として残るほどで、マックスもてこずらされたぞ』
ダイチ「『ウルトラマンX』ではマックスへの復讐のために、ゼットンを引き連れて暗躍を進めた。その罠にエックスも一時は陥ってしまったんだ!」
エックス『この時は事前情報なしのサプライズ出演だった。正体を現す段階で驚いた人も多いだろう』
ダイチ&エックス「『次回も見てくれよな!」』
素性を隠し、ミッドで暮らしていた三人の宇宙人。バルキー、イカルス、ナックル。彼らの下に悪の集団、暗黒星団が迫り来る。お互いの意地とプライドを懸けて、勝負するその方法は……えっ? ラグビー!? 次回、『われら星雲!』。