光輝巨人リリカルなのはX   作:焼き鮭

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われら星雲!(B)

 

 異星人間の争いを、スポーツという平和的な手段で解決することはXioに歓迎された。そういうことで、今回のラグビー対決はXioの全面協力及び監視の元に決行されることとなったのであった。

 そして三日後の勝負のために、星雲荘の面々はイサム指導の特訓を行っている真っ最中だった。

 

「えぇーいっ!」

 

 公園の一画を借りての特訓中、ナックル星人がタックルバッグへ目掛けて行ったタックルをイサムがダメ出しする。

 

「腰が入ってません! もっと腰の部分に力を入れて! それから、ぶつかっていくのを恐がってちゃダメです! 気持ちを前に出していって下さい!」

「は、はいコーチ!」

 

 腐っても大学ラグビーの元エース選手。その指導は厳しく、人間より断然体力があるはずの異星人三人もひぃひぃ息を切らすほどだった。

 

「こ、これはベリーハードだぜぇ……」

「でも、根を上げてはいられないんじゃなイカ」

「ええ。あいつらには負けられないわ……!」

 

 苦しみながらも特訓を続行する三人。ジークリンデもまた特訓を受けているのだが、途中でイサムにあることを尋ねかけた。

 

「そういえばイサ兄ぃ、残りの選手十人のことだけど……心当たりある?」

「そ、それは……」

 

 途端にばつが悪そうになるイサム。

 

「……やっぱり、イサ兄ぃのいたラグビー部に助っ人は頼められへん?」

 

 念のために問いかけると、イサムはコクリとうなずいた。

 

「勝手に辞めて迷惑掛けた手前、そんな虫のいいことは頼めないよ……」

「そっか……」

「ああ、でも、そしたら選手はどうしよう。あと三日で、残り十人もどこから……」

 

 イサムが困り果てたその時、彼らの元にザッと大勢の足音が。

 

「それなら心配いりません! わたしたちが助太刀致します!」

「! 君たちは……!」

 

 振り返るとそこにいたのは、ヴィヴィオ、アインハルト、リオ、コロナ、ミウラ、ミカヤ、エルス、ハリー、リンダ、ルカ、ミア、そしてヴィクトーリアの計12名。

 

「まぁ~、かわいらしい女の子たちがこんなに! ジークちゃんのお友達ねぇ!」

 

 彼女らの存在にナックル星人らも気づいた。ヴィヴィオが代表して、彼らに告げる。

 

「話はダイチさんから聞いてます。ジークさんの同居人さんのペットを守るために、わたしたちがお力になります!」

「おぉー! ミーのジョリーのために、こんなたくさん集まってくれるなんて~! サンキューベリーマーッチ!」

「とっても嬉しいじゃなイカ~!」

 

 感激して声を張り上げるバルキー星人とイカルス星人。だがイサムは若干気が引けている様子。

 

「本当にいいのかい……? まだインターミドルに出場中の子も何人かいるのに」

 

 三日間だけとはいえ、未だ試合を控えている人たちの時間を割いてもらうのは心苦しいところ。それにヴィクトーリアが告げる。

 

「ご心配には及びませんわ。わたくしたちには優秀なマネージャーもいますもの。スケジュール調整には何の問題もありませんわ」

「はい、お任せ下さい!」

 

 キラリと眼鏡を光らせるエルス。また、ヴィクトーリアの従者のエドガーも彼女の後方でペコリと一礼した。

 

「第一、ジークだってその出場中の一人だしな」

 

 指摘するハリー。そのジークリンデは、集ってくれた友人たちに向けて礼を述べる。

 

「みんな……ほんとにありがとうっ!」

「へへっ、お礼は試合後まで取っておけよ。それより、早速オレたちにもラグビー教えてくれ!」

「この勝負、絶対勝ちましょう!」

 

 ヴィヴィオたちが見せた熱意に、イサムも心を動かされた。

 

「わかった! それじゃあ君たちも特訓に混ざってくれ!」

「はーいっ!」

 

(♪MAC出撃せよ!)

 

 かくして、試合のメンバーはそろった。一同は三日後までの短い時間に出来ることをなるべく全部やれるように、熱心に特訓を行う。

 ある時はパス回し。

 

「よーし、行くぜー!」

「リーダー! だからボールは前に投げちゃいけないんですって!」

 

 ある時はタックル。

 

「断空の原理を応用すれば、何者も止められないタックルが出来上がるはずです」

「そ、それは今からじゃみんなが習得するのは無理があるんじゃないでしょうか」

 

 ある時は相手をかわすステップ。

 

「ラグビーじゃ、相手を避けて走ることも重要なんですね」

「それは私たちに向いていそうだね、ミウラちゃん」

 

 他にも様々。ヴィヴィオたちはそれらを全て、短い時間の間ながらしっかり積み重ねていく。

 

「せいうーん! ファイッ!」

「ファイっ!」

「せいうーん! ファイっ!!

「ファイっ!」

 

 夕焼けに染まる空の下、掛け声を発しながら沈みゆく太陽へと駆けていくイサムたち。それをながめながらヤカンの水を飲んでいたジークリンデに、ヴィクトーリアが話しかける。

 

「あの方たちが、ジーク、あなたがお世話になっている同居者ですのね」

「ヴィクター」

「異星人だったなんて驚きましたけど……それくらい普通でない人たちでないと、あなたが一緒に暮らそうなんて思わないのかもしれませんわね」

 

 ふぅ、とため息を吐くヴィクトーリア。

 

「シェアハウスで暮らし始めた、と連絡をもらった時は本当に驚きましたのよ。一体どういう風の吹き回しか、とね」

「あはは、そうやろなぁ」

 

 自分のことだが、同意して苦笑するジークリンデ。

 彼女は、星雲荘の三人と出会った時のことを思い返した……。

 

 

 

 まず初めに出会ったのはナクリ――ナックル星人だった。

 戦闘に長けたエレミア一族の記憶を受け継いだ子孫であるジークリンデは、圧倒的な格闘技能を生まれながらにして持つ代わりに、一度スイッチが入れば見境なく暴走する危険を抱えている。これが原因で、ミカヤの手を粉砕するなど周りの人を危ない目に遭わせることもあった。そのためもあり、かつての彼女は人のいない場所に居を構えながら流転する風来坊生活を送っていたのだが……そんな中で、ナクリと偶然出会ったのである。

 彼はジークリンデの生活を知ると、こう言ったのだった。

 

『ダメよぉ~、女の子が野宿なんかしちゃ。お肌の健康に悪いわぁ! 女の子は、自分を大切にしなくっちゃ! そうだ、ウチに来ないかしら? ワタシの家、シェアハウスなのよ!』

 

 もちろん遠慮したが、ナクリは押しが強く、半ば強引に星雲荘に住まうこととなってしまった。初めは機を見て去ろうかと思っていたが……すぐに同居の三人が異星人であることを知った。

 初めこそ驚いたものの、彼らに邪気はなく、ミッドチルダで静かに平和に暮らしたいだけだとすぐに分かった。が、お人好しの彼らの経済力は自分以上に低く、その生活は相当不安定。危なっかしくて見ていられず、つい手助けしてズルズル留まる日々が続いていた。

 しかし、自分のことを考えればいつまでもこうしていられない。それで意を決し、本当のことを打ち明けることにした。これを知れば、彼らも自分から距離を置こうとするだろう、と……。

 だが意外にも、三人は自分の危険性すら受け入れた。

 

『なぁんだ、そんなことだったの。大丈夫よ、ワタシたちもこう見えて、結構な問題児だったんだから。だから、お互いの素性や身の上とかは気にしないの』

『人間、生きてれば他人に迷惑かけることなんていくらでもあるじゃなイカ。いちいち気に病むのはイカんよ。何かあっても、その時はその時じゃなイカ』

『そうそう! そもそも、その程度は宇宙じゃよくあることだぜ!』

 

 ハルキが「宇宙」と口を滑らしたことで他二人は慌てていたが……ジークリンデは三人が、見ず知らずも同然だった自分をこうまで受け入れてくれることが……嬉しかった。

 気がついた頃には、すっかりと星雲荘に馴染んでいた。家賃の支払いのために、貯金も始めた。優しいけどどこか頼りない三人には、自分がついてやらないと駄目だという思いから。彼らの生活を守りたいがために。――彼らと一緒の生活をしたいがために。

 いつまで、こんな生活が出来るのかは分からない。もしかしたら、自分が彼らを傷つけてしまう時が来てしまうのかもしれない。でも、それでも、今この時だけは――。

 

 

 

 そんなこんなで、試合当日がやってきた。

 スタジアム一個を貸し切り、万一の事態に備えてXioが監視する中、ラグビー対決が行われようとしている。

 出場するのは星雲荘の五人に合わせ、コロナとエルスを除いた十人。その二人はマネージャー兼応援としてベンチで試合を見守っている。

 対峙する暗黒星団チームは、ババルウ星人、ゼットン星人、ダダ、ケムール人、他は全員レイビーク星人だ。

 

『ユニオンルールの異星人ラグビー。暗黒星団ババルウチームと、ミッド人混成の星雲チーム、試合開始の時が迫っております』

 

 実況席には実況、解説が入っており、かなり本格的だ。

 

『この試合の勝者には、宇宙生物サメクジラが与えられます』

 

 ジョリーは観客席のダイチが膝に乗せている。

 ババルウ星人は居並んだ星雲チームのメンバーを見渡して嘲笑を浮かべた。

 

『はははッ! 誰を連れてくるかと思えば、小娘ばかりじゃねぇか! こりゃ勝負は決まったも同然だな!』

 

 馬鹿にしてくるババルウ星人にハリーが言い返す。

 

「オレたちをなめんじゃねーぞ! 無限書庫での分、キチッとお返ししてやるから覚悟しな!」

 

 しかしババルウ星人は下に見る態度を崩さない。

 

『ふッ……そっちこそ、宇宙ラグビーの恐ろしさを思い知らせてやるぜ』

 

 ババルウ星人のいやに余裕のある態度に、ヴィヴィオたちは警戒を覚える。

 そんな中、ジークリンデがイサムの袖を引いた。

 

「イサ兄ぃ、あれ見て」

「えっ?」

 

 ジークリンデが指した先は、スタジアムの出入り口。

 そこに、イサムの大学ラグビー部のチームメイトや監督が集まっていた。彼らは緊張した面持ちでこちらを見つめている。

 

「きっと、イサ兄ぃのことが心配でみんな駆けつけてくれたんよ」

「みんな……!」

 

 勝負から逃げた挙句、勝手な振る舞いをしたのに。それでも仲間たちが自分の試合を見てくれていると知り、イサムの心に一層熱い気持ちが宿った。

 

 

 

「フェイトちゃん、いよいよ試合が始まるね」

「うん、なのは」

 

 観客席にはなのはとフェイトの姿もあった。もちろん、愛娘のヴィヴィオの試合を見守るためだ。

 なのはは異星人間の勝負について語る。

 

「暗黒星団チームは犯罪者だけれど、スポーツで平和的に争い事を解決しようというのは立派だね。お互い、いい勝負をしてくれるといいな」

「うん……」

 

 話ながら歩いていたら、フェイトが席に着いている人に膝をぶつけた。

 

「あっ、ご、ごめんなさい」

「いえ、お構いなく。麗しいお嬢さん」

 

 相手はやんわりと返した。日差しが照りつける中、シルクハットに黒い燕尾服という格好だ。フェイトはこの人物に見覚えがなかった。万が一の時のために、関係者以外の観戦は断られているはずだが……。

 

「すみませんが、あなたはどの選手の関係者でしょうか?」

 

 と尋ねるフェイト。少女たちの誰かの親族だろうか、と思ったが、シルクハットの男性はこう答える。

 

「私は異星人の一人の友人でしてね。今回の試合の行方が気になりまして、見届けに来たのです」

「そうでしたか」

 

 異星人、ということは星雲荘の三人の誰かだろう、と判断するフェイトだった。

 

「フェイトちゃーん、こっちこっち」

 

 話していたら、先に席に着いたなのはが手招きしてきた。

 

「あっ、今行く。それじゃあ、これで失礼します」

 

 ペコリと一礼して男性から離れるフェイト。しかし彼女は気がついていなかった。男性の視線は異星人の方ではなく、ヴィヴィオやアインハルトらの方に注がれていることに。

 

「ふふ……」

 

 

 

 いよいよ試合開始の時間がやってきた。アクマニヤ星人レフリーがピーッ! とホイッスルを鳴らして合図を出す。

 試合はイサムのキックから始まった。遠く飛んでいくボールは、ゼットン星人がキャッチ。それをババルウ星人、レイビーク星人たちとパスでつないでいき、ケムール人の手に渡る。

 

「フォフォフォフォッフォッフォーッフォ――ッフォ―――ッ!」

 

 するとケムール人が、残像が残るほどの超スピードで駆け出した!

 

「は、速いっ!」

 

 リオやルカ、リンダが守備しようとするが、ケムール人の速度についていけず翻弄されるばかり。ケムール人はバルキー星人の前でボールを突き出して挑発までするが、バルキー星人が手を伸ばした時にはもう星雲チームのゴールラインを越えてボールをタッチダウンしていた。

 

『ケムール人がトライに成功! 暗黒星団5点先取!』

「くぅっ、先に点取られてもうたか……!」

「まだまだ! 試合は始まったばかりだ!」

 

 悔しがるジークリンデ。イサムは皆に励ましの言葉を掛けたが……。

 

『はぁッ!』

 

 トライに続くコンバージョンキックで、ババルウ星人がボールをゴールポストの間に蹴り入れ、2点が追加された。

 

「くそーっ!」

『ラクショー』

 

 頭を抱えるバルキー星人。一方でババルウ星人は格好つけて挑発。星雲チームはますます悔しさを募らせる。

 そして試合は続き、暗黒星団のペナルティによるスクラム。イサムが選手で出来たトンネルの間にボールを投げ入れる。

 

「せぇぇぇぇいっ!」

 

 アインハルト、ハリー、ヴィクトーリアらのパワーで相手側を押し返し、回り込んだイサムがボールを拾い上げた。だがそこにケムール人がボールを奪いに走ってくる。

 

『パスパスッ!』

「バルキーさんっ!」

 

 バルキー星人が呼びかけるので、イサムはケムール人がタックルしてくる前にボールを投げ渡した。

 

『マイボール!』

 

 しかしキャッチしたバルキー星人は、自陣のゴールへと駆け出す!

 

「おい!? どっちに走ってんだよ!」

 

 唖然とする星雲チーム。その時、イサムの脇を『バルキー星人』が駆け抜けて『バルキー星人』を追いかけていった。

 

「そいつはミーじゃねぇーっ!」

『変身解除ーッ!』

 

 ボールを抱えている方のバルキー星人の姿が変わった。ババルウ星人の変身だったのだ。

 

「ずるいじゃなイカ! 変身能力を使うなんてー!」

 

 イカルス星人が非難したが、ババルウ星人は構わずタッチダウン。

 

『変身が禁止なんて、ルールブックには書いてないぜぇ!』

「ルール以前の問題ですわ!」

「おいレフリー! あれいいのかよっ!」

 

 ヴィクトーリアが怒り、ハリーがアクマニヤ星人へ抗議。が、アクマニヤ星人はそれを却下。

 

『ハッハッハッ! 試合じゃレフリーが絶対だぜ!』

「ぬぅぅ~……!」

 

 得意げに勝ち誇るババルウ星人に、星雲チームは納得のいかない様子。

 

「……何だか、様子が変だね……」

「うん……」

 

 この一部始終を見ていたなのはとフェイトが表情を曇らせた。

 その後も星雲チームは苦戦の連続。ナックル星人がゼットン星人のタックルを食らって倒され、ボールを奪ったゼットン星人がそのままトライ。

 

『フゥーッ!』

 

 イサムがゴール目掛け突っ走るも、レイビーク星人たちに飛びかかられてトライに失敗。

 

「くぅっ……!」

 

 ボールがダダに回ると、ダダはテレポートの連発で星雲チームを翻弄し、テレポートでタッチダウン。

 

「ダッダッダッダッ……!」

「レフリー! テレポートもありなのかよ!」

 

 ハリーがまた抗議したが、アクマニヤ星人はやはり受けつけなかった。

 

『はッ! 弱すぎて話にならねーな!』

 

 またもトライを決めたババルウ星人が露骨に挑発してくるのを、星雲チームは悔しさを噛み締めて聞いているしかなかった。

 

「ワタルさん……!」

 

 星雲チームの大苦戦に、ダイチは不安げにワタルに顔を向けたが、ワタルも難しい顔で腕を組むだけだった。

 そうこうして試合開始から40分が経過。ホイッスルが鳴り響く。

 

『前半戦が終了。試合は51‐0。チーム星雲は暗黒星団に大差をつけられてます!』

 

 一点も入れられることが出来ず、チーム星雲は苦い表情。

 

「くっそー……やっぱ、ストライクアーツと同じようにはいかねーぜ……!」

「付け焼き刃のあたしたちじゃ、どうしようもないのかな……」

 

 リオを始めとして、チームの間に不安が広がる。

 だが、そこにイサムの激が飛んだ。

 

「諦めるな! みんななら大丈夫だ! 特訓を思い出すんだ!」

 

 それを受けて、ジークリンデも仲間に呼びかける。

 

「試合はまだ半分あるんよ! 星雲、ファイトやでっ!」

「! 星雲、ファイトーっ!!」

 

 二人の呼びかけにより、チーム全体に気力が戻る。そして迎える後半戦。

 

『弾丸ババルウキーック!』

 

 ババルウ星人のキックしたボールはまさしく弾丸のように飛び、ナックル星人をはね飛ばす!

 

「きゃあーっ!!」

「ナクリんっ!」

 

 ナックル星人は悶絶して倒れたが、ボールはどうにか止められた。それをキャッチしたバルキー星人。

 だが……走るバルキー星人に、ケムール人が激突してきた。

 

「あいたーっ!」

 

 更に倒れ込んだバルキー星人の周りにレイビーク星人たちが集まり、何と殴る蹴るの暴行を加え出した!

 

「ギャーっ!」

「ハルキんっ!?」

「やめろぉっ!」

 

 慌てて止めに走るハリーたち。イサムはアクマニヤ星人へ叫ぶ。

 

「レフリー! いくら何でもこれは反則だろ!!」

 

 しかし、アクマニヤ星人はわざとらしくそっぽを向いて無視した!

 

「あぁっ!?」

『暗黒星団の明らかな反則! ですが……レフリーは何も見ていないのか!?』

 

 実況も叫ぶ。試合を見守る観客たちも一斉に騒然となった。

 

「そういうことかよ……! 何が宇宙ラグビーだ! 汚ねー手を使いやがって!」

 

 買収の確信を得たハリーが怒り心頭し、暗黒星団に突っかかろうとするのをヴィクトーリアが制止する。

 

「おやめなさい、不良娘! 退場にでもなったら余計に相手の思うつぼですわよ!」

「けど……!」

 

 ボールはどうにかイカルス星人が拾った。必死にゴールへと走っていくが、

 

『ババルウビームッ!』

「イカーっ!!」

「イカリーんっ!」

 

 背後からババルウ星人に光線で撃たれ、ボールを投げ出して転倒した。

 

「いい加減にしろーっ! 卑怯だぞっ!」

「みんなに、こんなひどいことして……!」

 

 リオやジークリンデらも激怒する反則の数々。が……一番怒りを爆発させたのは、

 

「俺の仲間に……汚い真似は許さぁ―――――んっ!!」

「イサ兄ぃ……!?」

 

 イサムは烈火の勢いで突撃。その正面からゼットン星人、ダダ、ケムール人が向かってくるが……イサムはスピードを落とさない。むしろ加速した!

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

『あああぁぁッ!?』

 

 イサムのタックルを食らって、ゼットン星人たちはボウリングのピンよろしくはね飛ばされた!

 

「だぁぁぁっ!」

 

 そしてゴールポストを抜け、トライ!

 

「イサ兄ぃ! やった!」

「イサム! イサム!」

 

 興奮するジークリンデとワタル。遂に星雲チームに得点が入ったのだ。

 

「やったぁーっ!!」

 

 大歓喜する魔法少女たち。一方で、暗黒星団は愕然としている。

 

『なッ、マジか……!』

 

 ババルウ星人を始めとして明らかにたじろいでいる。それで星雲チームはますます活気づいた。

 

「見ろ、あいつらビビってるぜ!」

「流れがこっちに傾き始めましたね!」

 

 確信するハリーとミウラ。実際、ここから星雲チームの猛反撃が開始された。

 

「うらあぁぁぁぁ―――――――っ!」

「トライっ!」

 

 ハリー、アインハルト、ヴィクトーリア、そしてジークリンデのパワー型選手たちは暗黒星団の防御など寄せつけずに次々トライ成功。ミカヤとミウラも相手選手をことごとくかわし、タッチダウンを決める。異星人三人もぴったり息の合ったパスで、暗黒星団を翻弄し返す。

 スタジアムの掲示板に、星雲側のスコアがどんどん加算されていく。

 

『チーム星雲、まさに怒濤の反撃! 得点差を縮めています!』

 

 反対に暗黒星団の攻撃は、超反応を見せるヴィヴィオを中心とした守備に全てさえぎられて、得点を入れられない。

 素人ばかりのチーム星雲であったが、この試合の中でコツを学び、急速に成長することで暗黒星団との力量差を覆していったのだ。

 そうして試合終了間際には、得点はとうとう51‐50の一点差にまでなった。

 ジークリンデが決めたトライのコンバージョンキックを務めるのは、イサムだ。

 

『このゴールキックが入れば、チーム星雲の逆転勝利となります』

 

 イサムの放ったキックは、見事クロスバーを飛び越えた。

 

『試合終了! ノーサイドでーす!』

 

 2点追加で51‐52。チーム星雲の逆転だ!

 

「やったぁぁぁぁぁぁ――――――――――――っ!!」

 

 チーム星雲は全員集まって円陣を組み、跳びはねながら勝利を喜ぶ。更にイサムのチームメイトたちも駆け寄ってきて、その輪に混ざった。

 

『ま、負けた……。この伝説の八番が、あんな素人どもに……』

 

 一方の暗黒星団は力尽きて死屍累々のありさまだ。ババルウ星人が膝を突いていると、イサムが彼に手を差し出す。

 

『何のつもりだ……』

「試合が終わればノーサイドだ」

 

 と握手を求めるイサムだったが……ババルウ星人はその手を払いのけた!

 

『ノーサイドだと!? 宇宙に右サイドも左サイドも上も下もないんだよッ! なめやがってッ! 暗黒星団の恐ろしさ、思い知るがいいーッ!!』

 

 ババルウ星人の脇にゼットン星人、ダダ、ケムール人が集まり……巨大化を行った!

 

「!?」

『サメクジラを寄越せぇぇぇぇーッ!』

 

 逆上して実力行使に出るババルウ星人たち。チーム星雲や観客たちは慌てて避難に走る。

 

「大変です! あなたも早く避難を……!」

 

 フェイトは先ほどの男性を逃がそうとしたが……そちらを見やると、無人の席があるだけだった。

 

「あれ……?」

 

 まるで初めから誰もいなかったよう。フェイトは思わず首をひねった。

 最初の取り決めを無視して暴れ出すババルウ星人たちだが、その凶行をダイチとエックスが見逃すはずがない。

 

「エックス、ユナイトだ!」

『よぉし、行くぞっ!』

 

 人目のつかないところですぐにユナイト。ウルトラマンエックスが飛び出していく!

 

「イィィィーッ! トワァッ!」

[エックス、ユナイテッド]

 

 スタジアムに降り立ったエックスの勇姿を人々が見上げる。

 

「あっ、エックスだぁ!」

「きゃあぁーっ! ウルトラマンエックスー!!」

 

 黄色い声を発するエルス。エックスは一番にババルウ星人にタックルを決め、人々への暴行を阻止した。

 

『邪魔しやがってぇぇぇぇーッ! 行くぞお前らぁッ!』

 

 ババルウ星人はケムール人、ダダ、ゼットン星人を引き連れて四人がかりで攻撃するが、エックスは巧みに攻撃をさばき、次々打撃を入れて返り討ちにしていく。

 

『うぬあぁぁぁッ!』

「フォオ――――――ッ!」

「ダダ―――――!」

『ちょっとぉ! しっかりしなさいよぉッ!』

 

 更にダイチはエクスデバイザーにデバイスゴモラカードをセットし、エックスをパワーアップ。

 

『ギャオオオオオオオオ!』

[ゴモラキャリバー、セットアップ]

 

 コロナがエックスを指して言う。

 

「見て下さい! まるでショルダーパッドみたいです!」

「それじゃアメフトやろ」

 

 ジークリンデが突っ込んだ。

 それはともかく、エックスはゼットン星人、ダダ、ケムール人とスクラムを組んだ。

 

『ぬぅぅぅぅッ!』

「ダ―――ダ―――!」

「フォフォフォフォフォ!」

『押せぇー! お前らもっと押せぇー!』

 

 三人の後ろからババルウ星人が踏ん張って押し込もうとするも、

 

『「超振動拳!」』

「イィィィーッ! シャア――――――ッ!」

『おわぁぁぁぁぁ――――――――――――――ッ!!』

 

 超振動拳の衝撃により、ゼットン星人たちは空の彼方まで吹っ飛ばされてキラーン、と星になった。

 

『げぇぇぇぇぇッ!?』

 

 一人になったババルウ星人はたまらず回れ右して逃走を図るが、

 

「ちょっと待った」

『ぬわッ!?』

 

 その先に変身したなのはが浮いていて、ババルウ星人は思わず立ち止まった。

 

『お、女ぁ! そこどけぇッ!』

 

 ババルウ星人は命令したが――無表情のなのはから発せられる異様なプレッシャーに思わず口を閉ざした。

 

「いけないなぁ……スポーツでの対決に承諾しておきながら、反則を連発しただけに飽き足らず、負けたら暴力に物を言わせようとするなんて……」

『ひッ!?』

「――少し、頭冷やそうか」

[Excellion Buster]

 

 なのはの憤怒の砲撃が、ババルウ星人に炸裂!

 

『いぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――ッ!!』

 

 哀れババルウ星人は、卑怯な真似を取り続けたために真っ黒焦げにされたのであった。

 その様子を、エックスが若干呆気にとられながら見届けた。

 

 

 

 ババルウ星人連行後、ジョリーを返してもらったバルキー星人は仲間たちに呼びかける。

 

「ミーたち、最高のチームだったよなー!」

「うむ!」

 

 満面の笑みでうなずく仲間たち。

 

「勝ったのはみんなの力です。それとウルトラマン」

 

 と語るイサムに、ナックル星人は告げる。

 

「いいえ。勝ったのはあなたのお陰よ、イサム」

「うん。イサ兄ぃがいなかったら、最後の逆転もきっと無理やったよ」

 

 ジークリンデの言に少女たちは次々うなずいた。

 称賛されてはにかむイサムの元に、ワタルが駆けつけてきた。

 

「やったなイサムー!」

「兄貴! 応援ありがとう!」

 

 更にラグビー部の仲間と、監督もやってくる。

 

「ナイストライ、ナイスゴールだったぞ」

「ありがとうございます!」

「……戻ってこいよ。お前なら世界を目指せる」

「……はい!」

「よかったなイサムー!」

 

 イサムが承諾したことでチームメイトたちが集まり、彼をもみくちゃにし出す。

 少女たちはそれをほほえましげにながめていたが……ジークリンデだけ、星雲荘の三人がこの場からそっと離れていくのに気がついた。

 

 

 

「イサムの奴、チームに戻れてほんとよかったなぁ~」

「うむ。これでひと安心じゃなイカ」

「イサムはもうここには戻らないわね。そして、ワタシたちも……」

 

 バルキー星人、イカルス星人、ナックル星人は星雲荘に帰ると……荷物を畳んでいた。と、そこに、

 

「みんな、ウチに内緒でどこに行くん?」

「ジーク(ちゃん)!?」

 

 ジークリンデが引き戸の陰から姿を出す。彼女にナックル星人たちは説明する。

 

「ワタシたち、ここを引き払うことにしたの。ラグビーでの勝利と、ワタシたちが異星人だって明かされたのは別だもの」

「ミーたち、このこと大家に内緒だったからなー。このままいたら、迷惑かけちまうぜ」

「大家さんまで巻き込むのは流石にイカんもの。どこか別のところへイカんと」

「そして、名残惜しいけど、ジークちゃんともお別れね……」

 

 ナックル星人のその言葉に、ジークリンデは小首を傾げる。

 

「どうして?」

「えっ?」

「ウチも、みんなと一緒に行くんよ!」

 

 ジークリンデの言葉に三人は目を見張った。

 

「ジークちゃん、本気!? で、でも……」

「それはイカんじゃなイカ。宇宙人の我輩たちといたら、ジークにも迷惑かかるじゃなイカ」

「あはは、そんなん今更やで」

「えっそれどういう意味なの」

 

 ジークリンデは何でもないことのように笑う。

 

「ウチはそんなこと、ぜーんぜん気にならないで。それにエレミアは元々流浪の一族。ウチも一箇所に留まるより、色んなところを転々とする方が性に合ってるんよ」

「けど……」

「――なら、こう考えるのはどうや? みんなが行くところに、たまたまウチも行く。それだけのことや!」

 

 ジークリンデの言うことに三人はどうしようかと顔を寄せ合い――そして笑った。

 

「そーだな! ミーたちにお前がたまたま来るのを止める権利はナッシング! それじゃあしょうがねぇよな~!」

「みんなでお引越ししようじゃなイカ!」

「とりあえず、初めは温泉に行きましょうよ! 試合の疲れを癒しましょ~う」

「おっ、ええなー……!」

 

 異星人三人に人間一人を交えた四人は、朗らかに談笑し合いながら星雲荘を発っていったのだった……。

 

 

 

 サカネ村。それは昔、97管理外世界『地球』の国家の一つ、日本からミッドチルダへ移住してきた一団が地方に築いた小さな集落。いわば「日本村」みたいなものだ。

 

「うわああぁぁぁぁぁ―――――――!」

「きゃあ――――――――!」

 

 普段はのどかで静かなこの村だが、その日は村の住人たちの悲鳴があちこちから轟いていた。村人たちは一斉に避難をしている。

 何故なら……村に小山ほどの大きさがある怪獣が突如として出現したからだ!

 

「怪獣だー!」

「早く逃げろー!」

 

 踏み潰されたり食べられたりしたら大変、とほうほうの体で逃げる村の人々。

 しかし――やがてどうも様子がおかしいことにチラホラと気がつく人が現れて、そんな人たちは怪獣の近くに舞い戻ってきた。

 そして彼らは怪獣を見上げ、口をそろえて言った。

 

「何で動かないんだ……?」

 

 怪獣は出現してからずっと、微動だにしないのだ――。

 

 

 

『ダイチの怪獣ラボ!』

 

ダイチ「今回はザラブ星人だ!」

ダイチ「ザラブ星人は『ウルトラマン』第十八話「遊星から来た兄弟」に登場! 初めは友好的な宇宙人を装っていたけど、本当は地球侵略を狙う凶悪宇宙人だったんだ!」

エックス『にせウルトラマンに変身して、ウルトラマンを悪者に仕立て上げようともしたんだ。これが後のシリーズの伝統となる、ウルトラマンの偽物の第一号だぞ』

ダイチ「『ウルトラマンX』ではベムスターを手下にして地球を狙ったんだ! この時、ウルトラマンに化けるといった変身能力は見せなかったぞ」

エックス『何故ベムスターにザラブかと言うと、ベムスターの腹の口の形とザラブ星人の口が似ているから、そのつながりだという。そんな馬鹿な』

ダイチ&エックス「『次回も見てくれよな!」』

 




 サカネ村に衰弱した怪獣、ホオリンガが出現した! 村の人たちは、敵意のないホオリンガを村興しの目玉にする、なんて騒いでるけど……。とにかく、弱ってる怪獣を放ってはおけない。ホオリンガ治療作戦の開始だ! 次回、『怪獣は動かない』。
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