光輝巨人リリカルなのはX   作:焼き鮭

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怪獣は動かない(A)

 

「ゼットォーン……ピポポポポポ……」

「ミッドのものではない大気を検出しました」

「自星の大気を放出するとは、侵略目的では……」

「卵を抱えた個体を相手にする……今回が初めてだ」

「ケエエオオオオオオウ!」

「だから地上に出てきた……産卵するために!」

「何としても、Xを助けるんだ!」

「溶岩熱線、発射!!」

「怪獣出現! 体長約50メートル!」

「フェイズ4! 都市防衛指令発令!」

「怪獣の市街地への接近を阻止しろ!」

 

 

 

『怪獣は動かない』

 

 

 

 サカネ村の片隅にある神社、その物置に一人の幼い少女がいる。彼女はじっと突っ立ったまま、壁に掛けられた額を見上げている。

 

「ハナちゃーん!」

 

 そこに妙齢の女性がやってきて、少女をハナと呼んだ。

 

「お家に帰りましょう?」

 

 女性はそう呼びかけたが、ハナは絵巻から目を離さずに無言で首を左右に振った。

 

「お父さん待つん!」

 

 ハナの返事に、女性は若干肩をすくめた。

 

「……来月に帰ってくるから。今日は……ね?」

 

 女性はハナの頭を撫でて諭した。

 その時に、神社を震動が襲う。

 

「きゃっ!?」

 

 外に出た二人は――村の真ん中にそびえ立つ、一体の怪獣を見やった。今の震動は、怪獣が身動きをした際に生じたものであった。

 ハナは怪獣に目をやりながら、笑って言った。

 

「ホオリンガ!」

 

 

 

「一ヶ月前、Y3-M1エリア、サカネ村に怪獣が出現。Xioが出動しました」

 

 Xioベースで、ラボチームが特捜班を前にしてサカネ村の怪獣に関しての報告を行っていた。ダイチが怪獣の情報を振り返って解説する。

 

「調査の結果、攻撃性は認められず、動くこともありません。使っていない畑で眠るだけ。大人しい怪獣です。光合成をして排泄をしない、まるで植物そのもの。そこで、サカネ村と協議をし、保護下に置いてモニタリングを行うことが決まりました。――これが昨日の様子です」

 

 モニターに一ヶ月前と昨日の怪獣の映像が同時に表示された。怪獣はその場から全く移動していないのだが、一ヶ月前は青い触手をまだ大きく動かしているのに、昨日の映像の中ではその動き幅が小さくなっている。

 

「弱ってる……?」

 

 動きの違いを見比べて、スバルがつぶやく。

 

「諸君、これを見てくれ」

 

 グルマンが片腕を挙げると、モニターの映像に怪獣の内部解析データが追加された。シャーリーが続けて語る。

 

「これが一ヶ月前の栄養状態です。そして、こっちが昨日の栄養状態」

 

 怪獣の生体反応は、明確に弱くなっていることが比較で分かる。

 

「脳波も弱く、ガオディクションでの解析も出来ません」

「栄養失調ってこと?」

 

 スバルやウェンディは怪獣に対して心配そうな表情になった。

 カミキはダイチに問いかける。

 

「……サカネ村の意向は?」

「怪獣との共生を望んでおり、治療をしてほしいと」

 

 それを受けて、カミキは決定を下した。

 

「ラボチームの提案を受諾。怪獣を、治療の対象に指定する。Xio、出動!」

「了解!」

 

 特捜班が席を立ち、怪獣治療の作戦が開始された。

 

 

 

 サカネ村。ほんの一ヶ月前までは、日本村であるということ以外特に取り立てる要素もない静かな田舎町であったが、まだ名前もない怪獣が出現してから、すっかりと様変わりした。

 

「怪獣せんべい、お一つ如何ですかー?」

「怪獣の銘柄の酒を作ったんです。是非ともサカネ村のお土産に」

「このシャツの絵柄、怪獣を擬人化したものなんですよぉ。かわいいでしょ?」

 

 村の公民館の前にはいくつもの出店が立ち並び、怪獣にちなんだ土産品をたくさん売っている。そのお土産を観光客が買っていく。

 攻撃性がなく、その場から一歩も動かない怪獣は次元世界中の興味の的となり、サカネ村には珍しい怪獣をひと目見ようと大勢の観光客が集まるようになっていた。その合計人数は、例年の村の観光客数をとっくに上回って記録更新中である。これをサカネ村の自治体が見逃さないはずがない。総力を挙げて、怪獣を観光名所ならぬ観光名獣に仕立てて、村の財政を潤しているのであった。

 

「うわぁ~、たくさんの人が集まってるね!」

 

 ヴィヴィオ、コロナ、リオ、アインハルトの四人も、サカネ村の怪獣を見にやってきていた。それからオットーとディード、同じく修道騎士のシャンテ・アピニオンも一緒にいる。

 

「怪獣といえば悪者みたいに言われてるけど、サカネ村の人たちはとても好意的だね!」

「ま~動かなければ危険なんてないしね~」

 

 リオのひと言にシャンテがニッと笑って相槌を打った。

 

「ダイチさんが人間と怪獣の共生を目指してるけれど、このサカネ村がそのきっかけになってくれるといいですね」

 

 コロナは何気なくそう言ったのだが、アインハルトはそれを耳に入れて、かすかに眉間に皺を寄せた。

 

「ん? どうしたの、そんな難しい顔して」

 

 見とめたシャンテが尋ねかけると、アインハルトは辺りを見渡しながら口を開いた。

 

「……本当にこの光景が、ダイチさんの目指す人間と怪獣の共生なんでしょうか……」

 

 周囲にあふれているのは、怪獣の姿を嬉々として写真に収めていく観光客や、ひたすら商売に熱を入れる村民。村中が浮かれた空気にある。

 

「怪獣はそこにいるだけなのに、まるで見世物小屋みたいじゃないですか」

 

 アインハルトのその言葉に、一同も複雑な表情になった。

 

「……確かに、たとえばイクスが同じような扱いされたら、ちょっとなぁって思うね……」

「そのような人たちには丁重にお帰りいただきます」

 

 シャンテのつぶやきに、ディードが厳めしい顔で語った。

 微妙な雰囲気になっていると、ヴィヴィオがふと前方に目をやって言葉を発した。

 

「あっ、ダイチさんだ」

 

 彼女の視線の先では、ダイチがサカネ村の村長と話をしているところだった。

 

「怪獣を元気にして下さるそうで、ありがとうございます! 毎日がお祭り騒ぎ! あの怪獣は、今や人気者です。それが栄養失調なんて、かわいそうでね」

 

 村長は話しながらカメラ機能の立体モニターを起動した。

 

「ちょっと失礼! 写真、サカネ村のブログにアップしてもよろしいですかな?」

「あっ……は、はい」

「ありがとうございます!」

 

 ダイチとのツーショット写真を撮る村長。そこにサカネ村の村役場の役員が駆け寄ってきた。

 

「そんちょーう! 大変です!」

「あっ!? どうした?」

「か、怪獣……怪獣が……」

 

 役員の言葉に、ダイチに緊張が走った。が、

 

「どうした?」

「名前です! サカネッシーとヤマゴン、こん二つで意見が割れて!」

 

 それでダイチから力が抜けた。

 

「馬鹿! サカネ村のサカネッシー、こっち方がクールじゃあゆうに」

「それが、ヤマゴンの方がロハスじゃあゆうて!」

「村興しの目玉にそんな古臭い名前がつけられるか! わしが説得する。それじゃ先生、怪獣のこと、よろしくお願いします」

 

 村長はダイチに頭を下げて頼み込むと、役員とともにこの場から離れていく。

 

「どこじゃあ!」

「村長、こちらです!」

 

 その後で、ヴィヴィオたちがダイチの元へと近寄る。

 

「ダイチさーん」

「ヴィヴィオちゃん。みんなも来てたんだ」

 

 ヴィヴィオらの方に振り返ったダイチ。すると、シャンテが腕に提げているバスケットから、何かがピョコッと出てきた。

 

「あっ、君は……」

 

 セイクリッド・ハートと同等のサイズの、妖精のような少女だった。彼女が服の裾を軽く持ち上げてお辞儀したので、ダイチも釣られてお辞儀する。

 

「スバルから聞いてるよ。その子がイクスヴェリアちゃんなんだね」

「はいっ。ずっと眠ってたイクスに色んなところを見せてあげようと思って、今話題のここに連れてきたんです」

 

 小さな少女の名はイクスヴェリア。ヴィヴィオやアインハルトとは異なり、古代ベルカで『冥王』と呼ばれ畏怖されたガレアの王。それが一年前の『マリアージュ事件』で現代の世に覚醒し、紆余曲折あって今になっても続く昏睡状態にあるのである。

 しかしつい最近に彼女から分身体が生じたのだ。それがここにいるイクスヴェリア。本体は未だ聖王教会で眠っているが、この分身が五感を兼ね備えている。イクスヴェリアと関わりを持つヴィヴィオは、彼女のために今回の観光を企画したのだった。

 

「ところでダイチさん、先ほど村長さんと話をしてましたが、怪獣が栄養失調なんてことが聞こえたんですが……」

 

 アインハルトが質問すると、ダイチはうなずいて肯定する。

 

「そうなんだ。あの怪獣は日に日に身体の栄養が失われていってて。Xioはその治療に来たんだ」

「そうだったんですか……」

 

 ヴィヴィオと教会組は怪獣にイクスヴェリアを重ね、特に心配そうな顔つきとなる。

 

「ダイチさん、絶対怪獣を元気にしてあげて下さい!」

「もちろんだ。俺たちに任せておいてくれ!」

 

 ヴィヴィオの頼みに、ダイチは力強く応じた。

 

 

 

 そして、怪獣の治療作戦が決行される時刻となった。

 

「スカイマスケッティ、ジオポルトス、スタンバイオーケー」

 

 オペレーション本部でルキノの報告を受け、カミキが指令を発する。

 

「これより、怪獣治療作戦を開始する! スカイマスケッティが怪獣の上空から注意を引き、その隙を狙って、ランドマスケッティにバトンタッチせよ!」

『了解!』

 

(♪ワンダバチームEYES)

 

 カミキの指示通り、ワタルとウェンディを乗せたスカイマスケッティが怪獣に接近。眼前で急上昇する。

 

「キュウウゥゥ……!」

 

 マスケッティに気を引きつけられた怪獣はそちらを見上げ触手を伸ばすが、スカイマスケッティは速度を上げて振り切る。

 

「マスケッティ、リジェクトっス!」

 

 ウェンディがマスケッティからアトスを切り離し、代わりにスバルとディエチを乗せたポルトスが収まる。

 

[ランドマスケッティ、コンプリート]

 

 ランドマスケッティがホオリンガの前方に降り立つ様子を、村の体育館からモニター越しにラボチームと村長たちが見守っている。

 

「この! このマシンで、薬を飲ませる訳ですか?」

「ええ。薬を仕込んだアンプル弾を撃ち込むんです」

 

 マリエルが解説した。作戦の進行具合を体育館の出入り口から、ヴィヴィオたちが固唾を呑んで見つめている。

 と、その時、彼女らの脇を幼い少女が駆け抜けていった。

 

「? あの子は……?」

 

 少女がラボチームの輪の中に割って入ると、村長が目を丸くした。

 

「ハナどうした?」

 

 少女は村長の腕を掴んで、訴えかけた。

 

「おじいちゃん、ダメ! ダメなの! シーってして!」

 

 呆気にとられる一同。その中からダイチが進み出て、少女に呼びかける。

 

「怪獣さんに注射をするんだ。そしたら静かにするね」

 

 しかし少女はより騒ぎ立てる。

 

「お注射? もっとダメ! 絶対ダメ!」

「あぁ、いた!」

 

 そこにまた一人、妙齢の女性が駆けつけてきた。

 

「村長さん、すみません! 急に飛び出して……」

「ああそうか。ハナ、チヅルちゃんと一緒に、安全な場所で待っていてな。な?」

 

 村長が少女、ハナに優しく言いつけるも、少女は訴えを繰り返すばかり。

 

「お注射ダメ! ダメなの!」

「大丈夫。痛くない注射なんだ」

 

 ダイチはそう説いたが、ハナの言いたいことはそうではなかった。

 

「ホオリンガは病気じゃない!」

「ホオリンガ? ……あの怪獣のことかな?」

 

 聞き返すと、ハナはうなずいた。

 

「ハナちゃんは、あの怪獣のこと何か知ってるの?」

 

 ダイチが尋ね返そうとしたその時、シャーリーが告げる。

 

「ランドマスケッティから、発射用意良しだって」

「あっ、ちょっと待――!」

 

 止めようとしたダイチだったが、一歩遅かった。

 

「発射!」

 

 ディエチが発射ボタンを押し、レールガンから発射されたアンプル弾は、怪獣に命中。

 

「キュウウゥゥ!」

 

 すると――怪獣の身動きが一瞬完全に停止した。

 

「怪獣の栄養値、低下が止まったわ!」

「よしっ!」

 

 データの変動を見たマリエルの報告で、村長は喜んだものの――直後に激しい揺れが発生して、彼らはつんのめった。

 

「何だ!?」

 

 動揺するダイチ。マリエルはデータを見直して、唖然となった。

 

「おかしいわ……怪獣の栄養値が……上昇し続けて止まらないっ!」

 

 アンプル弾を撃ち込まれた怪獣は――それまで大人しかったのが嘘かのように触手を振り上げ、ドスンドスンと激しく地響きを起こし始めた!

 

「キョオオオオオォォォォォ!」

 

 地中から怪獣の触手が突き上げ、出店を破壊。怪獣が突然暴れ出したことに観光客や村民たちは仰天し、一斉に逃げ惑い始めた。

 ラボチームもこの事態に騒然となる。そんな中、ハナが一人駆け出して、体育館から飛び出していった。

 

「ハナ!」

「ハナちゃん!?」

 

 咄嗟に追いかけるヴィヴィオたちにダイチたち。ハナは潰された出店跡のところで立ち止まり、遠景で触手を激しくうならせる怪獣を見上げた。

 

「キョオオオオオォォォォォ!」

「ホオリンガ……ごめんね……」

 

 怪獣に謝るハナの背中を、ダイチやヴィヴィオたちが不思議そうに見つめた。

 

 

 

 サカネ村の怪獣が暴れ出した事態を収めるために、Xioでは緊急に対策が講じられていた。

 

「現在、栄養値は上昇を続け、怪獣が活性化。根っこが地上に這い出し、グングン伸びておる」

 

 状況を説明するグルマン。クロノは険しい顔でカミキに告げる。

 

「二十四時間後には村全体に広がると推測されます……。被害が拡大する前に、何か手を打たねば!」

「申し訳ありません……。きっと、私が栄養剤の調合量を間違えたんです……!」

 

 栄養剤を担当したシャマルが青い顔で謝罪したが、グルマンが否定する。

 

「いやぁ、事前のデータからの計算に間違いはなかった。怪獣の生体情報に何か大きな見落としがあったのか……それで薬が効きすぎたのかな……」

「薬を中和……もしくは、排出することは出来ないか?」

 

 シャマルに問いかけるクロノだが、シャマルは目を伏したままだ。

 

「万が一の時のために、解毒剤は用意してますが……身体から薬を出し切るのには、最低でも二日は掛かります」

「二日か……その時間をどう稼ぐかが問題だな……」

 

 カミキはどう対処するべきかと、腕を組んでうなりを上げた。

 

 

 

 現場でも、一旦集合したダイチたちが通信越しに対策会議に加わっている。

 

「根っこを切ればいいんじゃないんですか?」

 

 ワタルが提案したが、シャーリーが首を横に振った。

 

「根っこは再生力が高いから無駄です。それに痛がって余計暴れるかもしれないし」

 

 ダイチはカミキたちにあることを報告する。

 

「あの怪獣は、病気ではない……。ハナちゃんって女の子が言ってたんです。気になって調べてみたんですが、怪獣の眠る地面から、大量の植物ホルモンが検出されました」

 

 それが、怪獣から失われた栄養の行き場であったのだった。

 

「たとえば、怪獣が地面に栄養を与えていたとか」

『怪獣が? 何のために……?』

「その理由が分かれば、いい解決方法が見つかるかもしれません。それに……あの子の言ってたことがただの偶然とは思えないんです!」

 

 ダイチの言を受けて、カミキは決定を下す。

 

『よし……ラボチームは調査を続けてくれ。防衛部隊は引き続き、厳戒態勢で怪獣とその根を警戒』

「了解!」

 

 事態解決のために行動を始めるダイチたちを、ヴィヴィオたちが遠巻きに見守る。

 

「イクスに平和な怪獣を見せるだけのつもりだったのに、大変なことになっちゃったね……」

「怪獣は、どうなっちゃうんだろう……」

 

 気を揉むリオとコロナ。一方で、ヴィヴィオはこんなことを発する。

 

「ダイチさんの言った通り、さっきのハナちゃんって子が何か知ってるんだと思う。あの子はどこ行ったのかな?」

「捜しましょう」

 

 アインハルトの提案で、一行はハナを捜索し出した。

 

 

 

 村長には、スバルたちが怪獣の処分についての案を説明していた。

 

「怪獣を移動させる?」

「はい。まず怪獣を民家のない地点まで遠ざけ、そこで解毒剤を投与します。これなら効果が出るまで時間を稼げます」

 

 スバルが地図でその地点を指したが、すると村長が反対をした。

 

「いやいや! この原っぱは、村の外れの、更に外れにあります! 観光客が怪獣を見に来るのに遠すぎます!」

「遠いからこそ時間稼ぎになるんです!」

「怪獣は村の大事な観光資源! 動かすのは許しません!」

「これ以上村への被害を広げないためにも……!」

 

 粘り強く説得するスバルだが、村長は聞き入れない。

 

「そもそも、あんたたちが変なものを打ち込んだからこんなことになったんじゃないか! お陰でこっちは大損害だ! その弁償を、Xioがしてくれるとでも!?」

「……そっちから治療を頼んだくせに」

「ウェンディ! 聞こえるぞ」

 

 唇を尖らせてぼそっと不平を垂れたウェンディを、ワタルが肘で小突いて諌めた。

 

「薬が効くのに丸二日でしたっけ? それくらい我慢しますよ」

 

 姿勢を崩さない村長だったが、その時にルキノからの緊急通信が入った。

 

『本部より報告! 根っこで展望台が崩壊!』

「村長が作った展望台!」

 

 役員がそう言った。続いて、アルトからの通信。

 

『本部より報告! サカネ大橋が通行不能!』

「村長の作った橋だ!」

『本部より報告! サカネ公園の銅像が倒れました!』

「村長の銅像ー!」

「もうやめてー!!」

 

 絶叫した村長がスバルに泣きつく。

 

「お願いします! 怪獣を移動させて下さい!」

「現金っスねー……」

「ウェンディ!」

 

 ワタルがまた小突いた。

 スバルは本部へ告げる。

 

「村長の許可が出ました。これより、怪獣移動作戦を開始します!」

 

 

 

「ダイチさーん、こっちですー!」

 

 その頃、ダイチはハナを捜し当てたヴィヴィオたちに連れられ、その場所までやって来ていた。そこでは、ハナの手前でオットー、ディードがチヅルから話を聞いていた。

 

「ダイチさん、たった今チヅルさんから、ハナさんの言っていた『ホオリンガ』という言葉の意味を伺っていたところです」

「チヅルさん、ダイチさんにもお教え下さい」

 

 オットーに頼まれ、チヅルが『ホオリンガ』の意味を話し始めた。

 

「ホオリンガぁゆうのは、カミンガの名前です」

「カミンガ?」

「この村の言葉で、神様。私たちのご先祖が移住する前の土地での方言が、そのまま伝わったんです」

 

 説明を受けたダイチがうなずく。

 

「ホオリ様で、ホオリンガ、ということですね……」

「元の土地での言い伝えに出てくる、土地を豊かにしてくれる神様です」

「でもハナちゃんは、どうしてあの怪獣をホオリ様と? ホオリ様の姿が、あの怪獣に似ているとか?」

「姿は分からんのです。この話自体、ほとんどが忘れられとって。……でも、ハナちゃんのお父さんが、昔話の学者さんなんです! 今は次元世界を回ってるんですけど、何か教えてもらったんかもしれません」

 

 ハナの後ろ姿を見やるダイチ。ハナは、土の中から少しだけ出ている怪獣の触手の先端を撫でていた。

 

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