「あのオーロラが消えるまで、絶対にここを動くな!」
「お父さーん!」
「ゴモラ、どうした?」
「怪獣出現! タイプG! 体長約50メートル!」
「あいつはデマーガです!」
「警戒レベル・フェイズ3! 都市防衛指令発令! 進行を食い止めろ!」
「うわぁぁぁぁ――――――!」
『君と私はユナイトした! 心を一つにすれば、あの怪獣と戦える!』
「『ザナディウム光線!!」』
「彼の名は、ウルトラマンエックス……!」
『少女に眠る覇王』
(♪科特隊のテーマ)
Xioオペレーションベース。新進気鋭のチーム・Xioの基地の見学ツアーにやってきた学生たちを、『Xioへようこそ』と表示されたヴィジョンが迎える。
興味津々の学生たちを案内するコンパニオンがXioの説明を始めた。
「ご存知のように、今から十五年前、太陽の異常爆発、通称『ウルトラ・フレア』が引き起こした次元震によって、次元世界各地に存在していたロストロギア『スパークドールズ』の多くが怪獣化してしまうという大災害が起きました」
歩きながら説明していると、十五年前の映像や被害のデータ、スパークドールズの解説などのヴィジョンが次々空中に表示される。
「この非常事態に時空管理局の古代遺物管理部は、不安定のまま各地に散在しているスパークドールズの発見と回収を急務としました。そして今日までスパークドールズを厳重に管理、研究しています」
コンパニオンに案内される学生たちは、Xioのマシンの格納庫へと移っていく。
「そして、人類に害を為す怪獣や、ウルトラ・フレアの影響で次元世界に侵入し始めた異星人の犯罪に対する防衛部隊として、管理局は『Xeno invasion outcutters』、『Xio』を設立しました!」
「おお! すげぇ!」
若い学生たちは、格納庫に並ぶジオアトス、ジオアラミス、ジオポルトス、そしてジオマスケッティ等のXioマシンの威容に釘づけとなる。
ほれぼれと魅了された女生徒が前に出ると……横切ってきたオレンジ色の『何か』にぶつかられて転倒した。
「きゃっ!?」
ぶつかってきたのは、カタツムリのように突き出た目とごつごつした肉体、そして大きく裂けた口を持つ怪人だった!
「きゃあ――――――――――!?」
思わず悲鳴を上げる女生徒! ……だが。
「……ああ、見学に来た学生か」
怪人は一言つぶやいただけで、格納庫を我が物顔で横切っていく。よく見ると、首からXioの職員証を提げていた。
怪人のことをコンパニオンが説明する。
「Xioでは、人類に友好的な宇宙人に、研究活動を手伝ってもらっています。Xioのスーパーテクノロジーの多くは、あのファントン星人グルマン博士のご協力の賜物です!」
そのファントン星人グルマンの元へ、シャーリーとマリエルが駆け寄ってきた。
「グルマン博士、こんなところにいた!」
「見学の子たちが驚くからうろうろしないで、って言ったじゃないですか!」
「ふん、どうしてこの私が学生に遠慮しなくちゃならんのだ。私は基地の建設にも関わってる。つまりここは私の家も同然ということだよ?」
マリエルが咎めても、グルマンは平気な顔。呆れたシャーリーたちだが、グルマンにあることを尋ねる。
「それで博士、先日のデマーガ出現の時に出てきた巨人のことですが……」
それを聞くと、グルマンはしたり顔でうなずく。
「うむ、あれぞまさしくウルトラマン! ウルトラマンは私のいた宇宙でその名を轟かす光の戦士だ。宇宙の平和と秩序は、彼らの手によって築かれていると言っても過言ではない」
「ということは、博士はあのウルトラマン……エックスのことをご存じだったのですか?」
「いや、あのエックスというウルトラマンのことは聞いたことがないな。恐らく、この宇宙のウルトラマンなんだろう。ミッドチルダスペースにもウルトラマンがいたのだな」
ウルトラマンたちの宇宙出身のグルマンは、当然ながら既にウルトラマンのことを知っていた。それに関心を寄せるシャーリーたちだが、
「でも博士。事前に知ってたのなら、あの時に教えてくれたらよかったのに」
「そうね。教えてくれてたら、私たちもあんなに戸惑わなくて済んだんですよ」
「いやぁ、あの時はタイミング悪く、食後の昼寝中だったからな」
「もぉ~、その習慣どうにかならないんですかぁ? 結構困る時があるんですよ。肝心な時に寝てたり……」
文句を言うシャーリーだが、グルマンは少しも悪びれなかった。
「それは無理な相談だな。これはファントン星の大事な掟のようなものだから」
こういう風に言い訳するグルマンを言い聞かすのは無理なことだと、シャーリーたちは嫌というほどわかっている。故にため息を吐くだけだった。
一方でグルマンは、次のようにつぶやく。
「気になるのは、ウルトラマンエックスはどうして十五年前ではなく、今になって現れたのかということだ。何か、のっぴきならない事情があるのだろうな……」
見学ツアーを済ませた学生たちは、最後に会議室で隊長カミキと向かい合っていた。
「基地内見学を終えた君たちの感想を、聞かせてもらえるかな」
カミキが尋ねかけると、一人の男子学生が勢いよく手を挙げた。
「すっげぇカッコです! 俺も怪獣ぶっ倒したいです!」
「……どうして怪獣をぶっ倒したいのかな?」
カミキはおもむろに聞き返す。
「だって、正義の味方って、悪者をやっつけないと!」
張り切って答えた学生だったが、カミキは苦笑を浮かべて左脇を手で押さえると、学生たちにこう語り出した。
「私たちの生活や命を守る。それは正義かもしれません。けれど、怪獣や異星人たちにも、彼らなりの事情がある。それなのに、こちらが正義で、向こうが悪だと、言い切れるでしょうか。どういう状況なら、怪獣を倒すことが正義と言えるのか……私も、その答えは見つかってません」
カミキ隊長の信念は『敵を倒すのではなく理解する』というものであり、彼はXioを、単に怪獣たちを退治するだけのチームにはしたくないのであった。
Xioの見学ツアーが行われている頃、ダイチはラボのデスクで、自身のデバイザーと向き合って「会話」をしていた。
「……自分をデータ化して、宇宙空間を飛んできたってこと?」
『だから君のデバイスと一体化できた』
非人格型AI搭載のストレージデバイスであるはずのジオデバイザーが、流暢に返答した。
今の声は、デバイスに本来搭載されているAIの声ではない。デマーガとの戦いの時にデバイスの中に入った、宇宙から飛んできたある「データ」のものだ。
その名は『ウルトラマンエックス』。そう、突如として現れデマーガをスパークドールズに封印した『ウルトラマン』その人である。
ダイチは金色の縁が追加された自身のデバイザーをじろじろ観察する。
「で、実体に戻るには、これが必要なわけか」
『それと、君自身だ。本来は自力で出来たんだが、十五年前に肉体を失ってしまった』
ウルトラマンエックスは十五年前に、ウルトラフレアを引き起こす原因となった謎の発光体を太陽に落とした張本人であったのだ。だが、ウルトラ・フレアの波動を間近で受けた影響で実体が崩壊してしまい、十五年かけてミッドチルダへと飛んできたのだ。
先日の戦いで実体化できたのは、ダイチを核とすることで自身のデータを肉体に再構成したからだ。今のエックスは、ダイチという『核』が必要なのであった。
エックス自身はこの能力を『ユナイト』と呼んでいる。
「どうして俺を選んだの?」
『君の命を救おうと咄嗟にね。ただ十五年前からずっと、君自身が持つ周波数に引きつけられていた気がする』
エックスが無事にミッドチルダにたどりつけたのも、それが理由だと自身で考えている。
「確かに……どんな生き物も固有の電波を放出している。気が合うとか合わないとか、周波数の特徴なのかな……」
ダイチとエックスが話していると――。
「何やってるの、ダイくん?」
「うわっ!?」
後ろからスバルに声をかけられた。振り返ると、彼女だけではない、四人の少女がスバルと一緒にいて自分を不思議そうに見ている。
「スゥちゃんに、ノーヴェ、チンク、ウェンディ、ディエチも!」
四人は四年前のJS事件の際に犯人グループの一味として逮捕され、更生プログラムを受けた後にナカジマ家の養子となった元ナンバーズのメンバーたちである。今では『N2R』というユニットを名乗っている。
彼女たちはXio特捜班のサブメンバーだ。特捜班も人間、いつどこに出現するかわからない怪獣相手に四六時中備えている訳にもいかないし、負傷で行動できなくなるリスクも高い。故に彼女たちのような交代要員が必要なのである。
N2Rの内のチンクがダイチに尋ねる。
「誰かと話してたみたいだが、相手は誰だ? 聞き覚えのない声のようだったが」
「え、えっと、それは……」
「もしかして彼女が出来たっスかぁ?」
「えっ、えぇ!? そうなの、ダイくん!?」
からかうようなウェンディの一言に、スバルが目を丸くする。
「い、いや、そのね……」
ダイチはどうにかごまかそうと考えるが、ディエチやノーヴェたちはとんとん拍子で話を進めてしまう。
「いや、通信してるようでもなかった。どちらかというと、デバイザーと直接話してたみたいだったけど」
「でも、デバイザーの標準音声じゃなかったよな。それにかなり自然に話してたみたいだし。ストレージデバイスじゃそんなん無理だろ」
「あっ! ダイくん、もしかして……」
じっと目を見つめてくるスバル。ダイチは、エックスのことがバレたのかと内心冷や汗ダラダラになる。
が、スバルはこう言う。
「デバイザー、インテリジェントデバイスに改造したんでしょ! よく見たら金縁になってるし!」
「えっ!? あ、ああ、実はそうなんだ。こいつは、えーと……エクスデバイザーって言うんだ!」
『エックスと呼んでくれ』
咄嗟にスバルの勘違いに乗っかるダイチ。エックスもそれに合わせた。
「エックス! もしかしなくても、ウルトラマンエックスからあやかったの?」
「う、うん」
「へぇー! マリーさんたちの手を借りずに、自力でプログラム組んだっスか? やるぅ!」
「ヴィヴィオもこの間、インテリジェントデバイスもらってたな。奇遇だな」
ウェンディ、ノーヴェらN2Rはエクスデバイザーに興味津々だ。
『そんなに見つめないでくれ。少し照れる』
「あはは、面白いデバイスっスね」
エックスが四人の相手をしている間に、スバルはダイチにピッと人差し指を突きつける。
「でも、デバイザーは一応Xioの支給品なんだから、あんまり勝手に改造しちゃダメでしょ? 次からは気をつけてね」
「う、うん、気をつけるよ……」
どうにかごまかせたようだ。ほっと安堵したダイチは、話題をすり替える。
「それで、みんなそろって何の用だったの?」
「ああ、そうそう。さっきギン姉から連絡があって……」
スバルは本来の連絡をダイチに伝えた。
「……自称『覇王』イングヴァルトによる連続傷害事件?」
「うん。実際は被害届が出てないから、『事件』じゃないんだけどね」
詳細を説明するスバル。
「そのイングヴァルトを名乗る人が格闘系の魔導師に街頭試合を申し込んで、次々倒してるんだって。この前路上で倒れてるところを逮捕した、えーっと……スタンド星人?」
「スタンデル星人」
ディエチが訂正した。
「そうそう、スタンデル星人もそのイングヴァルトがやっつけたんだって」
「そうだったの! となると、かなり強い人なんだね……」
「断ったら何もしないみたいだし、現段階じゃ格闘系の魔導師以外の人の前には現れないみたいだからダイくんは心配いらないだろうけど、一応夜道には注意してって言ってた」
「うん、わかった」
うなずくダイチ。N2Rもこの話に混ざる。
「聖王戦争時代の古代ベルカの王様の名前を名乗るなんて、一体何者っスかねぇ。ひょっとしたら、イングヴァルトも異星人の一人かもしれないっスよ。この間だって、スタンデル星人とは別に異星人の通り魔が出たじゃないっスか。あたしたちで捕まえたけど」
異星人。グルマンを始めとする、十五年前より管理局からでは観測されていないほど遠く離れた次元の宇宙からミッドチルダなどの管理世界に出没するようになった様々な星の知的生命体の総称だ。ウルトラ・フレアは、遠くの次元と管理世界をつなげてしまうほどの影響も及ぼしたのだった。
異星人がグルマンのような友好的な者たちばかりならば特に問題にはならないのだが、世の中そう甘くはない。悪心を抱えて管理世界に侵入してくる異星人も少なくなく、彼らの起こす犯罪も社会問題になっているのだった。Xioはそんな異星人犯罪とも戦っているのだ。
「仮にそうだったとしたら、またあたしたちで逆ボッコにしてやるぜ。この前のカレー星人みたいにな!」
「カーリー星人だろう、ノーヴェ」
ノーヴェが勇んだが、間違いをチンクにツッコまれてしまった。
「わざわざ古代ベルカの王様の名前を使うくらいだから、異星人って可能性は低いだろうけど……何にせよ、みんなも気をつけてね」
「はーい」
スバルの忠告で自称『イングヴァルト』に関する話は終わり、スバルたちはラボから退室していく。その後でエックスがダイチに呼びかけた。
『ダイチ、お前結構モテモテなんだな。五人もの女の子に囲まれて』
「い、いや、スゥちゃんたちはそういうのじゃないよ。みんなは家族なんだ」
『家族? だが周波数はダイチに似ていなかったが』
「家族といっても、血のつながった家族じゃないよ。俺の実の両親は、十五年前に……」
自身のデスクの上の写真立てを一瞥するダイチ。そこに飾られているのは、消える前の両親とゴモラと撮った写真。
(父さん、母さん……今はどこにいるんだろう。あの時研究所は、どこへ消えていってしまったんだろうか……)
ダイチは、空に吸い込まれて以来行方不明の両親に思いを馳せたのであった。
――翌日の夜の当直中のダイチとスバルに、グルマンが話しかける。
「ダイチ、デバイス怪獣は動かせそうか?」
「上手く脳波と同調させられれば……。もう一歩なんですよ!」
「だが人間の体細胞の耐久限界値は変わらないだろう」
「ですよね……。でも、どうやらエックスは、肉体をデータに置き換えてるようなんです」
「データに? デバイス怪獣の逆だな」
「はい。その原理を活かすことが出来れば、研究は一気に進むかと……」
「まぁ、理には適ってるが……しかし、ウルトラマンに出来たってお前に出来ないんじゃ意味ないだろう」
「それは、そうですが……」
ダイチの反応を見て、グルマンは肩をすくめる。
「やれやれ、デバイス怪獣実用化はまだ困難なようだな。スバル、お前も協力者として思うところはないか?」
「えっ?」
ダイチたちの話が難しくて頭を痛めていたスバルが、いきなり話しかけられて正気に返った。
「デバイス怪獣構築のプログラムの元の一つは、お前のマッハキャリバーだぞ。忘れた訳じゃないだろう」
「あっ、はい、そうですけど……」
デバイス怪獣のデータは一から作られているのではない。元となる怪獣の生体データと、既存のインテリジェントデバイスのデータを掛け合わせて構築されている。そしてゴモラが元である『デバイスゴモラ』には、スバルの提供したマッハキャリバーのデータが使用されているのだ。
聞かれたスバルは、次の通り答える。
「あたしも、マッハキャリバーの兄弟ともいえるデバイスゴモラが実際に動くところを見たいですけど……だからって、ダイチに無理をしてもらいたくもないです。その、無理をして倒れられてもいけませんし」
「スバル……」
スバルの意見に、おもむろにうなずくグルマン。
「そうだな。何事も身体が資本! 肉体が健康でなければ、いい結果にはつながらんものだ。ダイチ、お前もあんまり研究に没頭しないで、よく食べよく休むことだぞ」
「はい。けど……いつも思いますが、博士とスバルはよく食べ過ぎなんじゃないでしょうか」
チラリと視線を走らせるダイチ。その先には、スバルが当直中に食べた弁当の空箱の山が……。
「あっ! ちょっとダイチ、そんな意地悪なこと言わないでよぉ!」
「私はファントン星人だから、あの量が標準だ。ここでおかしいのはスバルの胃袋だけだよ。ミッドチルダ人女性として、少々食べ過ぎではないのかね」
「そ、そんなことないですよ! あたしは日頃から動きますし、戦闘機人でもありますし! ギン姉だって同じくらい食べるんですよ!」
「しかしノーヴェは……」
グルマンと口論しているスバルのマッハキャリバーに着信が入る。
「あっ、ちょっとすみません。ノーヴェからです」
噂をすれば何とやらか、ノーヴェからの通信に出るスバル。
「はい、スバルです。ノーヴェ、どうかした?」
映像の向こうのノーヴェは、何故か倒れているようだった。
『悪ィ、スバル。ちょっと頼まれてくれ。喧嘩で負けて動けねー』
「ええッ!?」
ノーヴェからの報告に、スバルだけでなくダイチ、グルマンも驚く。が、ノーヴェは構わず続けた。
『相手は例の襲撃犯。きっちりダメージブチ込んだし蹴りついでにセンサーもくっつけた。今ならすぐに捕捉できる』
スバルとダイチは思わず顔を見合わせる。
「例の襲撃犯って言うと……」
「『覇王』イングヴァルト……」
昨日話していたイングヴァルトの正体が、もう掴めるという。果たして一体何者なのだろうか。