「未発見の次元へ移動する方法かね?」
「いいかね? このパンの一枚が、我々の住んでいる次元世界の一つとする」
「こうすることで……次元の壁を通り抜け、別の世界へと移動することが出来る」
「今なら、遠くの次元世界への移動も決して不可能ではないのでは……」
『ここは……』
「かつて母さんの研究所があった場所だ」
『ここは、あらゆる次元世界をつなぐ特異点の一つかもしれないな』
「父さん、母さん……」
「きっといつか、会えるよね」
『虹の行く先』
オペレーションベースXのラボ。ダイチは自分のデスクで、電波受信機を耳に当て瞑目していた。
(十五年前……父さんと母さんは、研究所と一緒に消えた)
彼は当時のことを振り返る。研究所が消えた時のこと。その時に空に見えた、オーロラのような虹色の光を思い返す。
(あの虹色の光は一体何だったのか? 研究をもっと進めて、二人の居場所を早く突き止めないと……!)
写真立てに飾った家族の写真に目をやり、その思いを一層強める。
(父さん、母さん……今どこにいるの?)
一人考えているダイチの元へ、スバルがやってきた。
「ダイくん、隊長の召集が掛かったよ。……多分、例の事件の話だと思う」
「あっ、うん。すぐ行くよ」
スバルに振り向いたダイチは受信機を外し、彼女の後を追ってオペレーション本部へ向かっていった。
オペレーション本部に集められた特捜班の面々に対して、カミキが用件を伝え始めた。
「諸君も既に耳に入れているだろうが、昨日ミッド山岳地でスパークドールズ発掘を行っていた古代遺物管理部が、何者かの襲撃を受けてスパークドールズを奪取される事件が発生した。発掘班には死者も出ている、極めて重い被害だ」
カミキの言葉に、特捜班は思わず息を呑んだ。スパークドールズ発掘は、強奪を狙う異星人犯罪者の襲撃を度々受ける危険な任務であるが、死者まで出たというのは近年ではほぼ例のない事態であった。
「生存者の証言では、襲撃犯は単独だったという」
「たった一人でベテランの発掘班を壊滅させたんですか!?」
驚きの声を発するワタル。スパークドールズ発掘を担当するチームは、危険があることは承知の上なので、護衛として戦闘専門の魔導師が複数人参加していたはずだ。それが破られるとは……犯人は一体如何ほどの実力なのだろうか。
「犯人はやはり異星人犯罪者なのでしょうか」
チンクの質問に、クロノが返答した。
「現時点では不明だ。少なくとも外見は女性のヒューマノイドタイプだったとのこと。しかし同時に、正体不明の力を使用していたという」
「襲撃犯の写真を表示します」
アルトがメインモニターに、襲われた古代遺物管理部が撮影した襲撃犯の姿を映し出した。胸の中央にコブラの飾りを備えた軽鎧を纏った女で、ムチを振るって魔導師たちを攻撃していた。
「けったいな格好っスね……。いつの時代の人間なんスか……」
「まるで古代からよみがえったかのよう……」
女の服装に着目したウェンディとディエチがそうつぶやいた。
「この襲撃犯の目的がスパークドールズそのものならば、この基地にも侵入してくる危険が高い。当分の間、警戒態勢を強化する。皆もそのつもりでいるように」
「了解!」
カミキの言葉に、特捜班が敬礼で答える。
「それともう一つ、襲撃犯の人種がミッド人と異星人、現状ではどちらか不明であることにより、本件の捜査は陸士隊との共同で行うことが決定した。派遣された捜査官は現在、素粒子研究所でザナディウム粒子の実用化研究を行っているシャーリーの警護についてもらっている」
以前、ザナディウム光線に含まれる怪獣をスパークドールズに圧縮する粒子の研究のためにスパークドールズを搬送する計画があったが、その研究もいよいよ完成間近に迫っていたのだった。現在、シャーリーがエレキングのスパークドールズを連れて研究所に赴いており、最終段階の調整を行っている。
「その捜査官はどなたなんでしょうか?」
『私よ、スバル』
宙に映像通信が開かれ、捜査官当人がスバルに答えた。
スバルとダイチが声をそろえる。
「ギン姉!」
映像の中の顔は、スバルの実姉であるギンガ・ナカジマ陸曹のものであった。スバルとダイチはどことなく嬉しそうだ。
カミキがスバルとノーヴェに向けて告げる。
「シャーリーが戻り次第、スバルとノーヴェの両名がギンガ陸曹とともに強奪事件の現場に向かい、犯人捜査を開始するように」
『よろしくね、二人とも』
「了解です――」
その指示にスバルとノーヴェが敬礼する――その瞬間に、基地に緊急サイレンが鳴り渡った!
「フェイズ2! エリアS2-7に急激な地殻変動を確認!」
アルトが発生した異常を知らせた。彼女の言葉を受けて、スバルがダイチに首を向ける。
「そこって確か、デマーガが現れた場所じゃ……」
「ああ、そうだ……」
デマーガが出現し、ダイチが初めてエックスとユナイトした場所……。ダイチにとって忘れられない一件だ。
モニターがエリアS2-7の現在の状況を映した。山間部から、莫大な炎と黒煙が噴き上がっている。
「S2-7地下から地殻変動、急速に上昇中!」
ルキノの報告の直後に、街の地面が突然裂け、地表を砕いて巨大怪獣が出現する!
『グバアアアア! ギャギャギャギャギャギャ!』
「デマーガ!」
それは間違いなく、あの時エックスによってスパークドールズにされたデマーガと同種であった。
「別個体がいたのか……!」
この事態により、カミキとクロノが迅速に指示を出す。
「ハヤト、ワタル、スカイマスケッティで現場に急行!」
「他はアラミスとポルトスで現場へ。マスケッティの支援と市民の避難誘導を」
「街への被害を最小限に抑えろ!」
「了解!」
特捜班八名が直ちに出動し、怪獣出現の現場へと向かっていった。
「グバアアアア! ギャギャギャギャギャギャ!」
あの時の再現かのように都市の中心を我が物顔で練り歩くデマーガの元に、スカイマスケッティが早くも到着した。すぐさまデマーガへ攻撃を仕掛ける。
「ファントン光子砲、発射!」
光子砲が火を噴き、弾幕を食らったデマーガの動きが停止した。
「グバアアアア! ギャギャギャギャギャギャ!」
「ここで足止めさせてもらうぞ!」
マスケッティがデマーガの侵攻を食い止めている間に、スバルたちはまだ大勢逃げ遅れている市民を避難させていく。
「こっちです! 焦らないで下さい!」
「俺はデマーガの解析をしてくる!」
そんな中でダイチは理由をつけて一人離れ、適当な場所でエクスデバイザーを取り出した。
「エックス、ユナイトするよ!」
『よし、行くぞ!』
いつものようにダイチがスイッチを押して、ユナイトを開始。
[ウルトラマンエックスと、ユナイトします]
「エックスーっ!!」
ダイチの肉体がウルトラマンエックスのものとなり、一気に巨大化!
「イィィィーッ! サァ―――ッ!」
[エックス、ユナイテッド]
一旦空高くに飛び出したエックスは、斜め下へ一直線に降下し、その勢いでデマーガに飛び蹴りを仕掛ける!
『Xクロスキック!』
「グバアアアア! ギャギャギャギャギャギャ!」
不意打ちで強烈な一発をもらったデマーガは耐えられるはずがなく、激しく横転した。
「グバアアアア! ギャギャギャギャギャギャ!」
すぐに立ち上がったデマーガは熔鉄光線を吐き出すが、エックスはクロスした腕で防御しながら光線を押し返して前進。
「シェアッ!」
間合いを詰めたところでデマーガの一本角を強打してひるませた。
エックスがデマーガと交戦を始めたことにより、マスケッティは砲撃を一旦止めて様子を見守る。
「エックス、あのデマーガもスパークドールズにするんだな」
「出現がもうちょっと後、研究が終わってからだったなら、俺たちでも出来たんだけどな」
デマーガはもうエックスが倒したことのある怪獣。ハヤトとワタルは、勝負の結果は既に決定しているとばかりに楽に構えていた。
「グバアアアア! ギャギャギャギャギャギャ!」
「ヘアッ! デッ!」
抵抗するデマーガに対してエックスは優勢に格闘戦を運んでいく。――が、この戦いの様子を、そう遠くない地点から例の女――古代遺物管理部を襲ったあの女が観察していることには、誰も気づいていなかった。
しかも女は、途中から視線をエックスたちの頭上――空へと移したのだった。
エックス登場により、このままつつがなくデマーガが撃退されると思われた状況。だが、オペレーション本部に突然異常事態を知らせるアラートが鳴り響いたのである。
「何が起きた!?」
カミキが問うと、アルトが原因を報告する。
「監視衛星が、宇宙から未知のエネルギー反応を確認!」
「何だって!? 未知の、エネルギー……!?」
「間もなくミッドに到達します! 落下予測地点は……S2-7です!」
それを聞いて、カミキとクロノは目を見開いた。一体何事が起きていて、何が起こるというのか。
デマーガと格闘中のエックスが、宇宙の彼方から急速に迫り来るエネルギーを感知してダイチに警告した。
『ダイチ、気をつけろ! 空から何か来るっ!』
『「えっ……!?」』
晴れ渡っている青空が突然黒く染まったかと思うと、漆黒の稲妻のようなものがまっすぐ地表へ――エックスとデマーガの間に降ってきた!
「ウゥッ!?」
『「うわぁぁぁぁぁっ!」』
黒い稲妻の落下の衝撃により、エックスは投げ出されて地面に叩きつけられた。一方でデマーガは……。
「グバアアアアアア! ギャギャギャギャギャギャ!」
双眸が充血よりも更に真っ赤に染め上がり、両肩と両腕に巨大で禍々しい刃が生えたのだった! 突然の変貌に特捜班はギョッと驚愕したが、怪しい女だけは満足そうに笑みを浮かべていた。
「デッ!」
姿が変わり果てたデマーガに直進していくエックスだが、デマーガは腕に生えた刃を振るってエックスの身体を斬りつけた! その動きは、先ほどとは比べものにならないほどの速度であった。
「急に強くなった……!?」
「い、一体何が起こってるっスかぁー!?」
チンクが息を呑み、ウェンディは雷が落ちたのを機に逆転した戦況にあわあわと狼狽した。
そしてデマーガが急激に強くなったことには、エックスも焦りを抱いていた。
『このままではまずい! 一気に決めるぞ!』
『「分かった……!」』
戦いが長引いては不利だと、エックスはザナディウム光線の構えを取る。同時に地を蹴って、空中から光線を叩き込む。
「『ザナディウム光線!!」』
光線は見事にデマーガに命中! ――だが!
「グバアアアアアア! ギャギャギャギャギャギャ!」
デマーガはスパークドールズに圧縮されず、健在! エックスもこれには動揺を禁じ得なかった。
デマーガは反撃とばかりに口から熔鉄光線を発射。それの威力も段違いに上がっており、エックスは吹っ飛ばされて空中から叩き落とされた。
「デアアァァァァァァッ!!」
『「くっ、まずい……! こうなったらモンスジャケットだ!」』
エックスの窮地に、ダイチはモンスジャケットで支援することを決める。まずはベムラーダの防御性能でデマーガの攻撃を防ぐことを狙う。
だが、カードをデバイザーに挿入した結果は、エラーの表示であった。
『「エラー!? ど、どうして!?」』
「エックスが、急に弱くなった……?」
ラボでは、グルマンの見解をマリエルが復唱していた。
「デマーガが強くなったということでしょうか?」
「恐らく両方だろう」
グルマンは黒い稲妻と現在のデマーガとエックスのデータを分析し、そう答えた。
「先ほどの宇宙からのエネルギーはデマーガの肉体に吸収され、大幅に変質させた。パワーと凶暴性が急激に上がり、剣が生えた個体……いわばツルギデマーガといったところか。一方でエネルギーはエックスのものとは反発するものであった。故にエネルギーを撃ち込まれたエックスは、身体が内側から破壊されていって力を落としているんだ」
エックスはなす術なく、ツルギデマーガの斬撃に嬲られる。
「やめろーっ!」
マスケッティが光子砲を放ってツルギデマーガの暴虐を止めようとするが、デマーガは振り向きもしなかった。
エックスの中では、ダイチにもダメージの影響が及んで彼がもがき苦しむ。
『「何が起きてるんだ!?」』
『未知のエネルギーに侵され……身体が、分解されているっ!』
『「何だって!?」』
モンスジャケットにエラーが出るのも、今のエックスがジャケットを装着できないような状態にまでなっているからであった。
『ユナイトを解除しなければ……ダイチも私も、身体が消滅してしまうだろう……!』
『「そんな……どうしたら……!」』
エックスはデマーガにやられ続けながらも、ダイチへ告げた。
『助かる方法は一つ……! ユナイトを強制解除して、君だけでもっ……!』
『「駄目だ! そんなことをしたらエックスが――!」』
『もう時間がない! お別れだ……!』
『「やめるんだエックスーっ!」』
「デュワァッ!」
ダイチが止める間もなく、ユナイトが強制解除された。ダイチの身体はエックスから離れ、地面の上に飛ばされて投げ出される。
そしてダイチと分離したエックスは、肉体を保てなくなり――その身体が、粒子となって霧散していってしまった……。
「ウルトラマンエックスが……!」
エックスが消え失せてしまったことに、特捜班は言葉を失った。ただ一人だけ、ハヤトが本部へ事実を伝える。
「――消失しました……!」
「実験結果は良好」
戦いの一部始終を観察し終えた女が、満足げにひと言発した。
「グバアアアアアア! ギャギャギャギャギャギャ!」
ツルギデマーガが路面を穿って地中に姿を消していくのを背景にして、女はどこかへと立ち去っていった。
「ダイチ!?」
地面に倒れたまま気を失ったダイチは、スバルとノーヴェに発見された。二人は慌てて駆け寄る。
「おいダイチ、しっかりしろ! ダイチぃっ!」
「ダイくんっ!!」
懸命な呼びかけでもダイチは目を覚まさず、Xioメディカルへと緊急搬送されていったのだった……。
Xioメディカルの治療室で、青ざめた顔のスバルがシャマルに尋ねかけた。
「シャマル先生、ダイチの容態は……!?」
案ずるスバルと特捜班の面々に対して、シャマルは安心させるように答えた。
「大丈夫、一時的に気を失ってるだけだわ。脳波も安定してるし、いずれ目を覚ますでしょう」
それを聞いてスバルたちはほっと胸を撫で下ろした。
「では私は、他の患者の手当てがありますので、これで」
「うむ、ありがとう」
シャマルが別の部屋へと移っていった後、カミキが特捜班へ向き直って呼びかけた。
「ダイチのことは、グルマン博士に任せよう。我々は、他にすべきことがあるはずだ」
皆が固い面持ちでうなずくと、カミキは新たな指令をそれぞれに発した。
「スバルとノーヴェは、デマーガの出現地点でシャーリーたちと合流し、他の個体が存在しないか調査。それ以外はエリアS2-7を警戒とともに、消失したエックスの行方を捜索してくれ」
「了解!」
スバルたちが敬礼し、治療室から離れて再度出動していった。ダイチの元にはグルマンだけが残り、彼の容態を見守る。
ベッドに横たわるダイチの方は、過去の夢を見ていた……。
ダイチの両親がどこかへ消失する以前の時のことを、夢に見ていた。三人でピクニックに行った日のことを。
ダイチの父は、空の一画を指し示した。
『ダイチ、見てみろ。虹が現れてる』
『ホントだぁ!』
雨上がりの空に虹が掛かり、雲の切れ間から差し込む陽射しに輝いていた。
『知ってる、父さん? 本で読んだんだけど、虹って、高いところから見ると、丸く見える時があるんだって!』
『へぇ~。詳しいな、ダイチは。勉強熱心でよろしい!』
父は知識を披露したダイチの頭をくしゃくしゃと撫で、そう褒めた。そして母は、こんな話をした。
『じゃあこれは知ってる? 虹の根っこには――幸せや大切なものが埋まってると言われてるの!』
『大切なものって、何?』
『ふふっ。それはねぇ――』
答える前に――父母の姿が光とともに、消えていく――。
この瞬間、ダイチは目を覚まして飛び起きた。
自らの置かれた状況を振り返ったダイチは、開口一番に言った。
「――エックスのデータを捜しに行かなきゃ!」
「起きたか!」
グルマンへと振り返ったダイチは、彼に頼みごとをする。
「グルマン博士、俺とデバイザーをつないで下さい!」
「えっ、何? つなぐ!?」
突然のことにグルマンは思いっきり面食らった。
「消えたエックスのデータを回収しないと……。きっと、電脳世界にエックスはいると思うんです!」
「ふむ、なるほど! つまり、デバイザーの転送システムを使って、電脳空間に入ろうってことか!」
流石は頭の良いグルマン。話が早い。
「そう! そういうことです!」
「うむ!」
早速二人はそのための準備に取り掛かるため、ラボに移動していった。
「ごめんね、エレキング。帰るのはもうちょっと待っててね」
その頃、シャーリーとギンガと合流したスバル、ノーヴェは、デマーガの出現地点にあった洞窟の中へと足を踏み入れていた。
「前に出現したデマーガも、ここで眠ってたみたいだね」
「でも、二体目はどうして今になって活動を開始したんでしょうか?」
疑問を口に出すノーヴェ。
「そこまでは、まだ何とも……」
シャーリーが言いかけたそ時――ギンガが怪しい物音と殺気をいち早く感知した。
「危ないっ!」
三人の前に飛び出し、左手用のリボルバーナックルを突き出し、音速で飛んできたムチを弾き返した。
「きゃっ!?」
シャーリーは驚いてエレキングのカプセルを抱え直し、スバルとノーヴェはギンガの左右に並んで攻撃が来た方向へ警戒を向ける。
「ほぉう、昨日の連中よりは出来るみたいだな」
洞窟の暗闇からは現れたのは――襲撃事件の犯人を写した写真の女、そのものであった。スバルたちは一瞬驚き、より警戒を強める。
「こんな場所に現れるなんて……!」
「どうやらデマーガも、あいつが糸を引いてるみてーだな」
「あなたは何者ですか? 何の目的で怪獣を?」
ギンガが問いかけると、ムチを自在に扱う女は余裕たっぷりの態度で答えた。
「この地に降り注ぐエネルギーを使い、狙うは全宇宙の支配といったところかしら。さっきの怪獣はその実験……」
「宇宙支配だ? 派手なのは見た目だけにしろよ」
ノーヴェが挑発したが、女は構わずにシャーリーへ向けて命令した。
「お前が抱えている怪獣を、このギナ・スペクターに差し出せ。怪獣は我がグア軍団の兵士とする。刃向かうのならば殺す!」
「グア軍団……?」
何のことか分からずに眉をひそめるスバルたちだが、ギナ・スペクターと名乗った女が悪しき目的でエレキングも奪い取ろうと目論んでいることは確かであった。
「そんなことはさせない! シャーリーさんはもっと後ろに」
「う、うん。お願い、三人とも!」
エレキングをかばうシャーリーを下がらせて、スバルたち姉妹はギナと交戦を開始する。
「リボルバーシュート!」
スバルとノーヴェが射撃を放って先制するが、ギナはムチを目に留まらぬほどの速度で振り回して射撃魔法を打ち消した。
「ただのムチで魔法を!?」
「いや、待って!」
目をこらしてギナをよく確かめるスバル。ギナの全身からは、魔力よりずっとおどろおどろしい怪しいオーラが放たれていて、それがギナの底知れぬ力となっているようである。
「少なくとも、普通の人間ではないみたいね……。三人とも、十分気をつけて!」
「うん!」「ああ!」
未知の力を振るうギナに対して、三人が警戒を深めながらも敢然と立ち向かっていく!
ダイチはグルマンの手を借りて、意識を電脳空間に移すベッド型の装置の用意を整えた。
「電脳世界を行き来するのは、人間には危険だぞ。分かってるだろうな?」
「覚悟は出来ています……!」
警告したグルマンに、大地は力を込めた声で応じた。
「俺は……いや俺たちは! 何度もエックスに助けられました……。だから今度は俺が!」
「よーしよし。転送の準備が出来た。無事に戻ってくるんだぞ、ダイチ」
「はい……ありがとうございます!」
ダイチの覚悟を確認したグルマンが、いよいよ装置の起動を行おうとする。ダイチは目をつむり、自身の精神が電脳空間に移動する時を待った。
(もう誰も消えさせない……。絶対にエックスを救ってみせる!)