『お熱いねー、お二人さん!』
「異星人ども! ミッドで勝手な真似は、許さん!」
「ワン・フォー・オール!!」
「ワタル、後は任せる」
「よっしゃ!」
「トラぁーイっ!!」
『溶岩熱線、発射!!』
「俺たちエックス助けちゃったよー!」
「おーい!」
――四年前、ダイチがスカリエッティに誘拐された時のこと。彼の協力を断ったダイチは、隠れ家の奥深くの牢屋に収容された。スカリエッティは自分の申し出を呑むまでは一歩たりとも出さないと脅迫してきたが、ダイチはやはりそれには屈しない心積もりであった。
『……ダイチ・オオゾラって言ったっけ? お前、いつまで強情張り続けるつもりだよ』
牢屋の中でじっと座ったままでいるダイチに、鉄格子越しに話しかける者が現れた。スカリエッティよりダイチの監視を申しつけられたナンバーズの一人、ノーヴェであった。
『意地になってたところで何も始まらねーぜ? ドクターの許しがない限り、お前がそこから出られる可能性は万に一つもないんだ。ここだけの話、もう後数日もしたら管理局崩壊の作戦が始まるんだ。こっちの準備は万端、管理局側には勝ち目なんて一つもない。つまりお前を助け出す奴なんて、いくら待ってたって現れねーんだよ。それを期待してるんだったら、悪いことは言わねぇ、すっぱりと諦めるんだな』
と忠告するノーヴェだが、ダイチの気持ちが変わることはなかった。
『助けを待ってるとか、そんなんじゃないよ。仮に管理局が負けてスカリエッティが実権を握ったとしても、俺は奴への協力なんて絶対にしない』
『おいおい……どうしてそこまでして』
『――俺がデバイス怪獣の研究をしてるのは、消えた両親の願い……俺自身の、人間と怪獣が共に生きる世界を作るという、大切な願いのためだ。我が身かわいさでスカリエッティの要求を呑んだら、俺は両親を、自分自身を裏切ることになる。そんなことは、絶対にしたくないんだ』
ダイチの言葉に、ノーヴェは困ったように頭をかいた。
『願いねぇ……あたしにはそういうのよく分かんねーけど……まぁ、ちょっとでも心変わりしたんなら、その時はあたしに言いな。あたしからドクターに口添えしてあげるからさ』
ノーヴェのその発言で、ダイチはこんなことを言い返した。
『君は優しいんだね』
『は……はぁっ!? あたしが、優しいだってぇ!?』
ノーヴェはギョッと目を剥いて、ダイチに振り返った。
『ば、馬鹿言うなよ! あたしはナンバーズでも一番のはねっ返りだぜ!? そんくらい自分でも自覚してるさ! そんなあたしが優しいなんて……そんなことあるもんかよ!』
『いいや。俺のことを心配して、口添えするなんてことを言ってくれたんだよ』
『それは、ドクターの欲求を叶えようと思ってのことだよ! 別にお前のことを考えてとか、そんなことは全然ないんだからなっ!』
少々顔を赤らめたノーヴェに、ダイチはふと尋ねかけた。
『優しいって言われたの、もしかして初めて?』
『……ああ。あたしは戦闘機人で、稼働期間も短いからな。身内以外の人間とまともに会話したことなんてないんだ。ドクターだって姉妹だって、そんなことは言ったことねーよ』
『つまり、外の世界を知らないのか……』
ダイチは眉をひそめる。
『それはもったいないよ、広い世界を知らないまま生きるなんて。どんな命も、自由に生きる権利があるんだ。君は、自由に生きたいって思ったことはないの?』
『自由に……? そんなん、考えたこともなかったぜ……。第一、こんなあたしが外でまともに生きられる訳ねーだろ。戦闘機人だぜ?』
『そんなの関係ないさ。俺は、君と同じような身の上だけど真っ当に生きていけてる子を知ってるんだから』
『お前の義理の姉妹の、タイプゼロたちのことか』
ノーヴェは一瞬、自分が普通の人のような生活をしている様子を想像したが、すぐにかき消した。
『……やっぱ出来っこないぜ、そんなの。あたしが普通に生きてる姿なんて、想像つかないから』
とノーヴェは語るも、ダイチは首を横に振った。
『いいや。誰だって、自由に生きるなんて当たり前のことは出来るさ。君は案外、面倒見がいい人間になれると俺は思うよ』
『まさか。あたしに限ってそんなことは……』
肩をすくめるノーヴェ。この時の彼女は、未来の自分のたどる道なんて全く予測できなかったのだった。
『ワタルの恋』
「~♪」
ミッドチルダ中央区の、何の変哲もない一般居住区の中を、鼻歌まじりに進む一人の男がいた。何を隠そう、我らがXio特捜班のワタルであった。
今日は私服姿で、いやにご機嫌そうだ。歩きながら度々変な動きをしており、道端の車に目を留めるとそれのミラーで髪型をチェックする。
そうしてたどり着いた先は、「喫茶りんどん」という小さな喫茶店。ワタルがその店の中に入ると、ウェイトレスの若い女性が振り返る。
「いらっしゃい!」
「……ああ」
ウェイトレスの笑顔を目にしたワタルは、それまで馬鹿に浮かれていたのが一気に落ち着きながらも、そわそわとした様子でテーブルに着いた。
ワタルの元にウェイトレスがお冷を運んでくる。
「はい」
「コーヒー……」
「マスター、コーヒー一つ」
「はい」
ワタルからのオーダーを受けると、ウェイトレスはそのまま彼の向かいの席に腰を下ろした。
「ねぇ……好き?」
「えっ……!?」
ウェイトレスがいきなりそう言うと、ワタルは一瞬硬直した。しかし、
「お稲荷さん!」
と言われて、今度は別の意味で固まった。
「……え?」
「ワタル君、初等科の頃好きだったでしょ? まだ好き?」
「……ああ」
「よかったー! 明日の試合に作ってくからね」
そう告げて席から立ち上がるウェイトレス。ワタルは彼女が背中を向けている間に、変な顔になっていた。
ウェイトレスはそんなワタルに振り返って言った。
「ワタル君。ありがとね、ここのバイト紹介してくれて」
「あ、ああ……」
はにかみ合う二人。ワタルの方は、ウェイトレスよりもずっと楽しそうな様子であった。
ところが新たに入店してきた二人組の顔を見て、言葉を失う。
「あっ、いたいた」
「ワタルー、捜したっスよ~」
ハヤトとウェンディであった。二人はワタルを詰めさせて、隣の席に陣取る。
「お前ら、何でここに!」
「スバルからここにいるって聞いてさ」
「ワタル、最近ここに通ってるみたいじゃないっスか~。そんなに気に行ったっスか?」
「近い! 近いぞウェンディ!」
「ちょっとぉ、そんなに嫌がらなくてもいいでしょぉ?」
ハヤトとウェンディが話しかけていると、ウェイトレスがテーブルを拭きにやってきた。彼女の顔を見上げたハヤトが、ふと目を大きく開く。
「新しい子?」
「……ナナコ、俺の幼馴染。こいつらはハヤトとウェンディ。前に話した同僚」
ワタルはそれぞれに軽く紹介した。ハヤトはウェイトレス、ナナコに微笑みかける。
「……初めまして」
ハヤトに笑顔を返したナナコは、手を滑らせてお冷をこぼしてしまった。
「きゃっ!?」
「わっ冷たっ!?」
こぼれたお冷がワタルとウェンディの膝に掛かって、二人は思わず飛び上がった。
「ごめんなさいっ!」
「ナナコ~!」
「すいません……! 洋服濡れなかったですか?」
ナナコはハヤトに向かって尋ねかける。
「大丈夫」
「すいません……」
テーブルを拭くのを手伝うハヤトの顔を、ナナコはじっと見つめる。そのナナコを、ワタルが口を半開きにして見つめていた。
そのワタルの様子を、ウェンディが怪訝な顔で覗いた。
翌日、ワタルはXioのチームを引き連れてラグビーの試合に臨んでいた。
「ブルーライオン対チームXioの試合を始めます!」
審判の前に整列する両選手たち。
「礼!」
「お願いしまーす!」
礼をして選手たちが散っていく中、ワタルは観客の方に振り向いて手を振った。
その先のナナコが、応援の団扇をワタルに振り返す。
そして始まる試合。ワタルは出だしからチームXioのエースとして目覚ましい活躍を見せ、トライを決めて先制点をもぎ取った。
「イェー……!」
ワタルは調子良さそうにナナコの方へ人差し指を向けたが……笑顔が途中で凍りついた。
「ワタルー! 応援に来てあげたっスよー!」
「何とか間に合ったな」
観客席には、新たにウェンディとノーヴェが駆けつけていた。が、ワタルの視線はその隣の方にだけ向いていた。
「ハヤトさん!」
ナナコの隣にハヤトが腰掛けたのだ。ナナコは明るい顔をハヤトに向けている。
「……」
舌打ちしたワタルだが、試合に戻ると鮮やかなコンバージョンキックを決めた。ワタルはポーズを決めて振り返ったが、
「いいぞワタルー!」
「流石やるじゃねーか!」
ウェンディとノーヴェは歓声を上げているものの、ナナコは稲荷寿司をハヤトに食べさせていてワタルを見ていなかった。
「美味しい!」
「ホント?」
それでたちまち不機嫌な顔となり、試合の最中にも関わらず集中力を切らして頭をかいた。
「おい、何やってんだよ!?」
ノーヴェが怒鳴った時にワタルの元へボールが飛んできて、全く見ていなかったワタルは驚いた様子でキャッチ。
「……うわぁーっ!!」
奇声を上げて、勢い任せに敵陣へ突っ込んでいく。その動きは、先ほどの洗練されたトライが嘘だったかのような杜撰なものだった。
案の定、あっさり止められて地面の上に倒された。
「おい、どうしちまったんだあいつ? いきなりプレイが雑になった」
「……」
訝しむノーヴェの一方で、ウェンディは今のワタルと、ハヤトと談笑するナナコを見比べた。
――この時、空から巨大な赤い火の玉が降ってきた!
「ニャ――――――――!」
火の玉はまっすぐ地上へと落下し、市街地の真ん中に轟音を立てて突っ込んだ!
落下地点からは、火の玉の正体……黒い真ん丸とした身体に大きな一つ目と細い触手という異形のボディから、それと丸で不釣り合いな猫みたいな耳や尻尾がちょこんと生えた変な見た目の巨大怪獣が立ち上がった!
「ムー!」
そして怪獣出現を皮切りとするように、地上に異常な量のダークサンダーエナジーが降り注ぎ出した!
「怪獣だ!」
「みんな、すぐに避難を!」
Xio隊員たちはすぐさま周りの市民たちを避難誘導していく。ワタルは荷物の元へ駆け寄って、ジオデバイザーで基地と連絡を取ろうとしたが、
「あれ? デバイザーが動かねぇ!」
「こっちもジェットエッジが変だ! 応答しねぇ!」
「立体ビジョンも不通っスよ!」
ノーヴェとウェンディの方も基地との通信が取れなかった。致し方なく、彼らも怪獣から逃走していく。
そんな中、ワタルはハヤトがナナコを誘導していくところを見咎めていた。
ワタルたちはその足でオペレーション本部へと駆けつけた。
「すいません、遅れました!」
「デバイザーその他全部が動作不良で……」
作戦室の照明も、異常な明滅を繰り返していた。クロノが理由を語る。
「電磁波に邪魔されて、予備動力への切り替えも支障が出ている」
「タイプA、怪獣の映像を出します」
アルトがメインモニターに怪獣の姿を映し出そうとしたが……。
『むがむが』
出てきたのは山のように積んだ肉まんを頬張っているグルマンだった。
「す、すみませんっ!」
赤面したアルトが映像を切り換えると、
『にゃあ~』
ごろごろと寝転んでいるアスティオンが出てきた。
『もぉ~、さっきから全魔力回路が滅茶苦茶ですよぉ!』
ラボからシャーリーがぼやいたところ、ようやくモニターに怪獣の姿が表示された。
『あっ直った。……このムーから出てる電磁波が基地の許容範囲まで超えてまして、それでこんなことに』
「ムー?」
何のことかと聞き返すワタル。
『私が名前つけました。ムーって鳴くから』
『ムー!』
『ほら』
「まぁ確かに……」
『ちょっと待ってて下さい。今基地の機能を修復してますから……』
シャーリーとマリエルが基地のメインシステムに手を加えたことで、作戦室の照明がようやく安定した。
「怪獣はエリアT-1を移動中です」
「ジオマスケッティはまだ使えないのか」
『すみません、まだです!』
カミキの問いにマリエルが申し訳なさそうに答えた。
「了解……。ハヤト、ノーヴェはアトス、ワタルとウェンディはアラミスで出動。ポルトスで出動したダイチとスバルと合流、三方から取り囲んで動きを封じるんだ!」
「了解!」
命令を受けたワタルたちが出動していく。
エリアT-1では、信号の色が滅茶苦茶に切り替わって、交通網が完全に麻痺していた。車に乗っていた市民はやむなく乗車を捨てて避難していっている。
「うあー、至るところ無茶苦茶なありさまっスね……」
「早いとこ何とかしないとな」
アラミスが作戦ポイントにたどり着くと、降車したワタルとウェンディはムーの巨体を見上げる。
「ニャーア」
「あんたくらいに迷惑な奴は初めてっスよ! 食らえーっ!」
二人はムーに射撃を仕掛ける。しかし、魔力弾はムーの手前で拡散してあらぬ方向に飛び散っていった。
「あれ?」
『それは電磁波の影響だ! 怪獣の周りにあまりに強力な磁界が発生しているので、魔力弾が反発されて怪獣まで届かないのだ!』
どういうことかグルマンが伝えた。
「マスケッティは飛ばない、魔法も弾かれるんじゃ、どうしたらいいっスか!?」
ウェンディはそう問い返したが、彼らがそれ以上何もしない内に、ムーの方に動きがあった。
「ムー!」
何故か宙に飛び上がって、そのまま空の彼方へ飛び去っていったのだ。
「……何だあいつ?」
ワタルのひと言に、ウェンディも首を傾げた。
その後、ムーは一向に再出現する気配を見せなかったため、Xioは一旦警戒を解除した。ムーに対する情報分析が完了するまで、特捜班は英気を養う一時の休息を取ることとなった。
ワタルはそれを利用し、口笛を吹きながら喫茶りんどんへと向かう。……だが、店の窓から店内を覗き込んだことで、楽しそうな顔が一気に驚愕に染まった。
何と先にハヤトが店に来ていて、ナナコと楽しそうにおしゃべりしているのだ!
ワタルは大ショックを受けた表情を、窓ガラスに息が掛かるほど近づけた。するとナナコがワタルの存在に気がつき、無邪気に手を振ってきた。
動揺を隠せないワタル。その様子にナナコとハヤトは怪訝な顔となった。
一方でワタルは突然腕で×印を作ったかと思うと、両腕をぶらぶらさせてカカシのようなひと昔前のイメージのロボットのようなカクカクした動きを見せる。
「何だあいつ?」
「あんな人だっけ、ワタル君?」
ワタルの奇行に、ハヤトとナナコは疑問が口から突いて出た。
ワタルの方は急に敬礼したかと思うと、エスカレーターのパントマイムで窓から離れていった。ハヤトたちは、はてなマークが頭の上にずっと浮かんでいた。
「うぅ~……!」
そしてワタルはハヤトたちから見えない角度で、その場にうずくまってうなっていた。
この一連の行動を、遠くからノーヴェとウェンディがながめていた。
「何やってんだあいつ」
「……」
ノーヴェは呆気にとられていたが、ウェンディは妙な感じに黙りこくっていた。
ムーの情報の解析が完了し、本部に特捜班の総員が集められた。彼らを相手に、シャーリーとマリエルが解析結果を発表する。
「ムーの出現と同時に、ダークサンダーエナジーが降り注いだでしょう。あれは私たちの予想以上に大変なことだということが判明したんです!」
「ムーがいる時には、ダークサンダーエナジーの発生が2.16倍にも増えてることが分かりました!」
「それって、ムーがダークサンダーエナジーを操ったってこと?」
つぶやくディエチ。
「そんな恐ろしい能力があるのか?」
「操ってると言うよりは、ムーから発生してる強力な磁界がダークサンダーエナジーを引き寄せていると言うのが正しいでしょう」
クロノの問い返しに、マリエルが訂正しながら回答した。
「それだけ電磁波が膨大ということです」
「その力を利用して、スパークドールズを実体化しようとしている黒幕がいるのかもしれないな」
「これも異星人犯罪者の陰謀でしょうか……」
カミキとクロノが懸念していると、モニターにグルマンの顔が表示された。
『そろそろ作戦会議を終了したらどうだ。電磁波が増え始めているぞ』
「またムーが来るのか!」
チンクが発すると、カミキが部下たちに指示を下す。
「ワタル、ウェンディはスカイマスケッティで偵察。他は警戒態勢を強化させろ!」
ワタルとウェンディが先行し、格納庫のアトスに乗り込む。と、助手席のワタルがバックミラーにお守りが吊るしてあるのに気がついた。
「あれ? こんなのあったか?」
「ああそれ。ハヤトがナナコさんからもらってここに吊るしたんっスよ」
ウェンディのひと言に、ワタルは驚愕。
「えっ!? いつ!?」
「さっき」
ワタルはしばし呆然としたかと思うと、深く長いため息を吐いた。そんなワタルの様子をながめたウェンディが、彼に問いかけた。
「ナナコさんのこと、好きな訳っスか?」
それで噴き出すワタル。
「ばっ!? お前、何を……! ナナコはた、ただの幼馴染だよ……!」
「強がらなくてもいいっスよ。そうでなきゃ、ハヤトがナナコさんと仲良くしてるのを見て、あんなみょうちくりんな振る舞いする訳ないじゃないっスか」
「げっ!? お前見てたのか!?」
「そりゃあもうばっちりと」
見られていたと知って、ワタルはずーん……と落ち込んだ。そこに続けてウェンディは語る。
「悪いことは言わないから、さっさと諦めつけた方がいいっスよ。そもそも、ナナコさんにはあんたへの脈はこれっぽっちもないっスよ」
「は、はぁ~!? 何でお前にそんなこと分かるんだよ……!」
「そりゃああたしだって女の子っスからね。見てればそれくらいの気持ちは分かるっス。そもそも、ワタルにちょっとでも気があるんだったら、会ったばかりのハヤトに簡単になびいたりしないっスよ。そう思わない?」
聞き返されたワタルは、顔色を何度も白黒させながらうんうんうなった末に、がっくりうなだれた。
「はぁ~……どうしてなんだ、ナナコぉ……」
「まぁそう落ち込まないで。思い通りにならないのが恋愛ってものじゃないっスか」
「くそっ、ウェンディのくせに知った風な口利きやがって……!」
「何スかその言い草。ほら、そろそろ気持ち切り替えるっスよ。出動するっス」
「うぅ……ちっくしょお~っ!」
ワタルの悲痛な叫び声を車内にこだまさせて、アトスは基地から発進。マスケッティとジョイントし、電磁波の発声ポイントへ向けて飛翔していった。
スカイマスケッティが到着した市街地には、ちょうどダークサンダーエナジーが連続で落下していた!
「ムーの姿は確認できないっスけど、電磁波がどんどん強くなっていって……わぁっ!」
報告の途中で、マスケッティを激しい揺れが襲った。機体のバランスが崩れているのだ。
「コントロールまでおかしくなってきたっス……!」
「ムーだっ!」
叫ぶワタル。アトスのフロントガラスの前を、空から下りてきたムーが横切る。
「ムー!」
ムーはそのまま地上に着地した。その身体から発せられる電磁波により、周辺の建物から火花が散る。
「ニャーア!」
「エリアT-3にムー出現!」
「スカイマスケッティ、機体が安定しないっス!」
『着陸は出来るか!?』
「駄目っス! 着陸態勢も取れないっス!」
ウェンディがカミキに返している中で、ワタルはムーの挙動を視認した。
「ニャアー」
ムーはその場から動かず、周辺に一つだけの目を走らせている。
「あいつ……何か探してるのか……?」
ワタルはそんな風に感じた。
他のメンバーも現場に到着。ダイチはガオディクションでムーの感情を読み取ろうとするが、
「何だ!?」
「どうしたの!?」
スバルがデバイザーの画面を覗き込むと、ガオディクションの画面が激しく乱れていた。
「ガオディクションもおかしくなってる……! これじゃムーの感情が分からない……!」
Xioベースのラボでは、保管されているスパークドールズが次々降り注ぐダークサンダーエナジーの影響によって不安定な状態になりつつあった。
「危険な状態だわ……!」
「このままじゃ、スパークドールズが実体化しちゃう!」
ウェンディは必死にハンドルを操作してマスケッティの姿勢を保とうとする。――その前方の空で黒雲が渦巻き、ひと際強いダークサンダーエナジーが地上に降った!
「ピッギャ――ゴオオオオウ!」
その地点から怪獣が地上に出現!
「レッドキングです! 埋まっていたスパークドールズが実体化したようです!」
ダイチは怪獣の分析をしながら走る。
「やっぱり、これが目的だったってことっスか!?」
焦燥するウェンディ。マスケッティはまだ出力が不安定で、攻撃に移ることは出来ない。
「ピッギャ――ゴオオオオウ!」
「ニャッ! ニャッ!」
レッドキングは特に暴れん坊な怪獣だ。自分の周りのビルを手当たり次第に倒壊させる。ムーはレッドキングを前にして驚いたようで、文字通り目を丸くして立ち尽くしている。
ダイチはレッドキングの暴行を止めるべく、エクスデバイザーを構えた。
「エックス、ユナイトだ!」
『よぉし、行くぞっ!』
スイッチを押して、ユナイトを開始!
「イィィィーッ! サァ―――ッ!」
[エックス、ユナイテッド]
変身を遂げたエックスが、ムーとレッドキングの前に颯爽と登場したのであった!