光輝巨人リリカルなのはX   作:焼き鮭

46 / 69
ワタルの恋(B)

 

「セヤァッ!」

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 エックスが出現するとすぐに、好戦的なレッドキングはそちらに振り返って威嚇する。エックスも戦闘の構えを取って戦意満々の様子だ。

 ここからエックスとレッドキングの激しい決闘が開始される!

 

「ニャ――――――ッ!」

「グワッ!?」

 

 ……と思いきや、いきなり横からムーがエックスに飛びつき、エックスは身動きが取れなくなってしまった。

 

「ニャッ! ニャッ!」

「グゥゥゥッ!」

 

 ムーの触手が絡みついてにっちもさっちも行かないエックス。引き剥がそうとするもムーはべったりエックスにくっついて全然離れない。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ……?」

 

 これにレッドキングは立ち尽くして唖然とする。が、長くじっとしていられないのがこの怪獣、急に思い立ったように背後のビルを腕力で粉砕した。

 

「くっ! やっぱりムーはミッドを狙う黒幕の手先なんスか!? だからエックスの邪魔をっ!」

 

 険しい表情となって、マスケッティの立て直しを急ぐウェンディ。しかしその一方で、ワタルは何かに思い至ったようにムーを見つめた。

 エックスにベタベタ絡みつくムーと、バックミラーに吊るしてあるお守りを見比べて……いきなり笑い出した。

 

「あはははははは!」

「どうしたっスか、こんな時に! 何がおかしいっスか!?」

 

 ウェンディが流石に苛立って詰問すると、ワタルはあっけらかんと告げた。

 

「ムーは何もたくらんでないよ。黒幕もいない!」

「はぁ? 何でそんなことが分かるっスか」

 

 突然のワタルの言動に唖然とするウェンディに、ワタルは続けて言い切った。

 

「ムーは……エックスに恋をしてるんだ!」

「へ? 恋!? ラブ!? 怪獣がウルトラマンに?」

 

 予想外の言葉に開いた口がふさがらないウェンディ。

 

「そんな馬鹿なこと……」

「いいや、きっとそうだ。俺には分かるぜ……」

 

 ウェンディには呆れられたが、ワタルはムーを自身と重ね合わせることで、その確信を得ていた。あの態度、あの様子、あの行動……恋をしている者特有のものだと。

 

「グッ……トォッ!」

「ニャー!」

 

 一方、当事者のエックスはどうにか力ずくでムーを剥がし、押し飛ばした。が、ムーは触手の爪をビルに引っ掛けることで停止した。

 

「ムー!」

 

 エックスは改めてレッドキングと対峙する。

 

『来い、レッドキング! 私が相手だ!』

「ニャア――――――――!」

 

 勇んだエックスだが、またもムーが飛びついて絡みついてきた。こんな調子では戦いにならない。

 ダイチはムーの様子から、薄々事実に勘付く。

 

『「エックスに、懐いてるみたいだね……」』

 

 しかしエックスはムーに対して困惑気味。

 

『でも、私はこんな奴……見たこともないぞ!』

 

 エックスがてんやわんやしていたら、結果的に放っておかれていたレッドキングがとうとう痺れを切らして怒り出した。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 自分からエックスの方へ向かっていく。するとムーが向き直り、レッドキングに威嚇して体当たりしていった。

 

「ニャッ! ニャア―――――ッ!」

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 だがレッドキングのパンチ一発で弾き飛ばされてしまった。ムーは超強力な電磁波を放出する能力がある反面、素の身体能力は筋肉の塊のレッドキングには遠く及ばないのだった。

 

「ニャーッ!!」

 

 街のど真ん中に墜落するムー。それを目の当たりにして、迷惑していたとはいえエックスが義憤を見せる。

 

『何てひどいことを! 許さんぞっ!』

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 レッドキングに飛び込み拳打を見舞う。が、レッドキングの筋骨は鋼鉄のようであり易々と受け止める。反対にぶちかましを食らって大きくよろめいた。

 

『すさまじい怪力だ……!』

『「ゴメスにも負けないくらいだ!」』

 

 レッドキングは更にエックスの身体を肩の上に担ぎ上げ、背後へ叩き落とす。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

「グアッ!」

 

 続いて近くのビルの屋上にある丸い給水タンクを掴み、それを鈍器に殴りかかってきた。

 

「フッ!」

 

 しかしエックスもレッドキングのパワーに対応してきた。腕を差し込んで殴打を止め、タンクを奪い返して元の場所に戻した。

 

「ジュワッ! ヘァッ!」

 

 そしてレッドキングの顔面に肘鉄を決めてひるませると、首を捉えて背負い投げ!

 

「セアァッ!」

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 仰向けに倒れたレッドキングの顔を、先ほどの恨みかムーが触手でペチペチ殴る。

 

「ニャア―――ッ!」

『どいてろっ!』

 

 しかしこれは危険だ。エックスの警告も虚しく、ムーはガバッと起き上がったレッドキングに丸い胴体を掴まれた。

 

「ニャアッ!?」

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 ムーが逃れようともがくが……その時にムーの電磁波に引き寄せられて、新たにダークサンダーエナジーが落下した!

 ダークサンダーエナジーはレッドキングに命中する!

 

「ニャアーッ!」

「ピッギャ――ゴオオオオウ!!」

 

 ムーは弾かれたが、レッドキングの方は巨体と筋肉が更に膨れ上がり、赤黒い皮膚と胴体に対して大きすぎる豪腕を持ったEXレッドキングへと変貌した!

 

「ヘアッ!?」

「アワアワアワ……!」

「うわぁっ! レッドキングが、パワーアップしたっス!」

 

 一斉に驚愕するエックスたち。彼らの視線を集めるEXレッドキングはますます凶暴になり、左右の豪腕を頭上に高々と振り上げる。

 

「な、何だかやべー雰囲気だぞ……!」

「全員後退だっ! 近くにいたらまずいっ!」

 

 ノーヴェがおののき、焦るチンクの呼びかけで地上の特捜班は急いでレッドキングから離れていく。

 そしてレッドキングが両腕を地面に振り下ろすと、ズドォォンッ!! とものすごい轟音とともにエリアT-3全域が激しく震動した。

 

「ウゥッ!?」

「うわあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 エックスでさえバランスを崩す震動。ノーヴェたちは漏れなくその場に転倒した。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!!」

 

 レッドキングは再度地面を殴って震動を巻き起こす。周囲の建築物は衝撃で窓ガラスが全て叩き割られた。

 

「た、立っていられない……!」

 

 EXレッドキングの桁外れのパワーの衝撃に、スバルたちは起き上がることも出来ない。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!!」

 

 そしてレッドキングはエックスに肥大した豪腕の拳をぶち込む!

 

「グワアァァァァァッ!」

 

 エックスは耐えられるはずもなく、殴り飛ばされて地面に叩きつけられた。

 

「ニャアーッ!」

 

 ムーが口から電磁波光線を吐いて攻撃するも、レッドキングは片腕で完全にガード。しかも狙いをムーの方に移す。

 

「ニャニャアッ!?」

 

 仰天して後ずさるムー。その華奢なボディに今のレッドキングの攻撃を一発でも食らったらひとたまりもないぞ! ムー危うし!

 しかしここで、ずっと不調だったスカイマスケッティの機能が一気に回復し出した。

 

「おっ、調子が上がってきたっス! 電磁波の量が減ったからっスかね」

 

 ムーが光線を吐いた直後から、一帯の電磁波が弱まったのだ。どうやら電磁波を一点に集中して放出すると、その後しばらくは放出量が減少するようだ。

 

「よぉしっ! それじゃあ俺たちの攻撃のターンと行こうぜぇ!」

「オッケー!」

 

 それまでふらついていることしか出来なかった鬱憤を晴らすように、マスケッティが猛然とレッドキングへ向かっていった!

 

(♪ワンダバUGM)

 

「トラーイっ!」

 

 ワタルの発射したファントン光子砲が、今まさにムーに殴りかかろうとしていたレッドキングの顔面に全弾命中。ダメージは見られないが、弾幕でひるませることには成功する。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!!」

「ニャアーッ!」

 

 その間にムーは退避することが出来た。一方のレッドキングは、邪魔をしたマスケッティに敵意を向けてそれを追いかける。

 

「おっとぉっ!」

 

 丸太のような豪腕が振るわれるが、ウェンディの巧みな操縦によってマスケッティは難なくかいくぐった。

 

「筋肉つけ過ぎて、ノロマになっちゃったんじゃないっスかぁ? 減量した方がいいっスよ」

「ピッギャ――ゴオオオオウ!!」

 

 ウェンディの挑発が聞こえているのでもないだろうが、レッドキングは苛立って地面を殴りつけた。だがいくら地面を揺らそうと、飛行するマスケッティに影響はない。

 そしてマスケッティがレッドキングの気を引きつけている間に、エックスは体勢を立て直した。

 

『こっちも行くぞ!』

 

 エックスの内部で、ダイチがエクスディッシュを召喚する。

 

[ウルトラマンエックス、パワーアップ!]

「『エクシード、エーックスっ!!」』

 

 虹色の輝きにより、エックスの身体がエクシードXのものに変身した。

 エックスは額のエクスディッシュを手に取り、アサルトフォームに変形させる。

 

「『エクスディッシュ・アサルト!!」』

 

 レッドキングはエックスの変身に釣られてそちらに向き返り、パンチを繰り出す。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!!」

「ジュワッ!」

 

 だがエックスはエクスディッシュ・アサルトの柄を盾にして、パンチを受け切った。

 ここでウェンディが告げる。

 

「あれやるっスよ! フォーメーション・ヤマト!」

「ヤマトをか!? この状況でいけるのか?」

 

 フォーメーション・ヤマトとは、怪獣災害ピーク時にヤマトという管理局員が考案した、二人以上がひと組となって行う対怪獣用の攻撃フォーメーションである。まず先行する囮が怪獣の面前で急上昇することで怪獣の注意を引きつつ、首を上に向かせることで無防備にする。そこにすかさず本命の後続ががら空きのボディに攻撃を叩き込むという連携だ。非常に効果的であり、これによって倒された怪獣も数多いが、囮役にはもちろん危険が大きいので相当熟練した腕前がないと不可能な、難易度の高いフォーメーションである。

 しかしウェンディには実行できる自信があった。

 

「任せるっスよー! それじゃ、レッツゴー!」

 

 マスケッティのエンジンが火を噴き、宙返りしてエックスの背後からその脇を通り抜けていく。

 その中でウェンディはエックスにぐっと親指を立てた。

 

「ジュッ!」

 

 ジェスチャーが伝わり、エックスは固くうなずいてエクスディッシュを構えた。

 

「ワタル! 今っス!」

「おう! トラァーイっ!!」

 

 レッドキングに向けて直進していくマスケッティから光子砲の連射が放たれ、レッドキングに直撃。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!!」

 

 レッドキングは怒り心頭してマスケッティを叩き落とそうとするが、マスケッティはスピードを落とさないまま急激に上昇。レッドキングは見事に釣られて目でマスケッティを追った。

 この瞬間、エックスが仕掛ける!

 

「『エクシード! エクスラッシュっ!!」』

 

 一直線に飛ぶエックスの斬撃がEXレッドキングに入り、肥大化した肉体が縮んで元のレッドキングのものに戻った。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 エクシードXは側転しながらの着地とともに二段変身を解き、腕をX字に組んで光線を発射!

 

「『ザナディウム光線!!」』

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 隙のない連撃がレッドキングに決まり、レッドキングは爆発を起こしてスパークドールズに圧縮されていった。

 

「やったっ!」

「スパークドールズを回収します!」

 

 ぐっと拳を握って歓喜に沸く地上の特捜班。スバルはレッドキングの元へと単独で走っていった。

 

「やったーっ! フォーメーション・ヤマト大成功っスー!」

「ああ、見事なもんだったぜ」

 

 マスケッティのコックピットではウェンディが大歓声を発していた。そしてワタルと手の甲をぶつけ合い、機嫌を良くしてはにかんだ。

 エックスの方は、ムーに近づいて頬(らしきところ)を撫でる。

 

『大丈夫か?』

「ニャアッ♪」

 

 目をハートマークにしたムーだが……その瞬間に、臀部(らしきところ)からピンク色のガスを噴出した。

 

「ニャッ!?」

 

 途端に動揺を見せるムー。放たれたガスは風に乗って広がっていき……エックスとスパークドールズを回収したスバルを覆った。

 

「……?」

 

 するとどうだろうか、エックスの様子が不意におかしくなった。前後不覚に陥ったかのように周囲を見回し、ムーに向き直るとはたと動きが止まる。

 

『この怪獣は何だ?』

『「見たことのない怪獣だね」』

『いつの間に現れたんだ?』

 

 スバルの方も、キョトンとして辺りを見回したかと思うと、ムーを見上げて本部に通信をつなぐ。

 

「エリアT-3に怪獣出現! タイプA! 未知の怪獣です!」

 

 オペレーション本部のカミキたちは、スバルの奇妙な言動に戸惑う。

 

「スバル、何を言ってるんだ? ムーはさっきからいるだろう!」

『ムー? ムーって何ですか?』

「スバル、一体どうしたんだ!? 大丈夫か!?」

 

 クロノは意味不明な発言を重ねるスバルが心配になったが、グルマンがこれは何事が起きたのかをずばり言い当てた。

 

「分かった! さっきのガスは忘却物質だったんじゃないかな?」

「忘却物質!?」

「浴びた生物は直前までの出来事……ムーのことを綺麗さっぱり忘れてしまうのだ!」

 

 グルマンの言葉の通り、エックスとダイチ、スバルはムーのおならに含まれる忘却成分により、ムーのことを完全に忘れ去ってしまったのだ。

 エックスはムーから発せられている電磁波を警戒する。

 

『この怪獣、ものすごい電磁波を放っているぞ!』

『「凶暴な奴じゃないみたいだけど……この電磁波はこのままにはしておけないよ!」』

 

 エックスはムーの身体を鷲掴みにして頼み込む。

 

『おい、ミッドから立ち去ってくれ!』

「ムー!」

 

 スパークするムーの身体を掴んだので、電流がダイチのところにまで流れる。

 

『「うわっ! 電磁波が……!」』

 

 エックスは強引にムーを空高くへ向けて投げ飛ばした。

 

『宇宙へ……帰れー!』

 

 ムーが地上から離れたことで、マスケッティの機能は完全に正常となる。

 

「コントロールが完璧戻ったっス! 着陸!」

 

 ウェンディはマスケッティからアトスを切り離し、着陸。その近くに、避難中のナナコが通りがかる。

 

「あっ、ナナコ!」

 

 ワタルは大きく手を振るナナコに喜色を浮かべて手を振り返した。対するナナコは叫ぶ。

 

「ハヤトさーん!」

 

 ハヤトの名前を。

 

「大丈夫だった?」

 

 ワタルの横を通り過ぎていったハヤトはナナコの元に駆け寄り、彼女を気遣う。

 ワタルは手を挙げた姿勢のまま凍りついていた。ウェンディはそんな彼の肩をポンポンと叩いて慰めた。

 

「ムー!」

 

 一方で投げ飛ばされたように見えたムーだが、そのまま引き返してきてエックスに飛びついた。

 

『「戻ってきた!」』

『悪いが、お前がいると迷惑なんだ……! 頼むから帰ってくれ!』

 

 エックスはムーをグイグイと押しやり、宇宙へ追い返そうと必死になる。

 すると……立ち尽くすワタルのブーツに、空から水滴が落ちた。

 間を置かずして、ワタルとウェンディの頭に水がどしゃ降りに降りかかる。

 

「えっ、雨……!?」

 

 ウェンディが頭上を見上げると……それが雨でないのが判明した。

 

「ニャア――――――――!」

 

 エックスに拒絶されて、ムーの大きな一つ目から飛び散る大量の涙が正体だった。

 ワタルは腕を広げて、ムーの涙を受け止める。

 

「そうだムー、泣け……! その涙で、俺の恋を洗い流してくれ……!」

 

 ムーの涙はワタルの恋を洗い流す他にも、エックスにある影響を与えていた。

 

「……!」

 

 エックスの脳裏に、ある映像がよみがえる……。

 

 

 

『キャア――――ッ!』

 

 十五年前、宇宙の彼方の小惑星上で、怪獣ドラコがムーを散々踏みつけていた。ムーは過去にドラコに狙われていじめられていたのだった。

 

『おいっ! 何をやっている!』

『キャア――――ッ!』

 

 そこに通りがかったのがエックス。彼はドラコの羽を掴んで振り向かせると、逆上して襲いかかってきたドラコを返り討ちにしてムーを助けた。

 

『大丈夫か?』

 

 エックスは、ムーと出会っていたのだ。だがエックスは今回と同じようにムーを忘れ、ムーは自分を追いかけてミッドチルダへとたどり着いた……。

 

 

 

『はっ……!』

 

 涙によって忘却物質が洗い流され、消えていた記憶が全て戻ったエックスは、ハッとしてムーに向き直った。

 

『ムー! 思い出したよ! 久しぶりだなぁ! 元気だったか?』

 

 先ほどまでとは打って変わって、親しく呼びかけたエックスだが、

 

「……ムー!」

 

 今度はムーが急にエックスへの興味を失い、宇宙へ向けて飛び去っていった。

 

『ムー!? おい、どうしたんだよ!』

 

 エックスはポカンとしたまま、それを見上げていた……。

 

 

 

 ムーの涙は、エックスの失った記憶を呼び戻した。

 しかし、その代わりに……自分の記憶を失ったのかもしれない……。

 エックスへの恋を失って……ムーはもう、惑わない……。

 

 

 

「~♪」

 

 ムーの一連の騒動が終わった後、ウェンディはXioベースで鼻歌混じりに手鏡で髪型をチェックしていた。そこにノーヴェが後ろから話しかける。

 

「ウェンディ、やけにご機嫌みたいだな」

「あっ、ノーヴェ? いやいや、そんなことないっスよ~?」

 

 とか言いながら、ウェンディは見るからに上機嫌だった。それにノーヴェは白い目を向ける。

 

「これからワタルの奴をカフェに誘うんだろ? ……人の失恋を喜ぶなんて、性格わりー奴だなオイ」

「だから、別に喜んでなんかいないっスよ~。何であたしが、ワタルの恋路なんかを気にかけたりしなきゃいけないっスかぁ。気のせいっスよ、気のせい」

 

 適当に話を打ち切って、ウェンディはトレーニングルームへと向かっていく。

 

「うおおおぉぉぉぉぉっ!」

 

 そこで奇声を上げて射撃訓練に打ち込んでいたワタルを捕まえる。

 

「ワタルー! もうお昼休憩の時間っスよー! 今日はあたしにつき合うっス!」

「ウェンディ!? な、何だよ急に!」

「いいからいいから~! 今度はあたしのお気にのカフェを教えてあげるっスよ! さぁほら早く来て! 休憩終わっちゃうっスよ!」

 

 ワタルを引っ張って連れていくウェンディ。そのウキウキとした後ろ姿を呆れたように見送ったノーヴェだが……不意に寂しげに顔をしかめた。

 

「お前はいいよな、ウェンディ……」

 

 踵を返してラボに向かっていくノーヴェ。そこでダイチの姿を認めると、少しだけ顔を輝かせて近寄ろうとした。

 だが……すぐに足が止まってまた表情が曇った。

 

「はぁ~……昨日は何だか散々だったよ。地面揺らされてすっ転んだり、記憶を失って隊長たちから変な顔されたり……」

 

 ダイチは、スバルと会話をしているところだった。

 

「あはは、お疲れさまスゥちゃん。まぁでも過ぎたことは気にしないで、気分を切り換えていこうよ。そうだ、今日のお昼は外に食べに行かない? 美味しいお店見つけたんだ」

「ほんと、ダイくん!? うん、行く行く!」

 

 ダイチとスバルは談笑して笑い合っている。その様子を見て、ノーヴェはダイチに向けて挙げかけた手を下ろした。

 

「……あれ? ノーヴェ?」

 

 そこでダイチたちはノーヴェの存在に気がついた。スバルがノーヴェに尋ねる。

 

「ノーヴェ、どうかしたの? そんなところで突っ立って」

「……何でもねーよ。たまたま通りがかっただけだ」

「ふーん?」

 

 ダイチは何か閃いたように、ノーヴェに誘いかけた。

 

「ノーヴェ、これから俺たち外食しに行くんだけど、よかったら一緒に来ない? それとも予定あるかな」

 

 ノーヴェはダイチと、スバルの顔を見比べると、目を伏した。

 

「……まぁな。そういうのは、またの機会にしてくれ」

「そうか、残念だな。じゃあノーヴェ、また後でね」

 

 ダイチとスバルは連れ立って、ノーヴェの元から立ち去っていく。

 

「……」

 

 ノーヴェは二人並んで歩く後ろ姿をじっと見つめ……やがて、力ない様子で背を向けたのだった。

 

 

 

『ダイチの怪獣ラボ!』

 

ダイチ「今回の怪獣はキングゲスラだ!」

ダイチ「ゲスラは『ウルトラマン』第六話「沿岸警備命令」に登場した怪獣だ! 元々は小さなトカゲだったんだけど、東京湾の汚水によって突然変異して巨大怪獣になってしまったんだ! 人間の環境破壊の犠牲者だったんだね」

エックス『着ぐるみは当初幼虫モスラの改造にする予定だった。劇中の台詞にも、それを前提とした内容のものがあるぞ』

ダイチ「そして『大決戦!超ウルトラ8兄弟』で強化体のキングゲスラとして登場! 横浜の赤レンガ倉庫でウルトラマンメビウスと戦ったぞ!」

エックス『その後ギガキマイラのパーツの一部になっていたな。大分大きな部分をゲスラの顔が占めていた』

ダイチ「『ウルトラマンX』ではダークサンダーエナジーに打たれてショッピングモールの真ん中に出現してしまい、街を大混乱に陥れたぞ!」

エックス『弱点の背びれが取れなくなっていたり、毒のトゲを飛ばしたりと大幅なパワーアップを果たしていたな』

ダイチ&エックス「『次回も見てくれよな!」』

 




 スパークドールズの実体化実験……。俺たちは遂に、ゴモラの実体化に成功する! でもその時、ダークサンダーエナジーが降り注ぎ、ゴモラは凶暴な姿になって暴れ出してしまった! これをたくらんだのは、人工生命? 一体お前は何者なんだ! 次回、『共に生きる』。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。