光輝巨人リリカルなのはX   作:焼き鮭

48 / 69
共に生きる(B)

 

 人工生命M1号を前にして、エックスはダイチに呼びかける。

 

『ダイチ、今はこいつを相手にしている時間はない! ウルトラマンゼロの力で、ここから脱出しよう!』

『「分かった!」』

 

 言われた通りに、ダイチはウルトラマンゼロのデバイスカードをデバイザーにセット。

 しかし、デバイザーは反応すらしなかった!

 

『「えっ!? どうして……!?」』

「ここでは、そのようなものは通用しない!」

 

 動揺するダイチにM1号が断言した。

 

「フッ! フッ!」

 

 エックスは自分を閉じ込めるフラスコを殴るが、ひびすら入らない。エックスの超能力までが封じられている。

 

『駄目だ……! 奴が我々の力を封印しているのか!』

 

 M1号は、生まれてからたった数十分の内に三歳児レベルの知能まで発育をしたという。仮にそのままの速度で五十年間成長、発達を続けたとしたのなら……魔力も計り知れないほど膨大になっているということになる! その力で自分たちの力の発露を妨害しているのか、とダイチは考察した。

 一方のM1号は、宙に浮き上がって巨大な空間モニターを作り出した。

 

「ゴモラは、やっと自分の身体を取り戻したのだ。なのに……何故自由を奪う?」

 

 映し出されたのは、現在のゴモラの姿であった。

 

 

 

 地上では、消えたエックスに代わりXioがゴモラの暴走を止めようと応戦しているところだった。

 

『スカイマスケッティはファントン光子砲で威嚇攻撃! ゴモラを制御しろ!』

「了解!」

 

 マスケッティを駆るワタルとハヤトが、カミキの命令に応答した。

 スバルたちの方は、避難誘導を完了させて本部に報告する。

 

「エリアK-5、市民の避難、終了しました!」

 

 市民を全員退避させて、マスケッティの攻撃が始まる。EXゴモラの足元に光子砲が撃ち込まれ、驚いたゴモラは足を止めて前を横切るマスケッティを目で追いかけた。

 

「グギャアアアアッ!!」

 

 ゴモラは咆哮を発してマスケッティを追いかけ出す。

 

「あたしたちも行こう! 絶対にゴモラを止めるんだ!」

「了解!」

 

 スバルとN2Rの五人はアラミスとポルトスに分かれ、ゴモラの背中を追って走り始めた。

 

 

 

 ダイチはM1号に訴えかける。

 

『「おい、俺たちを早く地上に!」』

「戻ってどうする? ゴモラを退治するのか?」

 

 振り返って問い返すM1号。

 

『「違う! 守るんだ!」』

 

 そのダイチの言葉を、M1号は一笑に付す。ビジョンの中のEXゴモラは、尻尾を振り下ろして工業地帯の倉庫を叩き潰した。

 

「ゴモラは怪獣だぞ。あんな姿を見て、まだ本気で共存できると?」

 

 問いを重ねるM1号に、ダイチは言い返す。

 

『「あれは本当のゴモラじゃない……! ゴモラはダークサンダーエナジーで誰かに操られてる! ……まさか、お前が怪獣たちを操ってる黒幕なのか!?」』

 

 ダイチの疑いに、M1号は見下すように返答した。

 

「人間らしい考え方だな。都合の悪いことが起こると、誰かが悪意を以てやっていると考える。自分たちがいつもそうしているからだ。私はそのようなことはしない」

 

 M1号の言葉には棘があるが、要するに違うようである。

 

『「……ともかく、あれはゴモラの本当の姿じゃないんだ! 間違ってるものなんだ!」』

 

 懸命に訴えかけるダイチ。

 だが、M1号はそんな彼に対して、はっきりと告げた。

 

「いいや。あれが怪獣の本来の有り様なのだ。知らないとは言わせん。あの姿を否定するということは、口では共存と綺麗事を唱えながら、実際は自分たちの都合を相手に押しつけ、怪獣のありのままの生き方の尊厳を認めないということに他ならない」

『「えっ――!?」』

 

 M1号の言葉に、ダイチは絶句した。心の底から衝撃を受けた。

 自分はこれまでダイチ・オオゾラとして、ウルトラマンエックスとして、正しいことを行っていると信じていた。その行為が、怪獣の尊厳を奪うということになるなどということなど……考えたこともなかった。

 

 

 

「グギャアアアアッ!!」

 

 スバルたちはどうにかゴモラの暴走を食い止めようと、自分たちの取れるあらゆる手を尽くす。……が、EXゴモラの猛威はすさまじく、怪獣用のバインド、ケージ、結界など全ての捕獲術を破ってしまった。威嚇攻撃も最早効果が上がらない。

 

「グギャアアアアッ!!」

 

 ゴモラは腹部から超振動波を辺り一面に放ち、エリアK-5全域を火の海に変える。スバルの顔の焦燥の色が濃くなっていく。

 

「くぅっ……! 被害がどんどん拡大していく……!」

「まずいぞ! もう別エリアの手前まで来ている!」

 

 ゴモラを追いかけて、チンクたちはエリアK-6の目前まで来ていた。

 

「K-6は避難が完了してない……! 侵入されたら大惨事に……!」

「ち、超やばいっスよぉ! どうするっスかぁ!?」

 

 ディエチもウェンディも激しく狼狽する。Xioは完全に追い込まれてしまった。

 その時に、カミキが重々しく唱えた。

 

『やむを得ん……! 総員に、非殺傷設定の解除を命じる!』

「!? 隊長、それって……!」

 

 色めくスバルたち。非殺傷設定の解除――ウルトラマンエックスがミッドチルダに現れてからは、一度も発動しなかった命令だ。それの意味するところは――。

 

『ゴモラの駆除を命ずるっ!』

「……!!」

 

 駆除。ゴモラを、殺害せよということだ。

 

『ワタル、キングジョーのカードを使え。キングジョーデストロイ砲で、ゴモラを駆除せよ!』

 

 カミキは空のワタルに、命令を下す。

 

「ワタル……」

「……了解!」

 

 ワタルはしばし無言だったが、やがて声を絞り出して応答した。

 更にカミキは、スバルとノーヴェに命令する。

 

『スバルとノーヴェはウルトライザーでワタルを援護』

「……了解……!」

 

 ノーヴェは固く目をつむりながら返答したが、スバルは無言のままだった。

 

『スバルっ!』

「――了解っ!」

 

 呼びつけられ、スバルは何かを振り切るかのように叫んだ。

 走り出す直前、ノーヴェが表情に影を落としながらスバルに告げる。

 

「チビたちと……ダイチには、あたしから謝るよ……」

「……」

 

 くっ、と歯を食いしばって駆け出していくスバルたち。チンクらはその背中を、沈痛の表情で見送った。

 マスケッティとスバル、ノーヴェがゴモラの前方に回り込んだ。スバルたちはナックルにカートリッジを装填。

 

[Charging Ultraman’s power.]

 

 ワタルはデバイスキングジョーのカードをセット。

 

[デバイスキングジョー、スタンバイ]

 

 破壊力がありすぎる上に、非殺傷設定を受けつけないために今まで使用されることのなかった禁断のカード。その封を破り、照準がゴモラに向けられる。

 

 

 

 ゴモラが殺害されそうになっている現実に、ダイチが絶叫する。

 

『「やめろぉぉーっ!!」』

「これが、人間だ。共存などと言いながら、都合が悪くなれば平気で排除する。人間はいつもそうだ」

 

 M1号が、侮蔑するように語る。

 

「私は五十年間、ここから人間の活動、人間の作った時空管理局などというものを監視してきた。――あらゆる世界に自分たちの都合を押しつけ、染まらぬものは拒絶する。今起こっていることが、その縮図だ! 世界の管理など、欺瞞!!」

 

 吐き捨て、ダイチに向けて言い放つ。

 

「思い知れ! 人間は他者と共存など、出来ぬ!」

 

 

 

「すまない! ゴモラぁっ!」

 

 とうとう、マスケッティからキングジョーデストロイ砲が放たれた。

 紅の電撃光線が、ゴモラを直撃する。

 

「グギャアアアアッ!!」

 

 ゴモラが弾き飛ばされ、苦悶の声を発して地面に倒れ込んだ。

 

「っ!」

 

 それを見たスバルが、武器を下ろしてゴモラへと走り出した!

 

「スバル!? お、おい待てっ!」

 

 目を剥いてスバルを追いかけるノーヴェ。次弾を発射してとどめを刺そうとしていたワタルはハヤトに制止される。

 

「待てワタルっ! スバルがゴモラの前に飛び出しましたっ!」

 

 ハヤトの報告にチンクたちも、本部も驚愕した。

 そしてスバルはゴモラの眼前まで来ると、精一杯叫んでゴモラに呼びかける。

 

「ゴモラっ! ゴモラ、もうやめて! あたしだよ、スバルだよ!」

「やめろスバル! 危険すぎるっ!」

 

 ノーヴェが羽交い絞めしてでもスバルを下がらせようとしたが、スバルはそれを振り払った。

 

「放してっ! ここで、ここで止めないと、ゴモラが……死んじゃうんだよっ!?」

「グギャアアアアッ!!」

 

 起き上がったゴモラは爪を振り下ろし、衝撃でスバルたちを吹き飛ばした。

 

「うあぁっ!」

 

 宙に投げ出され、激しく地面に叩きつけられる

 

 

 

 ダイチはスバルに攻撃したゴモラへ向けて叫ぶ。

 

『「ゴモラ、やめろ! やめてくれ! その子はスバルだぞっ!」』

 

 だがその叫びは、地上には届かないのだ。

 ビジョンの中で、立ち上がったスバルがゴモラの正面に回って、腕を広げた。

 

「何だ、この茶番は? 自己犠牲のつもりか?」

 

 M1号はスバルの行動を嘲る。

 

 

 

 スバルは力の限り声を張り上げて、ゴモラへ叫んだ。

 

「ゴモラ、あたしたちは敵じゃないよ! 本当は分かるでしょう!? あたしたちは、仲間なんだよ……!」

「グギャアアアアッ!!」

 

 ゴモラはスバルへと足を振り下ろす。マッハキャリバーが自己判断でスバルを下がらせなければ、スバルは踏み潰されていた。

 それでもスバルは、何度転げさせられても、その都度立ち上がって叫び続けた。

 

「ゴモラ、あなたを殺したくないっ! あたしは、夢を終わらせるためにXioに来たんじゃないよっ!」

「あなたはあたしとつながった! 一緒に戦った! 心が通じ合ったんだよ! あたしたちは共に生きられるんだって、とても大事なことを……あなたが教えてくれたんだよっ!」

「それなのに、こんな訳の分からないまま終わってしまうなんてこと……悲しすぎるよっ!!」

 

 スバルの元にノーヴェのみならず、ウェンディたちも駆け寄ってきた。

 

「スバル、無茶しないで逃げてっ! 本当に死んじゃうっスよ!!」

 

 だがスバルは、ゴモラを見据えたままその場を動こうとしなかった。

 

「ううん、あたしは逃げない……! ゴモラのことを……この先に未来があるってことを、信じてるっ!」

 

 

 

『あたし、苦しい思いはいっぱいしてきた! くじけそうになったことも何度もあった! でもあきらめなかった! あきらめなかったから、今のあたしがここにいるの! あきらめなければ……この道の先に未来が続いてるんだって信じてるっ!!』

 

 M1号の見ている前に、今日までのミッドチルダの観察の記録――スバルがゴモラと共に戦った日、訓練を乗り越えた先の機動六課での日々、打ちのめされても立ち上がった瞬間、姉を乗り越えて助けた瞬間、夢を叶えた姿などのビジョンが現れる。

 なのは、ティアナ、エリオやキャロや、ギンガやダイチや、ノーヴェたち――かつて敵だった相手とも笑い合って、共に生きている姿が、M1号の眼に映った。

 

「……むぅ……」

 

 

 

「グギャアアアアッ!!」

 

 ゴモラは超振動波を溜め、放とうとしている。それでもスバルは逃げようとはしない。

 

「……みんなは避難して。このあたしのエゴに、つき合うことなんてないんだから」

 

 スバルのその言葉に、ノーヴェたちはクスッと微笑して答えた。

 

「いいや……ここにいるよ。あたしも、お前の言う未来を信じたくなっちまったよ」

「あたしもっス」

「私もだ」

「私も」

 

 スバルは彼女らに微笑を返すと、ゴモラへ向けて力強くサムズアップを向けた。

 超振動波が頂点に達し、ゴモラの身体が激しく光る。

 

 

 

『「スゥちゃんっ!! うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――――――――っっ!!!」』

 

 ダイチが慟哭した瞬間、M1号はパチンと指を鳴らした。

 同時にフラスコが砕け散り、解放されたエックスがこの空間から一瞬にして消えた。

 

 

 

「グギャアアアアッ!!」

「――フゥゥゥゥッ!」

 

 ゴモラから超振動波が放たれたその時、スバルたちとの間にエックスが現れ、バリアで超振動波を受け止めた。

 

「エックス……!」

「ヌォォォォォ……オォッ!」

 

 エックスは超振動波を防ぎ切ってスバルたちを守り、エクシードXへの変身を行う。

 

[ウルトラマンエックス、パワーアップ!]

「『エクシード、エックスっ!!」』

 

 エクシードXになるとエクスディッシュを握り締め、エクシードエクスラッシュを発動。

 

「『エクシード! エクスラッシュっ!!」』

「グギャアアアアッ!!」

 

 虹色の光に乗り、EXゴモラの身体を斬りつけてダークサンダーエナジーを払った。

 エクスディッシュを額に戻してエクシードXを解くと、元の姿に戻ったゴモラに振り返る。

 

「……ギャオオオオオオオオ!」

 

 元に戻ったゴモラは辺りを見回す。――周囲は先ほどまで振りまき続けていた破壊により、余すところなく破壊し尽くされ、見る影もないほど無惨になっていた。

 ゴモラはスバルたちの方にも振り返った。彼女らもまた、全身傷だらけになっていた。

 

「……」

 

 エックスはやるせないような様子で、手の平を握り締める。

 

『「ゴモラ……」』

 

 ゴモラは静かに、エックスに向けて両腕を広げた。何かを待ち構えるように。

 ダイチは己の感情を押し殺しながら、エックスとともにザナディウム光線の構えを取っていく。

 

「ゴモラ……!」

 

 エックスがゴモラに光線を撃とうとするのを、スバルたちは様々な感情が入り混じった表情でただ見ていた。

 

『「ザナディウム……光線……!」』

 

 腕を振りかぶり、光線が発射しようとするその瞬間、ゴモラの身体が淡く光り出す。

 ダイチはあっと驚いて思わず手を止めた。

 そしてゴモラの身体は、勝手にスパークドールズへと圧縮されていった。

 

『「ゴモラ……!」』

 

 ダイチが、スバルたちが、皆がそれを静かに見届けた。

 

 

 

 実験場に残っていたグルマンたちは、倒れたタイマーに目を向ける。

 壊れたタイマーは依然として残り5秒を示していた。

 

 

 

 地面に転がったゴモラのスパークドールズを、スバルが拾い上げた。

 

「……」

 

 スパークドールズを胸の中に抱え込むと――ポロポロと涙をこぼす。

 彼女を無言で見下ろしているエックスとダイチの脳裏に、M1号の声が響いてきた。

 

『共存か、破滅か……。お前たちの未来を、私は監視する』

 

 空を――M1号のいる宇宙空間を見上げるエックス。

 

 

 

 M1号は衛星軌道上から地上を見下ろし、宇宙に漂い続けている。

 

「人間に作られ……人間を監視し続けて五十年……。未だに答えにたどり着けず……」

 

 M1号はスペースデブリとともに、ミッドチルダの上を回っていく――。

 

「私はカモメ……空高く飛翔し、思考し続ける……私はカモメ……私は……」

 

 

 

 ――Xioベースのラボ。カプセルに収められたゴモラのスパークドールズを持ち上げたダイチが、ゴモラに告げた。

 

「いつか……また会おう……」

 

 

 

『ダイチの怪獣ラボ!』

 

ダイチ「今回の怪獣はレッドキングだ!」

ダイチ「レッドキングは『ウルトラマン』第八話「怪獣無法地帯」から登場した、ゴモラに並ぶ人気怪獣! 多々良島で他の怪獣を圧倒して、島の王者のように振る舞っていたんだ!」

エックス『身体が黄色いのにレッドキングなのには諸説あるな』

ダイチ「その後第二十五話「怪彗星ツイフォン」で再登場したのを皮切りに、『ザ☆ウルトラマン』、『ウルトラマン80』、『ウルトラマンマックス』などたくさんの作品に登場しているんだ!」

エックス『もう常連といってもいいかもしれないな』

ダイチ「『ウルトラマンX』ではムーが引き寄せてしまったダークサンダーエナジーによって実体化! EXレッドキングにまでなって大暴れしたぞ!」

エックス『暴れん坊ではあるが、やはりどこか抜けているような感じはしたな』

ダイチ&エックス「『次回も見てくれよな!」』

 




 俺は分からなくなっていた……。怪獣との共存、それは俺の押しつけでしかないのか? 道に迷う俺は、なのはさんから彼女の故郷へと誘われた! なのはさんは、俺に何を言おうとしているのか……。次回、『なまえをよぶ』。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。