光輝巨人リリカルなのはX   作:焼き鮭

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少女の選ぶ道(A)

 

「強くなるんだ。どこまでだって!!」

「はじめまして……ヴィヴィオさん。アインハルト・ストラトスです」

「新しい戦いがあると聞いて、まだ見ぬ強い相手がいると知って、心が沸き立つのを止められない」

「強くなろう。今よりもっと、今日よりずっと――!」

「刻んで続けます……。わたしはこの道で強くなる!」

「確かめよう! わたしとノーヴェのストライクアーツを!」

「あなたと遊ぶのもいいかもしれませんね。今を生きてる今のわたしたちとして」

「みなさんのおかげで、ヴィヴィオは今日も元気ですよ……って」

 

 

 

 夕暮れに差し掛かる空の下、Xioベースの屋上にダイチは木製のリクライニングチェアと宇宙電波受信機を用意し、受信機のヘッドフォンを手にした。彼の傍らにあるエクスデバイザーからエックスが尋ねる。

 

『ダイチ、このところこうして宇宙の電波を拾うことが多いな』

「うん。最近は色々忙しくてご無沙汰だったけど、久々に宇宙の声を聞きたくなって。それに……」

 

 うなずいたダイチは次のように述べる。

 

「この前、ウルトラマンからの伝言を伝えてくれた副隊長が言ってただろ。俺と両親のつながりは、まだ消えてないって」

『君の両親の行方の手掛かりが、宇宙からの電波の中にあるかもしれないということか?』

「ああ。父さんと母さんは空に……宇宙に消えていった。二人からのメッセージがあるとしたら、宇宙からの電波の中だと思う」

『そうだな……。届くといいな、両親からのメッセージ』

「うん……」

 

 ダイチはヘッドフォンを頭にセットすると、チェアの上に寝そべった。そのまま宇宙の声に耳を傾けている内に、まぶたが下りて眠りに落ちていった……。

 

 

 

『少女の選ぶ道』

 

 

 

『……イチ。起きろ、ダイチ!』

 

 ――空がまだ真っ暗い中、ダイチはエックスの呼び声によって覚醒。何か事件かと慌ててチェアから飛び起きた。

 

「怪獣!? 異星人!?」

『そうじゃない。これを聞いてみろ。たった今キャッチしたものだ』

 

 エックスの操作により、宇宙電波受信機の録音装置が再生された。ダイチは音量のダイヤルを回して、音を大きくする。

 普通の人にはただのノイズにしか聞こえない音が流れたが、そこは専門家のダイチ。違いを聞き分ける。

 

「普通の宇宙電波じゃなさそうだ……」

『解析してみたらどうだ?』

「だね」

 

 ダイチは録音機をラボまで持っていき、配線を端末につないで解析作業を開始した。

 

[解析中です]

 

 だがその直後に、ラボに警報が鳴り響いた!

 

「! また事件か……!」

『急ごう、ダイチ!』

「ああ!」

 

 ダイチはデバイザーを腰に提げると、端末の解析を自動で任せたままにして、オペレーション本部へ向けて走っていった。

 

 

 

 ダイチが電波の解析作業を始めたのより少し前の時間。インターミドルチャンピオンシップのミッドチルダ地区予選決勝戦を観戦に来ていたヴィヴィオ、アインハルトたちは、試合終了後に選手の更衣室を訪れていた。決勝戦まで駒を進めたミウラの応援に来ていたのだった。ミウラはかなりの接戦だったが、見事勝利。他にルーテシア、ハリー、ヴィクトーリア、ジークリンデらが都市本戦出場の権利を手に入れたのであった。

 さて更衣室では、リオがエルスたちにこんなことを告げた。

 

「試合は決まってないですけど、ヴィヴィオはお母さんと戦うんですよ~」

「お母様?」

「ん? なんだ親子喧嘩なのか?」

 

 ハリーが聞き返すと、ヴィヴィオが補足説明する。

 

「母は管理局員なんで、戦技披露会でエキシビションマッチをやるんです!」

「その前にボクともやるんですよー」

 

 管理局では年に一度、局員の魔導師たちの実力の程を世間に披露するイベントが開催される。そのエキシビションマッチに、航空教導隊第五班のチーフ・なのはの娘、ヴィヴィオとサブチーフ・ヴィータの弟子、ミウラの試合が企画されたのだが、ヴィヴィオは試合で勝利した場合は更に教導隊の一人と試合することを望み、その指名した人物が誰であろう高町なのはなのであった。

 ヴィヴィオは尊敬する母との勝負に、今から意欲バリバリであった。

 

「遊んであげる、なんてつもりだったら、その隙を撃ち抜いちゃいますけど!」

 

 ヴィヴィオが決意を表明している傍らで、アインハルトのクラスメイトたちがミウラに話しかけている。

 

「ミウラちゃん、さっきはすごい試合だったね!」

「結果がどうなるか全然わかんなくって、ハラハラして見守ってたよ~。勝ててよかったね!」

「あ、ありがとうございます!」

 

 ミウラがお辞儀していると、アインハルトとヴィヴィオが彼女に振り返って告げた。

 

「ええ、実にいい試合でした」

「わたしもまずはミウラさんに負けないように頑張らないとって気持ちが強くなりましたよ!」

 

 友達と談笑し合っているこの二人の脳裏に――いきなり怪しい声が響いた。

 

『ヴィヴィオくん、アインハルトくん。伝説の聖王と覇王の後継者ともあろう者が、あの程度の試合で感心しているようではいけないな』

「え……? 今の、誰が言ったんですか?」

「男の人の声……?」

 

 ヴィヴィオとアインハルトは面食らって周りを見回すが、周囲の仲間たちは逆にそんな二人に呆気にとられていた。

 

「? 一体どうしたんですか、二人とも?」

「男の人の声なんて、どこからも聞こえなかったよ?」

 

 コロナとリオはそう言った。ヴィヴィオとアインハルトは思わず顔を見合わせる。

 

「わたしたちにだけ向けられた念話……? でも、そんなの誰が」

「聞いたことのない声色でしたね」

 

 二人にのみ聞こえる声は、戸惑うヴィヴィオたちに構わず続けた。

 

『強い者が勝つのは当たり前のことだ。全く面白いことではない。私は、弱い者を今すぐに強くしてみせよう』

「えっ? 弱い者を強くするって……?」

 

 ヴィヴィオのつぶやきの直後に、更衣室が突然地響きに襲われる。

 

「きゃっ!? 今の揺れは……?」

 

 更に外からは、人々の悲鳴が湧き上がっていた。

 

「まさか、怪獣の出現!?」

「そんな! こんな都市部のど真ん中に、何の前兆もなしに……!」

「とにかく、外を確認してみましょう!」

 

 アインハルトの呼びかけで、一行は直ちに会場の外へと飛び出していく。

 

「なっ……!?」

 

 そして一斉に息を呑んだ。会場の外にいたのは、リボンでポニーテールを結んだ少女。

 ただし身長が四十メートルもある!

 

「なっ、何だありゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!? あれは一体全体どうなってんだぁぁぁぁ!?」

 

 度肝を抜かれたハリーが絶叫。ミウラは少女の後ろ姿から、ハッと気がつく。

 

「あの人……ボクが戦ったニーナ選手ですよ!」

「えぇっ!? マジかよ! あんなビッグサイズじゃなかったよな!?」

「当たり前ですよっ! 人間があんなに大きいなんて、ありえません!」

 

 突っ込むエルス。

 

「じゃあ、今オレたちの前にいるあいつは何なんだよ! 幻覚か!?」

 

 ハリーが言った直後、巨大ニーナ選手は虚ろな表情で腕を振り上げ、決勝戦の会場に振り下ろした。殴られた会場の屋根の一部が砕け、悲鳴の声が大きくなった。

 

「いやっ! ありゃ実体だぞ! マジで大きくされてるんだ!」

「で、でも誰がそんなことを……どんな技術で……?」

「こういうぶっ飛んだことは、大抵異星人の仕業やで……」

 

 異星人と暮らしていて、常識外の出来事に慣れているジークリンデが推測した。

 巨大ニーナ選手は正気ではない顔で、ドスンドスン地面を揺らしながら移動している。一行は身の危険を感じた。

 

「とにかく避難しよ!」

「はいっ! アインハルトさん、行こう――」

 

 ユミナがアインハルトの方へ振り返ったが……先ほどまでそこにいたはずのアインハルトの姿が、なくなっていた。

 

「あれ!? アインハルトさんがいないっ!」

「あっ! よく見たら、ヴィヴィオもいなくなってるっ!!」

 

 叫ぶリオ。ヴィヴィオとアインハルトが忽然といなくなったことで、一同は騒然となった。あの二人が、自分たちを置いて勝手に逃げるはずがない。ではどこへ行ってしまったのだ?

 

「ヴィヴィオ―――――! どこ行ったのー!?」

「アインハルトさーん! いるなら返事してー!」

 

 ユミナたちは懸命に叫んで二人の行方を捜したが……見つけることは叶わなかった。

 

 

 

 巨大ニーナ選手に対してXio、武装隊の双方が出動し、夜を徹して事態の収拾、解決に当たった。何せ巨大ニーナ選手は民間人の少女が巨大化したものであるため迂闊に攻撃することが出来ない一方で麻酔も効かず、怪獣並みの怪力ですぐに拘束を破壊してしまうので、鎮圧するのにひどくてこずったのだ。

 それでも太陽が昇った頃にようやく捕獲し、Xioのラボチームと医療班両方の手によって元の姿に戻すことに成功したのであった。

 

「ふ~……やーっと事態収拾までこぎつげたわね~……。久々にハードな夜だったわ……」

「でも巨大化させられた子、無事に元に戻れてよかった」

 

 会場周辺の事件現場でルーテシアがその場に腰を下ろして深々と息を吐くとキャロがそう言い、エリオがうなずいた。三人は決勝戦出場選手とそのセコンドとして現場に居合わせ、そのままXioと武装隊の作戦に参加したのであった。

 他方では、この前代未聞の大事件を担当する執務官に選ばれたフェイトとティアナ、そして捜査官のギンガが、ニーナの治療を担当したシャマルたちに通信越しに質問している。

 

「それで、ニーナという子が巨大化した原因は分かったんでしょうか?」

 

 ギンガの問いかけに、シャマルとグルマンが回答した。

 

『ええ。患者の血中より、未知のナノマシンが検出されたの』

『解析の結果、そいつには遺伝子の発現形質を変化させ、生物を急激に巨大化させる機能があることが判明した。いつ、どこでそんなものを注入されたのかは不明だが……ナノマシンは次元世界には存在しない金属元素で作られていた』

 

 次元世界外の元素、という言葉にティアナはフェイトと顔を見合わせた。

 

「それじゃあ、この事件はほぼ確実に異星人の犯行……!」

「だとは思うけど、まだ断定は出来ないよ。犯行声明らしきものは、どこにも届いてないんだから」

 

 Xioの特捜班は、今回の事件のことを話し合っている。

 

「どこのどいつの仕業かは知らねぇが、全くふざけた真似をする奴がいたもんだ……!」

「ホントっスね。女の子をあんなにでっかくしちゃうなんて、どんな趣味してるんだか」

 

 ワタルとウェンディが憤っていると、ダイチたちの元にコロナたちが駆け寄ってきた。

 

「Xioと管理局の皆さーん! 大変でーす!」

「みんな、一体どうしたんだい?」

「あれ? ヴィヴィオとアインハルトは一緒じゃないのか?」

 

 ノーヴェが尋ねかけると、リオが息せき切って答えた。

 

「それが二人は、でかいニーナ選手が現れた直後に、消えちゃったんです!」

「えぇぇっ!?」

 

 一気に騒然となる現場。フェイトたちやルーテシアたちも、驚愕した顔で振り返る。

 

「夜からずっと捜したんですが、どこにも見つからなくって……!」

「でも周りは大騒動だから、今まで通報も出来ずに……」

「分かった。ヴィヴィオたちのことはあたしたちに任せろ!」

 

 ノーヴェがすぐに応じると、スバルがコロナたちに問い返す。

 

「ヴィヴィオとアインハルトが消えた時の状況を詳しく教えて。周りに怪しい人はいなかった?」

「そうは言われても、周りはすごい混乱でしたから……。それに、わたしたちが目を離してたのはほんのわずかな時間だけでした」

「会場から出るまでは、確かに傍にいたんだけど……」

「……大丈夫。あたしたちが絶対に二人を見つけ出すからね!」

 

 不安に襲われるリオたちを励ます後ろで、ハヤトが顎に指を掛ける。

 

「二人が消えたのは、今度の事件と関係があるのか……?」

「よもや、巨大化された選手は目くらましで、本命はヴィヴィオとアインハルトだったのでは……」

 

 チンクのつぶやきに、ノーヴェは拳で手の平を叩いて苛立ちを露わにした。

 

「何だっていい! あの二人を誘拐した奴がいるんなら、許しておけねぇぜっ!」

 

 ティアナはフェイトに尋ねかける。

 

「ヴィヴィオたちの誘拐は本当に同一犯でしょうか。それとも、別の誰かが混乱に乗じて行ったことでしょうか……」

「今は何も分からない……。私、なのはにこのこと連絡するね!」

 

 そしてダイチには、エックスが呼びかけていた。

 

『ダイチ、覚えてるか? 以前にもヴィヴィオの身を狙った者がいたことを』

「ギロン人のこと? でもあれにまつわる事件は、グア軍団の壊滅で終わったんじゃ……!」

『いや、他にも彼女たちの資質に目をつけた奴がいたのかもしれない。そいつが今度の犯行を行ったのでは……』

 

 考え込んだエックスは、一つの結論を出す。

 

『ともかく、今度の事件の犯人は一筋縄ではいかない奴だと私の勘が告げている。十分に警戒しなければいけないだろう』

「ああ……。でもなるべく早くヴィヴィオちゃんとアインハルトちゃんの行方を突き止めなければ!」

 

 ダイチのその意志は、この場の他の者たちも同じであった。

 

 

 

 問題のヴィヴィオとアインハルト、この二人は今、どことも知れない怪しい部屋の床の上に倒れていた。すると二人に、どこからか男の声が掛けられる。

 

『起きなさい、ヴィヴィオくん、アインハルトくん。さぁ、立つのだ』

 

 それによりヴィヴィオたちは目を覚まし、おもむろに起き上がった。

 

「こ、ここはどこ……? 確か、会場の外に大きなニーナ選手が現れて……そこからどうなったんだっけ……」

「私たちに呼びかけてるのは、どなたですか」

 

 まだ意識が曖昧なヴィヴィオの一方で、アインハルトは周囲全域に警戒をしながら問いかけた。そうすると、二人の背後から答えが返ってくる。

 

「この私だ」

 

 ヴィヴィオたちが振り返ると、部屋の一角に明かりが灯り、シルクハットに燕尾服で身を固めた見知らぬ男の姿が明らかとなった。

 

「! あなたは……!?」

「その格好……確か、フェイトママがラグビーの試合の時にいた男の人のもの……! 異星人の友人だと名乗ったって……」

「その通り。もっとも、星雲荘チームではなく暗黒星団側のババルウ星人のだけどね」

 

 男は話しながら、部屋の柱の後ろへ回っていく。そして出てきた時には――着ていた服のように真っ黒い身体に青い両眼を輝かせる怪人の姿となっていた!

 

『種族はメフィラス星人。暗黒星団のまとめ役、つまりホストを務めている者だ』

「っ!」

 

 ヴィヴィオとアインハルトはセイクリッド・ハートとアスティオンとユニゾンしようとしたが……両者とも、くったりとしたまま反応がなかった。

 

「え……!?」

『君たちのデバイスの機能は停止させてもらった。暴れられても困るからね』

「何てひどい……!」

 

 二人にとってセイクリッド・ハートとアスティオンは単なるデバイスに留まらない、大事な相棒だ。それを停止されたとあっては、メフィラス星人への警戒をより強くする。

 メフィラス星人はそんな二人をなだめるように言い聞かせた。

 

『落ち着きたまえ。君たちに危害を加えようというつもりではないのだ』

 

 そしてメフィラス星人は、ヴィヴィオたちをこの場所に連れてきた理由を話し始める。

 

『さて、私はこのミッドチルダで活動をする中で、君たちのことを知った。そして君たちに広い宇宙でも稀に見る、特別な資質があるということを知り……君たちがどうしても欲しくなった』

「……!?」

『安心したまえ。そのことは、他の者には一切口外していない。物の価値がろくに分からないその辺の馬鹿どもにくれてやるのには惜しいからね』

 

 メフィラス星人の口調は丁寧で落ち着いたもののようであるが、その裏には他者を見下す傲慢な精神があることをヴィヴィオたちは見て取った。

 

『しかし、私自身は暴力で物事を解決するのは嫌いでね。私の星でも紳士というのは、礼儀正しいものだ。そこで、君たちの了承を得ようと思う。どうだね? 悪いようにはしない。たったひと言だけでいいから、私のものになると言ってくれないかね』

 

 メフィラス星人の要求に、ヴィヴィオとアインハルトは相当な憤りを表して言い放った。

 

「ふざけないで下さい! 誰がそんなこと!」

「あなたのものになるだなんて……冗談もほどほどにして下さいっ!」

 

 だがメフィラス星人はその回答を想定していたようで、落ち着き払っていた。

 

『そうだろうね。いきなり人のものになれと言われて、了承する人間がいるはずがない。しかし……これをご覧』

 

 メフィラス星人の眼が光ると、部屋が暗黒に包まれていき、無数の光点が全方位に散りばめられた光景がヴィヴィオたちの前に広がった。

 

「これは……宇宙?」

 

 それはまさしく、夜になると空に見える宇宙の光景。しかしそれだけではなく、二人の前に様々な惑星の景色が現れては消えていく。

 あの宇宙恐竜ゼットンが何体も生息する星。キングジョーを製造するほど科学の発展したペダン星。小惑星上では宇宙剣豪が無数の敵を相手に激しく心を引き込まれるほどの迫力がある戦いを演じ、それとは反対に全生物が惑星と一つになり、一切の争いがない星もヴィヴィオたちの目に映し出された。

 

『宇宙は無限に広く、しかも素晴らしい。君たちの常識をはるかに超えた力を持った生命が存在する星や、恒久平和を実現し何百年何千年も生きていける天国のような星がいくつもある』

 

 メフィラス星人はヴィヴィオとアインハルトを見据える。

 

『君たちは格闘選手だ。私とともに大宇宙に進出すれば、ミッドチルダの低俗な試合など比べものにならないほど充実した戦いを経験できるし、君たちの才能をちっぽけな人間の限界の何倍、何百倍も引き伸ばすことも出来る。他の望みも何だって思うがままだ。私にはそれを実現できるだけの力がある。――どうだね、こんな狭い星は捨てて、宇宙で人間を超越した崇高な存在になりたくはないかね』

 

 メフィラス星人の誘惑に、ヴィヴィオとアインハルトは――声をそろえて回答した。

 

「お断りします!」

 

 ――宇宙の光景が消え、部屋は元の状態に戻った。一方で、メフィラス星人の声に不機嫌の色が見え始める。

 

『聞き分けのない子たちだ。どうして私とともに宇宙に出る、たったそれだけのことが言えないのだ。全ての望みが叶うのだぞ。君たちが望みさえすれば、一つの星の支配者にだってなれる。先祖の意志を継いで、本物の王になれるのだぞ。それでも嫌だというのか』

 

 メフィラス星人の問いかけに、まずはヴィヴィオが答える。

 

「わたしの技は、わたしだけのものじゃありません。ノーヴェがわたしの才能を見出して、鍛え上げてくれたもの……。わたしが格闘家の道は、二人の夢なんです。――ノーヴェがいない場所で夢を叶えても、何の意味もありません」

 

 ヴィヴィオはノーヴェとの出会いから始まった、今日までの道のりを思い返した。――ノーヴェと出会うことがなければ、今の自分は絶対になかった。隣のアインハルトと巡り会うことも。

 

「それだけじゃなく……わたしには目指してる人がいます。どんな逆境も跳ね返す勇気を持った人と、誰よりも鋭くて優しい人……。あの人たちに育ててもらった自分の心と身体だけで強くなりたい。誰かから与えられた力なんかで強くなっても――それはわたしを育ててくれたあの人たちを、何より自分自身を裏切るということ。それだけは絶対に出来ません」

 

 ヴィヴィオは正直なところ、格闘選手に向いた素質を持っていない。それでも辛い道を歩いているのは、この二つの理由があるからこそであった。

 ヴィヴィオに続き、アインハルトが語った。

 

「私はずっと覇王流と、覇王から受け継いだこの身の強さを証明するために戦ってきました。けれどその強さは、大切な人を守れる強さ……! 私の大切な人たちは、このミッドにいるたくさんの人たちです……!」

 

 アインハルトの脳裏に浮かぶのは、隣のヴィヴィオや、リオ、コロナ、ノーヴェや、インターミドルを通して出会った戦友たち、共存と理解を教えてくれたダイチたちXioの面々、ユミナたちクラスメイトに、他にも色んな人たちの顔。

 

「宇宙にどんな戦いが待っていようとも、どんな力を得られて何千年と生きられようとも……! そこに皆がいないのだったら、『私』には価値がありません!」

 

 ヴィヴィオとアインハルト。二人の思いの丈を受けたメフィラス星人は、

 

『――ほざくなッ!!』

 

 逆上し、一瞬にして二人を消し去った。ヴィヴィオとアインハルトは無重力の部屋に移され、空中に固定されて監禁された。

 

『身の程知らずどもめ……! この私を本気にさせたな? 私は欲しいものは全て手に入れてきた! あらゆる相手を屈服させてきた! どんな手を使ってでもなッ!』

 

 メフィラス星人は怒気をまき散らしながら、部屋の中央に立体のビジョンを浮かび上がらせる。

 

『そのことを、たっぷりと教えてやろう……ウワハハハハハハハ……!』

 

 暗い哄笑を上げるメフィラス星人の見下ろす先のビジョンは――事件の調査を行っているダイチたちの姿であった。

 

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