『ある日突然、地上に暗黒の稲妻が落ちてくる』
『稲妻に打たれた怪獣たちは凶暴化し、すべてを破壊するようになる』
「ダークサンダーエナジーとでも呼ぶべきか」
『このままでは確実に世界は滅ぶ』
「お父さーん!」
(あの虹色の光は一体何だったのか?)
「お母さーん!」
「虹色の光が俺たちを守ってくれた……!」
「父さんと母さんとのつながりも、消えていないと……」
「どこかであの光に守られて生きているかも!」
『ダイチ……お母さんの声が聞こえますか……? ダイチ……』
『美しき終焉』
エリアT-9Cにポルトスでやってきたスバルの目が、宇宙電波研究所跡の真ん中で宇宙電波受信機を設置しているダイチの姿を捉えた。
スバルはやや難しい顔をしながら、差し入れの紙袋を手に提げてダイチの元まで歩み寄っていく。
「……ひと息入れない? もう三日も、ろくに寝てないんでしょ?」
「……ありがとう、スゥちゃん」
差し入れのコーヒーを受け取りながらも、ダイチは作業を続行する。
スバルは短く息を吐きながら、ダイチに尋ねかけた。
「お母さんの声……ほんとにここから発信されたの?」
ダイチはうなずいて語り出した。
「ここは、次元の特異点なんだと思う。だからウルトラ・フレアの時も、ここだけ別の次元に飛ばされた……」
「特異点……」
「母さんはずっと、宇宙の電波の中には、未来から飛んできたものがあるって研究をしてたんだ」
「それって未来が分かるってこと?」
「化石の発掘みたいに、断面を見つけてはそれを解析してたみたいだけど……。それに、父さんはこの場所で何か大昔の遺物を発見した。その場所に宇宙電波の研究所を建てたんだ。……変だと思わない?」
「確かに……」
同意するスバル。地中から掘り返された物品と、空の向こうから降り注ぐ電波。一見すると全くの無関係だ。
「その二つには、何か関係があったってこと?」
「多分。それが何なのかまでは、まだ分からないけど……」
受信機とデバイザーを接続したダイチは、居場所も分からない母に向けて呼びかけ始めた。
「母さん、聞こえる? 俺だよ、ダイチだよ!」
懸命なダイチだが、スバルは止めようとする。
「ダイくん……少し休もう? お父さんもギン姉も、心配してるんだよ」
しかしダイチに聞き入れる様子はなかった。
「ここには絶対何かあるんだ……! 母さんと父さんが、一緒にここで未来に関わる研究をしていた! その母さんが、今俺に何か伝えようとしてる。……母さん、聞こえますか!? 父さん、俺の声聞こえる!?」
ダイチは何度も呼ぶが、両親からの応答がある気配はなかった。
その頃の、ミッドチルダ惑星の片方の衛星の200km上空を、スペースマスケッティが飛行していた。搭乗しているのはチンクとマリエル。
チンクがマリエルに尋ねる。
「このマスケッティは新型ということですが、一号機と比べてどこが変わったのですか?」
現在二人が駆るマスケッティは今までのものとは異なる。念願の二号機なのであった。
マリエルは自信満々に答える。
「この二号機には空間エネルギー測定機が標準装備されてるの。空間エネルギー量の変化を測定することで、今までどうしても観測できなかったダークサンダーエナジーの発生源の正確な位置が突き止められるって訳! すごいでしょ?」
「それはすごいですが、それ以外のスペックに変化はないのですか? 強力な新兵器が搭載されているとか」
「特に変わりないけど」
チンクが若干白けた様子を見せたので、マリエルはジトッと横目を向けた。
「あっ、今ガッカリしたでしょ! すぐ強い武器を欲しがろうとするのは、私嫌いよ。どんなに力が強くとも、それだけじゃ平和を守ることは出来ないんだから」
「それでは、マリエル技官は防衛には何が必要だとお考えなんですか?」
「そうねぇ……」
ミッドチルダ星系の惑星の陰から太陽が見えた。そのまばゆい光を浴びながら、マリエルは答える。
「みんなの活躍を見てきた私の経験上から言わせてもらえば……やっぱり、愛じゃないかしら」
チンクとマリエルのやり取りを通信機越しに聞いたルキノが苦笑すると、ワタルとハヤトが寄ってきた。
「チンクたちから何か報告が?」
「そうじゃないんだけど、マリーさんが平和を守るためには愛が必要だって」
「ははっ、何だそれ」
ワタルの背後からウェンディが飛びつき、彼の首に腕を回した。
「愛といえばワタルっスよね~! こないだ一緒に観た恋愛映画、何てタイトルだったっけ」
「おい!? そのことは話すなって……!」
「えっ、いつの間にそんな関係になってたの」
ディエチが目を見開いて振り返った。
「い、いや、そんなんじゃねぇからな!? ただこいつが、何かお勧めの映画見せろってしつこいから……!」
「何だ、水臭いな。変にごまかしたりしないで、つき合ってるならそう言えばいいじゃないか」
「このことお父さんに報告しないと」
「ご挨拶の言葉、今の内に考えておいた方がいいわよ」
「いつ結婚するとかは考えてる?」
ハヤト、ディエチ、ルキノ、アルトまで混ざってニヤニヤしながらワタルをからかう。
「あーもうっ! だから言うの嫌だったんだ!」
ワタルが声を荒げる他方では、ノーヴェがカミキとクロノにある相談をしていた。
「はい……。ヴィヴィオたちはもう大分実力を上げてきたから、あいつらの指導するのにXioとの二足のわらじじゃ厳しくなってきたんです」
「それで、彼女たちのコーチの方に専念したいということか」
「もちろん、現在の状況で辞められる訳ないってのは分かってますが……」
「何、若い才能を伸ばすのも立派なことだ。ダークサンダーエナジー対策にある程度目途がついたら、君のことを検討しよう」
「あ、ありがとうございます!」
ノーヴェはバッとカミキに頭を下げて感謝の意を示した。
ミッドチルダ南部の、ミウラがいつもトレーニングをしている砂浜。ここでミウラは今、tE-rUからもらったペンダントをギュッと握り締めて空を見上げていた。
「テルのこと考えてんのか、ミウラ」
そこにヴィータとザフィーラがやってきて尋ねかけた。ミウラは二人にうなずき返す。
「はい。あれからもう大分経つんだなぁって思って……。テルさん、今頃故郷の星でどうしてるでしょうか」
「あいつのことだ、一日でも早く復興するよう毎日努力していることだろう。ミウラ、お前も負けないように頑張らないといけないな」
「まずはヴィヴィオとの勝負だな。同門になる前の最後の勝負、悔いが残らないように力いっぱい挑むんだぜ」
「はい! 勝つにしろ負けるにしろ、遠くで頑張ってるテルさんにも恥ずかしくないようにいい勝負にしますっ!」
ペンダントを片手に、ミウラはそう約束したのであった。
時空管理局本局で、休憩中のティアナとフェイトが会話をしていた。
「フェイトさん、昨晩もなのはさんの自主トレにつき合ってたんですか?」
「うん、そうだけど」
「なのはさんも、よくやりますねぇ……。戦技披露会ってまだ二か月くらい先の話じゃないですか。それに今から準備してるなんて……」
「まぁ、今年はヴィヴィオとの勝負があるからね。それで張り切ってるんだよ」
苦笑するフェイト。自主トレ、と言えばかわいく聞こえるかもしれないが、実態はレイヤー建造物の模擬都市を一個丸ごと、まるで怪獣が暴れ回ったかのようにボロボロにするほどの超ハードなもの。単なる自主トレーニングでここまでやる人間は、次元世界中のエリートが集まる管理局においてもなのはくらいのものだろう。
「……何事にも全力なのがなのはさんのいいところですが、愛娘相手でも容赦なしなんですね……」
「愛娘だからこそ、だろうね。念願の一戦、最高の勝負にしたいんだよ。ヴィヴィオの方も毎日頑張ってるんだよ」
「似たもの母娘ですねぇ」
おかしそうに笑ったティアナが、しみじみとつぶやく。
「なのはさんとヴィヴィオの対決、いい試合になるといいですね」
「なるよ、絶対。あの二人の勝負なんだもの」
フェイトはそんな確信を抱いて、二か月後の披露会に思いを馳せた。
その頃ヴィヴィオは、アインハルト、コロナ、リオ、ユミナとともにXioベースのラボで、シャーリーとグルマンと話をしていた。
「ダイチさん、今日も出かけてるんですね。あの、ご両親が消えたという研究所の跡に」
「確か、お母さんからのメッセージを受信したと聞きましたが……」
アインハルトのひと言に肯定するシャーリー。
「うん、三日前にね。それから時間を作っては、研究所跡で交信を試みてるの」
「お母さんからのメッセージが届いたって……それまで、ダイチさんのご両親の行方の手掛かりって全然なかったんだよね」
リオの問いにコロナがうなずいた。
「そう聞いてる。それが遂に見つかったってことになるね」
「ってことは、ご両親がどこに行ったのかが分かる日も近づいてるってことなのかな?」
「そうかもしれんな」
グルマンが口を開いて語る。
「ダイチの親からの電波が今頃になって発信されてきたのには、それなりの理由があるのは確かだろう。ダイチもそう考えてるはずだ。それまでずっと捜してたのだから、初めて手掛かりを得て熱心になる気持ちも当然のものだろう」
「けれど、私は少し心配です……」
アインハルトが小さくつぶやく。
「ダイチさん、根を詰める性質じゃないですか。それでまた無理してるんじゃないかって」
「うーん、実際そうなんだけどね。あたしやマリーさんも、再三気を張り詰め過ぎないように言ってるんだけど」
シャーリーが認めたので、アインハルトはますます気を揉んだ。それを見て、ユミナが告げる。
「大丈夫だよ、アインハルトさん。ダイチさんが戻ってきたら、わたしが特別に効くマッサージをしてあげるから! ダイチさんの疲れを一辺に取り除いてあげちゃう!」
「おおっ、それはいいですねー! ユミナさんのマッサージはすごい効きますからね! ダイチさんもリフレッシュすること間違いなしですよ!」
ユミナの提案にリオがはしゃいだ声を上げた。
「ダイチさん、早くご両親のことが分かって、肩の荷が下りるといいですね」
「はい……」
ヴィヴィオ、アインハルトたちのダイチを慮る様子をながめ、グルマンが苦笑した。
「こんな多くの子たちから慕われているとは、全くダイチは幸せな奴だな」
一同がそんな話をしていたら、突然ルーテシアの声がラボに響いた。
「あれ、ヴィヴィオたちもいたんだ」
「ルールー! それに……」
振り返ると、ルーテシアがエリオ、キャロとともにラボに入ってくるところだった。更にもう一人……。
「うっ……どうしてあなたたちが、ここに……」
「クロ?」
ファビアがヴィヴィオたちの顔を確認して、少し顔を引きつらせた。
「わたしたちはコーチがXioの隊員をやってる関係で、よくここに来るんですよ。クロこそどうしてXioに?」
ヴィヴィオが尋ねると、ファビアの代わりにルーテシアとエリオが答えた。
「それがクロったら、ピグモンのことを調べてる内にXioの活動に興味を持ったみたいでね。それで一度見学させてもらおうってことになって」
「スパークドールズのことで話があった僕たちのついでに、一緒に連れてきたんだ」
ファビアは恥ずかしいのか、頬を赤らめてそっぽを向いていた。が、ヴィヴィオたちは興味津々になってファビアを取り囲む。
「そうだったんですかー! じゃあ、わたしたちとも色々とお話ししましょうよ!」
「私たち、ここのことはちょっと詳しいんですよ。きっと有意義な話が出来ると思います」
「あ、あなたたちには関係ないことだから」
「えー? そんなツレないこと言わないで下さいよー」
「わたしたち、きっと仲良くできると思うんです」
リオ、コロナらにも囲まれて、ファビアはかなり気恥ずかしそうであるが、満更でもなさそうだった。それにルーテシアがにっこり微笑む。
「いやー、クロにもいっぱいお友達が出来てよかった」
「シャーリーさん、グルマン博士。僕たちはスパークドールズの話を」
「ミッド東部の保管施設のスパークドールズの一部をこっちに搬送する計画のことで、少し打ち合わせをしたいと思いまして……」
ファビアを中心に盛り上がっている少女たちの一方で、エリオとキャロは仕事の話を進める。
しばし仕事を忘れて談笑をしていた特捜班だが、オペレーション本部に通信の報せが入ると、皆表情が一変して緊張が顔に表れた。
アルトとルキノがオペレーター席に着いて、カミキたちに報告する。
「管理局本局からです。ダークサンダーエナジーの最新データが来ました」
メインモニターに、ミッドチルダ星系の星図が表示される。その上に、大雑把な軌道が描かれる。本局が可能な限り調査した、ダークサンダーエナジーの発生源の進路だ。
「未だ発生源は特定できていないようですが、最初にダークサンダーエナジーが発生した際は太陽表面、最新の発生は第二惑星付近からのようです」
「……ミッドに近づいてきている……?」
つぶやくカミキ。星図上の発生源の進路は、太陽から惑星をたどるように続いているのだ。
クロノがアルトたちに指示する。
「チンクたちに報せろ。二人の現在位置からなら、もっと厳密な座標が特定できるはずだ」
その言葉を耳にして、ウェンディがワタルに囁きかけた。
「いよいよ、ダークサンダーエナジーの発生源の正体が分かるっスかね……」
「みたいだな。さぁて、一体どんな奴なのか……」
指令を受けたマリエルが、本部に応答した。
「了解。では、数値のチェックを開始します」
チンクへ顔を向けたマリエルが指示を出す。
「そこのメーターで、空間エネルギー量を確かめて」
「了解。……現在の空間エネルギー量は、3になっています」
メーターの表示に目をやったチンクのひと言に、マリエルは失笑した。
「珍しく変な冗談言うのね」
「変な冗談?」
「空間エネルギー量は、理論的に絶対レベル5以下にはならないのよ。どんな空間にも、必要最低限のエネルギーは存在してるんだから」
マリエルのその言葉に、チンクは目をパチクリさせた。
「え? しかし、たった今2になりましたが……」
「もう、冗談も繰り返すと面白くなくなるわよ……」
肩をすくめるマリエルだったが……自分の目で、チンクの言うことが冗談でも何かの間違いでもないことを知って絶句した。
メーターの数値は、2からコンマ以下の数字がどんどんと減少していっている。
「え……? う、嘘……!? 作ったばかりなのに故障かしら……!?」
マリエルは信じられずに機器の動作をつぶさに確認したが、どこにも異常は見られなかった。そうしている間にも数値は減り続け……1を下回り、遂には完全な0になった。
「……な、何か大変なことが起きてる……! 常識では考えられないような、何かが……!」
マリエルはそう唱えるだけで精一杯であった。
そしてチンクとともにフロントガラスから前方を見やると――マスケッティの進路上に、いつの間にか『光り輝く何か』が現れていることに気がついた。
「……何だ、あれは……!?」
チンクは動物的本能で――『それ』が限りなく危険なものだと感じ取った。
光り輝く『もの』は、本部にいる者たちもモニター越しに視認した。
「……綺麗……」
アルトが思わずつぶやいたが、通信からはマリエルの焦燥した声が届けられた。
『スペースマスケッティより本部! 正体不明の発光体が出現! こ、こっちに近づいてく――!!』
その通信がいきなり途切れた。カミキたちは色めき立つ。
「通信途絶! スペースマスケッティ、レーダーから消えましたっ!」
マスケッティからの通信が途絶したのは、ダイチが宇宙電波に乗せられた母からのメッセージを再度キャッチし、それがいきなり消えたのと同時であった。
「母さん!? 一体どうしたの!? 母さんっ!」
「ど、どうしたのダイくん――」
ダイチを案ずるスバルだったが、そこに本部からの連絡が入ってくる。内容はもちろんマスケッティの――マリエルとチンクの反応の消滅だ。
「えぇっ!? ……り、了解! すぐに戻りますっ!」
目を見張って応答したスバルが、ダイチへ振り返る。
「ダイチ、すぐに帰投するよ! 何か異常なことが起きてるっ!」
「う、うん!」
二人は急いでポルトスまで走っていった。
「マリーさん! チンク姉! チンク姉返事してくれっ!! な……何が起きたんだよ、おい……!?」
「チンク……! くそぉっ! こんなことになるんだったら、やっぱり俺が行っとくべきだった……!」
突然の事態にノーヴェやワタルが青ざめているオペレーション本部に、緊急連絡を受けたシャーリーとグルマンが駆け込んできた。
「マリーさんたちの反応が消えたって!?」
「通信映像を再生してくれ!」
「了解!」
モニターに、反応の消えたマスケッティから最後に送られてきた、発光体の映像が表示される。それを見て何かに勘づくシャーリー。
「探してたダークサンダーエナジーの発生源、これに違いないよ! 博士っ!」
「なるほど……! どんなに手を尽くしても、正確な座標を特定できない訳だ!」
グルマンの言葉に皆の注目が集まり、そしてグルマンは言い放った。
「ダークサンダーエナジーの発生源は、存在しないのだ!」
「存在しない……!?」
カミキたちは驚愕で言葉をなくした。
「な、何言ってるっスか博士。あれがそうなんじゃないんスか!?」
「いや。空間エネルギー量が0ってことは、スペースマスケッティの前には文字通り、何もなかったということだ。こいつは全くの無なんだ! 情報のないものを脳は処理できない。その穴を埋めるために脳内で無理に視覚化されたのが、あのキラキラの正体だっ!」
グルマンの説明の直後に、クロノがルキノに指示を下した。
「あの発光体がダークサンダーエナジーの発生源だと、本局に伝達を!」
「了解!」
カミキは部下たちに命令する。
「月面基地、全監視衛星を駆使して、スペースマスケッティと発光体の行方を追えっ!」
「了解!!」
特捜班は即座に追跡作業に取り掛かった。
月面基地と衛星が監視する中、発光体はミッドチルダ東部の砂漠地帯に落下していく。その砂漠の中央には、スパークドールズの大保管施設が建造されている。
発光体はその上に落下。すると――周囲のもの全てが、ぽっかりと開いた穴に水が流れ込んでいくかのように、発光体へと吸引されて『消えて』いった。
「発光体、東部スパークドールズ保管施設を直撃! 半径一キロが消滅!!」
「監視衛星の映像来ましたっ!」
モニターに表示される、監視衛星の捉えた映像。
更地になった保管施設跡の真ん中で、発光体から変じた怪しい人型の『それ』が、ゆらゆらと蠢いていた。
『フェッフェッフェッフェッフェッ……』
監視衛星の映像は、スバルたちの元にも届けられていた。
「な、何なの、これ……!?」
怪獣とも異星人ともつかない異様な姿と動きに、スバルも息を呑んでいる。すると……。
『グリーザだ……!』
エックスが唐突にそう発した。
「え!?」
『ダイチ、緊急事態だ! 私から直接、Xioのみんなに話すっ!』
エックスのいきなりの発言に、ダイチは面食らう。
「ち、直接!?」
「ダイチ、どうしたの!? エクスデバイザーがどうかした?」
ダイチの様子にスバルが尋ねたが、その時に、ポルトスにコネクトしているスバルのジオデバイザーが着信を知らせた。
通信の主は――エックスだ。
スバルだけでなく、Xioの全員分のデバイザーにエックスは通信を掛けていた。
『Xioの皆さん、聞こえてますか。あなたたちに今すぐに伝えなければならないことがあります』
エックスの発した声に、ウェンディがディエチと顔を見合わせる。
「これって、ダイチのインテリジェントの声じゃ……」
『私はデバイスではありません』
エックスは否定し、ここで己の正体を明かした。
『私がウルトラマンエックスです! 今日までずっと、デバイザーの中からあなたたちの活動を見ていました』
「えぇっ!? エクスデバイザーは……エックスそのものだったっスか!?」
「……それが本当なら、じゃあダイチは……!」
特捜班に動揺が走るが、カミキがそれを制するようにエックスに聞き返した。
「それを今明かしたということは、よほどの非常事態ということですか?」
エックスは言外に肯定する。
『保管施設を襲ったのはグリーザです! グリーザはあらゆる生命体のエネルギーを狙い、全てを無へと変換します』
「……生き物を、消し去るということですか……?」
クロノが、三つの生命が存在しない世界のことを思い出しながら、声を絞り出した。
『ええ。三つもの生命豊かな世界を滅ぼしたグリーザを追って、私はミッド星系までやってきたんです。――ミッドを狙うグリーザを、私は太陽に突き落として倒しました。十五年前のことです……!』
「それがウルトラ・フレアの原因か!」
グルマンが指摘した。
エックスは声が震える。
『しかし……倒したはずのグリーザが復活してきた! 私が十五年かけてミッドにたどり着いたように……奴も十五年かけて太陽から這い出てきたんだ!!』
―フェッフェッフェッフェッフェッ……―
保管施設跡地から、グリーザがふらふらと定まらない挙動で飛び上がり、西へ向けて移動を始めた。
――オペレーションベースXのある方角へと。