光輝巨人リリカルなのはX   作:焼き鮭

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美しき終焉(B)

 

 エックスの説明の途中で、アルトが報告する。

 

「グリーザ、西に向けて飛行を開始!」

 

 モニターに監視衛星が捉えた、東部から海洋の上空を猛スピードで横断してくるグリーザの姿が映し出される。

 

『奴は生体エネルギーの強いものから消していきます。ミッドの場合は……怪獣! つまりスパークドールズです!』

「だから真っ先に保管施設を消した……!」

 

 クロノの後に、シャーリーが青ざめた顔でつぶやく。

 

「なら、次に襲われるのは……」

 

 オペレーションベースX以外にあり得ない。

 

『そう。次に狙われるのは、Xioミッド本部です』

「そして奴は最終的に、次元世界全ての生命を消滅させようとしている訳か」

 

 グルマンのひと言に、各隊員は急に突きつけられた最悪の未来に戦慄を覚えた。

 

『グリーザは……今までの怪獣たちとは格が違う。十五年前もあらゆる攻撃が効かず、太陽に沈めることでようやく倒せた相手です。私だけでは、もう倒せないかもしれない。だから私とあなた方と管理局と、皆の力を合わせて基地を守り抜き、奴を倒しましょう!』

 

 エックスの申し出に、カミキは固くうなずく。

 

「分かりました……! 副隊長!」

 

 クロノへ向くと、彼に告げた。

 

「非常事態宣言だ! 管理局にフェイズ5発令要請! 同時にこの基地を中心とする半径20キロの住民に、緊急避難指示発令! 基地内の非戦闘員も総員退避!」

「了解!」

 

 指令を受けたクロノが、迅速に行動していく。カミキはグルマンの方に向き直る。

 

「博士、シールド最大出力で基地全体を覆ってくれ」

「最大出力でも足りん! シャーリー、パワーアップだ! よぉし、行くぞっ!」

 

 シャーリーは、マリエルたちが消息不明になったことに対する動揺が収まり切っていなかったが、それでも自分のすべきことは見失わなかった。

 

「……了解ですっ!」

 

 勢いよく応答すると、グルマンの後に続いてラボに急いでいった。

 

「ワタルとハヤトはスカイマスケッティで迎撃!」

「了解!」

「チンクたちの仇討ちだ……!」

「ノーヴェ、ウェンディ、ディエチは基地最終防衛システムの準備だ!」

「了解!!」

 

 迫り来る史上最大の脅威に対して、全隊員が全力で対抗するために動き始めた。

 

 

 

 エックスが通信を終えると、スバルがダイチに言葉を詰まらせながらも尋ねかける。

 

「ダイチ……そ、その……エクスデバイザーが、エックス本人ってことは……」

「……今は、時間がない。とにかく急いで基地まで」

「――う、うん……」

 

 スバルはそれ以上追及せず、ポルトスを基地へ急行させていった。

 

 

 

 Xioベース全体に、非戦闘員の緊急退避を宣告する警報が鳴り渡る。

 

『総員退避命令! 総員退避命令!』

「退避命令だ! 総員退避っ! 早く! 早くっ!」

 

 二千人を超える数の人間が駆け足で基地を脱出していく中、ヴィヴィオたち五人はエリオとキャロの制止を振り切ってオペレーション本部のカミキのところに駆け込んできた。

 

「君たち、まだいたのか……」

「隊長さん! わたしたちにも何かお手伝いさせて下さいっ! 邪魔はしませんから!」

「世界が滅ぶかどうかの瀬戸際なんですよね!? そんな時にただ逃げるだけなんて、出来ませんっ!」

 

 必死に訴えるヴィヴィオたち。その瞳は鬼気迫りながらもまっすぐで、真剣に世界を守ろうという強い意志が見て取れた。

 だがカミキは訴えを却下する。

 

「今まで君たちの色んな要望に応えてきた。だが今度ばかりは駄目だ! 皆と一緒に、早く避難しなさい」

「今度ばかりは危険すぎるんだ! 後のことはあたしたちに任せて、お前たちはあたしらの勝利を祈っててくれ。それで十分だ」

 

 ノーヴェも説得に加わるが、ヴィヴィオたちは納得できなかった。

 

「でもっ!」

「――ヴィヴィオ、隊長さんたちをあまり困らさないであげて」

 

 そこに凛とした声が響く。ヴィヴィオが振り向くと、なのはがフェイト、ティアナ、はやてらとともにオペレーション本部に入室してきた。

 

「なのはママ……!」

「カミキ隊長。わたし、高町なのは一尉とフェイト・ハラオウン、ティアナ・ランスター両執務官、八神はやて二佐、並びにヴォルケンリッター四名、基地防衛に参加します」

 

 カミキに対して敬礼すると、なのはとフェイトでヴィヴィオたちを説得する。

 

「大丈夫。ママたちは三度も世界の危機を防いだんだから。今回はエックスさんって頼もしい味方もいてくれてる。これだけの人、これだけの力がそろって、打ち破れない敵なんかいないから。だから安心して、ママたちを信じて」

「みんなも避難して。もしみんなが危ない目に遭ったら、私たちはみんなのご家族に顔向け出来ない」

 

 なのはの言葉で、ヴィヴィオも遂に受け入れた。

 

「……分かった。でもママ、必ず勝って、みんな無事に帰ってきてね。約束だよ」

「うん。約束」

 

 なのははヴィヴィオと指切りをして、約束を交わした。

 ティアナは駆けつけた整備班長にヴィヴィオたちを託す。

 

「子供たちをお願いします」

「分かりました。さぁみんな、こっちだ」

 

 ルーテシア、エリオ、キャロはヴィヴィオたちと一緒に、ファビアも避難させようとする。

 

「クロ、あなたもみんなと一緒に行って」

「君もここにいさせる訳にはいかない」

「わたしたちは、絶対に負けないから!」

「うん……」

 

 ファビアは不安が拭い切れない様子だったが、それでもルーテシアたちの言葉に従い、ヴィヴィオたちの後について避難していった。

 その後にアルトが報告する。

 

「次元航行艦隊、洋上のグリーザにアルカンシェルを発射! 交戦を開始しました!」

 

 

 

 ミッドチルダ大洋の高空に並んだ幾隻もの次元艦から一斉にアルカンシェルが放たれ、猛然と迫るグリーザに叩き込まれていく。

 だが、グリーザに効いている様子は全くなかった。

 

―フェッフェッフェッフェッフェッ……!―

 

 グリーザはアルカンシェルの雨を物ともせずに、ダークサンダーエナジーによる破壊光線を前方一面に掃射。

 次元艦は光線の攻撃によって、片っ端から撃墜されていった。

 

―フェッフェッフェッフェッフェッ……!―

 

 グリーザは艦隊の防衛ラインを突破し、Xioベース目掛け一直線に飛び去っていった。

 

 

 

 クロノとフェイトは一時、地球のエイミィ、アルフと通信をしていた。

 

「カレルとリエラは今、学校か」

『うん。……クロノくん、そっちはすごく大変なことになってるみたいだね……』

「ああ……。だが心配はいらないよ。僕たちは絶対に勝利する。いつだってそうしてきたんだから。――正月にはそっちに行くから、楽しみに待っててくれ」

『うん、約束だよ……!』

『クロノ、帰ってこなかったら承知しないからね! エイミィたちを悲しませたら、あの世に行ったって追いかけてぶん殴ってやるからね!』

「それは恐ろしいな……。肝に銘じておくよ」

 

 アルフの脅し文句に苦笑するクロノ。

 

『フェイトも、絶対無事に帰ってきてね。フェイトだけじゃなく、誰一人として欠かすことなく……!』

「うん。アルフ、私頑張るからね。応援しててね」

 

 通信を終えてカミキの隣に戻ってきたクロノに対して、カミキは指摘する。

 

「副隊長、顔色が悪いな」

「……はい。カリム・グラシア少将の預言……『黒き稲妻に導かれる滅び』が、そのままの意味だとは流石に思っていませんでしたので」

「やはり、不安は拭い切れないか?」

 

 カミキの言葉を肯定するように、クロノは語った。

 

「……今まで私たちは、様々な大事件を解決してきました。ジュエルシード、闇の書、スカリエッティなど……敵と呼べるものの全てを、最終的に倒して勝利を収めた。だから今こうしています。……ですが……」

 

 カミキに面と向かったクロノの額には、脂汗が滝のように流れていた。

 

「無を倒すことが――いえ……『倒す』という概念が通用するのでしょうか……?」

「……」

 

 流石のカミキも黙ってしまう。だが、

 

「――それでも、わたしたちはやるしかない」

 

 なのはがそう発言したので、周囲の注目が彼女に集まった。

 

「ここでわたしたちが負けたら……世界中の全ての命が消されてしまう。今日まで積み上げてきたものも……管理局も、管理外の世界も、わたしたちの友人も……家族も……!」

 

 声を絞り出すと、前を見つめる視線に力が宿る。

 

「二か月後には、ヴィヴィオがミウラさんと再戦して、わたしにもぶつかってきてくれる。その未来と……ヴィヴィオと出会って、娘に迎えた過去。スバルたちを育てた機動六課時代、はやてちゃんたちとの戦ってばかりだったけど大切な思い出、そしてフェイトちゃんとお友達になったこと……レイジングハートと巡り会った、わたしの全ての始まり……!」

「なのは……」

「なのはちゃん……」

 

 フェイトとはやてがなのはの決心を宿した横顔を見つめた。

 

「その全部を、『無かったこと』になんてさせない……!」

 

 なのはの言葉に、集まった面々はグリーザを打倒する意志を一層強く固めたのだった。

 

 

 

「グリーザか……。ダークサンダーエナジーの発生源が、ここまで常識を超えたものだとは流石に思わなかった」

 

 基地の障壁強化の作業中、グルマンがシャーリーを相手にポツリと漏らした。

 

「我々はこれまで、ダークサンダーエナジーは何者かが怪獣を利用する目的で降らせているものとばかり考えていた。だが……実際はグリーザが生体エネルギーを探すためのもので、怪獣のパワー増強や凶暴化はただの副作用に過ぎなかった! 全く以て不条理の塊……『存在する無』『生きていない生命体』などという矛盾そのものだ!」

「……博士、そんな矛盾が現実になったようなのに、みんなは勝てるのかな……」

 

 シャーリーもまた、内心は不安でいっぱいだった。

 

「あたし、ここまで次元が違う相手は聞いたこともないよ……。存在する次元が違うんじゃ、勝ち目なんてものは……」

「……いやっ! この世に『絶対』なんてもんはないはずだ。どんなに完璧に見えるものでも、どこかに泣きどころがあるもの! ともかく、私たちは私たちの出来ることを精一杯にやるだけだ」

 

 新しい防壁は、グルマンたちの手によって凄まじい速度で構築されていった。

 

 

 

 Xioベースの最終防衛システムが機動していく中、ポルトスは基地の目前までたどり着いた。カミキがスバルに指示を下す。

 

『スバル、基地に戻り次第デバイスゴモラでグリーザを迎え撃て!』

「了解!」

 

 だがちょうどその時に、基地上空に妖しい輝きが発生し、笑い声に聞こえる怪音波が発せられた。

 

―フェッフェッフェッフェッフェッ……!―

 

 グリーザだ! ダイチはそれを確認して叫ぶ。

 

「もう来てる! 間に合わないっ!」

『行こう、ダイチ!』

 

 エックスの呼びかけにうなずくダイチ。

 

「スバル、止めて!」

「えっ……!?」

「早くっ!」

 

 ダイチの鋭い声に、スバルは思わずブレーキを踏んだ。ポルトスが停車すると、ダイチは即座に降りる。

 

「ダイチ! 待って!」

 

 スバルが追いすがると、ダイチは基地に迫るグリーザを見上げて、スバルに振り返った。

 

「――スゥちゃん、今まで黙っててごめん。俺とエックスで……あいつを止めてみせるっ!」

 

 そう言い残して、ダイチはグリーザに向かって駆け出した。

 

「だ、ダイくんっ!!」

 

 スバルの呼び止めようとする声も振り切り、ダイチはデバイザーを構えた。

 

「エックス、ユナイトだ!」

『よぉし、行くぞっ!』

 

 デバイザーのスイッチを押し込むダイチ。

 

「エックスーっ!!」

 

 彼の全身が黄金色のX字の輝きに包まれ――ウルトラマンエックスがグリーザ目掛けて一直線に飛んでいく。

 呆然とそれを見上げたスバルに、クロノからの通信が掛かる。

 

『スバル、急げ!』

「――ダイチが……!」

『ダイチがどうした!?』

 

 スバルは本部に報告する。

 

「ダイチは、グリーザ迎撃に向かいました! ――ダイチがエックスだったんです!!」

 

 

 

 スバルから伝えられた真実に、本部の者たちは一様に絶句していた。

 ただ一人だけ、なのはが小さくつぶやく。

 

「ダイチくん……やっぱり、そうだったんだ……!」

 

 それを聞き止めたフェイトが振り向いた。

 

「なのはは知ってたの?」

「確証はなかったんだけど……」

 

 なのはは顔つきを変え、戦士の表情をカミキに向けた。

 

「エックスを――ダイチ隊員を援護しますっ!」

「了解! ……ダイチを、どうか頼む……!」

 

 なのははカミキに固くうなずいて、フェイトたち仲間とともに基地から急いで出動していった。

 

 

 

―フェッフェッフェッフェッフェッ……!―

 

 十五年前に自分を太陽に突き落としたエックスが現れて、グリーザは一瞬だけ退いたが、すぐに基地への進撃を再開する。

 

「デヤァッ!」

 

 エックスもグリーザに向かっていく速度を落とさないまま、エクシードXに変身。グリーザと真正面から衝突した!

 空に電脳の光子と闇の稲妻が弾け、爆炎が生じる。エックスがグリーザの進行を止めた間に、スバルは作戦ポイントに到着した。

 

「――一緒に戦おう、ダイチ!」

[デバイスゴモラ、ロードします]

 

 デバイザーにデバイスゴモラのカードを差し込んで召喚の用意をしていると、爆炎の中からエックスがグリーザと取っ組み合って飛び出してきて、スバルの頭上を越えていった。

 

「デアァッ!」

―フェッフェッフェッ……!―

 

 スバルはスパークドールズをリードしてデバイスゴモラを召喚。

 

[リアライズ!]

『ギャオオオオオオオオ!』

 

 スバルとシンクロして出現したデバイスゴモラが咆哮を上げる。

 

「トゥアァァッ!」

 

 一方エックスは組み合っていたグリーザを自分ごと地面に叩き落とした。エックスは転がっていくが、グリーザは物理法則を無視した挙動で起き上がる。

 

―フェッフェッフェッ……!―

 

 グリーザの身体に実体はなく、目に見える姿は脳が作った錯覚なので、その全体像は常に揺らぎ、歪んでいる。基地から飛び出していったなのはたちは、肉眼で確認したグリーザの異様さに改めて戦慄を覚えた。

 

「あれがグリーザ……!」

「何て不気味な姿……いや、『姿』なんてものはないんだったね……」

「それでいて生き物なんだから、全く以て不条理な存在ですね……」

 

 つぶやくフェイトとティアナ。一方でヴィータは胸の内の不安、恐怖を振り払うように皮肉げに笑んだ。

 

「怪物退治は騎士の十八番だけど、まさか無なんてもんと戦う日が来るなんてな」

「でもこの勝負、絶対に負けられないわ……!」

 

 シャマルの言葉にザフィーラがうなずく。

 はやてとシグナムは、それぞれにユニゾンしているリインフォースとアギトに呼びかけた。

 

「リイン、厳しい戦いになるやろうけど、最後までよろしゅう頼むで」

「アギトも、しっかりと私についてきてくれ」

『はいですっ!』

『おうよ! 無だろうが何だろうが、どーんと来やがれってんだ!』

 

 エリオはキャロとルーテシアに忠告をした。

 

「ヴォルテールと白天王は召喚しない方がいい。あれに『食われて』しまうかもしれないから……」

「うん、分かった……!」

「白天王たちがいなくても、やれることの全てを尽くすだけだね」

 

 オペレーション本部からはカミキがグルマンに指示する。

 

「博士! シールドを!」

 

 グルマンとシャーリーはギリギリにところで基地を覆う障壁の強化を完成させた。

 

「出来たぁっ!」

「ハイパーシールド、起動!!」

 

 Xioベース全体が魔導障壁で覆われると、スカイマスケッティがエックスとデバイスゴモラの間に飛んでくる。ハヤトとワタルがノーヴェたちに呼びかける。

 

『正念場だな……!』

『チンクの分まで、俺たちが戦わなくっちゃな!』

「そうっスね……! ここは何が何でも譲れないっス……!」

「チンク姉……どうか見ていて……!」

「……チンク姉たちはもうどうしようもないけど……チビたちの、世界中の人たちの未来は守り抜くっ!」

 

 スバルはデバイスゴモラ越しに、エックスに対してうなずいた。

 

「ダイくん……ずっとあたしたちを助けてくれてたんだね……! その想いを無にしないよう、あたしも力の限り戦うからっ!」

 

 スバルの声はダイチにまで届き、エックスとともにうなずき返した。

 

「『よし……行くぞっ!」』

 

 ここにそろった大勢の勇士たちと相対するのは、グリーザ単体。だがその底はまるで見通せない。

 

―フェッフェッフェッフェッフェッ……! アーハッハッハッハッ……!―

 

 そして遂に世界の存亡を懸けた戦いの幕が開く。クロノによる全体指揮の下、一番に狼煙を上げたのはマスケッティのファントン光子砲だ。

 

―アーハッハッハッハッ!―

 

 光子砲の連射が全弾グリーザに叩き込まれ――外れる。間髪入れずにエックスのストレートパンチがうなり――グリーザはエックスの背後に。ゴモラのクローと反転したエックスのパンチと、ティアナ、ノーヴェ、ウェンディ、ディエチのウルトライザーの射撃があらゆる角度から放たれるも、ぐねぐねと動くグリーザをまるで捉えられない。シャマルの拘束もザフィーラの楔もグリーザはすり抜ける。「ギガントシュラーク!!」「シュランゲバイセン・アングリフ!!」巨大ハンマーと長大な蛇腹剣が同時にグリーザに直撃――かわしながらエックスのキックを弾くグリーザに光子砲となのは、はやて、ルーテシアの砲撃、フリードリヒのブレスが押し寄せ――効かない。『ギャオオオオオオオオ!』「ジェットザンバー!!」「ツェアシュテールングスハンマー!!」「火龍一閃!!」「メッサー・アングリフ!!」ゴモラの突進、大剣のバルディッシュ、ドリルハンマー、炎のレヴァンティン、稲妻のストラーダ、ガリューの刃のことごとくをグリーザは弾き返し、なのはたちの空と地上両方からの援護射撃とともに飛び込んだエックスも揺らめきながらかわす。「超振動拳!!」ウィングロードを駆けるゴモラの突撃はあっさり止められ、叩き落とされた。エックスが打撃を繰り出すとともにフェイトたちも再度飛びかかっていったが、グリーザは動作の過程をそっくりくり抜いたような挙動で全て弾き飛ばした。―アッハッハッハッハッ!―そしてグリーザボルテックスとグリーザダブルへリックスがエックスとゴモラに襲い掛かり、両者ともはね飛ばされた。―ヒャーハッハッハッハッ!―暗黒の光線はとめどなく放たれ続け、なのはたちは必死に回避するも遂にマスケッティが被弾した。

 

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――っ!!」

 

 マスケッティは一撃で大破、撃墜される。

 

「ハヤトさん!!」

「ワタルーっ!!」

 

 絶叫するスバル、ウェンディ。マスケッティは背景の山の向こうに墜落していった。

 

―フェッフェッフェッフェッフェッ……!―

 

 グリーザからの光線は止まらない。黒い稲妻がエックスに襲い掛かる。

 

『「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」』

 

 執拗な攻撃を受け、倒れるエックス。彼だけでなく、ティアナ、ノーヴェ、ウェンディ、ディエチ、ルーテシア、ガリュー、エリオ、キャロ、ザフィーラ、シグナム、ヴィータ……全力で防御しても光線を防ぎ切れず片っ端から叩き落とされていく。

 

「きゃああああああああああっ!!」

 

 シャマルが汗だくになって懸命に回復を図るも、被害が大きすぎてとても追いつかない。

 

「みんなぁぁぁぁっ!」

『ギャオオオオオオオオ!』

 

 スバルの感情に呼応するようにゴモラがグリーザに突撃していくが、背面からのグリーザダークライトニングがゴモラを貫いた。

 

『ギャオオオオオオオオ!!』

「ああああああああっ!!」

 

 デバイスゴモラの身体が崩壊を起こし、スバルにも重大なダメージが流れ込んで彼女も倒れてしまった。

 まだ辛うじて無事なのはなのは、フェイト、はやての三人。彼女たちは周囲の魔力を全てかき集める。

 

「スターライト!!」「プラズマザンバー!!」「ラグナロク!!」

「ブレイカぁぁぁぁぁぁ――――――――――っっっ!!!」

 

 エースオブエース、断金の交わりの三人による全力全開の砲撃が放たれた!

 ……砲撃はグリーザの胸部に吸い込まれ――全くの無反応だった。

 

―フェッフェッフェッフェッフェッ……!―

 

 グリーザはゆらゆらと蠢きながら、鐘の音に聞こえる衝撃波を全方位に発し始める。

 

「グワアアアアアッ!?」

 

 エックスまでもが頭を抱えて苦しむ攻撃。周囲がたたで済むはずがなく、シールドで覆われているはずの基地が震動し、動力に異常が生じる。

 

「ああああああ――――――――!?」

 

 そしてなのはたちも頭を抱え、地上に墜落していった。回復を務めていたシャマルまでもが、とうとう倒れ伏す。

 

―ヒャーハハハハハハッ!―

 

 衝撃波を止めたグリーザは、すぐにグリーザダークライトニングをエックスに照射。

 

「グワアアア―――――ッ!」

 

 エクシードXの能力を以てしても、怒濤の攻撃に耐え切れず片膝を突く。カラータイマーはとっくに点滅していた。

 倒れ伏したままのなのはは、かすかに顔を上げると、震えた声で言った。

 

「どうして……!? わたしたちの全力……わたしたちみんなの懸命な想いが……少しも届かないっ……!!」

 

 あれだけいた勇士たちが、たった一体の相手を前に全て倒れ、絶体絶命の状態。そんな中で、エックスはダイチに呼びかけた。

 

『ダイチ……! 君と一緒に戦えてよかった……!』

 

 まるで遺言のようなエックスの言葉に、ダイチは言い返す。

 

『「これが最後みたいに言うなよ……! 今出来ること……やるべきことがあるっ!」』

 

 エクスディッシュを構えたダイチは、至る場所に倒れている仲間たちを見渡した。――彼らの奮闘、彼らの尽力……彼らの未来を、無駄にはさせられない。

 

『君は強くなった……!』

『「エックスのお陰だよ! ――行くぞっ!」』

『ああっ!!』

 

 ダイチの力を借りて、エックスは立ち上がった。最後の力を振り絞り、エクスディッシュを手にする。

 

「『エクスディッシュ!!」』

 

 パネルを三回スライドしてボタンを叩き、エクシードエクスラッシュを発動!

 

「『エクシード! エクスラッシュっ!!」』

 

 虹の光とともにグリーザへと一直線に飛んでいくエックス!

 対してグリーザは己の前に光の盾を展開――『初めて』防御らしい防御を行った。

 盾に激突するエックス。あらん限りの力を全て使い切る勢いで、突き破ろうとする。

 

『「あああああ――!!」』

 

 グリーザの能力の影響によりエックスの、ダイチの身体が粒子となって分解を起こしていく! だが二人は止まらない!

 

「オオオオオ――!!」

 

 そして遂には――エックスの全身が粒子となり、グリーザに全て吸い込まれていった。

 

「――あぁっ……!?」

 

 よろめきながらも立ち上がっていた仲間たちが、それを目の当たりにして絶句する。

 

―フェッフェッフェッフェッフェッ……!―

 

 エックスを呑み込んでしまったグリーザ。だが次の瞬間、そのゆらめき方が大きく変わる。

 

―アッハッハッハッハッ!?―

 

 グリーザの各部が明滅を繰り返し、また膨れ上がり、どんどん歪みが大きくなっていく。そして、

 

―アァ――――ハッハッハッハッハッハッ!!――

 

 大爆発を起こした。

 

「うわぁぁぁっ!」

 

 凄絶な爆風がスバルたちの身体を煽った。硝煙が晴れ、彼女たちが顔を上げると――。

 基地の正面に、エックスのカラータイマー『だけ』が突き刺さっていた。

 

「――なっ……あっ……!」

 

 カミキが、クロノが、アルトとルキノが、グルマンが、シャーリーが、それを目にして言葉を失った。

 それはルーテシアたちも同様だった。

 

「あ、あれってエックスの……!」

「む、胸についてるの、だよね……」

 

 ガリューに肩を貸されて起き上がったルーテシアとキャロの言葉に、エリオが青ざめた顔で首肯した。

 ヴォルケンリッターが口々に唱える。

 

「それだけが残っているとは……」

「しかも、光ってねぇ……!」

「あれの輝きは、命の輝きを示すものだと……」

「前に、そう、言っとったよな……シャマル……?」

「ええ……。そうだと確認してるわ……」

 

 はやての問いかけに、シャマルは唖然とうなずく。

 

「つまり、エックスは……ダイチさんは……!」

 

 声が恐怖で震えるティアナ。フェイトは口を手で覆う。

 なのはも、長らく浮かべたことのなかった、『絶望』の色を顔に張りつけていた。

 

「……ヴィヴィオと、約束したのに……! みんな無事に、帰るって……!」

 

 墜落したマスケッティから脱出したワタルは、感情を抑え切れずに地面を殴りつけた。

 

「ちくしょう……こんなのありかよぉぉ―――――っ!!」

 

 ワタルの横で、ハヤトは呆然と立ち尽くしている。

 

「う、嘘だ……嘘だああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「ノーヴェっ!!」

 

 ノーヴェは頭を抱えて慟哭し、取り乱したのをウェンディとディエチに抑えられる。

 

「ダイくん……」

 

 そしてスバルは、輝きを失ったカラータイマーへと、衝動的に走っていった。

 

「ダイくぅぅぅぅぅぅぅぅんっっ!!!」

 




 




次回、『昴を臨む大地』。





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