光輝巨人リリカルなのはX   作:焼き鮭

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昴を臨む大地(A)

 

「こいつは全くの無なんだ!」

「何か大変なことが起きてる……!」

「通信途絶! スペースマスケッティ、レーダーから消えましたっ!」

「探してた発生源、これに違いないよ!」

「あの発光体がダークサンダーエナジーの発生源だと、本局に伝達を!」

「東部スパークドールズ保管施設を直撃! 半径一キロが消滅!」

『奴は生体エネルギーの強いものから消していきます』

『次に狙われるのは、Xioミッド本部です』

「間に合わないっ!」

「今まで黙っててごめん。俺とエックスで……あいつを止めてみせるっ!」

「ダイチがエックスだったんです!!」

「ダイくん……」

「ダイくぅぅぅぅぅぅぅぅんっっ!!!」

 

 

 

『昴を臨む大地』

 

 

 

 聖王教会で、シャンテとオットー、ディードが避難所のヴィヴィオと通信している。

 

「――じゃあ、基地の方が今どうなってるかはそっちも分からないんだ」

『うん……。ずっと通信がつながらなくって……』

 

 ヴィヴィオが返答すると、シャンテは双子の方に目をやった。しかし二人とも残念そうに首を振る。

 

「こっちも、誰とも通信がつながらない」

「恐らく、それどころではないのでしょう」

『ママたち……大丈夫なのかな……』

 

 現場の情報が入ってこないことで、ヴィヴィオも流石に不安そうであった。シャンテはそんな彼女を励ます。

 

「だーい丈夫だって! 何度も世界を救った人たちが勢ぞろいしてるんでしょ? どんなにヤバそうに見えたって、最後にはみんなけろりとした顔で帰ってくるに決まってるよ! だから元気出しなって。暗い顔してたら、逆に心配されちゃうぞ」

『うん……ありがとう、シャンテ』

 

 ヴィヴィオのお礼を最後に通信を終えると――シャンテの表情が一変して、オットーとディードに不安の眼差しを向けた。本当は、シャンテも心配でならないのだ。

 

「……陛下にはああ言ったけど、実際のところどうなのかな……? いくら何でも、今度の相手は別次元なんでしょ……?」

 

 それに対する明確な答えを、オットーたちは持っていなかった。

 

「一応、滅亡を回避する預言もあるけれど、結局意味は解明されなかったからね……」

「八つの命と、数多の命……。それがどういう意味で、どんな働きをするのか……。最早私たちには知りようがありません。出来るのは……姉さまたちの武運を祈ることくらいでしょう」

 

 ディードの言葉に応じるように、イクスヴェリアが小さな手と手を握り合わせて、天に向けて懸命に祈りを捧げた。

 

 

 

 グリーザと、エックスの消滅後、戦闘に加わっていた者たちはスバルを除き、全員一箇所に集結した。その誰もが満身創痍の状態で、治癒するシャマルもまたダメージが響いてよろめいたので、ザフィーラに受け止められた。

 

「大丈夫か」

「シャマル、無理したらあかんよ。シャマルもボロボロやない」

 

 はやてもシャマルの身体を気遣う。

 

「ありがとう。でも、他に治せる人がこの場にはいないんだから、私が頑張らないと……」

 

 それでも無理を押すシャマルの一方で、ノーヴェは絶望し切った表情でうなだれていた。

 

「ダイチが……こんな……こんな結末ってありかよ……。何であいつが……」

 

 他の特捜班のメンバーも沈黙し、悲嘆に暮れていた。そこになのはがつぶやく。

 

「……力の限り頑張れば、必ず最良の結果を得られるほど世界は甘くない。時には、悲しいお別れをしなければいけない時もある……」

 

 語りながら、基地の前に刺さったエックスのカラータイマーを呆然と見やった。

 

「でも……今回は悲しすぎだよ……。お別れの言葉を言う時間すらなかった……」

「なのは……」

 

 覇気のないなのはの横顔を見つめたフェイトは、頭を振ってティアナに尋ねかけた。

 

「スバルはどうしてるか、知ってる?」

「あのエックスの発光体のところへ走っていきました。……流石に、まだ現実を受け止め切れてないんだと思います」

「そっか……」

 

 一同がダイチとエックスの犠牲で重苦しい空気に包まれていると、そのスバルからの通信回線が全員の元に開かれた。

 

「スバル……?」

『隊長、みんな!』

 

 スバルは息せき切った声で告げた。

 

『エックスは……ダイチは生きてますっ!』

「えっ――!?」

 

 今のひと言で、一同は一気に騒然となる。

 

『発光体から鼓動が聞こえるんです! 聞いて下さいっ!』

 

 通信回線にトクン、トクンとかすかだがはっきりとした心拍のような音が流れた。それはスバルがカラータイマーから拾った音であった。

 

 

 

 カミキはモニター越しに、スバルが密着しているカラータイマーを見つめた。

 

「あの中に、ダイチが……!」

「何か、救う方法を!」

 

 クロノの言葉に、オペレーション本部に来たグルマンが告げる。

 

「以前エックスを救うため、ダイチを電脳空間に転送したことがあった。あの時のシステムを応用する! 誰かをエックスの中に転送すれば、ダイチを連れ戻すことが出来るかもしれん!」

 

 信じられないという風に聞き返すカミキ。

 

「本当にそんなことが……!?」

「理論上はな。上手くいけばエックス自身の復活も見込めるが、大きな危険も伴う」

 

 グルマンの提示した方法に対して、クロノがカミキに申し出た。

 

「私が行きます! 今の状況で最適なのは、負傷のない私です!」

『いえ……』

 

 だがスバルがそこに割って入った。

 

『あたしに行かせて下さい!』

「スバル……!」

『元レスキュー隊員の誇りに懸けて、あたしが必ず救い出しますっ!』

 

 スバルは己の全存在を賭す覚悟で、そう宣言した。

 

 

 

 長々と時間を掛けている訳にはいかない。スバルはラボで、以前ダイチが使った電脳空間転送装置の上に横たわった。その様を、仲間たちが固唾を呑んで見守っている。

 師であるなのはが、スバルに呼びかけた。

 

「無理だけはしないでね、スバル。……わたしたちとしても、犠牲者を増やす訳にはいかないから……」

「なのはさん……。分かりました」

 

 グルマンとシャーリーが脳波のモニターを見せながらスバルに告げる。

 

「このアルファX波が限界を超えたら、命の危機だ。お前の身体でも耐えられない」

「最悪の場合は、あたしが外から強制解除するからね。それだけは了承して」

「はい……。シャーリーさん、ありがとうございます」

 

 そしてノーヴェがスバルの元に立ち、彼女の手をギュッと握り締めた。

 

「スバル……ダイチのこと……頼んだぜ。きっと……きっと、連れ戻してくれよな……」

「ノーヴェ……」

 

 ノーヴェが離れると、グルマンが最後に尋ねる。

 

「準備はいいか?」

「はい……お願いします!」

「転送開始!」

 

 装置のスイッチが入れられ、スバルは目をつむる。

 ――目を開けると、彼女の意識は電子的な光に満ち溢れた、不可思議な空間の中に移っていた。その空間こそが、カラータイマーの内部――ユナイトしたダイチが存在していた世界だ。

 

『「ここが……エックスの中……!」』

 

 だが今は、ダイチの姿はどこにも見えない。スバルは覚悟を決めると、ダイチの姿を求めて電脳空間の中を駆け回り始めた。

 

『「ダイくん! 返事して、ダイくん!」』

 

 しかし電脳空間は限りがなく、その世界においてスバルの存在はあまりにちっぽけなものであった。

 

 

 

 その頃、ダイチは暗闇に閉ざされた、寂しい世界の中を放浪していた。

 ダイチがエクスデバイザーを手に取ると――金縁が消え、元のジオデバイザーに戻っていた。

 

『エックス!? おい、返事をしてくれっ!』

 

 懸命に呼びかけたダイチだが、ふと気づくと、周囲の光景が一変して何かの施設の放送室のような場所になっていた。

 そしてこの場所で、一人の女性が撮影器具をセットして己を映す用意をしていた。彼女の顔をひと目見たダイチの顔が驚愕に染まる。

 

『母さん!?』

 

 それはまさしく、ずっと捜していた母の顔。そして今の場所が、かつて両親が勤めていて、オーロラに消えた電波研究所の内装であることに気がついた。

 

『これは……あの夜……!』

 

 ダイチの母がカメラに向かって、話し始めた。

 

『私の研究では、十五年後の世界には生命の発する電波がなかった。全ての生き物が消滅しているとしか思えませんでした。――しかし、このロストロギアを手に入れて以来……かすかに、未来の音を受信できたんです!』

 

 母が傍らのガラスケースを抱えた。その中に収められているのは――。

 

『エクスディッシュ……!?』

 

 母はエクスディッシュを抱えたまま熱弁を振るう。

 

『やはりこれは、未来に影響しています! そして――!』

 

 その途中で、ダイチの父が放送室に駆け込んできた。――あの時、ダイチを置いて研究所へ母を捜しに行った父の姿だ。

 

『何してる!? 急ぐんだ!』

 

 父は避難を促すが、母は従わずにエクスディッシュを父に見せた。

 

『これを見て! 今日になって、これが光り出したの! 未来の音が、今までで一番はっきり聞こえた!』

『……何が聞こえたんだ?』

 

 父の問いかけに、母は答えた。

 

『多分……ダイチの声……!』

 

 その時に、外から幼少時のダイチの叫びが聞こえる。

 

『お父さーん! お母さーん!』

 

 ――研究所が光に分解され、宇宙に消え始めたのだ。

 現に放送室も――父と母の二人も分解されていく。

 

『この光が、希望……!』

 

 それでも二人は、待ち受ける未来に恐れた様子を見せず――エクスディッシュとともに未来の希望を抱いていた。

 

『母さん……! 父さん……!』

 

 ダイチの視界からも、両親の姿が消えていく――。

 

 

 

 基地に非常警報が鳴り響き、ルキノが非常に焦った声を発した。

 

「隊長! グリーザが……再生を始めましたっ!!」

 

 基地の外で怪しい光が一点に集まっていき――グリーザが再び出現した!

 その様子を立体モニターで目の当たりにしたなのはたちも息を呑む。ノーヴェはギリッと奥歯を軋ませた。

 

「テメェが復活すんじゃねぇよ……!」

 

 カミキは即座に命令を下す。

 

「ハイパーシールド再起動! 全魔力を回してラボを守れっ!」

「了解!!」

 

 グリーザが胸部から怪光線を発射するが、ギリギリのところでシールドが基地を覆って防御した。

 しかし強化された障壁を以てしても、光線の衝撃で基地全体が激しく揺れる。

 

「これはまずいぞっ!」

 

 叫ぶグルマン。グリーザは光線を連続発射してシールドを破ろうとする。

 オペレーション本部も強い震動が襲い、倒れかけたカミキが命令した。

 

「デバイスゴモラを機動しろ! 私が動かす! 行くぞ副隊長っ!」

「了解!」

 

 カミキとクロノが飛び出そうとしていくところに、ノーヴェが駆けつけて言った。

 

「隊長! あたしにやらせて下さい!」

「ノーヴェ……! しかしその身体では……」

「スバルと……ダイチを守りたいんですっ!」

 

 ノーヴェはまっすぐな瞳をカミキたちに向けた。

 

 

 

 スバルは今も電脳空間内を捜索し続けている。

 

『「ダイくんっ! お願い、応えてっ!」』

 

 何の手掛かりもなしに、果てのない空間の中をさまよい続ける。最早無謀な挑戦といってもいい。

 だがしかし、スバルの心は決して折れない。

 

『「あたし、あきらめない……! 大切な人を絶対にあきらめないって、四年前からそう決めたんだから!!」』

 

 スバルが目一杯の気持ちを込めて叫んだ、その時。

 彼女の視線の先にまばゆい輝きが生じ……その中に、エクスディッシュが浮かんでいた。

 

『「これは……!」』

 

 スバルは手を伸ばし、エクスディッシュのグリップを握った。

 

 

 

 ダイチもまた、暗黒の空間をさまよっていた。

 

『どこに行っちゃったんだ、エックス……』

 

 暗黒の空間には熱がなく、ダイチは時間が経つ毎にエネルギーを奪われ続けていく。しかも、身体が透け始める。

 やがてダイチは力を失い、倒れてしまった……。

 

 

 

 復活したグリーザを食い止めるため、ノーヴェがデバイスゴモラを召喚した。

 

『ギャオオオオオオオオ!』

「ゴモラ! あたしに力を貸してくれぇっ!」

 

 ゴモラはうなずき、基地に接近していくグリーザに向かっていく。それにクロノも続く。

 

「こんな時に、見ているだけだとは……!」

 

 シグナムが歯を食いしばり、ともすれば飛び出していきそうなのをアギトが制止した。

 

「駄目だシグナム! さっきので魔力使い果たしちまったろ! ダメージも抜け切ってない……次やられたら、ほんとに死んじまうかもしれねぇぞ!」

 

 それは他の者たちも同じだった。彼女たちは基地の命運を、ノーヴェとゴモラ、クロノに任せるしか出来ないのだった。

 

『ギャオオオオオオオオ!』

「うおおおおっ!」

 

 ゴモラとクロノはクローとスティンガーブレイドをひたすらグリーザに撃ち込むが、やはりグリーザに応えた様子は微塵も見られない。

 

―フェッフェッフェッフェッフェッ……!―

 

 逆にゴモラはグリーザの打撃によってどんどんと叩きのめされていく。

 

「ああっ……! やっぱり、無理なんですか……!?」

 

 リインフォースを始めとして、居並んだ面々は顔が青ざめる。

 しかしその中ではやては、グリーザの様子を見上げて怪訝な表情をした。

 

「何や……? さっきとは、何かが違うような……。何が違うんや?」

 

 はやての疑問の答えが出る前に、グリーザは胸部から五つの光球を飛ばした。それらから光のムチが伸び、ゴモラとクロノに襲いかかった!

 

『ギャオオオオオオオオ!!』

「うあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――っ!!」

 

 ゴモラは四肢がズタズタに切り裂かれて、ノーヴェもダメージを受ける。クロノは空から叩き落とされ、フリードリヒとガリューが慌てて受け止めた。

 そしてグリーザは暗黒の破壊光線を発射し、デバイスゴモラにとどめを刺すと同時に基地のシールドも穿つ!

 とうとうシールドが破壊されてしまった!

 

「きゃあああああ―――――――!!」

 

 ラボが耐え切れなくなって倒壊を起こし、シャーリーが悲鳴を発した。

 

「シャーリー! スバルを連れて逃げろっ!」

「でもっ!」

「ここは私に任せろ! いいかっ! 何があってもスバルを――!」

 

 グルマンは言葉の途中で、ダークサンダーエナジーの攻撃に呑まれて姿を消してしまった。

 

「博士ぇぇぇぇぇ――――――――――!!」

 

 ラボで発生した爆発が連鎖反応を起こし、Xioベースが爆破されていく。それを目の当たりにしたワタルとハヤトが声を絞り出した。

 

「Xioの基地が……! 俺たちの城が……!」

「崩れてく……!」

 

 そしてダークサンダーエナジーによって実体化したEXゴモラ、EXレッドキング、ツルギデマーガが地下から飛び出してきた。

 

「グギャアアアアッ!!」

「ピッギャ――ゴオオオウ!!」

「グバアアアアアア! ギャギャギャギャギャギャ!」

 

 ゴモラはグリーザにEX超振動波を放ったが、グリーザはそれを胸部のコアに吸収。

 

―フェッフェッフェッフェッフェッ……!―

 

 そのコア不気味な白い手のような光が伸び、保管されているスパークドールズを片っ端から奪い取ってコアの中に引き込んでいく!

 

「か、怪獣たちが……!!」

「やめてぇぇぇ――――――――!!」

 

 キャロが耐えられずに叫んだが、グリーザの腕はむしろ加速する。

 

―アッハッハッハッハッハッ! アーハッハッハッハッハッハッハッ!―

 

 スパークドールズの全てを呑み込み、ツルギデマーガ、レッドキングも捕らえて引き込み――最後にゴモラを引きずり込んだ。

 

「ゴモラあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 特捜班が絶叫を上げた。ゴモラがグリーザのコアの中へ消えていく――。

 

―アァ――――ハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!―

 

 全ての怪獣を食らったグリーザが、いきなり爆発!

 そして――煙の中から、より巨大に、より非人間的に、より禍々しく歪んだ姿となって現れた。

 

―フェッフェッフェッフェッフェッ……! エッヘッヘッヘッヘッ……!―

 

 新たな姿と化したグリーザを目にして、なのはたちは唖然と立ち尽くす。

 そこにシャーリーが、スバルを転送装置ごと連れて崩壊した基地から脱出してきた。

 

「みんなぁっ!」

「シャーリーさん! グルマン博士は……!?」

 

 ディエチが問うたが、シャーリーがうつむいて何も答えないので、息を呑んだ。

 

―フェッフェッフェッフェッフェッ……!―

 

 しかしそのことに何か唱えている暇もなかった。グリーザが、エックスのカラータイマーの方へ進み始めたのだ。

 

「今度はエックスを消すつもりかっ!」

「そんなことされたら、スバルも……!」

 

 ティアナが青ざめたその時、三条のウルトライザーシュートがグリーザの正面から撃ち込まれた。

 それを撃ったのは、アルトとルキノ、そしてカミキだった。

 

「隊長!!」

「スバルが必ずダイチを連れ帰る! 我々が最後の砦だっ!」

「カートリッジをありったけ全部持ってきました! みんな、手を貸して!」

 

 アルトとルキノで大量のウルトライザー・カートリッジをなのはたちに分け与えた。彼女たちが断るはずがない。

 

「もうこれ以上先へは、行かせないっ!」

 

 ノーヴェもクロノも立ち上がり、全員でグリーザに対する徹底抗戦を開始した。

 

 

 

 電脳空間の中、スバルが叫ぶ。

 

『「聞いて、ダイくん!」』

 

 姿の見えないダイチに向けて、呼びかけ始めた。

 

『「ダイくんはいつも危なっかしいし、あたしが守ってあげなくちゃって思ってたけど……本当は、あたしの方が守られてたんだね!? あの時も、あの時も……!」』

 

 スバルの脳裏に、デマーガの攻撃から自分をかばったエックス、自分に向けられたEXゴモラの攻撃を防いだエックス、数々の怪獣や宇宙人と戦ったエックスの姿がよみがえる。あれらは全て、ダイチの姿でもあったのだ。

 

『「ずっとエックスと戦ってたんだ……。気づいてあげられなくてごめん……。もっと早くに気づいてたら、人知れず頑張ってたダイくんの力になれてたかもしれないのに……!」』

 

 スバルの言葉は、かすかにだが暗黒の世界で倒れているダイチの元に届いた。

 

『……スゥちゃん……?』

 

 力尽きていたダイチの唇が、わずかに開いた。

 

 

 

 外の世界では、なのはたちが惜しみなくウルトライザーを使用して、グリーザの進行を阻止しようと攻撃し続けている。

 そんな中で電脳世界転送装置が、スバルのバイタリティが危険な領域に入ったことを知らせた。

 

「!! スバル……!」

 

 傍についているシャーリーが、額に汗の噴き出ているスバルの顔を見つめて迷いを見せた。

 

 

 

 スバルはダイチに向け、告白した。

 

『「ずっと黙ってたけど、あたし……ダイくんの夢の、怪獣との共生……実は……出来っこないって思ってた! 人間とは何もかもが全然違うんだから、そんなこと不可能だって……」』

 

 ぐっと目をつむってから、顔を上げるスバル。

 

『「でも、あたしが人の命を救う自分になるって夢を抱いて……なのはさんや、ティアたちと一緒に頑張って……自分の夢を叶えた時に、思い直した! 叶えられない夢はないんだって! Xioに来たのは、あたしよりもずっと大きくて困難な夢に向かって、めげずに突き進んでるダイくんの後押しをして、叶えさせてあげたいっていう理由もあったの!」』

 

 スバルの呼ぶ声に、ダイチは力を振り絞って立ち上がった。

 

『「ダイくんの夢は、やっと始まったばっかりじゃないっ! それだけじゃない……ヴィヴィオたちの夢、あたしたちの未来、世界中の人たちの明日……! それがいきなり終わって、消えて無くなっちゃうなんて絶対に嫌だよぉっ! だから戻ってきてダイくんっ! 今立ち上がらないと……夢の続きが見られないっ!!」』

 

 

 

 スバルの脳波はいよいよ臨界点に達しようとしていた。

 

「もう限界……! スバルが死んじゃう……!」

 

 それまで躊躇していたシャーリーは、装置の強制終了を決断してスイッチに指を伸ばす。

 

「ごめんね、スバル……!」

 

 謝罪して、装置を止めようとする――。

 その手を、スバルの手が掴んで止めた。

 

「えっ……!?」

 

 

 

 スバルは最後に、自分の目一杯の気持ちを乗せて叫んだ。

 

『「帰ってきてよぉっ! ダイくぅんっ!!」』

 

 ギュッと握り締めたエクスディッシュが――虹色に発光した。

 それとともに、ダイチがスバルの目の前に召喚されたのだった。

 

『「――スゥちゃん!?」』

『「……ダイくんっ!」』

 

 スバルはダイチと、正面から向かい合う。

 

『「……ありがとう、スゥちゃん。君の想いが、俺を呼び戻してくれた……!」』

『「うん……! お帰り、ダイくん……!」』

 

 スバルは目尻の涙をぬぐい、ダイチに満面の笑顔を向けた。

 

 

 

 スバルの帰還を信じて必死で抗い続けていたなのはたちであったが、それでもグリーザの侵攻は止まらなかった。どれだけ撃ち込んでも、エネルギーが全て呑み込まれていくのだ。

 

―フェッフェッフェッフェッフェッ……!―

 

 グリーザは胸の前に暗黒の光球を作り出し、カラータイマーに発射しようとする。それを止めることが出来ず、ティアナが絶叫する。

 

「スバルぅぅーっ!!」

「も、もう駄目っス……!」

 

 ウェンディがとうとう泣き言を吐いた、その時、

 

(♪Xio出動!)

 

『あきらめるなっ!』

 

 ジオデバイザーから、聞き慣れた声が発せられた。――ノーヴェたち姉妹が目を見張る。

 

「今の声! ――チンク姉っ!!」

 

 直後に空の彼方からスペースマスケッティが飛来してきた! 搭乗しているのは――チンクとマリエル!

 

「マスケッティ、リジェクトぉーっ!!」

 

 チンクはアラミスを切り離し、ジオマスケッティをそのままグリーザ目掛けてぶつけさせた!

 

―フェッフェッフェッ……!―

 

 光球はマスケッティごと爆散し、カラータイマーへの攻撃は見事阻止された!

 

「せっかく作った二号機がぁぁっ!?」

「あっはっはっ! 三号機を作ればいいじゃないですか!!」

 

 愉快そうに大笑いしたチンクを、ハヤトが叱りつける。

 

「おいこらっ! 今までどこで何してた! 心配させやがって!」

『すまんっ! どうにか逃げられたはいいが、エンジンが停止してずっと月の裏側で修理してたんだ!』

「うおおおぉぉ―――――んっ! 生きててよかったなぁぁぁっ!」

 

 思わず吠えて号泣するワタル。ノーヴェたちも嬉しさのあまり涙ぐんでいた。

 アラミスが緊急着地し、チンクたちが合流すると同時に、エリオがカラータイマーの青い発光に気がついた。

 

「見て下さい! スバルさんとダイチさんが……帰ってきますっ!」

「本当かっ!」

「スバル……! ダイチくん……!」

 

 クロノとなのはが歓喜の色を浮かべる。

 そして至近距離からの爆発によろめいたグリーザを見上げていたはやてが唐突に叫んだ。

 

「あっ分かったっ!」

「何がですか!?」

 

 ルーテシアが聞き返すと、はやては皆に向けて告げた。

 

「グリーザ、実体になりつつあるんやないかな!?」

「えぇっ!?」

「よお見て! さっきは姿が常に揺らいでておぼろげだったのに、再生してからははっきり見えるよね! 攻撃も外れることがなくなっとるし!」

「言われてみれば、確かに……!」

 

 呆気にとられながらもうなずくヴィータ。

 

「きっとエックスに一度四散させられて、再生した時に性質に変化が起きたんや! そして完全に実体になれば……!」

「倒すことも可能になるっ!」

 

 フェイトのその言葉に、皆の心に希望が灯った。

 カミキがカラータイマーを見やってから指示を飛ばす。

 

「あの光を守り抜くぞ! 胸のコアに攻撃を集中っ!」

「了解!!」

 

 全員が応答し、グリーザのコアに一斉射撃を加えた!

 

 

 

 ダイチのデバイザーが黄金色の光を放ち始める。それを目にしたダイチが、ハッと気がついた。

 

『「そうか! エックスもずっとここにいる……! 俺の想いとともに!」』

 

 ダイチはスバルに向き直って、まっすぐに告げた。

 

『「見ていてくれ、スゥちゃん。俺とエックスが――未来を切り開くっ!」』

『「うん……!」』

 

 スバルが力強くうなずき、エクスディッシュをダイチに渡した。

 そして電脳世界に、虹色の光が満ち溢れていった――。

 

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