光輝巨人リリカルなのはX   作:焼き鮭

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やってきた光の巨人なの

 

『いるよ、宇宙人』

「実在する宇宙人かぁ……一度でいいから会ってみたいな」

「救難信号!?」

『どうやら僕たちは、強制転移されたみたいだ……』

「う、宇宙人っ!」

『僕たちは、月まで飛ばされてきてしまったんだ!』

『もう駄目だ。バルタン星人だ』

「フォフォフォフォフォフォ……!」

『我々は……バルタン星人……!』

 

 

 

 

 

光輝巨人リリカルなのはX 番外編

 

『やってきた光の巨人なの』

 

 

 

 

 

「フォフォフォフォフォフォフォフォ……!」

 

 バルタン星人と名乗った、人間とは全てが異なる外見の宇宙人は、両腕のハサミを垂直に立てて小刻みに上下に動かす。

 

「……!」

 

 なのはは冷や汗を垂らしながら、レイジングハートを握り締めてバルタン星人を警戒していた。……シルバック星人の日誌が正しいのならば、目の前にいるのは彼らを襲撃し、殺害した危険な宇宙人ということになる。なのははバルタン星人の異様な外見も相まって、内心恐れを抱いていた。

 するとなのはの方の上から一瞬閃光が焚かれ――なのはをかばうように少年の姿、本当の姿に変わったユーノが前に立った。彼もまたバルタン星人を警戒し、もしもの場合は全力で応戦できるようにしたのだ。

 ユーノは開口一番に問いかける。

 

「バルタン星人……あなた方が地球の近くまで来た目的は何だ?」

 

 質問を受けつけるつもりすらないかもしれないと危惧したが、バルタン星人は意外にも丁寧に質問に答え始めた。

 

『我々は、母星を失った流浪の種族』

「母星を失った?」

『母星は、発狂した個体の核実験によって爆発、消滅した。爆発から逃れた我々は、それ以来生存できるような天体を探して宇宙を巡っている。その末に、君たちが地球と呼ぶM240惑星宙域へとやってきた』

 

 故郷を無くした、と語ったバルタン星人に、なのはは同情の念を覚えた。帰る場所を失い、あてもなくさまよい続ける日々……。それはどんなに苦しい思いなのか、自分には想像することも出来ないと感じた。

 しかしユーノは続けて、こう尋ねかけた。

 

「だったらどうしてこの宇宙船を襲ったんだ? この船の日誌には、あなたたちに襲われたとあった」

 

 その言葉になのははハッと我に返り、バルタン星人を改めて警戒した。本当にシルバック星人を襲撃したというのなら……ただの放浪者ではないということになる。

 これに対するバルタン星人の返答は以下の通りだ。

 

『この宙域にまで来た際、我々の宇宙船の重力バランスが崩れて修理しなければならなくなった。そのため、修理に必要なダイオードをこの宇宙船から回収した』

「回収……奪ったのか!? 力づくで!?」

『必要だったからだ』

 

 ユーノは床の上に転がっているシルバック星人の遺体を一瞥すると、バルタン星人に憤りの目を向けた。

 

「百歩譲って強盗を良しとしても……何もこの船の人たちの生命まで奪うことはなかったんじゃないのか!?」

 

 そう非難すると……バルタン星人はまるで感情のない声音で答えた。

 

『生命。分からない。生命とは何か』

「え……!?」

 

 ユーノもなのはも、バルタン星人が何を言ったのか一瞬理解できなかった。

 

「生命が分からない……? あなたたちには、命の概念、生死の概念がないのか!?」

 

 バルタン星人は無言のまま。その沈黙が、肯定を示していた。

 冗談や酔狂で言っているのではないことは簡単に見て取れた。バルタン星人は……本気で「命」の意味が理解できないのだ。

 

「ユ、ユーノくん、どういうこと……? 命が何なのか分からないって、どんな考え方をしてるの……?」

「ぼ、僕にも分からない……。想像がつかない……! まさか、生命の意味を理解していない種族がこの世に存在するなんて……」

 

 なのはたちは、たたずんでいるだけのバルタン星人に言い知れぬ恐怖の感情を抱いた。――人は、理解の範疇を超えたものに恐怖を感じるのだ。

 しかもバルタン星人はこんなことを言い出した。

 

『我々の旅はこれで終わりだ』

「えっ、終わりって……」

『地球は我々にとって住み良い星であることが分かった。これより我ら、二十億三千万のバルタン星人は地球に移り住む』

「二十億三千万!?」

 

 あまりにもぶっ飛んだ人数を提示され、なのはたちは目玉が飛び出しそうな思いがした。

 

「そ、そんなデタラメな! どんな大きさの宇宙船なら、それだけの人数を収容できるんだ!」

『宇宙船の中では、バクテリア程度の大きさに縮小している。しかし地球に移り住む際には、全員元の大きさに戻す』

「そんなことされたら、地球は大パニックだよ!」

 

 なのはは十桁もの人数のバルタン星人が地球に降り立つ光景を想像して、思わず怖気が走った。しかもバルタン星人は生死の違いを理解できないような種族だ。そんなのが大挙してやってきたら、地球はどうなってしまうのか……考えたくもない。

 するとユーノがバルタン星人を制止するように呼びかけた。

 

「待った! 地球に移住するのはやめてほしい。代わりに、地球によく似た環境の世界を一つ紹介しよう! あなたたちの身体に環境が適すれば、地球じゃなくてもいいはずだ」

 

 なのははユーノの横顔に振り返る。

 

「ユーノくん、そんなこと言っちゃっていいの……?」

「次元世界には、自然豊かでも元々人間がいない世界もある。そういうところなら、バルタン星人も迎えられるはずだ。もちろん管理局と交渉する必要があるけど……」

 

 それは不可能ではない、とユーノは思っていた。そうすれば地球は救われ、バルタン星人側も土地を得られて万事解決だ。

 

「あなたたちが次元世界の法を遵守できるのなら、共存は十分に出来ます」

 

 なのはの故郷たる世界のために、熱心に説得するユーノ。

 が、

 

『共存。分からない』

「えっ……」

『種は強いものが栄え、弱いものを淘汰する。強いものが全てを独占する。それが世界の掟。他の種と共に存在する、そこに価値はない』

 

 バルタン星人の言葉に、なのはは青い顔になって反論しようとした。

 

「そ、それは違います! どうかわたしたちのお話しを聞いて……」

「駄目だ、なのは……!」

 

 だがユーノにさえぎられた。ユーノは冷や汗を垂らしながら告げる。

 

「いくら言っても無駄だ……! 「話」は通じても、「気持ち」が通じない……! そのために必要な「心」が、相手にないっ!」

 

 バルタン星人は、これで言いたいことは全て言ったという風に、最後に宣言した。

 

『我々はこれより全ての原住民を淘汰し、地球をもらい受ける』

 

 そしてこれ以上は話をするつもりはないとばかりに、なのはたちに背を向けた。するとユーノの手が動く。

 

「やむを得ない! 実力行使だっ! バインド!」

 

 手の平を差し向けて魔法陣を展開すると、バルタン星人の身体を魔力の鎖で縛りつけて身動きを取れなくした。

 

「ユーノくん!」

「地球には行かせないぞ! このままここで足止めをして、その間に管理局に通報を……!」

 

 そのようにしようとしたユーノだったが、その場で半回転して振り返ったバルタン星人は怪しい笑い声のような声を発すると、

 

「フォフォフォフォフォフォフォフォ……!」

 

 その身体が左右に二つに分かれた。バインドもすり抜け、二体に増えたバルタン星人が自由になる。

 

「えぇっ!?」

「分裂した!? いや、分身か!? でも、バインドをすり抜けるなんて……!」

「フォッフォッフォッフォッフォッ……!」

 

 バルタン星人はそれで終わらない。二体が三体、三体が四体という風に瞬く間に数を増やしていく。増えたバルタン星人は青く半透明の姿でなのはたちの周りをグルグル歩くことで取り囲む。

 

「えっ!? えっ!? えぇぇ!? ユ、ユーノくん、これどうなってるの!?」

 

 あっという間に一人から数え切れない人数に増えてみせたバルタン星人を前に、なのはは混乱に陥っている。ユーノは必死でバルタン星人の分身の正体を暴こうと解析するが、

 

「わ、分からない! 増えた分は分身でありながら、全部に本体の反応がある! 虚像でありながら、同時に実体の反応もある! 駄目だ……術の正体が掴めないっ!」

 

 バルタン星人は邪魔をしてくるなのはたちを先に始末すると決めたようで、包囲している分身がハサミから光弾を発射して攻撃してきた。

 

「ひゃあっ!?」

「くっ……!」

 

 ユーノとレイジングハートでシールドを張ったことで、ギリギリ光弾を防ぐことが出来た。しかし防戦では、数の差で押し切られてしまうことだろう。

 そう判断したユーノがなのはに指示する。

 

「なのは、攻撃を!」

「で、でも……!」

「ここで僕たちがどうにかしないと、地球が危ういんだ!」

 

 説得され、なのはは躊躇いながらもバルタン星人に攻撃を加えた。

 

「ディバインシューター!」

 

 レイジングハートより数発の射撃魔法が放たれた。宙を切って飛んでいった魔力弾は無数のバルタン星人の一人に命中し、その一人がその場に倒れる。

 と思いきや、脱皮したかのように倒れた身体から新たなバルタン星人が立ち上がり、まるで効いている様子を見せなかった。

 

「フォフォフォフォフォフォ……!」

「えぇっ!?」

「攻撃も駄目か……!」

 

 自分たちの理解を超えた現象で捕獲も攻撃も無効化するバルタン星人に、なのはとユーノはすっかり追いつめられてしまっていた。

 

「フォフォフォフォフォフォフォフォ!」

 

 そしてバルタン星人が再度光弾を発射してくる。

 

「危ないっ!」

 

 必死に防御を固めるユーノ。すると弾かれた光弾が宇宙船のコントロールパネルに命中し、コンピューターがショートを起こして激しく火花を噴出した。

 

「あっ……! ま、まずい……!」

 

 嫌な予感を覚えるユーノ。その予感は的中した。

 コントロールパネルが爆発。それが引き金となったか、宇宙船自体も自爆を起こした。

 

 

 

「きゃああぁっ!」

「なのはっ!」

 

 宇宙船がバラバラに吹っ飛び、なのはは月面に投げ出されそうになったが、ユーノが咄嗟に展開した宇宙用の特殊結界に守られ、命拾いした。

 

「ゆ、ユーノくん! わたしたち、宇宙空間にいるよ!」

「うん……。やってしまった……」

 

 二人は月面上、宇宙船の残骸の上に立っている形になった。結界がなかったら、一秒たりとも生存は出来ないという危機的状況に置かれる。

 しかも元々の危機は終わっていなかった。二人の目前のクレーターの中から、四十メートル級の巨人にまで巨大化したバルタン星人がぬっと立ち上がったのだ!

 

「フォフォフォフォフォフォフォフォ……!」

「ひっ……!?」

 

 流石にひるむなのは。しかしバルタン星人は反対に身動きの取れなくなったなのはたちにはもう相手にしようとはしなかった。

 代わりに、頭上に浮かぶ青い惑星――地球に向かって飛び立っていく。

 

「!! ま、待って! 行かないでっ!」

「だ、駄目だなのは! 結界から出たら死んでしまう!」

 

 思わず追いすがろうとしたなのはをユーノが後ろから引き留めた。バルタン星人はなのはの叫びが耳に入っていないかのように、まっすぐ地球へ飛んでいく。

 

「やめてぇ! 地球を、わたしたちの町を……フェイトちゃんも帰ってくる場所を、滅茶苦茶にしないでぇっ!!」

 

 必死に願うなのは。頭上に青く輝くあの星には、自分の大切な人たちがたくさんいる。両親に兄と姉、友達、その家族、知り合った大勢の人たち、まだ知らないけれど友達になるだろう誰か……。そんな場所を壊されるなんて耐えられない。

 だが、なのはの願いも虚しくバルタン星人は止まらない。自分たちにはもうどうすることも出来ない。そのため、なのはは思わず叫んでいた。

 

「誰か、助けてぇぇぇっ!!」

 

 ――その時、ユーノがふと宇宙空間の一点を見上げて、そちらに視線を奪われた。

 

「何だ、あれは……赤い球が近づいてくる? 隕石か……?」

 

 なのはも同じ方向を見上げると――赤い球、としか言い表せないようなものが、流星よろしくこちらに近づいてくるのが見えた。――いや、正確には地球に向かいつつあるバルタン星人の方向へ接近していっている。

 そしてぐんぐん近づいてきた赤い球は、バルタン星人に衝突! 月面に叩き落とした!

 

「うわぁっ!」

 

 驚愕するなのはたち。二人の見ている先で立ち上がったバルタン星人の正面に、同じくらいの大きさの赤い球が降下してきた。

 バルタン星人は初めて感情らしきものを声音に宿らせた。

 

『ウルトラマン……!』

「……ウルトラマン?」

 

 赤い球がスゥッと消えていき――その中から、バルタン星人に負けぬ体格の巨人が現れた。

 全身が銀と赤の彩り。仏を連想させる柔和な顔つきでありながら、凛々しく力強い眼差し。そして胸に輝く青い発光体が、なのはとユーノの目を一番引きつけた。

 

「……光の巨人?」

 

 なのはたちは思わずそうつぶやいていた。

 

「――シェアッ!」

 

 ウルトラマンと呼ばれた巨人は、やや前傾になったファイティングポーズを取ると、バルタン星人めがけ一直線に走り出した。

 バルタン星人はたちまちの内に、先ほどのように無数に分身。ウルトラマンはその内の向かってくる一体に飛びかかる。

 

「フォッフォッフォッフォッフォッ……!」

「ヘアッ!」

 

 ハサミの刺突をヒラリと回避したウルトラマンは、間髪入れずに襲い掛かってきた二体のハサミの振り下ろしを受け止め、押し返した。

 両腕を胸の前で水平に構えるウルトラマン。すると右手にギザギザの刃が生えた光輪が出現し、オーバースローの要領で一体に投げつけた。

 

「ジェアッ!」

 

 光輪を受けたバルタン星人は、綺麗に両断されて爆散、消滅した。

 

「――強い……!」

 

 驚いてつぶやくなのはたち。ウルトラマンは、自分たちには何が起きているのかさえ掴めなかったバルタン星人を簡単に粉砕した。

 

「フォフォフォフォフォフォフォフォ……!」

 

 だがバルタン星人は無数におり、しかも分身を繰り返している。そのバルタン星人がウルトラマンを取り囲み、襲い掛かる。しかしウルトラマンも負けじと、一番近いバルタン星人にチョップを叩き込んで張り倒し、残りも一挙に相手してみせる。

 なのはとユーノは、とてもこの世のものとは思えない、おとぎ話から抜け出てきたような巨人と巨人の戦いを唖然と見上げていた。

 

「シェアッ!」

 

 ウルトラマンは押し寄せるバルタン星人をぶちかましで迎え撃ち、端からチョップの連打でバッタバッタと薙ぎ倒していく。だが流石に多勢相手にたった一人では苦しいか、押されているように見えた。

 そのためなのはの口から、感情のほとばしるままに叫び声が飛び出た。

 

「がんばって! ウルトラマンっ!」

 

 すると――ウルトラマンは胸を張り、一層の力がみなぎったように見えた。

 

「ヘァッ!」

 

 バルタン星人が放った光弾を、手で輪郭を描くことで現れた光の壁で遮断。接近してくるバルタン星人をその都度チョップ、キックのお見舞いでねじ伏せる。

 そして最後に、右手を縦に、左手を横にして十字を作ると――右手の手刀より青白い光線がほとばしり、ウルトラマンはそれで全方位を薙ぎ払う。

 バルタン星人はその光線を食らうと一瞬にして爆散。そして数え切れないほどいたバルタン星人が全て爆破され、月面からただの一人もいなくなったのだった。

 

「――か、勝った……!」

 

 すさまじい強さでバルタン星人を粉砕したウルトラマンを、なのはたちは呆然と見つめた。だがウルトラマンの活躍はこれで終わりではなく、宙の一点を見上げると両目から光線を発した。

 その光線に当てられて、一隻の円盤が宇宙の暗黒の中から照らし出された。

 

「あれは……!」

「バルタン星人の宇宙船か!」

 

 あれをどうにかしないことには、地球は本当に救われたことにはならない。

 宇宙船の姿を暴き出したウルトラマンは、次いでなのはたちを見下ろした。――ウルトラマンが何者なのかを全く知らない二人は一瞬たじろぐ。

 

「シェアッ」

 

 ウルトラマンは腕をまっすぐに伸ばすと、なのはたちにも光線を照射した。

 

「うわぁぁっ!」

 

 反射的に悲鳴を上げた二人だが――その姿が瞬時に月面上から消え去った。

 ウルトラマンはおもむろにうなずくと、月面を蹴って空中に飛び上がった。そしてバルタン星人の円盤を掴み、そのまま押していって宇宙の果てまで運び去っていったのだった。

 

 

 

「……ふにゃ?」

 

 なのはが目を開くと、自分が元の公園のベンチに腰掛けていることに気がついた。

 

「あ、あれ……? 地球だ……。バルタン星人は!? ウルトラマンはどうなったの!?」

 

 バッと腰を浮かすなのは。自分の傍らでは、いつの間にか小動物形態に戻っているユーノと待機形態のレイジングハートが覚醒した。

 

「ユーノくん、わたしたち地球に戻ってきてるよ! どうなってるのかな?」

 

 ユーノは少し考えてから、なのはに答えた。

 

『最後にウルトラマンが僕たちに浴びせた光線……あの効果で僕たちを元の場所に転送させたのかもしれない。確認してみよう。レイジングハート、さっきまでの記録を再生して』

 

 とレイジングハートに頼んだユーノだったが、

 

[No data.]

「えっ!?」

 

 何と、レイジングハートの記録には救難信号をキャッチしてから、月面での戦いまでの記録が綺麗さっぱりなくなっていた。記憶にはあるが記録は一切ないという不可解な状態に、レイジングハート自身も戸惑いを覚えていた。

 更に時刻を確認してみると――強制転移されてからあれだけのことがあったのに、何とたったの三分しか経っていないということが明らかになった。なのはたちはもう訳が分からなかった。

 

「ど、どうなってるのかな……。わたしたち、もしかして夢でも見てたの?」

『いや、複数人が同じ夢を見るなんてあり得ないよ……。でも、まるで理解が出来ない……。一体僕たちに、何が起きたんだろう……』

 

 聡明なユーノにとっても、全く理解を超えていた。なのはたちはこの不思議な体験について終始首をひねっていたが、帰らないと家族が心配する時間がやってきたのでその場はそのまま帰宅していったのだった。

 

 

 

 その後判明したことだが、月面にもやはり巨人たちの激闘の跡などは全く確認されなかった。ウルトラマンが痕跡を消していったのか、はたまたやはりあれは夢か幻だったのか。あるいは一時的に、時間と空間がねじれにねじれたアンバランスゾーンの中に迷い込んでいたのか……。なのはたちにはどうにも判別がつかなかったので、この出来事に関しては自ずと胸の内に仕舞い込んで、今日まで月日が経過したのだった。

 それでもなのはの心の底には、ある想いが宿っていた。それは、自分の助けを求める声に応じるかのように颯爽と現れ、地球の窮地を救っていった、ヒーローそのもののようであったウルトラマンに対する憧憬の念――。自分もあんなヒーローのようになりたいという願いを無意識の内に抱いて、色んな人と触れ合い、助ける人生を歩むようになった。

 時が経ち、あのウルトラマン本人ではないが――『ウルトラマン』という存在が今度ははっきりと自分の目の前に現れると、内心かなりの興奮を覚えていた。故に『ウルトラマン』と接触した際には、十四年前の童心に帰ったかのようにはしゃいだりもした。

 そうして、なのはの胸の内には一つの願いが宿った。

 あの時のウルトラマンに、もう一度会いたい。あの時は言えなかった、助けてくれたことのお礼が言いたい、と――。

 




 




「総員に告ぐ!」



「三体のウルトラマンと連携し、怪獣たちを撃滅せよっ!」






「とっとと地獄に帰りやがれぇっ!」

「超振動バスターっ!!」


「後は頼んだぜ……!」


「全ての始まり、光の巨人!」


「フェイズ5発令! 各世界のXioに緊急通報!」

「五つの世界で、ウルトラマンと怪獣が交戦開始!」


「行くぞエックス!」



次回、特別編

『きたよ!わたしたちのウルトラマン』





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