エリアT-2、カルロスコミュニケーションズビル前の市民公園は避難指示が出され、完全封鎖。Xio及び管理局による防衛線が敷かれた。
スカイマスケッティ、ランドマスケッティの他、特務六課の魔導師たちも緊急招集されザイゴーグ迎撃作戦に参加、それぞれ所定の位置についた。
次元間を泳いでミッドチルダに接近してくるザイゴーグに対して、次元航行艦隊による攻撃は行われない。その理由は、
『ザイゴーグの体組織は天然のディバイダー構造をしてます。そのため通常の魔力攻撃は通用しません』
分析から判明したザイゴーグの性質について、マリエルが作戦に臨む前線の戦士たちに伝えた。
エクリプスウィルス感染者は『ECディバイダー』という魔導兵器を得る。これの最大の特徴は、魔力エネルギーの結合分断「ゼロエフェクト」を引き起こす能力を持つことで、これ故にEC兵器は「魔導殺し」の異名を持つ。ザイゴーグは言うならば、全身がこのECディバイダーなのだ。流石に完全に結合分断される訳ではないが、効果は極めて薄い。
このために有効なのはXioのメカニック、対ECディバイダー兵器として設計された第五世代デバイス、AEC武装……。
「そして、試作のMXカスタムデバイスか……」
ティアナが手中のクロスミラージュを見下ろしてつぶやいた。
デバイス怪獣の能力はそれまでジオデバイザーとXioマシンでないと使用できなかったのだが、技術向上により、専用カスタマイズを施したデバイスで使用可能となったのだ。それがMXカスタム。現在実用段階のMXデバイスは、モンスジャケットのデータ元にもなった、マッハキャリバー、クロスミラージュ、ストラーダ、ケリュケイオンの四種。
また市民公園の一角に、ザイゴーグ捕獲用の大型シールド発生パラボラ塔が二基設置された。これを操作するのは、防御魔法を扱わせたら右に出るものはいないユーノ。彼とXioが共同開発した新型シールドが今回の作戦の要だ。
「シールド発生装置セット完了。いつでもチェックインできます」
「デバイスゴモラ、起動準備できました!」
ユーノの側のダイチが本部に報告した。
チンクの運転するランドマスケッティだが、所定位置から左に外れて停止する。
「チンク姉、ちょっとずれてる」
「そうか……? すまない、ランドマスケッティの扱いはどうにも慣れなくてな」
「スバルは青い石の回収に行ってるしね……。こんな時、ノーヴェがいればよかったんだけど」
『だったら代わってやろうじゃんか、あたしが』
急に車内にノーヴェの声が響いた。チンクとディエチが面食らって車外を見下ろすと、ランドマスケッティの横にノーヴェが立っている。
「ノーヴェ! 来てたのか!」
『ああ。こんなお祭り騒ぎ、元特捜班として見逃す訳にはいかねーからさ』
隊員服にも久々に袖を通しているノーヴェは本部と通信を開くと、カミキに敬礼する。
「カミキ隊長、作戦参加の許可をいただきたく存じます!」
『願ってもない。ではノーヴェはチンクと交代して、ランドマスケッティ操縦を担当せよ! チンクはバックアップに回れ』
「了解!」
チンクとうなずき合ったノーヴェがポルトスの運転席に入り、チンクはダイチたちを護衛しているウェンディの元へ走っていった。
作戦の準備が着々と進められる中、スカイマスケッティ機内でワタルがふとつぶやいた。
「ところで、ちょっと気になってることがあるんだけどよ」
「何だ?」
「古文書には、ザイゴーグは地獄の軍団を率いてたってあったって話だったじゃんか。でも今のザイゴーグは一体だけだろ? その軍団ってのはどこ行ったんだ?」
ハヤトはそれに失笑した。
「そんなのがいるんだったら、一緒に出現してるはずさ。ただの言い伝えか、もしくはもういないかのどっちかだよ。いちいち気にすることじゃねぇだろ」
「そいつもそうだな」
ワタルはそれ以上深く考えずに、意識を作戦に集中した。
「チアーズ!」
「チアーズ!!」
ザイゴーグに狙われている青い石がある問題のカルロスコミュニケーションズビルでは、カルロスたちが避難もせずにウェブテレビの打ち上げパーティを行っていた。
出演者たちからの拍手を浴びたカルロスは、秘書の女性に尋ねかける。
「どうだ? 私の番組は。ヒット数の、記録更新か?」
ヒット数を調べた秘書は、こう答える。
「……残念ですが、『フーカのウラカンチャンネル』に負けてます」
さっと顔色が変わるカルロス。その後ろでは、出演者の女性三人がそのチャンネルを観て黄色い声を上げた。
「かわいい!」
「わぁーかわいい!」
『にゃあ~♪』
アスティオンと同型のデバイスがゴロゴロ転がっている動画にショックを受けるカルロス。
「何でデバイスなんかに負けるんだ!? ロマンはどこへ行った? 嘆かわしい~!」
「嘆かわしいのはあなたですよ!」
スバルとともにパーティ会場に到着したアイシスが、きつい顔つきでカルロスに言い放った。しかしカルロスは気にした様子もなく、飄々としながら二人を迎える。
「ようこそカルロスタワーへ! 愛らしいご婦人がお二方もいらっしゃるとは。何かドリンクでも如何ですか?」
だがスバルの方も取り合わず、カルロスに宣告した。
「結構です。あたしたちはあの青い石の接収に来ました」
「石は返してもらいますよ!」
「返す? 誰に? あの石は私のものだが?」
とぼけるカルロスに、スバルは真剣に告げる。
「怪獣があの石を目指して来ています!」
「だから動かしちゃいけなかったんですよ!」
「避難指示が出ています! すぐに退避して下さい!」
パーティ会場中に勧告するスバルだったが、カルロスがさえぎるように言い放った。
「私はXioと管理局を信頼している! 怪獣が来るなら、さっさとやっつけて下さいよ! ねぇみんなぁ!」
パーティの客たちはカルロスにうなずき返し、動こうとしない。あまりののんきさに、スバルは流石に焦りを見せた。
「危険なんです! 早く退避を……!」
しかしそこに、本部からの連絡。
『ザイゴーグ接近中! あと三十秒で市民公園に到達します!』
ザイゴーグ接近を受けて、カミキが作戦開始を宣言した。
『ザイゴーグ要撃作戦、インフェルノ三号開始!』
すかさずダイチがデバイスゴモラの実体化を実行。
「デバイスゴモラ、リアライズ!」
『ギャオオオオオオオオ!』
公園の中心にその姿を現すデバイスゴモラ。
更にキャロとルーテシアが召喚魔法を唱えた。
「天地貫く業火の咆哮、遥けき大地の永遠の護り手、我が元に来よ、黒き炎の大地の守護者。竜騎招来、天地轟鳴、来よ、ヴォルテール!」
「究極召喚! 白天王!」
ゴモラの左右に召喚されるヴォルテールと白天王。三体の巨獣たちはうなずき合い、そして次元の狭間より接近してくるザイゴーグの方を見上げた。
「次元間のザイゴーグにロックオン!」
『コンタクトまで、5、4、3、2、1……!』
アルトがカウントし、ダイチが叫ぶ。
「超振動バスター!」
『ギャオオオオオオオオ!』
デバイスゴモラから放たれた振動波が空間に衝撃を与え、それによって虚空に水面のような揺らめきが発生した。
『ザイゴーグに命中!』
『来るぞっ!』
揺らめく空間が一気に赤黒く染まり、空中の血の池を突き破って、ザイゴーグがミッドチルダに踏み込んできた!
「グギャアアァァァァ――――――! ガハハハハハ……!」
姿を現したザイゴーグに対して、ゴモラ、ヴォルテール、白天王が戦いの構えを取った。対峙する巨獣たち。
「あいつがザイゴーグか……。エックスとダイチの分の礼はたっぷりとしてやるぜ!」
ノーヴェは舌打ちすると、デバイザーにデバイスインペライザーのカードをセットする。
[デバイスインペライザー、スタンバイ]
「行くぜディエチ!」
「うん……!」
ワタルもデバイスキングジョーのカードをデバイザーに挿入。
「こっちも準備オッケーだ!」
「カウント3で行くぞ!」
[デバイスキングジョー、スタンバイ]
ランドマスケッティ、スカイマスケッティが砲撃の用意を整えた。
「キングジョーデストロイ砲!」
「インペライザーガトリングキャノン!」
ゴモラやヴォルテール、白天王、他の面々も一斉攻撃の姿勢を取る。
「3! 2! 発射っ!」
発射された種々の砲撃や振動波、魔力変換エネルギーがザイゴーグに集中した。
「グギャアアァァァァ――――――! ガハハハハハ……!」
怒濤に押し寄せる攻撃に押され、さしものザイゴーグも動きが停止した。その瞬間に振り向くダイチ。
「ユーノさん、今です!」
「了解!」
ユーノがパラボラ塔とつながっているデバイザーに、デバイスサンダーダランビアのカードを挿し込んだ。
[デバイスサンダーダランビア、スタンバイ]『グワアァァァ! ピィ――――!』
「ダランビア亜空間シールド、起動!」
二基のパラボラから電撃光線が放たれ、ザイゴーグに纏わりつく。電撃は障壁を形作って、ザイゴーグの全周を覆い込んだ。
これが作戦の要、ダランビア亜空間シールド。ダランビアの亜空間バリヤーと障壁魔法を緻密に組み合わせることで、従来のシールドの比ではない強度を実現したのだ。
「グギャアアァァァァ――――――! ガハハハハハ……!」
シールドの中に閉じ込められたザイゴーグはその場から一歩も動けなくなった。
「やった! 流石ユーノ!」
「あとはスバルが石を回収して、封印手段を確立するまでこれを維持すれば……!」
ザイゴーグの閉じ込めが成功したことで、フェイトとはやてがぐっと手を握った。
「グギャアアァァァァ――――――! ガハハハハハ……!」
だがザイゴーグは内側からシールドを棍棒状の右腕で殴り、シールドを揺らした。
「何と! あのシールドに損傷を与えるとは……!」
「想定以上のパワーだわ……!」
驚愕に染まるザフィーラとシャマル。なのははユーノを心配して呼びかけた。
「ユーノくん、大丈夫!?」
『大丈夫だ……! いくら損傷を加えたって、その都度修復すれば問題は……』
『俺も手伝います!』
ユーノは絶え間なくシールドを修復することにより、ザイゴーグを絶対に逃がさない構えだ。ダイチも手を貸そうとしたが――。
「ガハハハハハ……!」
ザイゴーグの肩に生えているトゲがおもむろに前を向き、ヴォルテールと白天王に尖端が合わされた。
「!? 危ないっ!」
危険を察知したダイチがゴモラを操作し、ヴォルテールたちを突き飛ばした。
次の瞬間にトゲが発射された。弾丸のような勢いのトゲはシールドを突き破って飛び出し、デバイスゴモラの胴体を貫通した。
『ギャオオオオオオオオ!!』
「うわああああっ!!」
魔力粒子を破壊されて弾け飛び消滅するデバイスゴモラ。ダメージがフィードバックしたダイチが倒れたところに、キャロとルーテシア、シャマルが慌てて駆けつけた。
「大丈夫ですか、ダイチさん!?」
「白天王たちを助けるために……ごめんなさい!」
「お、俺は大丈夫だ……! 君たちの召喚獣が無事でよかった……」
ダイチを回復するシャマル。しかしゴモラが身代わりになったことで、ヴォルテールたちは無傷だ。シールドに開いた穴も、すぐにユーノがふさぐ。
「そんなことをしても、僕がシールドを破らせないぞ……!」
――だが、発射されたトゲが着弾し発生した爆炎の中から、怪獣が二体出現した!
「キャ――――――――オォォウ!」
「グガアアアア! ギャアアアアアアアア!」
「えっ!!?」
戦場の全員が、愕然と振り返った。
本部で叫ぶルキノ。
「新たにファイヤーゴルザ、アントラーが出現っ!」
『嘘!? その子たちはここにいますよ!?』
ラボからシャーリーが混乱した様子で告げた。彼女の向いた先に、カプセルに入れられたアントラーとファイヤーゴルザのスパークドールズ。ダイチが回収したものだ。
すると二体の怪獣の分析を行ったグルマンが述べた。
『いや! あの怪獣たちの組成はザイゴーグと同一のものだ! 恐らくあいつらは、怪獣の生体情報を元にザイゴーグが作り出した分身体だっ!』
「分身だと……!?」
カミキもクロノもまさかの事態に唖然となる。
「キャ――――――――オォォウ!」
「グガアアアア! ギャアアアアアアアア!」
赤いアントラー、ゴーグアントラーと青いゴルザ、ゴーグファイヤーゴルザは磁力光線と超音波光線を発射し、シールド発生装置を撃ち抜いた。
「し、しまった!!」
動揺するユーノ。パラボラは大破してしまい、亜空間シールドは維持できなくなって消滅する。ザイゴーグが自由になってしまった!
「いけない! すぐに退避を!」
ダイチたちは後退して怪獣たちから距離を取る。その退避をヴォルテールと白天王が守る。
「グギャアアァァァァ――――――! ガハハハハハ……!」
「キャ――――――――オォォウ!」
「グガアアアア! ギャアアアアアアアア!」
日が傾き、夕焼けが街を染める中、アントラーとゴルザはザイゴーグの両翼に回り込み、三体の巨大怪獣が守護獣二体と向かい合った。怪獣たちは、人間の抗戦を嘲笑うかのように咆哮を上げる。
カミキとクロノは防衛線のメンバーに指示を飛ばす。
『フロント及びセンターは直ちに怪獣を攻撃! その場から動かすな!』
『バックはカルロスタワーまで後退! ダイチはスバルと合流して青い石を確保!』
「了解!」
二体の怪獣を従えるザイゴーグを見上げたダイチがつぶやく。
「地獄の軍団ってこういう意味だったのか……! あいつはトゲから怪獣を生み出すことが出来たんだ!」
「あの背中に生えてるの全部怪獣になるってことっスか!? そんなことされたらホントに地獄絵図っスよ!」
ザイゴーグの背面にびっしり生えるトゲを確かめ、ウェンディが戦慄した。
「とにかく行こう……!」
「っス!」
「ユーノさん、こちらへ……!」
「ありがとう……!」
ユーノを誘導するチンク。キャロ、ルーテシア、シャマルも続く。
「グギャアアァァァァ――――――! ガハハハハハ……!」
「キャ――――――――オォォウ!」
「グガアアアア! ギャアアアアアアアア!」
街を夕闇が包み出す中、進撃を再開するザイゴーグの軍勢。ヴォルテールと白天王が阻止しようと正面からぶつかっていくが、敵は三体。数の差で押されてしまう。
「私たちも迎撃だ! 臆するなっ!」
「こっから先には一歩たりとも通さねぇーっ!!」
鬨の声を上げるシグナムとヴィータ。二人の勢いに押される形で、他の前衛メンバーも怪獣たちに抗戦する。
……しかし、皆が巨大な怪獣たちに目を引きつけられたので、飛ばされたトゲの先端が切り離されて欠片となっていたこと――その欠片が変形して、カルロスタワーに向かって進み出したことには誰も気がつかなかった。
「きゃああ――――――――っ!!」
窓から見える三体の怪獣の姿に、パーティの参加者たちは恐怖を感じてパニックに陥っていた。スバルは懸命に彼らを避難誘導する。
「玄関の方へ避難して下さい! まっすぐ! 慌てないで、落ち着いて避難して下さい! ……きゃっ!」
その中で、怪獣たちが起こした震動がビルにも伝わって、アイシスが体勢を崩して転倒した。
大勢の人が一斉に出口へ逃げていくが、カルロスは番組のカメラマンからカメラをひったくった。
「逃げるんならカメラ寄越せ! 私が撮る!」
カルロスが手にしたカメラが捉えた、スバルやアイシスの姿がウェブテレビに流された。
「スゥちゃん! アイシス!」
ラボでは、カルロスの番組越しにトーマがアイシスの倒れたところを目撃して叫んでいた。そしてどこかに立ち去っていこうとするのを、シャーリーたちが慌てて押しとどめた。
「ま、待って! どこ行くの!?」
「スゥちゃんたちが危ないんです! じっとしてなんかいられません!」
「お、落ち着いて下さい! トーマさんまで危ない目に遭うだけです!」
「あなたが行っても、どうしようもないですよ!」
説得するヴィヴィオにアインハルトだが、トーマは聞き入れない。リリィはどうしていいのか分からず狼狽えている。
「もう大事なものを失うのは嫌なんだ! アイシスだって、短い時間だけだけど友達だ! みんなのピンチに、見てるだけなんて俺には出来ないっ!」
「駄目ですったら……!」
今にも飛び出していってしまうそうなトーマを必死で制止するヴィヴィオたち。
すると、トーマの叫び声に呼応したかのように、グルマンの手元の石器が強く光り始めた。
「これは……!?」
突然の光に、トーマたちも思わず目を奪われた。
カルロスコミュニケーションズでは、同時に青い石が光り輝き出したのを秘書が見とめた。
「社長! 石が光ってます!」
「そう来なくちゃ! これが、神秘の光だぁ!」
すかさず駆けつけたカルロスが、石の発光をカメラに収めた。
グルマンたちは、石器と青い石の光の明滅が全く同じ周期であることに、目の前の現物と映像を見比べて気がついた。
「これって……!?」
目を見張るマリエルに、トーマは頼み込んだ。
「お願いです、行かせて下さい! 何も出来ないかもしれないけど……それでも、スゥちゃんたちを助けたいんだっ!」
その言葉を引き金とするように、石器の発光が頂点に達する。
『博士、この光は……!?』
エックスの問いに答えるグルマン。
「トーマ少年の想いに反応しているようだ」
『ティガの像の碑文の通り、青い石が、天と地の光をユナイトさせるとすれば……恐らく……!』
「……っておい! お前さんも光ってるぞ!?」
仰天するグルマン。エクスデバイザーも石器と青い石に同調して輝き出したのだ。
『これは……!』
それに気がついたエックスはファビアとシャーリーの二人に頼み込んだ。
『クロ、シャーリー! 私をダイチのところに連れていってくれ!』
「でも、修理はまだ……!」
ファビアたちが戸惑っていると、グルマンが言いつける。
「ここは私とマリーだけで大丈夫だ! トーマ少年とエックスをみんなのところへ連れていけ!」
「きっとトーマくんとその石器が必要なのよ!」
グルマンとマリーの言葉に、シャーリーたちは決心して敬礼した。
「了解です!」
「了解」
石器をバッグに入れたトーマを先導していくシャーリーとファビアを、ヴィヴィオたちが応援しながら見送る。
「トーマさんのこと、どうかお願いします!」
「クロ、頼みました!」
「キュウッ!」
ヴィヴィオたちにうなずき返すファビアとシャーリー。トーマには、リリィがおずおずと呼びかけた。
『トーマ……無事に帰ってきてね……』
「……ああ! 分かった!」
心配そうなリリィを置いて、トーマはシャーリーたちとともにスペースマスケッティでエリアT-2へと飛び立っていった。
「グギャアアァァァァ――――――! ガハハハハハ……!」
「キャ――――――――オォォウ!」
「グガアアアア! ギャアアアアアアアア!」
戦闘メンバーは怪獣軍団に総攻撃を続けているが、ザイゴーグたちの肉体は恐ろしく堅牢であり、進行を遅らせるので精一杯であった。
「白天王っ!」
ルーテシアの呼びかけにより、白天王が上空から怪獣たちに飛びかかっていこうとする。
「キャ――――――――オォォウ!」
しかしアントラーの背面の甲殻がパックリと開くと――下から昆虫の翅が伸び、高速で羽ばたくことでアントラーが飛び上がった!
「飛んだ!?」
アントラーは白天王に急接近し、大顎で相手の腰を挟み込み、地上に引きずり落とす。
「っ!!」
「キャ――――――――オォォウ!」
白天王が背中から地面に叩きつけられた。
ヴォルテールはザイゴーグに殴りかかっていこうとしたが、それに反応してゴルザが前に飛び込む。
「グガアアアア!」
そのまま身体を丸めて球状になり、ヴォルテールに激突。ビルを巻き込んで押し倒す。
「ヴォルテールっ!!」
絶叫するキャロ。守護獣が抑え込まれている間に、ザイゴーグがまっすぐにカルロスタワーへ向かい出した。
「グギャアアァァァァ――――――! ガハハハハハ……!」
「待ちなさいっ!」
「そっち行くんじゃねぇーっ!」
ザイゴーグの頭上からスカイマスケッティとなのはたち空戦魔導師、背後からはランドマスケッティとティアナが攻撃を仕掛けようとしたが、ザイゴーグは新たにトゲを二本、上と下に飛ばした。
「キャア――――!」
上に飛ばされたトゲは雲を下から突き抜けると、白いドラコ、ゴーグドラコの姿で急降下してきて、なのはたちに襲いかかった。
「きゃあああっ!」
ドラコが間を突き抜けていった際に起こした突風に、なのはたちは煽られて散り散りにされる。
「グギュウウウウウウウウ!」
下に撃たれたトゲは地中に消えると、黒いシルバゴン、ゴーグシルバゴンが路面を裂いて出現し、ランドマスケッティとティアナの砲撃をその身で受け止めた。
「ちくしょう! 増やすんじゃねぇよっ!」
毒づくノーヴェ。ドラコとシルバゴンにさえぎられて、ザイゴーグがノーマークになってしまった。
「グギャアアァァァァ――――――! ガハハハハハ……!」
「こっち来るなっスーっ!」
タワーにどんどん接近してくるザイゴーグにダイチ、チンク、ウェンディがウルトライザーシュートを浴びせるも、ザイゴーグは全く効いた様子を見せなかった。
ザイゴーグの接近により震動が強まり、テーブルが傾いて乗せられていた青い石が転げ落ちた。
「あぁーっ!?」
思わず叫ぶカルロス。石は逃げる女性に蹴飛ばされて転がっていき、スバルが追いかけて手を伸ばしたが、後ろから秘書が組みついてスバルを邪魔した。
「あれは社長のものだっ!」
「何するんですか! 離して下さいっ!」
スバルが秘書と争っている間に、青い石はアイシスが拾い上げた。
「おぉー! 拾ってくれてありがとうアイシスくん! さぁこっちに……」
「渡すもんですかっ!」
アイシスはカルロスに背を向けて、石を持ったまま出口に走っていく。
「あっ! 待て泥棒ーっ!」
それを追いかけていくカルロス。秘書を振り払ったスバルも、秘書もカルロスの背中を追って走っていった。
「グギャアアァァァァ――――――! ガハハハハハ……!」
ザイゴーグはウルトライザーシュートを放つダイチたちに向けて光線を吐き出そうとする。戦慄するダイチたち。
しかしその時、空の彼方からスペースマスケッティが猛スピードで飛んできた!
「間に合ったーっ! クロ!」
「うん……!」
ファビアがスイッチを押し、スペースマスケッティからピンク色の光線が発射され、ザイゴーグの口の中に命中。
すると口内が花でいっぱいに満たされ、光線の攻撃は阻止された。ファビアの扱う魔女の古典魔法を増幅し射出した花束光線だ。
「!?」
「やったぁ! 大成功っ!」
ガッツポーズを取るシャーリーとファビア。ファビアの使い魔たちはわいわいと紙吹雪を散らした。
「今の内にっ!」
操縦しているシャーリーがマスケッティからアラミスを切り離して、ダイチたちの前に着地させた。ファビアはすぐに降車してダイチへ駆け寄った。
「ダイチ隊員! エックス!」
「ありがとう!」
エクスデバイザーを手渡すファビア。ダイチは即座にエックスに呼びかける。
「エックス、大丈夫か!?」
『残念ながらユナイトはまだ無理だ!』
「そうか……あっ、トーマ!?」
ダイチが顔を上げると、トーマが単身カルロスタワーへ駆け込んでいく後ろ姿を発見して驚愕した。
「ちょっ、トーマくん!」
「トーマのことは俺が! シャーリーさんたちはバックと合流を!」
追いかけようとしたシャーリーを止めたダイチが、代わりにトーマを追って走っていった。シャーリーはチンクとウェンディに振り返る。
「チンク、ウェンディ! マスケッティ交代!」
「了解! ウェンディ、乗るぞ!」
「りょーかいっス!」
チンクとウェンディがアラミスに駆け込み、ウェンディがマスケッティを呼ぶ。
「カモーン! マスケッティ!」
アラミスが飛び上がって、マスケッティと再度ジョイント。
[スペースマスケッティ、コンプリート]
チンクとウェンディを乗せたスペースマスケッティが新たに乱戦に加わっていった。
トーマを追って無人のカルロスタワーのエントランスに入ったダイチに、エックスが告げた。
『トーマが持ってる石器の波動は、青い石にシンクロしている!』
「それって、闇を闇に還す力? ザイゴーグを封印する力か!」
ダイチがそう言った時、ドォォンッ! と突然上階の方から壁が砕け散るような耳をつんざく轟音が発生した。
「何の音だ!? 怪獣の攻撃の音じゃない……!」
驚かされたダイチに、エックスが焦燥した声を出した。
『まずいぞ! タワー内に、ザイゴーグと同じ反応を持つ人型の動体を捉えた!』
「何だって!? しまった、怪獣の他に小型の分身がいたのかっ!」
『急ごう、ダイチ!』
「ああ!」
ダイチは全速力でタワーの非常階段を駆け上がって、青い石を回収に行ったスバルとアイシス、その二人のところへ向かっていったトーマを目指していった。
青い石を持って階段を駆け下りていくアイシスがタワーの中ほどの階に差し掛かると、ちょうど上ってきたトーマと鉢合わせた。
「アイシス! よかった、無事で!」
「トーマ!? どうしてここに……!」
「アイシスたちが心配で、いてもたってもいられなくなって……! 石も回収できたんだな!」
[二人とも、すぐに脱出しましょう。外の戦況は芳しくありません]
呼びかけたスティードだが、すぐに警告を発した。
[いえ、伏せてっ!]
「えっ!?」
突然二人の近くの床が下から突き破られ、トーマとアイシスは爆風に煽られてよろめおいた。
「うわぁぁっ!」
「何が起きたの――えっ!?」
顔を上げたアイシスが目を見張った。その視線の先にいるのは――。
「ガハハハハハハハ!」
トーマと瓜二つの顔と、甲冑のような防護服、剣と一体化した腕を持った人間。しかし肌には赤黒い血脈のような模様が走り、眼は黄色く爛々と光っていて、口からはザイゴーグと酷似した笑い声が発せられた。
ザイゴーグがトーマの生体情報を写し取って作り出した、三番目の分身、閻魔分身獣人ゴーグトーマが青い石を狙って現れたのだ!