ウオォンッ、ウオォンッ……!
「イィィィーッ! サ―――ッ!」
ミッドチルダ中央区の一画。いつもは大勢の人で賑わっている都市の中心が、今日は見る影もなく荒れ果て、そしてゴモラキャリバーを纏ったエックスと一機の白い巨大ロボットが激戦を繰り広げていた。
七体の魔王獣が撃退された後に、未知の魔法陣を介してミッドチルダに前触れなく現れたこのロボット――ある次元宇宙の地球で「ギャラクトロン」と名づけられたものである――は、初めは何の動きも見せずに静止していたので、しばらくはXioの監視下に置かれるだけで特に問題はなかったのだが、一日が経過してからロボットは豹変。極論を振りかざして見境のない破壊行為を始めたため、Xioとエックスがその暴挙を止めるべく抗戦しているのだった。
ロボットは脅威的なまでの戦闘能力を有していたが、それでも数々の激闘を経験してきたエックスにとっては勝てない相手ではなかった。ましてやXioの援護もあり、エックスは優位に戦いを進めていた。
「『超振動バスター!!」』
エックスが放った振動波がロボットの剣状の左腕に命中し、破砕。片腕を失ったロボットは、その衝撃のために一瞬動きが鈍った。
この間にエックスがダイチに呼びかける。
『ダイチ、奴を止めるには破壊するしかない!』
『「やるしかないか……! よし、超振動拳だ!」』
覚悟を決め、ロボットにとどめの一撃を繰り出そうと構えるエックス。
しかしその時、ロボットの頭上に怪しいものが出現した!
『ん!? 何だあれは!?』
『「円盤……!?」』
まるで洋館とシャンデリアが合体したかのような、そんな奇怪な飛行物体がロボットの頭上に陣取ったのだ。唐突な事態にエックスも思わず面食らう。
『宇宙船なのか? 何とも悪趣味な……』
『「あのロボットと関係があるのか?」』
謎の円盤を警戒するエックス。だが円盤はエックスの方には何もせず――ロボットに光を照射した。
するとどういう訳か、ロボットは一枚のカードにまで圧縮され、円盤に吸い込まれていったのである。
『「えっ!?」』
そして円盤はそのまま消えてしまった。エックスはぽかんと、円盤とロボットが消えた跡を見つめるのみ。
『い、一体何だったんだ? あれは……』
『「分からない……。何か、おかしな事態の前兆とかじゃなければいいんだけど……」』
エックスもダイチも、あまりの状況の変遷ぶりに戸惑うばかりであった。
このように巨大ロボット事件は、理解不能の事態によって歯切れの悪い幕切れを迎えた。ダイチたちは、あのロボットを回収していった円盤を警戒して行方の調査を行ったのだが、足取りは全く掴めず、そして何事か起こる気配もなかったため、しばらくして調査は打ち切られた。
だがその記憶が薄れかけていた数か月後に、円盤は再び姿を現した。今度は、悪性異星人を何人も引き連れて――。
「ショオラッ!」
「テヤッ!」
「イィィィッ! シェアッ!」
次元世界の片隅に浮かぶ無人世界。――ここはある理由によって、一般人の立ち入りが厳しく制限されている。普段は滅びた文明の名残が荒野にポツポツと転がっているだけの寂しい土地なのだが――現在は、Xioと管理局、そしてウルトラ戦士の共同戦線と、謎の異星人犯罪者の集団が正面衝突して激しい戦火を飛び散らせていた。
「『Xスラッシュ!」』
エックスが相手にしている敵にXスラッシュを放ったが、相手――分身宇宙人ガッツ星人は六体に分身してかわすと同時にエックスを取り囲んで翻弄する。
『分身した!』
『「しかも幻影とかじゃない……全部に実体があるぞ! 何て奴だ……!」』
ガッツ星人の能力を分析したダイチがおののく。分身は普通、どれか一人だけが本体。しかしガッツ星人のそれは全てが本体という、ミッドチルダの技術をも超えている恐るべき能力なのだ。
この戦場にはウルトラ戦士がエックスの他にも、異星人集団を追って応援に駆けつけたギンガとビクトリーの二名がいる。しかし彼らも別の異星人にてこずっていた。
『「くっそ、なかなかやるな……!」』
『「こいつら、相当手強いぞ……! 気をつけろ、ヒカル!」』
ヒカルとショウがそれぞれ吐き捨てる。そんな二人と拮抗した戦いをしているのは、テンペラー星人とスーパーヒッポリト星人。どちらも肉体、特殊能力ともに高い水準を誇る、強豪侵略者である。
敵勢力にはそれ以外にも多種多様な異星人がおり、それらはミッドチルダの魔導師部隊と交戦していた。中には巨大化して襲い掛かってくる者もいるが、管理局のエースたちが力を合わせて各個撃破していく。
「来よ、氷結の息吹!」
液体状の肉体であらゆる攻撃を透過し魔導師たちを苦しめていたサーペント星人だが、はやての広域凍結魔法によってみるみる凍らされていく。
「グッ!? グオオオオオッ!」
必死にもがくサーペント星人だが最早どうにもならず、すぐに完全な氷像に変わって無力化された。
「ジェットザンバーっ!」
「エクサランスカノン、フルバーストっ!」
「グワアアアァァァァ――――ッ!」
ガルキメスにはフェイト、なのはの同時攻撃が決まり、ガルキメスは仰向けに吹っ飛ばされて倒れ込んだ。
「はぁぁぁっ! リボルバーキャノン!」
見渡す限りで乱戦が展開している戦場の中を、スバルがウィングロードで駆け回り、リボルバーナックルを叩き込んでクカラッチ星人、セミ女などを次々と殴り倒していった。
「あの円盤を抑えられれば……!」
スバルの目は、荒野の中に一つだけ大きく鎮座している岩山に接近していく例の円盤に向いた。異星人たちはあの円盤を守るように行動しているので、あれが敵の本営に違いない。それに狙いをつけるスバルだったが――。
『ハッハァーッ!』
「!」
突然、横から半身が骸骨状の機械の鎧に覆われた異星人が剣を構えて飛び込んできたので、咄嗟にプロテクションで斬撃をガードした。しかしそのために円盤への進行を止められる。
『お嬢ちゃん強いねぇー! 今度は僕のお相手をしてくれよぉッ!』
宙に浮かびながら随分となれなれしい口調でそう言い放った異星人と対峙するスバルに、ティアナが警告を飛ばす。
「気をつけてスバル! そいつの実力は飛び抜けてるわ! かなりの人数がそいつにやられてる!」
「分かった!」
より警戒を深めたスバルが相手の出方を窺いながら問いかける。
「見ない顔だね……。出身星と名前は?」
『おっと、これは名乗り遅れちゃったかな? 僕はガピヤ星人サデスって言うのさぁ! 短い間になるだろうけどよろしくねッ!』
叫ぶように名乗ったガピヤ星人サデスに、一旦ギンガから距離を取ったテンペラー星人が怒鳴る。
『おいッ! 何を遊んでるのだ! 貴様も巨大化して戦えッ!』
するとサデスは大仰に肩をすくめる。
『まぁーったく君たちは無粋だよねぇー。戦いは相手と同じ土俵じゃないと楽しくないでしょお!?』
などと口走るサデスに、スバルは内心、他の異星人とは大分違うタイプみたい、と考えた。
そしてサデスの言動には、円盤の中に潜んでいる、異星人たちのボスとも言うべき女が歯ぎしりを立てていた。
「あいつ、本物の馬鹿ね……!」
と吐き捨てると、視線を岩山の方へ向ける。
「まぁいいわ。目的はいよいよ目の前……! この私が、封印を解いてあげるわ!」
そう言いながら、女は青い怪獣の描かれたカードと、黒いリングをそれぞれ手にした。そしてカードを、リングの間に通す。
[ザイゴーグ!]
「行けぇっ!」
リングからカードが撃ち出され、円盤を抜けて岩山に突き刺さる。すると岩山と、それ全体に施されていた封印術式が木端微塵に吹っ飛び――その下から、山と同じほどの体躯の怪獣が現れた。
怪獣は生物のようではあるが、半身が機械の鎧で覆われていた。また鎧からは無数の砲身が突き出ていて、両腕もキャノンと機関銃のようになっている。つまり機械化改造が成されているのだ。
「し、しまったっ!」
「封印が解かれてしまった!!」
怪獣の出現に、魔導師たちが一斉に動揺する。
一方で岩山を破壊して怪獣を解き放った女は、高笑いしながら叫んだ。
「遂に手に入れたわ! 禁断の怪獣兵器……デアボリックぅ――――――!!」
そして女は握っているリングから暗黒の波動を放ち、怪獣に向ける。
「さぁデアボリック、まずは目覚めの祝砲よ! 派手にぶちかまして、あなたの実力を見せてちょうだい!」
デアボリックと呼ばれた怪獣の両眼に獰猛な光が宿り、鈍い音を立てながら全身を動かし始める。
「グギャアァァァ――――! ウオオォ――――ン!」
デアボリックの全身から突き出ている砲口の全てが持ち上がり――一斉砲火を始めて無数の弾薬を魔導師たちやウルトラ戦士たち全員に浴びせ始めた!
「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――!!」
文字通りの弾丸の集中豪雨に襲われ、戦場は一気に地獄絵図と化す。雨あられと飛んでくるデアボリックの砲撃に襲われる魔導師部隊を、はやてやなのはたちが広範囲結界でどうにか守っていた。
「総員退避! 退避やぁっ!」
焦った調子で指示を叫ぶはやて。デアボリックの砲撃は止む気配がなく、このまま受け続けていたら全滅は必至だ。
「グッ! ウオオォォッ!」
エックスも防御を固めながら、その身を盾にして魔導師たちをかばっていた。――しかしそんな彼を、円盤の女が狙う。
「一番の目的のウルトラマンジュエリー……ここで手に入れさせてもらうわ!」
女がパチンと指を鳴らすと、エックスの前に例の突然消えた白いロボットが現れ、腹部の発光体にエネルギーを集中してエックスに目をつけた。
『「危ないエックスっ!」』
それを察知したギンガとビクトリーが飛び込んで、エックスを突き飛ばして彼を助けた。
しかし代わりに二人がロボットから放たれた光線を浴びてしまう!
『「「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――!?」」』
『「ショウさんっ! ヒカルさんっ!」』
光線の中に消えるギンガとビクトリーに目を見張るダイチ。しかし二人がどうなったのか確かめる暇もなく、事態は変化していく。
「おほほ! 動作テストも完了したし、もう長居は無用ね。おさらばするわよっ!」
女が唱えながら、黄金色の怪人のカードを黒いリングに通した。
[エタルガー!]
すると円盤を中心に空間に渦巻きのような穴が開き、異星人たちは次々にその中へ飛び込んでいく。デアボリックとロボットもその中へ吸い込まれていった。
スバルと交戦していたサデスは、その場で小躍りする。
『ワーオ! いよいよ彼のいる星に行くのかぁ! たーのしみだなぁ~! ガイ君との再会ッ!』
「えっ!?」
聞き覚えのある名前に一瞬反応したスバルだが、サデスは彼女を置いて他の異星人同様に空間の穴に飛び込んでいった。
そしてエックスまでも――。
「ウッ! ウオオオオオッ!?」
空間の歪みから発せられたエネルギーをその身に浴びたエックスの身体が分解され、ユナイトが強制解除されてしまった。ダイチが宙に投げ出される。
「うわあぁぁぁぁ! エ、エックス……!」
ダイチは咄嗟にエクスデバイザーを放り投げ、エックスの光をその中に緊急避難させた。しかしそのダイチも空間の歪みに引っ張られて、吸い込まれていってしまう。
「わああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――!」
「ダイくんっ!」
スバルがウィングロードを駆け上がり、エクスデバイザーをキャッチした。だがそのために、彼女まで空間の歪みの吸引に捕まる。
「あああぁぁぁぁぁぁ――――――――――!?」
「す、スバルっ!!」
ティアナたちが叫んで助けようとしたが、もう間に合わなかった。空間の穴はスバルとエックスを吸い込んだのを最後に完全に閉じ、追いかけることは出来なくなってしまったのだ。
謎の異星人の集団によって、別の世界へと引きずり込まれていったダイチたち。その行き先とは――。