光輝巨人リリカルなのはX   作:焼き鮭

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怪獣を盗む男

 

 丑三つ時のミッドチルダ首都クラナガン、旧カルロスタワー前。かつて管理局とXio、そして三人のウルトラマンが地獄獣ザイゴーグと決戦を行った場所である。

 この地で今、ローブを目深に被った男が一本の小さなカプセルを掲げていた。

 

「……」

 

 男が口の中で、ミッドチルダ式でもベルカ式でもない何らかの呪文を唱えると、地面から巨大な霊体が浮かび上がってきた。

 

『グギャアアァァァァ――――! ガハハハハハ……!』

 

 地面に染みついていた、ザイゴーグの残留思念である。それがカプセルの中に全て吸い込まれていき、表面が白紙だったカプセルにザイゴーグの絵柄が刻み込まれる。

 男はザイゴーグのカプセルを、手持ちの不気味な紋様の箱の中に無造作に放り込んだ。箱の中には他にもゴモラやレッドキングなど、無数の怪獣のカプセルが収められていて、男はそれらをかき混ぜながらほくそ笑む。

 

「フフフ……これだけあれば怖いものなしだ」

 

 ローブの男の背後に控える二人の異星人、バド星人とゴドラ星人が呼びかけた。

 

『素晴らしい成果ですね、殿下』

『一つの星でこれだけの量の怪獣カプセルが作れるとは!』

「それもこの星の怪獣保護政策のお陰だ」

 

 ローブの男はニヤリと口の端を吊り上げながら答えた。

 

「あれだけの怪獣を、利用もせずに放牧してるだけとは……。度し難い連中だな」

『まことおっしゃる通りですな!』

『ですがお陰で我々は大助かりです、殿下!』

 

 三人が肩を揺すりながら嗤い合っていると――突然四方から照明が当てられ、夜闇に紛れていた三人の姿が浮き彫りにさせられた。

 

「!」

「そこまでだ! 全員武器を捨てて手を挙げろ!」

 

 男たちを包囲しているのは、チンク、ウェンディ、ノーヴェのN2Rの三人。既に武装して、男たちが怪しい動きを見せれば即座に攻撃できる構えだ。

 

「とうとう尻尾を掴んだぞ。怪獣たちからエネルギーを奪っていく不審な集団め! 大人しく投降しろ! でないと攻撃する!」

『殿下!』

 

 勧告するチンクから盾となるように男の前に回るバド星人とゴドラ星人。しかし男は興味がなさそうに踵を返した。

 

「構うな。この星での用は済ました、行くぞ」

「動くなっ! 警告したぞ!」

 

 脅すチンクだが、男はまるで聞き入れずにローブを翻した。

 

「撃てぇっ!」

 

 チンクの号令で、三人は一斉攻撃を浴びせるが――ローブが翻したと同時に発生した闇のカーテンが男たちを覆い隠し、チンクたちの魔法をはね返した。

 しかも闇が消えると、男たちの姿は忽然と消えていた。

 

「いない!」

「逃げたっス!」

「すぐに転移先の特定だ! 急げ!」

 

 ローブの男たちの逃走先を追跡し出したチンクたちであったが……未知の魔法技術による空間転移のようであり、残念ながら特定は不可能だという結論で終わったのであった。

 

 

 

 翌日の早朝、ミッドチルダ北部の怪獣共生区にダイチとスバルが訪れ、保護されている怪獣たちの容態を確かめて回っていた。

 

「ダイチ、みんなの調子はどう?」

「ゴモラたちの方はもう回復してるけど、エレキングとネロンガはまだ良くないな……。この二体は、襲われてからまだ日が浅いからね……」

 

 スバルの問いに、診察を終えたダイチが眉間を寄せながら答えた。彼らの背景では、エレキングとネロンガがぐったりと地に伏せっている。

 

「キイイイイイイイイ……」

「ゲエエゴオオオオオオウ……」

 

 力をなくしている怪獣たちを心配するスバル。

 

「かわいそう……。でもどこの誰が、何のために怪獣のエネルギーを奪ってるんだろう」

「昨晩、チンクたちが遂に追いつめることに成功したけど、結局逃げられたそうだ。ウェンディが悔しがってたよ」

 

 二人が話しているところに、ダイチのデバイザーにエックスからの通信が入る。

 

『ダイチ、スバル』

「エックス、そっちはどう?」

『すまないが、こっちでも犯人の逃走先は追跡できなかった。力になれなくて残念だ……』

「そうか……。ありがとう、エックス」

 

 エックスの報告に、ダイチたちは落胆を隠せなかった。

 この数日、時空管理局によって保護されている怪獣たちが、次々に何者かから生体エネルギーを奪い取られるという事件が発生していた。これまでにも怪獣を悪しき目的のために利用しようと密猟をたくらむ犯罪者は少なからず現れているが、それらはXio、もしくは怪獣自身の力によって全員逮捕されていた。しかし今回は、怪獣が直接狙われた訳ではないので発覚が遅れてしまったのだ。

 

『物事にはどんなものにでも、良い面と悪い面がある。ダイチの怪獣との共生という夢は素晴らしいものだが、今回のように邪な者どもを引きつけてしまうことにもなる。今後は一層警戒を厳しくしないといけないだろう』

「ああ……気をつけないと」

 

 ダイチたちが気を引き締めていると、通信に第三者が割り込んでくる。

 

『よっと! ちょっとお邪魔するぜぇ』

『うわっ!?』

 

 デバイザーの画面のエックスが右半分へ押しやられ、もう半分に映り込んだのはウルトラマンゼロであった。驚くダイチたち。

 

「ゼロ! 久しぶり!」

『ああ、久しぶりだな! だがいい報せを持ってきたんじゃねぇんだ』

 

 ゼロは真剣な口調でダイチたちに告げた。

 

『ミッドじゃ怪獣泥棒が出没してるって話だったが、こっちの宇宙でも似たような事件が発生してるんだ』

「えっ……ゼロの宇宙でも?」

『ああ。バンダ星やサーリン星とかの星々で廃棄予定だったロボット怪獣が盗難に遭い、怪獣墓場でも墓荒らしが出やがった。現場の痕跡から見て、同一犯のようだ。恐らくミッドの事件の奴もそうだろう』

 

 宇宙を股に掛けた犯行。あまりにスケールの大きい犯罪に、ダイチたちはますます警戒心を強める。

 

『色んな星で怪獣の力をかき集めてる。黒幕は相当やばいことをしでかそうとしてやがるみたいだな。全く、ようやくベリアルとのケリがついた矢先にこれとは、休む暇もないぜ』

『宇宙警備隊も捜査に乗り出しているのか?』

 

 ため息を吐いたゼロにエックスが尋ねた。

 

『もちろんだ。だが全部の次元宇宙を俺たちだけで見張るってのは、残念ながら不可能でな。俺は各宇宙のウルトラ戦士に協力を呼び掛けて回ってる。あいつのとこにも連絡に戻る必要があるな』

『あいつ?』

『新人のウルトラ戦士だ。機会があったら、お前たちにも紹介してやるぜ! まぁ結構な強面なんで、最初は驚くかもしれねぇけどな!』

 

 強面のウルトラマン……と言われても、ゼロ以上にきつい顔のウルトラマンなんてものは、ダイチとスバルにはあまり想像できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――光の国からも、ミッドチルダからも遠く離れた次元のレベル3バース。太陽の周りを周回し続ける緑の星、地球に、バド星のフリスビー状の円盤が接近していく。

 ――その後尾から、別の宇宙船が円盤を追って飛んでいた。機体の前後に球体のある、金属製のカヌーのような形状の宇宙船だ。

 追われている円盤から、何か巨大なものが闇を纏いながら出現し、宇宙船に立ちはだかった。一方で宇宙船からも赤い光が飛び出したかと思うと、光が一人の巨躯のウルトラ戦士へと変化していく。

 

「ショアッ!」

 

 赤と黒の体色に、大きく吊り上がった青い眼のウルトラマンが、獸のように指を広げた右手を前に伸ばして、暗闇を纏うものに飛び掛かっていった――。

 




 
『やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。』に続きます。
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