光輝巨人リリカルなのはX   作:焼き鮭

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オール・フォー・ワン(B)

 

(♪MATのテーマ(コーラス付))

 

 エリアS-9に駆けつけた特捜班は、ザラブ星人一派へのリベンジを開始した。

 まずはオットーが工場の敷地に結界を張り巡らし、全員に通達する。

 

「敵異星人三人を結界で分断しました。各個撃破をお願いします。また、工場施設も結界で防護しているので、損害は気にせず存分に戦って下さい」

『了解! ありがとうね、オットー!』

 

 スバルが代表して礼を言い、彼女とワタルとハヤト、ノーヴェとウェンディとディード、ディエチとセインの三チームに分かれてそれぞれ異星人たちとの交戦を行う。

 

 

 

『食らえッ!』

 

 ノーヴェたちの組はグロテス星人と戦う。エアライナーやライディングボード等でグロテス星人への接近を試みる三人だが、グロテス星人は両手の機関銃を乱射して迎撃を図る。

 

「ちっ……!」

 

 弾丸の雨を前にして、三人は回避行動に手一杯でなかなか距離を詰められない。当然ながら、異星人犯罪者の攻撃に非殺傷設定などはない。特にグロテス星人の機関銃の殺傷力はかなりのもの。まともに食らったら致命傷は避けられない。

 

『ウハハハハッ! 何人集まったところで、所詮人間などこのグロテス星人には敵わんわぁッ!』

 

 猛攻を続けながら豪語するグロテス星人。だが、

 

「そいつはどうかな?」

『ぬッ!?』

 

 硝煙が晴れると、グロテス星人は己の背後にウェンディとディードが回り込んでいることに気がついた。いい気になって無数に撃ち続けたので、立ち込めた硝煙が煙幕となって二人の回り込みを隠したのだ。

 だが挟み撃ちの状況に陥っても、グロテス星人は余裕を崩さない。

 

『ふんッ! 後ろを取った程度で、脆弱な人間がグロテス星人に勝てると思ったら大間違いだ! 動いたところで、一人ずつ撃ち抜いてやる!』

 

 グロテス星人はノーヴェたちに対して横向きになり、両手の機関銃をそれぞれノーヴェ、ウェンディとディードに突きつける。三人が少しでも動いたら、即座に発砲できる態勢だ。

 しばしの睨み合い……。そして、ノーヴェが走る!

 

「おおおおおっ!」

 

 それとほぼ同時にディードとウェンディも動いた。それを受け、グロテス星人の機関銃が火を吹く!

 三発の凶弾がまっすぐノーヴェたちに飛んでいく――が、三人は軌道を見切り、すれすれのところで弾丸を避けた! 避けながらノーヴェとディードが前に突き進む。

 

『かわしたか! だがッ!』

 

 しかしグロテス星人もすかさず次弾発射。ノーヴェの足元に撃ち込んで彼女を足止めし、背後から斬りかかってくるディードの眉間に銃口を向けた。発射されたら振りかぶっているディードはかわせない!

 

「はずれっスよ!」

 

 だがディードは斬りかかってこず、代わりのようにウェンディが魔力弾を複数発射した! 迫るノーヴェとディードに気を取られて、ウェンディが発射用意していたことに気づかなかったのだ。

 

『ぐがッ!?』

 

 魔力弾の直撃を受けて体勢を崩されるグロテス星人。発射された弾丸は空に向かって飛んでいった。

 そしてディードが今度こそ光の双剣を交叉する。

 

『ぎゃあああッ!』

「食らえ! チンク姉の分っ!」

 

 のけ反ったグロテス星人の頬に、ノーヴェのガンナックルが突き刺さった!

 

『ばッ、馬鹿なぁぁぁぁぁぁッ!!』

 

 弾けたように殴り飛ばされたグロテス星人。ピクピク痙攣した後に、完全に意識を失ってパタリと力尽きた。

 

「この程度の連携を崩せないようじゃ、自称凡人の足元にも及ばねぇな」

 

 グロテス星人を仕留めたノーヴェがはっきりと言い放った。ウェンディはバインドでグロテス星人を縛り上げてから、他の場所で戦っているメンバーや本部へ報告する。

 

「グロテス星人、確保っス!」

 

 

 

「ブルゥゥゥッ! ブルゥゥゥッ!」

 

 イノーメスカノンを構えるディエチは、メシエ星雲人との砲撃戦を繰り広げている。複数のエネルギー弾を生成して発射するも、メシエ星雲人の額の宝石のような器官から放たれる電磁波光線にほとんどが相殺され、命中するものもさしたる効果がなかった。

 

「うっ……!」

 

 逆に、ディエチが電磁波光線の連射に追い詰められる。防御魔法で直撃を防いではいるものの、光線の威力は高く、今にもバリアが破られそうだ。

 

『フハハハハハハ! お前たちの貧弱な攻撃など、蚊ほどにも効かんッ!』

 

 ディエチの射撃を生身で易々と受け止めるメシエ星雲人が勝ち誇るが、ここであることに気がつく。

 

『ん? 一人いないぞ! どこに行った!?』

 

 ディエチと一緒にいたはずのセインの姿が、いつの間にかなくなっているのだ。しかし周りに隠れられそうなところはどこにもない。セインはどこへ行ったのか?

 

「ここだよ!」

 

 メシエ星雲人の足元の舗装から、水面から顔を出すようにセインが飛び出した! 彼女の固有能力「ディープダイバー」の効果だ。

 

『何ぃッ!? ぐげぇッ!』

 

 完全に虚を突かれたメシエ星雲人は顎を蹴り上げられ、大きくのけ反る。一方飛び出した勢いのまま宙高く舞うセインは、ディエチへと叫ぶ。

 

「ディエチ! いま!」

「了解! ヘヴィバレル!」

 

 ディエチのカノンに、先ほどまでとは比較にならない量のエネルギーが充填され、エネルギー砲撃が放たれた! 砲撃はメシエ星雲人を呑み込む!

 

『うごあぁぁぁぁぁぁぁッ!!』

 

 この攻撃を耐えることは出来ず、メシエ星雲人は仰向けに倒れて沈黙した。

 

「バッカだねぇ。ディエチがあんたを確実に一撃で倒すためにエネルギーを節約しながら戦ってたのにも気づかないなんて」

 

 倒れたメシエ星雲人を見下ろしながら、呆れて肩をすくめるセイン。ディエチはメシエ星雲人をバインドで捕縛し、仲間たちへ報告する。

 

「メシエ星雲人、確保しました。これであと一人だけですね」

 

 

 

 そしてスバル、ワタル、ハヤトの三名が、ザラブ星人を追い詰める。

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

『ぬぐあぁぁッ!』

 

 ワタルとハヤトの射撃に援護されながら、スバルの拳がザラブ星人にクリーンヒットした。吹っ飛ばされるも、ザラブ星人はどうにか持ちこたえる。

 

「もう観念しろ! お前の仲間は二人とも捕らえたぞ!」

「悪あがきはやめて、投降しやがれ!」

 

 ハヤトとワタルが勧告したが、ザラブ星人がそれに応じる気配はなかった。

 

『なめるなぁッ! あんな奴らがいなくとも、私一人で貴様ら全員、踏み潰してやるッ!』

 

 吠えたザラブ星人が、その場で一気に巨大化! 40m以上の巨人へと変貌した。

 

「うわっ! でっかくなりやがって!」

 

 ワタルたちが光弾を浴びせるが、巨大化したことで能力も上昇したザラブ星人には効かなくなっていた。だがこちらも相応の用意というものがある。

 ハヤトがスバルへ呼びかける。

 

「スバル、俺たちが気を引きつけてる間にマスケッティを呼べ!」

「ポルトスでぶっ飛ばしてやれ!」

「任せて! ジオマスケッティ、発進要請!」

 

 スバルが本部へジオマスケッティの出撃を求める。迅速にそれが承認され、マスケッティが格納庫から発進していく。

 

[ジオマスケッティ、オンザウェイ]

 

 飛び立ったマスケッティはジオポルトスと合体。ランドマスケッティとなってスバルの元へと駆けつけた。

 

「ファントンレールキャノン、発射!」

 

 スバルの操縦により、ランドマスケッティがザラブ星人へとレールキャノンの砲撃を食らわせる。さすがにマスケッティの砲撃を防ぐことは出来ない。

 

『くそぉッ!』

 

 しかし黙っている敵でもない。ザラブ星人はランドマスケッティへエネルギーバルカンを降り注がせる。後退して逃れたマスケッティからポルトスが分離し、ジオマスケッティは上昇していく。

 

「ハヤトさん、次は空から狙って!」

「おう!」

 

 スバルが砲撃している間にジオアトスへ乗り込んだハヤトが、マスケッティとジョイントさせる。

 

[スカイマスケッティ、コンプリート]

「ファントン光子砲、発射!」

 

 上空から光子砲の連射がザラブ星人に命中し、ザラブ星人はどんどんとダメージを負っていく。

 

『ええいッ! 貴様らぁ!』

 

 怒るザラブ星人がスカイマスケッティを追いかけるが、その先の工場の屋上へとワタルが先回りしていた。

 

「ワタル、後は任せる」

「よっしゃ!」

 

 ワタルはジオブラスターに、ウルトライザー・カートリッジを装填した。

 

[ウルトラマンの力を、チャージします]

「トラァーイっ!!」

 

 迫り来るザラブ星人へ、青白い光線の砲撃をぶち込んだ!

 

『ぐわぁぁぁぁぁぁ―――――――――――ッ!!?』

 

 その一撃が決まり手となり、ザラブ星人の巨体が崩壊。元の体格に戻り、ばたりと横たわった。

 

 

 

 異星人犯罪者三名は全員、失神した上にオットーのレイストームで完全に拘束された。

 

「やったな!」

「おうっ!」

「いぇーい! 一網打尽っス!」

 

 ぐっとガッツポーズを取り合うハヤトやワタル、ウェンディたち。と、そこに、

 

「おいおい、まだミッションは完了していないぞ」

 

 グルマンにシャーリー、マリエルのラボチームがジオアラミスで現場にやってきた。

 

「グルマン博士、どうしてここに?」

 

 スバルが聞くと、グルマンは次の通り答える。

 

「先ほど、エックスを連れ去ったベムスターを追撃する手段を完成させた」

「本当ですか!?」

「もちろんだとも。このアラミスを改良して、宇宙戦闘能力を持つ第三の力、スペースマスケッティへとアップデートしたのだ。宇宙へ行って、エックスを救えるぞ!」

 

 エックスを救えると聞き、特捜班一同は喜色満面となった。と、通信越しにクロノが指示を出す。

 

『ワタル、お前が操縦するんだ』

「えっ、俺!?」

『宇宙適性はお前とチンクが最も高かった。チンクが倒れている今、スペースマスケッティの初陣を任せられるのはお前以外にいない』

 

 と告げるクロノだが、さすがのワタルもぶっつけ本番のスペースマスケッティ飛行に緊張で固まっていた。それを見て、ハヤトがため息を吐く。

 

「ビビってんなら俺が代わってやるよ」

「はぁ!? ビビってねぇし!」

 

 強がるワタルとハヤトの背中を、ノーヴェが押し出す。

 

「マスケッティは二人乗りなんだから、二人で行けばいいだろ? ほら、行った行った!」

「エックスのこと、ちゃんと救出してくるっスよ!」

「わ、わかったよ!」

 

 発破をかけられたワタルがハヤトとともにアラミスに乗り込んでいく様子を、スバルたちは微笑みながら見守っていた。

 そしてジオアラミスが上昇していき、宇宙飛行形態に変形するジオマスケッティと合体する。

 

「ジオアラミス、ジョイントゥ、ジオマスケッティ!」

 

 アラミスの屋根が開いて大型のロケットノズルが出現。そしてアラミスがマスケッティと結合し、はるか上空の彼方、宇宙空間を飛行するのに問題ない出力を有したスペースマスケッティとなる。

 

[スペースマスケッティ、コンプリート]

「よし、行くぞ!」

 

 うなずき合ったハヤトとワタルを乗せたスペースマスケッティが、ミッドチルダ惑星の大気圏を脱していった。

 

 

 

 大気圏を突破し、現在ベムスターのいる月面へと直進していくスペースマスケッティの映像は、監視衛星を介して本部やスバルたちの手元に届けられている。

 

「けど、いざ怪獣の元までたどり着いてから、どうやってエックスを救出するの? お腹に腕を突っ込む訳にもいかないでしょ」

 

 セインがもっともな疑問を口にした。スバルが一言ぼやく。

 

「ダイチは、体内のエネルギーに引火させられればって言ってたけど……」

 

 すると、彼女たちの疑問にシャーリーが答えた。

 

「ふふふ、そのことは私たちも聞いてるわ。大丈夫、もうその方法も確立してあるから!」

「アラミスのアップデートと並行して、その手段を開発しておいたの」

「おお! さすがの仕事の速さっスね!」

 

 興奮するウェンディ。そうしていると、スペースマスケッティはもう月面に到着し、横たわっているベムスターの姿を捉えた。

 

『ギアァッ! ギギギィッ!』

 

 ベムスターの方もマスケッティの接近を察知し、起き上がった。マスケッティはベムスターにレーザー攻撃を浴びせかける!

 

「気をつけろ! お前らまで吸い込まれたら、もう助けられる奴はいないんだからな!」

『わかってるよ!』

 

 警告するノーヴェに、ワタルがそう答えた。

 

「よし、マスケッティにデバイステレスドンを転送だ!」

「了解です、博士!」

 

 グルマンの指示で、シャーリーがアラミスへデバイス怪獣のカードを転送した。

 

「それをアラミスに読み込ませれば、レーザー砲から溶岩熱線を発射できるようになるわ! 熱線がベムスターの体内のエネルギーと反応して、爆発を起こすという訳!」

「その勢いでエックスを外に出すっていう作戦ね!」

 

 マリエルとシャーリーが説明した。

 

『了解しました! やってやるぜ……!』

 

 早速ワタルがカードをジオデバイザーにセットする。

 

[デバイステレスドン、スタンバイ]

 

 マスケッティは果敢にもベムスターの真正面から挑んでいく。ベムスターは頭頂部の角から光線を撃ってマスケッティを撃ち落とそうとしてくる。

 

「だ、大丈夫かな? あんなストレートに行って……」

 

 はらはらと見守るセインに、スバルが力強く告げた。

 

「大丈夫だよ! あの二人は……やる時はやるんだから!」

 

 光線を抜けたスペースマスケッティが十分に接近し、ワタルが叫ぶ。

 

『溶岩熱線、発射!!』

 

 レーザー砲から放たれた熱線が、綺麗にベムスターの腹部に吸い込まれていった。そして!

 

『イヤァァッ!』

 

 爆発とともに、エックスが腹から飛び出したのだ!

 

「成功よ!」

「やったぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 エックスの無事な姿を確認し、一同はわっと沸き立った。

 

 

 

 ベムスターの体内からの脱出を果たしたエックスは、すぐにベムスターへのリベンジを開始する!

 

「ギアァッ! ギギギィッ!」

 

 ベムスターの翼のパンチをかわして相手の背後へ抜けると、月面の岩を蹴って反転。跳躍してからの拳打を叩き込む。

 

「デヤァァッ!」

「ギアァッ!」

 

 勢いを乗せた拳にベムスターもひるんだが、すぐに持ち直してエックスと互角の格闘戦を行う。が、エックスはわずかな隙を突いてベムスターの首をふとももで挟み込んだ。

 

「トワァァァーッ!」

「ギアァッ! ギイッ!」

 

 そこからフランケンシュタイナー! ベムスターは土砂を巻き上げながら仰向けに倒れ込む。

 

「シュワッ!」

 

 エックスはベムスターの真上に飛び上がり、全身に赤いエネルギーを纏わせた。

 

『アタッカー……エーックス!』

 

 頭上からの火炎攻撃がベムスターに決まり、X字の爆撃がベムスターを襲った。さすがのベムスターも、この大技で大きくひるむ。

 

『よし、行くぞ!』

『「ああ!」』

 

 着陸したエックスは、ベムスターが体勢を立て直さない内に必殺の一撃をお見舞いする!

 

「『ザナディウム光線!!」』

 

 月面に青い輝きが奔り、X字の特大光線が真空を切り裂く!

 

「ギアァッ!!」

 

 ザナディウム光線の直撃を受けたベムスターは、爆散後にスパークドールズへと圧縮されていった。

 戦いがエックスの逆転勝利で終わると、ワタルが興奮の声を上げた。

 

「すっげぇー! 俺たちエックス助けちゃったよー!」

 

 しかし、隣のハヤトは呆れ声を発した。

 

「無茶しやがって……。いくらなんでも接近しすぎだろ! もう少しで爆発に巻き込まれるところだった」

「チッチッチッ。計算してたさぁ」

「ったく、ほんと調子いいな……」

 

 軽く肩をすくめたハヤトだったが、パシッ! とワタルと手の甲を叩き合って、勝利の喜びを分かち合った。

 

「おーい!」

 

 二人は、エックスともガッツポーズを示し合う。ダイチは二人へ呼びかけた。

 

『「ありがとう、ワタルさん、ハヤトさん」』

『聞こえていないんだろうな』

『「でも伝わるさ!」』

 

 

 

 状況が終了してから、スバルたち特捜班はダイチの消えた地点へと戻ってきた。

 

「……ダイくん……守れなくてごめんね。でも、ダイくんの分もあたしたちは頑張っていくから……。ゴモラとも一緒に……」

 

 スバルはゴモラを手にしながら独白したが……。

 

「あー、その……俺、生きてるんだ……」

 

 瓦礫の陰からひょっこりとダイチが顔を出したので、スバルのみならず全員があっと言葉を失った。

 

「えっと……吹き飛ばされてさ、気を失っていたんだ。……死んだと思わせたみたいで、ごめん……」

 

 苦しい言い訳であったが、ダイチが生きていた喜びが勝ったスバルたちは気にしなかったようだ。

 

「ダイくんっ!」

「うわっ!」

 

 スバルはガバッとダイチに抱きつく。

 

「生きててよかった……! もう、あたしを置いてどっか行っちゃったりなんかしたらダメなんだからね! 昔から危なっかしいんだから……」

「う、うん。心配かけてごめんね」

「ダイチー! この野郎~!」

 

 ワタルたちも駆け寄り、ダイチをポカポカと軽く叩く。

 

「全く、こちとら大変だったのに、ずっと寝てただって? いい身分だぜ」

「でも生きててホントよかったっスね~! ダイチも結構な不死身ぶりっスね!」

「ノーヴェもウェンディもごめん。それと久しぶり、オットー、セイン、ディード。俺の代わりに戦ってくれたみたいでありがとう」

「いえ、お気になさらず。ダイチさんが無事で何よりです」

「あたしは何か埋め合わせしてほしいかな~?」

「セイン姉様」

 

 ダイチたちが話していると、ディエチが本部から受けた報告を皆に伝える。

 

「チンク姉が目を覚ましたって。もう心配はいらないみたい」

「本当か!? じゃあこれからみんなで見舞いに行こうぜ!」

「ワタルとハヤトはチンク姉にちゃんと謝れよ」

「わかってるってぇ、ノーヴェ。俺だってそこらはちゃんと大人だからさぁ~」

「ったく、本当にこいつ、調子いいな……」

 

 全部の心配がなくなった一行は、和気藹々と笑い合いながら本部へと帰投していった。

 

 

 

 ――深夜のミッドチルダ市街の路地裏。街灯の明かりを避けながらコソコソと動く三人分の影があった。

 

「……ふぅ。どうやら誰にも見つからずに脱出することが出来たようだな。危ないところであった……」

「はぁ~……マジでもう終わりだと焦りましたよぉ~……」

 

 キョロキョロと辺りを見回して安全を確認してから、先頭の小太りの中年の男がつぶやいた。その後ろに続く、髪を青く染めた若い男がため息を吐きながらぼやく。それから、金髪のオネェ風の男が中年に告げた。

 

「でもリーダー、ガラオンも円盤も工場に置いてきちゃいましたよ。今頃は押収されてて、取り返すのは無理でしょうねぇ……」

 

 中年は歯ぎしりして小刻みに震える。

 

「うぬぬ……! 小さな町の玩具工場を演じてミッドチルダ人たちの目を欺きながら、全長400mの超巨大ロボで一気に征圧する……完璧な作戦だったはずなのに、侵入した初日に正体を暴かれてしまうとは何たることだ! あるまじき失態だぞ!」

「リーダーがくしゃみの拍子に素顔を晒したからじゃないですか」

 

 オネェに指摘され、中年はごまかすように咳払いした。

 

「……過ぎたことを掘り返しても仕方がない。これからどうするかを考えよう。とりあえずは、ほとぼりが冷めるまでどこかに身を隠すべきだな」

 

 中年のひと言に、青髪が意見する。

 

「それだったら、人のいないところに隠れませんか? 周りに人がいっぱいいたら、また何かの拍子で正体を見られる危険があります」

「なるほど、もっともだな……」

 

 更にオネェも述べた。

 

「せっかくならもっと暖かいところに行きましょうよ。ミッドチルダの気候はアタシたちの肌にはちょっと寒すぎるわぁ」

「うーむ、人がいなくて暖かい土地か。どこかいいところはないだろうか?」

 

 中年は次元世界の観光案内を出して、ペラペラとページをめくる。

 

「よし、ではここにしよう!」

 

 そして一つのページで止めて、人差し指で風景の写真を指し示した。

 

「いざカルナージ!」

 

 

 

『ダイチの怪獣ラボ!』

 

ダイチ「今回の怪獣はベムスターだ!」

ダイチ「ベムスターは『帰ってきたウルトラマン』第十八話「ウルトラセブン参上!」から登場した宇宙大怪獣! 一番の武器は何でも吸収するお腹の口で、何と宇宙ステーションまで丸呑みしてしまったぞ!」

エックス『この能力にスペシウム光線も効かず、ウルトラマンは一度退却しなければならないほど苦しめられたんだ』

ダイチ「セブンから授けられたウルトラブレスレットで倒すことが出来たんだ。ブレスレットはこのあとも、何度もウルトラマンを助けたんだよ」

エックス『通用しなかったのはたった一度きりと、本当の意味での万能武器だったな!』

ダイチ「『ウルトラマンX』でもベムスターはエックスを苦しませた。空間ごと吸い込むことで、エックスまで呑み込んでしまったんだから驚きだ!」

エックス『この技はゲームが初出だ。いわゆる逆輸入という奴かな』

ダイチ&エックス「『次回も見てくれよな!」』

 




 無人世界カルナージへオフトレ旅行に行くスゥちゃんたち。けど、えっ、俺とチンクも行くんですか? 逃げ込んだミジー星人を捕まえに? 無人世界での思わぬ大バトルだ! 次回、『いざカルナージ!』。
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