オトモアイルーのピート視点の一人称になっていますが、主人公のイメージが壊れるかもしれないのでご注意ください。
あと、いつもより長いです。
最近旦那さんの様子が、おかしいのニャ。
ちょっと前までは少しでも暇があれば、ボク達仲間のアイルーやプーギーを撫でたり、抱っこしたり……正直ちょっと鬱陶しいくらいだったのニャ、それが最近じゃ少しでも時間があったら装備の手入れか、トレーニングをしているのニャ。
狩りに行っても、目の前のモンスターじゃなくて、もっと別のモノを見ているみたいな感じがするニャ。大物を倒しても全然嬉しそうじゃなくて、「まだ、届かない」とか「このままじゃダメだ」とか、そんなこと呟いていることがあるニャ。
何より、このところ毎晩酷くうなされているニャ、旦那さんは気付かれてないと思っているみたいニャけど、みんな心配しているのニャ。
……そういえば、前にもこんな風に旦那さんがうなされてたことがあったニャ、あれは確か、ボクとブルースが旦那さんのところに来てすぐ、ボクが初めてオトモとして旦那さんと一緒に行ったクエストでの事ニャ。
ポポノタンを三個集めるだけの簡単なクエストだったんニャけど、そこで予想外の事態が起こったのニャ、危険な飛竜、ティガレックスが現れたのニャ。クエストの間は我慢してたみたいニャけど、家に帰った途端ボクに抱きついて震え出したのニャ。その後、暫くの間、夜はボクが抱き枕にされてたんニャけど、その時も随分とうなされていたのニャ。
あの時は、単に旦那さんが怖がりなだけニャと思ってたんニャけど、今思うと、あの怯え方は普通じゃなかったのニャ。
今回旦那さんがおかしくなったのも、先代のハンターにティガレックスの話を聞いてからニャし、やっぱり何か関係あるのかニャ?
まあ、考えても分かんないなら、直接聞けばいいニャ。
旦那さんは、村長の所から帰って来てからいつもの日記を書いてたみたいニャけど、流石にもう書き終わってる頃なのニャ。
「旦那さん、ちょっと聞きたいことがあるんニャけど、いいかニャ?」
「いいぞ。私からも話があるしな。それで、聞きたいこととは?」
「最近の旦那さんの様子がおかしいのは、ティガレックスの話を聞いたことと、何か関係あるのかニャ?」
ボクがそう聞くと、旦那さんは苦虫を噛み潰した時みたいな顔になったのニャ。
「……気付いていたのか。ああ、我ながら情けない話だが、怖いんだ。ティガレックスが。……どうしようもないくらいに、な」
そう答える旦那さんは、少しだけ震えていたのニャ。
「……旦那さんの様子がおかしくなった理由は、分かったニャ。それを情けないとも、少なくともボクは思わないニャ。」
「そうか。……ありがとう」
「でも、分からないのニャ。なんで旦那さんはそんなにティガレックスが怖いのニャ? 確かに、強そうな奴ニャったけど、今の旦那さんがそんなに怖がるような相手とは思えないニャ」
昔の旦那さんならともかく、今の旦那さんはアイツよりでっかいモンスターも、散々嫌がっていたフルフルだって、何だかんだ言いながらも狩って来たのニャ。
この間ココット村に行ってきた時なんて、村のハンターだった男を引退に追い込んだ白銀の一角竜相手に、一歩も引かずに渡り合ったニャ。
……そんな旦那さんが、ここまで怖がるっていうのはちょっと普通じゃないニャ。
「何で、か。トラウマ……なのかな、やっぱり」
旦那さんが力無く答えるニャ。
「トラウマ、かニャ? ボクやブルースが旦那さんの所に来る前に何かあったのかニャ?」
「ああ。私がこの村に来るときに、ちょっと……な」
そう話す旦那さんの顔は青ざめていて、それだけでも相当酷い目に遭ったことが判るニャ。ホントはこういう事はあんまり聞かない方がいいのかもしれないニャ、だけど……
「何があったのか、ボクに話して欲しいニャ」
「……面白い話じゃないぞ?」
「面白い話を期待してる訳じゃ無いニャ。……どうしても話したく無いなら無理にとは言わないニャ。だけど、ボクは旦那さんのオトモニャ。旦那さんが辛いなら支えるのは、きっと1番一緒にいるボクの役目なのニャ。だから旦那さんには一人で抱え込まないで欲しいニャ」
「ピート……分かった、話すよ。……とは言っても、雪山でティガレックスに襲われたって、ただそれだけの話なのだがな」
そう自嘲気味に話す旦那さんの顔は、言葉とは裏腹にすごく辛そうで見ていられないニャ。だから――
「辛いなら、泣けばいいニャ」
こんな言葉が出たのニャ。
「え?」
「ボクは現場にいた訳じゃないから、想像しか出来ないけど、きっと凄く怖かった筈なのニャ。辛かった筈なのニャ。……そうゆうのって溜め込んじゃうともっと辛くなるのニャ。だから、そうゆうの全部吐き出す為に思いっきり泣いちゃうのニャ。泣いて、叫んで、喚いて、そうしたらきっと少しはスッキリするのニャ……多分」
「多分、なんだ?」
「多分、ニャ。ボクは旦那さんじゃないから、断言は出来ないのニャ」
「随分いいかげんなのだな」
そう言いながらも旦那さんの口元は笑っていたのニャ。
「そんなもんだニャ。……泣くんだったら、ボクの胸で良ければいくらでも貸すニャよ?」
「ふふ。残念だけど、貸してもらう程ピートの胸は広く無いようだけど?」
「ニャ! ヒドイ言いぐさニャ」
まったく、せっかくボクが心配してあげてるのに旦那さんときたら――「だから」
「ニャ?」
「しばらく、このままでいさせてくれ」
――抱きしめられた。そう自覚するのにちょっと時間がかかったニャ。
「こういうのって、普通やる方が逆なんじゃないかニャ?」
「仕方がないだろう? 抱きしめて貰うには、君の体はいささか小さすぎる」
「まあ、いいニャ。……それで、これだけでいいのかニャ?」
泣いても良いって、そう言外に伝えながら、ボクは少しでも旦那さんの体を抱きしめる為に腕を伸ばすニャ。
「……かった」
「ニャ?」
「……怖かった」
「そうかニャ」
「凄く、怖かったんだ。あんな大きな飛竜なんて初めてで、凄く大きな声で吼えられて、怖くて、怖くて、全然動けなかったんだ」
「そうかニャ」
旦那さんは、最初の一言を呟くように洩らすと、堰を切ったように涙を流しながら、今まで溜め込んできた思いを、言葉にして吐き出し始めたのニャ。
今ボクに出来るのは、背中に落ちる涙を感じながら相槌を打つことくらいニャ。
「周りにはあいつに食い散らかされたポポの残骸が広がってて、私もこうなるのかと思って、もっと怖くなって、逃げなくちゃって思ったんだけど、やっぱり体は全然動かなくて、死んじゃうと思った」
「……そうかニャ」
こんな旦那さんは初めてニャ。そりゃ偶に情けない時もあるけど、それでもいっつも頑張って、みんなの期待に応えてたのニャ。……無理、させちゃってたのかニャ?
「あいつが私の方に迫ってきた時も怖くて、何とか持っていた盾を構えようとしたんだけど、盾ごと吹き飛ばされて、痛くて、怖くて、本当に死んだと思ったんだ。……今でも、時々思うことがあるんだ。私はあの時に本当は死んじゃっていて、今の状況が死んだ後に見てる夢なんじゃないかって」
「……大丈夫ニャ。旦那さんは生きてるニャ、今いるここは現実ニャ」
「うん、頭では分かっているんだ。そんな筈無いって事も、そんな事考えてるのは君や他の皆に対しても失礼だってことも。……それでも不安になる気持ちを止められないんだ」
「だったら、不安になる時はボクが一緒にいて教えてあげるニャ。旦那さんはちゃんと生きてるって、ここは夢なんかじゃないって」
「……そうか、ならずっと私の傍に居てくれるか?」
抱きついていた手を放して、ボクの顔を不安そうに見ながら、そんな事を聞いてくる旦那さんは、なんだか小さな子供みたいに見えたのニャ。
「そんなの当たり前ニャ! 旦那さん普段しっかりしてるのに、偶にすごく抜けてるのニャ。そんな危なっかしいハンターほっとけないニャ!」
「……ありがとう」
そう言って笑う旦那さんは、すごくいい顔してたのニャ。
「危なっかしいって言われて笑うなんて、やっぱり旦那さんは変わってるニャ」
「そうかな? そんな危なっかしいハンターとずっと一緒に居てくれるなんて言う、君ほどじゃ無いと思うがな」
「ニャ、だったらボク等は似た者同士ニャ! きっと相性が良いニャ!」
「そう、だな。改めて、これからもよろしく頼むよ」
そう言ってはにかむ旦那さんは、少し吹っ切れたような感じがしたニャ。
「こちらこそニャ! ……そういえば旦那さんの話って、何だったのニャ?」
「あー……そう、だったな。私の話は、だな」
ボクの、と言うよりは旦那さんのトラウマの話で忘れそうになってたけど、旦那さんからも話があるって言ってたのニャ。
まあ、旦那さんも忘れてたみたいニャし、大した事じゃないと思うけど、何か妙に歯切れが悪いニャ。
「……ティガレックスの狩猟依頼を受けてきた」
……ニャんですと?
「ごめんニャ。旦那さんが何言ってるのか、ちょっとよく分かんないニャ」
「あー、だから、そのさっきまで話していた私のトラウマの相手が、この付近で暴れてるみたいでな、それの狩猟を村長から直々に依頼されたんだ」
「……分かったニャ。旦那さんは、馬鹿だったんニャね」
「そ、そんなしみじみ言わなくても、良いんじゃないか?」
「別に、トラウマと向き合って乗り越えようとしてたって言うなら、文句は無いニャ。でも、どうせ旦那さんの事だから「刺し違えてでも奴を倒す(キリッ)」みたいな感じで悲壮な覚悟(笑)を決めてたんじゃないかニャ?」
そこまで言うと、旦那さんは顔を真っ赤にさせて口をパクパクさせるだけで何も言えなくなってるみたいニャ……図星かニャ。
「沈黙は肯定と見なすニャよ?」
「あ、えーと、その……あ! わ、私の日記を読んだのか!」
……何か言わないとって、テンパってたのは分かるニャ。だけどそれは――
「日記にまで書いてたのかニャ」
「えっ? あっ! ひ、卑怯だぞ! 誘導尋問なんて!」
これがボクの旦那さんかと思うと、なんだかボクまで情けなくなって来たニャ。
「旦那さんが勝手に自爆しただけニャ。大体初めから刺し違えようなんて考えてたら、それすら出来ずにやられちゃうのが落ちニャ。生き残る意志の無い相手にやられるほど、ティガレックスが安い敵とは思えないニャ」
「そう、だな。私が間違っていた。……だからこれ以上このネタは引っ張らないでくれ」
「まったく、しょうがないニャ。狩りは明日ニャね? 準備は出来てるのかニャ?」
「ああ。この日に備えて準備だけは前からしていたんだ」
そう言って見せられたのは、閃光玉に落とし穴シビレ罠、大樽爆弾Gと回復薬G、それらの調合素材に、二種類の護符etc……持って行ける限界まで用意された道具だったニャ。
「旦那さんって普段は、採取用の道具以外は、二種類の護符と回復薬にペイントボール、後は怪力の種くらいしか持って行かずに、支給品で間に合わせてるニャよね」
「それが、どうかしたのか?」
「……まあ、有って困るわけでもニャいし、別にいいニャ」
さっきはああ言ったけど、これだけの道具が有れば普通に倒せてた気がしないでもないニャ。
「? まあいいか。明日は早いし、そろそろ寝よう」
「そうニャね。お休みニャ、旦那さん」
そう言って部屋を出ようとしたんニャけど、旦那さんに抱えられてベッドに入れられたニャ。
「何で、ボクは旦那さんのベッドに入れられてるのニャ?」
「一緒に居てくれるのだろう?」
「……ベッドの中までかニャ?」
「当然だろう? ……お休み、ピート」
「ま、こういうのも悪くないニャ」
やたら寝つきのいい旦那さんの寝息を聞きながら、ボクも眠りについたのニャ。
翌朝、ボクと旦那さんはティガレックスを狩猟するために雪山に来たニャ。
フルフェイスのヘルメットのせいで顔は良く見えないけど旦那さんが緊張してるのは分かるニャ。
「旦那さんなら、落ち着いてやれば大丈夫ニャ。頼りないかもしれないけど僕だっているのニャ」
「私は、大丈夫だ。君こそ無理をするなよ?」
「大丈夫ニャ。危なくなれば潜るから平気ニャ!」
「……いや、うん。いいんだけどさ、君、昨日あれだけカッコいい事言っておいて、それ?」
「ニャ。オトモに期待しすぎニャ」
「まあ、それも君らしいか」
「そういう事ニャ。……多分あいつは山頂にいるニャ。気合入れて行くニャ!」
「ああ、行こう!」
……上手く緊張を解せたみたいニャ。多分ボクの攻撃じゃ有効打はあまり与えられないのニャ。だからボクに出来るのはこうやって、旦那さんの状態を良くすることと、遊撃手として、雑魚を旦那さんに近づかせない事ニャ。
……山頂に奴はいたニャ。夢中になってポポを喰っていたのニャ。
「ふっ!」
旦那さんが背中の太刀に手をかけて、奴の方へ駆け出したニャ。
「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
こっちに気付いた奴が、咆哮を上げるニャ。
まずは小さい方からという事なのか、奴は自分の方へ向かってくる旦那さんを無視してボクの方に向かって突進してきたニャ。
「ピート!」
旦那さんが悲鳴に近い声を上げるけど、奴の体が大きい分ボクがすり抜けられる隙間は多くて、とりあえずは避けることが出来たニャ。
「避けたから平気ニャ! それに多少食らっても大丈夫ニャ。旦那さんは自分の事を心配するニャ!」
実際、ボク等アイルーの回復力なら、1撃で死んじゃうような攻撃か、それこそ食べられでもしない限り大丈夫ニャ。
「鬼さん、こちらニャ! かかって来るニャ!」
言葉が通じるとは思わないけど挑発で攻撃が雑になればきっと隙も増えるニャ。
「グルルルルゥゥゥ」
ドゴッ
「ニャァァァ!」
遠距離攻撃は無いと高をくくってたら、奴が飛ばしてきた雪の塊に吹っ飛ばされたニャ。
「ピート! 無茶をするな!」
「わ、分かったニャ!」
とは言ってもこいつ――
「グルアアアア」
何か執拗にボクだけ狙ってないかニャ!?
「ピート! しばらく休んでいろ!」
何度目かの突進を躱しきれずに食らってしまい、旦那さんにそう言われたのニャ。
「ごめんニャ! すぐ回復して戻るからそれまで頑張るニャ!」
正直虚勢を張ることも出来ないくらいだったので素直に地面に潜るニャ。
「ニャ! 旦那さん、大丈夫ニャ?」
急いで戻ると、見た感じ無傷とはいかないまでもたいしたダメージは無いみたいニャし、かなり善戦して――
「ああ、私は大丈――って後ろ!」
「ニャ?」
「グルアアア」
「ニャァァァァ!?」
「ピート!?」
戻ってすぐに死角から突進を食らってまた潜る羽目になったのニャ。
……そんな感じで何回も出てきては潜っていたら、いつの間にかティガレックスの尻尾が切れてたのニャ。
結局、ボクが攻撃を当てたのは数えるほどしかなかったニャ。旦那さんが奴を倒したときだって、ボクは地面の下だったニャ。
旦那さんは村長に報告があるから、ボクは先に家に戻ったニャ。
ブルース達は、ボクと旦那さんの無事を喜んでくれたニャけど――
「……ニャァ」
散々偉そうなこと言った割に、全然役に立てなかったとか流石にへこむニャ。
「どうしたんだ? ピート。溜息なんか吐いて」
……いつの間にか、旦那さんが帰ってきてたのにも、気付かなかったみたいニャ。
「村長の話は、もういいのかニャ?」
「ああ。それで君は、どうして溜息なんて?」
「……旦那さんには偉そうなこと言ってたのに、結果がアレじゃ溜息の一つも吐きたくなるニャ。……旦那さんだけでも倒せたんじゃないかニャ?」
「そうか? 私は君のおかげだと思っているのだがな。……まあ、戦力としては微妙だったのは確かだがな」
「旦那さんは、フォローがしたいのニャ? それとも止めを刺したいのニャ?」
「ふふ。君には本当に感謝しているんだ。君が一緒にいてくれたから、私は奴に立ち向かうことが出来たんだ」
旦那さんは本気でそう思ってるみたいニャけど、
「それでもボクは、自分が情けないニャ。旦那さんが言ってるのは精神的な話ニャ。ボクは、実力で旦那さんの役に立ちたいのニャ!」
「そうか。……なら、これから強くなればいい。もちろん私と一緒にな」
落ち込む僕に、旦那さんはすごくいい笑顔でそう言ってくれたのニャ。
「そうニャね。ボクはもっともっと強くなるニャ。これからもよろしくニャ、旦那さん!」
これから先、ティガレックスより強いモンスターとも戦う事もあるニャ。だけど、旦那さんならきっと大丈夫ニャ。ボクはそれを少しでも助けられるように頑張るのニャ!
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
ちなみに戦闘シーンは実プレイ準拠です。
そして、多分もう番外編は書きません。疲れました。