記憶の海 〜Indelible memory〜   作:Ar kaeru Na

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大変長らくお待たせしました!第8話です。

一週間近く間が空いてしまって申し訳ありませんでした。国家資格試験やら期末考査やらで小説を書くどころの話じゃ無くなってしまったのが現実的です。
今回から投稿ペースも戻す予定です。それと、遅れた分はいつか取り戻すので御安心を。
今回は少々ボリュームアップでお届けします(内容が良いとは言ってない(^^;;
拙い作品ですが、どうぞよろしく!

あ、あと私事ではありますが、艦これ16冬イベは見事、全甲クリアし、国家資格である、乙種第四類危険物取扱者もなんとか合格し、成績も上がりました事を報告致します。

それでは!


memory8「青葉の特訓」

 

 

memory8「青葉の特訓」

 

 

 

 

 

「おーい、吹雪ぃ?おーい?」

 

ルナは本に囲まれ寝ている吹雪の肩を揺する。

 

吹雪に案内され、たどり着いた『資料室』でルナと吹雪は文献やらなんやらを漁っていた。

眠る事も忘れ、情報集めに没頭した結果、日付が変わり、夜が明け、朝日が差し込んでいたのであった。

 

「うーん、ムニャムニャ……」

 

「駄目だ、完全に寝入っておる…」

 

確かに無理もない。夜通しで本を読んでいたのだ。そりゃ眠くなる。

取り敢えず、肩を揺すっても起きなさそうなので、頬を突いてみる。

 

「ツンツン」

 

「zzz…」

 

もう少し強く突いてみる。

 

「ツンツン」

 

「zzz…」

 

更に強く突いてみる。

 

「ドスドス」

 

「zzz…」

 

「起きろッ!吹雪ッ!」

 

手元にあった本でスコーンと頭を引っ叩く。(勿論、本気では無いが)

 

「うーん……あ、少尉……?ハッ!スミマセン!私ってば、寝てしまって……」

 

「本を読んでて寝てしまうとは、艦娘とは言え、まだまだだな」

 

「…………そう言う少尉こそ、頬っぺたに本の跡が付いてますけど?」

 

「気のせいだ。やはり一晩中調べたかいもあって、かなりの情報を得ることが出来たな」

 

「そうですね。ですが、調べていたのはどれもこれも過去の軍艦とかの物ですよ?

今の私達は艦娘なんですから、過去の軍艦とは全く違うんですよ?それと、やっぱり寝てましたよね?」

 

「確かに、軍艦と艦娘が別物だという事は分かってる。それも考えてるから大丈夫だ。あと、この跡は寝てて付いたんじゃない。なんかこう、自然に付いたんだ」

 

「考えがあるならいいですけど……

それで、今日はどうするんですか?それで、絶対寝てましたよね」

 

「今日から、奄美の艦娘達一人一人に特別訓練を設ける。勿論、自分が専属に就く。そうすれば細かい所まで指示が出来るからね。それに、自分は仮眠を取ったまでだ」

 

「やっぱり寝てたんじゃないですか」

 

「吹雪みたいに、舟漕ぎながら頭を机にぶつけつつ寝落ちしてないからセーフ」

 

「本を枕代わりに寝るのもどうかと思いますけどね」

 

「今日の夜はちゃんと寝る事だな。さて、記念すべき初の特別訓練は『青葉』からだ」

 

「青葉さんからですか、でも何故?」

 

「青葉は『操艦に難あり』とあってな、ちょうど良い資料があったから試してみようと。それに昨日、あの海上移動の仕方を見てたら思い付いた事があって、それも試しに」

 

「なるほど、そうですか」

 

「あ、あと特別訓練中、吹雪はずっと側でその様子を見て学ぶこと」

 

ルナがそう言うと、吹雪は驚きの表情でこちらを見た。

 

「えぇっ!?なんでですか!?」

 

「なんでもヘチマも無いだろ。吹雪は全体的にスペック以下判定されてるから……他の人の色々な訓練を見て、全体を学ぶことが良いと思うんだよな」

 

「ぐぅ……言い返せない……」

 

「吹雪はそういう事でな。それじゃ、コテージに行くか」

 

ルナがそう言い、数冊の本を持って資料室を出る。

吹雪も散らかしていた本を慌てて片付け、その後を追うのであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

コテージに着くと、既に青葉と金剛がおり、二人でお茶していた。

 

「ヘーイ!ショーイ!フブキも一緒デスカ?good morning!」

 

「あ、おはようございますぅ!朝早いですね!」

 

「おはようございます!」と吹雪。

 

「おはよう、それにしても朝っぱらからティータイムか」とルナ。

 

「tea timeは大事にしないとネー!ショーイも一杯、如何デス?」

 

ルナは自分が新参なのにめっちゃフレンドリーだなー、と思いつつ「それじゃあ頂こう」と答えた。

 

「金剛さんは、いつもここで紅茶を飲んでますからね」

 

青葉がルナにそう言う。

 

「青葉も一緒にか?」

 

「いえいえ!今日は偶々ですよ。昨日、予定を聞きそびれてしまいましたからね。ここに居れば少尉が来るんじゃないかなーと」

 

「そういえば、昨日は解散してそのままだったなぁ。スマンスマン」

 

「ところでお訊きしたい事があるんですけど、何故、少尉は吹雪さんと?まさか、吹雪さんを連れ込んであんなことやこんなことを……」

 

「ちょっ!青葉さん!?」

 

吹雪が動揺したように声を詰まらす。

 

「し・て・ね・え・よ!!!どうしたらそんな発想に至るんだ!一緒に本を探して貰ってただけだ!」

 

「ま、まさか、その本ってば……!」

 

「ちげぇよ!資料だよ!資料!」

 

「まだ何も言ってないんですけど」

 

「解体処分を御所望か?」

 

ちょうどそこにティーカップを持った金剛が来てくれた。

 

「お待たセー!フブキもどーぞ召し上がれー!」

 

ルナと吹雪の前に、金剛の淹れてくれた紅茶が置かれる。

 

「うん、とてもいい香りだね」

 

「美味しいです金剛さん!」

 

「thanks!喜んで貰えて何よりネ!」

 

一息ついたところで、今ある現状について聞いてみる。

 

「天龍と龍田と赤城の姿が見えないんだが……どうしたんだ?」

 

「天龍さんと龍田さんはサボりじゃないですかね?赤城さんは気分が優れないとのことで書類を預かってます。どうぞ」

 

青葉から赤城の休欠届けを貰う。

 

「確かに受け取った。まぁ、昨日の今日だしなぁ……無理させちゃったし、しょうがないな」

 

「ところでショーイ、今日は何をするんデスカー?また海上訓練?」

 

既に一服ついた金剛がそう尋ねてくる。

 

「いや、このまま何も対策もせず訓練をしていても効果は薄いと判断した。だから、今日からは特別訓練と称して、君達一人ずつに訓練を行っていく。君達の『欠点』とされている部分を改善する為にだ。

まず最初は青葉、君からだ」

 

青葉は紅茶を飲むのを止め、キョトンとした様子で此方を見ている。

 

「あえ?私からですか?」

 

「そうだ。青葉は操艦が上手くいってないだけだからな。自分の思ってる通りなら、すぐ克服出来るんじゃないかな?」

 

「そうですかぁ?そうなら良いんですけども。ともかく、これはメモ必須ですね!『新人上司からの一対一、特別訓練!!』みたいな見出しで報告書を書きましょう!」

 

「それは色々と誤解を生みそうだからヤメろ。それじゃ先に運動場だっけ?に行ってくれ」

 

「あれ?海に出ないんですか?」

 

「うん、ちょっとね」

 

「そうですか……青葉、了解しました!」

 

「ショーイ!私はどうするネー?」

 

「あーっと、すっかり忘れてた……取り敢えず、青葉の訓練が終わるまでは、休暇扱いで良いけども」

 

「でも、それだと退屈で死んじゃいマース。私も青葉の訓練見てていいデスカ?」

 

「うん、いいよ。金剛は操艦大丈夫だけど、色々と参考になるとは思うから」

 

「コレは楽しくなりそうデスネー!」

 

「それとお願いなんだが、赤城と天龍と龍田にも、訓練の旨を伝えておいてくれないか?」

 

「of course!OKデス!まぁ、天龍型シスターズには言っても言わなくても変わらない気がするネ……」

 

これにはルナも苦笑いで返す他無かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ー『重巡洋艦青葉、改古鷹型として再設計された青葉型一番艦。開戦初期は主に後方支援に徹し、中盤以降作戦部隊として、中部太平洋、南方作戦に従事する。大破と修理を繰り返し、呉空襲で着底。戦後解体される』ー

 

ーー数十分後、

 

吹雪、青葉、金剛の三人は基地内の運動場でルナを待っていた。

 

「……少尉、来ませんね」

 

「吹雪さんの言う通りです。流石に遅過ぎやしませんかね」

 

「一体、どこで油売ってるネー!」

 

艦娘三人がそう言っていると、やっとルナが姿を見せた。何やら大きめのダンボール箱を抱えている。

 

「お 待 た せ」

 

「待たせ過ぎですよ~。それで、何を持ってきたんですか?」

 

青葉がルナの抱えているダンボールを指差す。

 

「これか?これはな……ほら!」

 

ルナはダンボールの中から何やらブーツの様なモノを取り出す。

しかしそれには車輪が付いている。

 

「ひょっとして……ローラースケートですか?」

 

吹雪がそう尋ねる。

 

「御名答、その通りローラースケートだ。何かあの倉庫……もとい、自室に置いてあったんだよ」

 

ルナが持ってきたのはローラースケートだった。ブーツみたいな靴に四輪が付いた形状の一般的なローラースケートだ。

 

「えっ……?ソレを使うんですか?」

 

「じゃなきゃ持ってこないだろ?青葉、取り敢えずコレで滑れるまでやってみよう」

 

「いや、いくら操艦が下手だからといってもローラースケートは……」

 

「以外と難しいんだぞ?ローラースケート。取り敢えず履いてみ?」

 

「少尉は艦娘というものを舐めてますねぇ。このくらい青葉には何てことないです!」

 

そう言って青葉はローラースケートを履き始める。

履き終わり立ち上がろうとするも、

 

「あっ……あれ?以外にもバランスが……うおっとぉ!?」

 

派手にすっ転んだ。

 

「ほらな言った通りだろ?以外にもローラースケートって安定しないんだよなぁ」

 

「くぅ~~、青葉、一生の不覚!」

 

「青葉さん、そんなに悔しいんですか……」

 

「でも、面白そうネ!ショーイ!もう一足無いんデスカー?」

 

「そう言うと思って、吹雪と金剛の分も持ってきてある」

 

「wow!準備がイイネ、ショーイ!」

 

「私、ローラースケートは初めてです!」

 

「自分の重心をどこに置くのかがポイントだと思うぞ。取り敢えず、安定して立てるようになるまでだな」

 

艦娘達はローラースケートを履き、滑れるようになるまで練習をする。

 

最初はみんなして上手く立てず、派手にすっ転んだりしていたが、数分も経てば、安定して立つことはみんな出来るようになった。

流石、艦娘といったところか。

 

「た……立てましたよ少尉、次はどうするんです?」

 

「じゃあ、そのまま壁伝いに滑ってみよう」

 

「わ、解りました」

 

青葉達は、運動場の脇の小屋の壁に手を付きながら滑る。

始めは滑るというよりも歩くという表現の方が合っていたが、これも数分と経てば出来るようになった。

 

「大丈夫そうだな?それじゃ、手を離して滑ってみてくれ」

 

「ショーイ、手を離したらどうやって進んだらいいノー?」

 

「そんなの、片足で地面を蹴る様にすればいいんじゃないか?」

 

「片足で……蹴る様に……」

 

吹雪が早速実践してみると、上手いことスイーと滑る事が出来た。

当の本人は大喜びしている。

 

「少尉!出来ましたよ!進みましたよ!」

 

「吹雪は飲み込みが早いなぁ」

 

と、ルナがつぶやくと、

 

「アオバ!私達も負けていられマセンよ!」

 

「かつての僚艦に先を越されては、旗艦の名が廃ります!いきましょう!」

 

青葉と金剛も負けじと滑り始める。

 

「あいつら……これが訓練の一環ってこと忘れてそうだな……」

 

まぁ、自分がそう仕掛けたのだから仕方ないのだが。

これも先程よりは時間が掛かったが、ものの十数分で、運動場の端から端まで往復できるようになった。

 

「少尉!曲がるにはどうすれば良いんですか?」

 

かなり真っ直ぐに滑れるようになった青葉がそうルナに問いかける。

 

「いい質問だな!上手いこと言えないけども、曲がりたい方向に重心を移動させるんだ。後はもう感覚でそれを覚えてくれ」

 

「全然アドバイスになってないんですけど……まぁやってみます」

 

青葉はスイーと滑っていくと、途中で身体を傾け重心を移動させようとする。

が、案の定上手くいかず転んでしまう。

 

「大丈夫ですか?青葉さん?」

 

後ろから吹雪がゆっくりと滑ってくる。

 

「あはは~やっぱり上手くいきませんねぇ」

 

立ち上がり服に着いた汚れを払っている青葉の隣を金剛が滑り抜けてゆく。

 

「ヘーイ!アオバ!フブキ!私、コツが分かっちゃったネー!」

 

そう言う金剛は、いつの間にかスイスイとローラースケートを使いこなしていた。

 

「わぁ!金剛さんいつの間に!」

 

「ぐぬぬ……あの高速戦艦め、意外にもやりますね……こうしてはいられません!」

 

再度、青葉はローラースケートの練習を始めた。

 

流石にスイスイと滑れるようになるまでは艦娘といえども困難だったらしく数時間を要した。

 

既に時刻は昼を回ったのだが、誰も止める素振りすら見せずに訓練は継続した。

 

「よし、もう大分滑れるようになったな。それじゃ……」

 

ルナはそういうと、ダンボールから取り出した幾つかの空き缶を等間隔に並べ始めた。

 

その等間隔に並べた空き缶の続きに、更に空き缶で曲がりくねった道を作る。

 

「この空き缶を倒さないように、この間を滑ってもらおう」

 

「いきなり難易度ハネ上がってません?」

 

青葉が「うへぇ」と言いつつ、さも嫌そうな顔をする。

 

「スラロームからの空き缶の道コースですか?」

 

「そうだ、これが出来たら今日の所は終わりかな」

 

「これくらいなら楽勝ネー!」

 

先程、誰よりも早くスイスイと滑れていた金剛が、これに挑戦する。

 

金剛は勢いよく滑りだすと、空き缶スラロームを見事な足捌きですり抜けていく。

 

その後の空き缶ロードも、缶と缶のど真ん中を滑って突破する。

 

「うわ、一発で抜けおったな」

 

ルナが純粋に驚く。

 

「凄いですね……!」

 

「マジですか……あの人、本当に戦艦なんですかね……」

 

吹雪と青葉も驚愕している様子だった。

 

「さぁ、青葉もやってみよう!」

 

「軽く言ってくれますね……この青葉、受けて立ちましょう!」

 

青葉も空き缶の試練に向かって勢いよく滑ってゆくのであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

数時間後、

 

「あぁーもぅ!どうして出来ないんですか、私のバカ~!」

 

「お…落ち着いて下さい!青葉さん!」

 

青葉が空き缶の試練に挑戦し始めてから数時間が経つが、未だ成功の兆しは見えない。

 

「青葉はコーナーのターンの部分で大きくなり過ぎだ。もうちょっと内側を回るんだ」

 

「分かってます……分かってますけど……!」

 

青葉は立ち上がると、再度空き缶のコースに突っ込んでいく。

 

「青葉さん……」

 

「フブキ、手出しはNoネ。これはアオバ自身の戦いネ……!」

 

ルナも、決して声は出さないが、心の中で頑張れ、頑張れ!と声援を送る。

これが出来るようになれば、君は一歩前に進める、と信じて。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

さらに数時間が経った。

 

青葉がコーナーを大きく回り過ぎ、空き缶にぶつかり派手に転ぶ。

 

転ぶ光景を見るのも何度目になるだろうか。

あれから休みも取らず、一心不乱に滑っている青葉だったが、中々上手くいかない。

 

転びまくったお陰で、服は泥だらけになり身体のあちこちに擦り傷が出来ている。

 

「くぅっ……!」

 

立ち上がろうとした青葉だったが、バランスを崩してドシャっと倒れ込んでしまう。

 

「青葉さんっ!」

 

吹雪が駆け寄って青葉を抱き起こす。

 

「大丈夫ですか!?気をしっかり!」

 

「吹雪さん……あれ……?チカラが、入らな……」

 

「青葉さん…少しは休んで下さい…!」

 

「アオバ……少し落ち着くデース」

 

「…………はは」

 

青葉は無言で空を仰ぎ、疲れたように笑う。

 

「やっぱり私には出来ない……何も出来ない……」

 

「青葉さん……」

 

「昔だってそうです……終戦まで生き残ったとは言え、出撃しては大破、直しては大破……結局は『役立たず』だったんですよ……」

 

「アオバ、自分を卑下するのは止めるネ」

 

「だって本当じゃないですか!いつも……あの夜だって……私は吹雪さんと古鷹を……!」

 

「青葉さん、落ち着いて下さい!」

 

青葉は過去の軍艦(自分)と今の自分を重ねて見ているようだった。

時折、肩を震わせながら青葉は俯いている。

 

吹雪と金剛が何かを言おうとするものも、声を掛けることが出来ず、静かな時が訪れた。

 

 

 

 

 

「『「風荒れ雨はくるうじも、草木は空にもえ出でて、

やがて青葉にいろどられ、真夏の苦熱如何あらん。

ますらたけおの胸の血は、青葉の如くもゆるなり』」

 

 

 

 

 

そんな(うた)を謳いながら、ルナが静寂を破る。

 

青葉が俯いた顔を上げ、不思議な表情でこちらを見る。

 

「少尉……その詩は……」

 

「知ってるか?青葉。君の軍艦時代が書かれた本を偶然、資料室で見つけてね。そこの最後のページに書かれていたんだ。この詩は過去の青葉(きみ)を謳ったものだよ」

 

 

ーー風荒れ雨は狂うじも、

 

青葉は幾度となく大破したり、沢山の苦難に見舞われたりしたが、

 

ーー草木は空に萌え出て、

 

その中でも強く生き続けて、

 

ーーやがて青葉にいろどられ、

 

そこには沢山の仲間が集い、

 

ーー真夏の苦熱如何あらん。

 

どんな困難に直面しても乗り越えることができた。

 

ーーますらたけおの胸の血は、

 

乗員達の心は、

 

ーー青葉の如く萌ゆるなり。

 

どんなときでも青々しく茂る葉っぱのように萌えていたのだろう。

 

 

「詩の意味としてはこんなところだろうな。資料の本によれば、

『終戦後、呉市に作られた旧呉海軍基地、現長迫公園の海軍慰霊碑の中の重巡洋艦青葉戦没者慰霊碑にひっそりと刻まれている。』

だってさ。今の君も、軍艦時代の記憶はあるんだろ?」

 

かつての青葉の乗員達は、どんな困難に出くわそうと、自分達の(青葉)を信じて生き抜いたのだろう。その信頼が、その想いが、文面からでも力強く伝わってきた。

 

「そうだ……私は……」

 

(青葉)はのちに建造された巡洋艦に比べれば優秀な艦では無かったかもしれない。

その上、沢山損害を被ったし、守るべき仲間を守ることが出来ず、救うべき仲間を救う事が出来ず、自分の判断ミスで味方を危機に晒した事もあった。

そんな中でも、乗員のみんなは希望を捨てず、生きる意志を最後まで持ち続けていた。

 

ソロモンの戦いでは『オオカミ』と揶揄されるくらいに奮戦した。

 

大破しても、乗員達は諦めず奔走し、無事に内地まで回航した。

 

艦隊司令部に見捨てられそうになった時もあったが、乗員達は「自分達の(ふね)を見捨てるわけにはいかない」と乗員達が司令部に直談判した時もあった。

 

もはや半分沈んだものを、多大な努力でサルベージしたときもあった。

 

修理出来ない大損害を受け、防空砲台として放置されたとしても、自分達の乗員は最期まで艦を降りなかった。

 

 

「どれだけ、どんなに失敗しても、『最期まで諦めない』それが君なんだろ?」

 

ルナがふっと笑みを浮かべながら青葉にそう言う。

 

 

そうだ。

 

私は、

 

私達は、

 

 

「……そうでした。すっかり忘れてましたよ……忘れてはいけない事を」

 

青葉は吹雪の助けを借りつつ、その場から立ち上がった。

 

「ありがとうございます、吹雪さん。もう大丈夫です。情けないところを見せましたね」

 

「いえ……でも良かったです。あのままだったら衣笠さんに笑われちゃいますもんね」

 

「衣笠にですか……それだけは勘弁ですね。私が笑う側なので」

 

「アオバ~?もう大丈夫そうネ?」

 

「えぇ、お陰様でなんとかなりましたよ」

 

先程の弱い姿はもう無く、青葉の顔はいつもの明るい顔に戻っていた。

 

「もうイケるな?青葉?」

 

ルナがそう訊くと、青葉は力強く頷いた。

 

青葉の特訓は陽が落ちるまで続いた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

次の日、

 

今度は陸の運動場ではなく、海上演習場に来ていた。

 

「少尉、何で今日は海上訓練なんですか?昨日のローラースケート、青葉はまだクリアしてませんよ?」

 

昨日、陽が落ちるまでローラースケートに挑んでいた青葉だったのだが、遂に空き缶の試練をクリアする事は出来なかったのである。

 

「いや、大丈夫だ。昨日はああ言ったが、アレはクリアする必要は無い。どちらかと言えばローラースケートに慣れてもらう方に意味があったんだ」

 

「青葉には意味が分かりませんよぉ?」

 

「海上訓練をやればすぐわかるさ。早速海上に出てくれないか?」

 

「了解です!」

 

青葉はその場で艤装を装着し始め、海上に出るための桟橋へと向かう。

 

「確かに、昨日のローラースケートが何の役に立つのかが全然解らないですね」

 

「ショーイは中々ミステリアスデース!」

 

共に青葉の訓練を見に来ていた吹雪と金剛がそう言っている。

 

「まぁ見てれば分かるってば。さて、青葉!準備はいいか!」

 

「準備万端です。それではいきますね」

 

青葉が艤装を稼働させる。

ゴウン、と低く音が響くと同時に海面に降りる。例の如く、身体は海中に沈まず、海面に立っている。

 

「あれ……?」

 

「どうした青葉?何か不調が?」

 

「いえ、そういうのでは無く……何というか、普段より浮かぶのが安定している気がして」

 

「ふっふっふ、やはりか」

 

「え?」

 

「いや、じゃあちょっと航行してみてくれ。多分驚くぞ」

 

青葉は頭に「?」を浮かべながらも脚部艤装の機関を稼働させ、航行を始める。

 

青葉はすぐに以前との違いに気づいた。

 

「うわぁ、何だこれ!航行が凄い安定してます!以前みたいにふらつく事が無くなってます!」

 

青葉はスイスイと海面を滑走する。

 

「少尉、これは一体どういうことですか?」

 

思わず吹雪がルナに理由を訊く。

 

「これがローラースケートの効果さ。最初の海上訓練を見た後、みんなの動きを分析したんだけど、青葉は他のみんなに比べてバランスが取れてなかった気がしたんだ。

艦娘だから、みんな当たり前の様に航行できると思ってたんだけど、個々の技量に左右されるんじゃないかと推測したんだよ。

つまり、青葉は操艦が下手なワケじゃなくて、バランス感覚……『体幹』とでもいうのかな?がちょっとだけ劣っていたから、上手くやろうとしてもダメだったんだよ」

 

「な……成る程……!」

 

「でも、何でローラースケートだったんデスカー?バランス感覚を鍛えるならもっと色々有ったデショウにー?」

 

「いや、そりゃ、ローラースケートが何と無く艦娘の海上航行に似てたからに決まってるだろう?」

 

「そんな事だろうと思ったデース」

 

ルナはゴホンと咳をすると青葉に向かって声を掛ける。

 

「調子はどうだ、青葉!」

 

「凄いですよ少尉、今までが嘘みたいです!今なら目を瞑ってでも障害物が避けられそうです!」

 

青葉は目を閉じ、海上を疾駆して見せる。まるで、その言葉が嘘では無いと見せつけるよう、優雅に海面を駆け抜けてゆく。

 

「凄いですね青葉さん、あんなに綺麗に走れるなんて……!」

 

「Yes!バランス一つであそこまで変わる物なんデスネ!凄いデース!……オヤ?あのコース、少しマズくないデスカー?」

 

青葉は依然、目を瞑ったまま航行している。その航行コースの先には、岩礁が突き出ていた。

 

「青葉さん!危ない!」

 

「ふぇ?」

 

吹雪がそう叫び、青葉が目を開けると、目の前に迫る岩礁があった。

 

「うわわわわ!急には止まれませんよ~~!」

 

青葉がパニックに陥る。その時、ルナは青葉に向かってこう叫んだ。

 

「青葉!機関最大、両舷後進取り舵一杯!!

 

「えぇっ!機関最大ですか!?」

 

「いいから早く!衝突したいのか!?」

 

青葉は調子に乗ってかなりの速度を出していた。この勢いでぶつかれば確実に医務室行きだろう。

 

「りょ、了解!両舷後進一杯!!」

 

青葉は機関最大に後進を掛ける。それと同時に左に舵を切る。

 

するとスピードが急激に失速し、岩礁ギリギリの所で止まる事が出来た。

 

「ふぅぅ……助かりました……」

 

船というものは、舵を切ると水の抵抗が増す事になるので、どうしても速度が落ちる。それを利用し速度を減速すると共に、機関を最大にし、逆転に進行速を入れることによって、急失速する事が出来たのだ。

 

「操艦は大丈夫そうだが、操舵がダメなようだな青葉よ。ここんとこをしっかり訓練するぞ!」

 

「は、はいっ!青葉、了解です!」

 

 

ルナの後ろでその様子を見ていた吹雪と金剛は笑顔で答える青葉を見て、

 

「青葉さん、嬉しそうですね」

 

「今のアオバは過去最高にbrilliantネ!」

 

と話している。

 

 

青葉は今まで、自分がダメな艦だと決めつけていた。それで「今」と向き合う事が出来ないでいた。

しかし、今回の訓練で忘れていた事に気づく事が出来た。

 

(どれだけ失敗しても、諦めずにいれば必ず役に立てる時が来る。確かに過去、(青葉)が助けられなかった出来事は多い……だけど、乗員のみんなはその中でも私を信じてくれた……私はこの期待に応える!『軍艦青葉』の記憶を持つ『艦娘』として…!)

 

青葉はそう心に決め、ルナの指示を聞きながら訓練を再開する。

 

 

 

 

 

 

「よぉーし、青葉、頑張っちゃうぞ!」

 

 

 

 

 

to be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いつか長迫公園行きたいですね……
青葉のエピソードを調べている時、冗談抜きで作者は泣きましたよ(^^;;
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