記憶の海 〜Indelible memory〜 作:Ar kaeru Na
今回は赤城さんの回です。
ちょっと長めの、感動出来るかは読者の皆様によりますが、そんな感じのお話です。最後の方が良い感じじゃないかな?(自画自賛
それではでは!
memory10「赤城の決意」
『いやはや、まさか此れだけの戦力を揃えるとは流石ですな。やはり我々の勝利は約束されたようなモノですな』
『されたようなものではない。約束されているのだ。この戦力を以って、大海令第18号にあった通り、AFとAOを攻略し、米空母を誘引し、米国の航空戦力を撃滅するのだ』
『確か、米軍の空母はホーネット、エンタープライズの二隻でしたか』
『それに対し、此方は一航戦、二航戦の計4隻もの航空母艦。更に、第三、第八、第十戦隊に加え、あの第一艦隊も作戦に参加する。勝てないわけが無いだろう』
『そうですな!はっはっは!やはり大日本帝国は素晴らしい!』
『戦争も案外、早くに終わるかもしれんな』
ーー「……………」ーー
『基地攻撃隊より入電、飛行場の空襲に成功したとのことです!』
『ここまでは順調だな』
『ただ、報告によると、飛行場はもぬけの殻のように飛行機が少なかったと……』
『……やはり、敵索敵機を撃墜出来なかったお陰で奇襲効果は半減だな』
『しかし、先程の敵攻撃隊は戦闘機の直掩も無しに突っ込んで来ました』
『相手がヤケクソなのか、それとも本当に空母がいないのか……何方にせよ、飛行機が飛んでくるということは、まだ飛行場は生きている。第二次攻撃の要有り、との通信も入っているしな。
各艦待機中の攻撃隊に、第二次攻撃隊を編成させ、兵装を爆装に変換し待機。と通知せよ』
『了解、直ちに』
ーー「……………」ーー
『上空に敵雷撃機!』
『直ちに零戦を直掩にあげろ!』
『空母がいると思って無かったとは言わないが、やはりな……!』
『敵攻撃隊が来ます!』
『直掩隊を低空に下げて迎撃しろ!
『お前ら雷撃機なんぞ、零戦の敵では無いわぁ!』
『気を付けろ!敵戦闘機が妙な戦法を使ってきやがる!』
『報告します!我が艦の索敵機より、敵空母三隻を補足!内一隻は珊瑚海海戦で損傷したヨークタウン!』
『何だと!?空母は二隻じゃないのか!?それに何故ヨークタウンが出撃しているんだ!?』
『敵、急降下!!加賀と蒼龍が被弾!!』
『なっ…!』
『直上から爆撃だとっ…!?』
『直掩隊は!?』
『敵雷撃機との交戦で…』
『甲板に出てる零戦を
『我が艦、直上に敵爆撃隊です!』
『対空砲火!』
『駄目です!間に合いません!』
『うわあああああああ!!!』
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「………っはぁ!!」
ハァハァと荒い息をつきながら赤城は飛び起きた。
「夢……か……」
記憶が存在そのものである
とりあえず、汗に濡れた寝間着の着物から普段着に着替える。
「皆さんはどうしているでしょうか……?」
赤城はそう呟くと、ここ最近、毎日通っている場所へ向かった。
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「全砲門、fireーー!!」
金剛が装備していた35.6cm連装砲四基八門を一斉射する。
「吹雪さんっ!回避を!」
「了解です!」
日差しのどかな第三訓練海域。
この日は金剛vs青葉&吹雪小隊に別れて、ミニミニ対抗演習を行っていた。
(青葉と金剛の問題は解決したし、ここいらで実戦に似せた訓練も織り混ぜていかないとな)
ルナはそう思いつつ、海上で訓練を行っている艦娘達に目を向けた。
「oh!アオバ!回避が上手いネー!」
「そういう金剛さんこそ、砲撃精度上がってますよ?危うくバイタル抜かれるとこだったんですけど」
「これがワタシのTrainingの成果デース!もう一度、テェーー!!」
「くっ、そう何度も喰らいませんよ!両舷後進面舵一杯!」
青葉は急減速し右に舵を切った。元々の航行コースの場所に狙いよく金剛の砲弾が降り注ぐ。
転進をしなかったら間違いなく撃ち抜かれていただろう。
「そんなの、無駄無駄ネー!ワタシはまだ、第三、第四主砲を残しているネ!
射撃管制システムに位置データリンク!誤差偏差修正、撃てェ!」
転進して速力が落ちている青葉を的確に捉える。
青葉は避けられないと踏んだのか防御兵装を起動させる。
「『粒子装甲防壁』展開!」
飛んできた砲弾が青葉の頭上で、見えない壁の様なモノに阻まれ、弾かれる。
「バリアーデスカ。でも所詮、重巡の装甲ネ、直ぐに撃ち抜いてあげマース!」
金剛はそう言うと、再装填した砲を、次から次へと絶え間なく射撃する。
流石にこの砲撃下では、青葉の装甲も耐えられる筈も無く、幾度目かの砲撃で遂に青葉の
「くぅっ!」
今、使用しているのは演習用の模擬弾なので実被害は一切無いが、青葉の艤装からは『大破』を示す赤い煙が上がっている。
「次でfinishネー!」
金剛がそう言い、青葉に狙いを定める。
「それはどうでしょうか?金剛さん」
青葉は、金剛の言葉にそう答えると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「………?」
訝しげに思った瞬間、金剛の短距離レーダーが、青葉では無い艦を補足した。
「一番、二番魚雷発射菅、照準良し!一斉発射!」
そんな元気ハツラツとした吹雪の声が後ろから聞こえる。
急いで振り向くと、当の吹雪は反転離脱を決め込み、煙幕を展張している。
「what's!?なぜフブキが後ろに!?」
そうこうしてる合間にも魚雷が金剛に迫る。到達時間を予測しても、およそ3,000を切る距離で放たれたのは間違いないだろう。
そんな近距離まで吹雪の接近に気付けないとは、と金剛は戦慄した。
魚雷は第一陣が広角、第二陣が狭角に投下されており、第一陣の魚雷の合間をすり抜けても、正確に放たれた第二陣が確実に当たるよう計算されて放たれていた。
(フブキったら、ドコでこんなtechnicを……!?)
金剛が魚雷に接触する。
本物とは違い、爆発は起きないが、金剛の艤装からは轟沈を示す青い煙が上がった。
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「みんな、お疲れ様。今日は中々良い動きしてたぞ」
「ありがとうございます!少尉!」
「とりあえず、艤装を整備班に預けてきてからコテージに集まってくれ」
艦娘達は、各々頷くと足早に工廠に駆けて行った。
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コテージに再度集まったルナと艦娘達は、先程の対抗演習についての反省会を行なっていた。
「青葉も金剛も、最初の海上訓練の時と比べると、恐ろしい程に成長したなぁ」
ルナが指揮を始めてから半月が経っていた。
正式な辞令が出るまで、残すところ半分だ。
「ですよねー少尉。これも少尉あってのものですよ。青葉、感激しました!よっ、流石少尉!」
「な、なんだイキナリ。まぁ悪い気はしないな、わっはっはっは!」
「今がチャーンス!シューティング!」
青葉は
「舐めるなぁ!予測済みだ!」
ルナは手に持っていたファイルで顔を隠して、青葉の攻撃を防ぐ。
「くっ……しくじりましたか……!」
青葉に変な写真を撮られでもすれば、後々の弱みになる可能性もあるし、何より、事実無根の新聞記事を書かれて、ばら撒かれるのがかなり怖い。
「コントもここまでにして、青葉、君はかなり操艦が板についてきたが、速度の増減による操艦がまだまだのようだな。今回も、急失速した所為で金剛に狙い撃ちにされていたしな」
「むぅ~、精進しますぅ」と青葉。
「金剛は殆ど文句無しだな。FCSの扱いも慣れてきてると思うし、事実、砲撃の命中率がここ最近で凄い伸びてる」
「それは良いんだけどサー、少尉。いつの間に、フブキに雷撃を教えていたのデスカ!?
そんなの聞いてないデース!!」
金剛が人差し指を突きつけながら、ルナに迫る。
「いや、待ってくれ。自分は吹雪に雷撃を教えた覚えはないし、吹雪はまだ特別訓練してないぞ?」
「え、どーゆーことデスカ?」
金剛が吹雪の方を向き、そう尋ねる。
「いえ、その……私だけ皆さんの訓練を見ているだけっていうのは嫌だったので、資料室で兵法の本を読んで、自主的に訓練を……」
「Really?だとしたらフブキ、メチャメチャ凄いデース!ワタシも対フブキ訓練をしなけれバ……!」
「どういうことですか!金剛さん~!」
そんなこんなで反省会が終わり、艦娘達が雑談をしている中、ルナは書類とにらめっこをしていた。
「どうしたんですか、少尉?何か悩み事でも?」
金剛からの会話攻撃を避けるように此方へ逃れてきた吹雪がそう言う。
「いや……まぁ、悩み事と言えば悩み事になるかもしれないけども……そろそろ、他のメンバーをどうにかしないとなって思って」
「あぁ…成る程」
「そういえば、赤城の休欠届にいつまでかが書いてなかったんだよなぁ。今どこに居るか知らないか?」
「赤城さんなら多分、弓道場ではないですかね?」
「弓道場だって?そんなもんがここにはあったのか…知らなかったな……」
確かに、最初の海上訓練の時に道着の様なものを着て、弓矢を持っていたなと思い出す。
「御存知無いようでしたら私が案内しますよ!」
そう吹雪が自信満々に言う。
「それじゃ、案内してもらおうかな」
「お任せ下さい!」
こうしてルナは、吹雪の案内で宿舎裏手側にあるという弓道場に向かった。
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ーーここに立つと気持ちが静かになる。
赤城はそう思っていた。
焦燥や不安、夢にまで出る忌まわしい記憶も、ここに立っている時だけは忘れられる。
赤城は大きく深呼吸をすると、矢筒から矢を一本、スッと取り出し弓の弦に引っ掛け、大きく引きしぼった。
数秒間、そのままの体勢で狙いを定めると、引きしぼっていた弦を離し矢を放った。
放たれた矢は少し山なりに飛んでいくと、的の中心部より僅かに逸れた所を射止めた。
そこで赤城は構えを解き、フーっと息をついた。
すると後ろからパチパチと拍手が聞こえてきた。赤城は驚いて振り向く。
「凄いじゃないか赤城。ほぼ真ん中だぞアレ」
「少尉……それに吹雪ちゃんも……」
「稽古中に申し訳無いとは思うけど、休欠届に期限が書いてなくてね。こちらからすると、そろそろ訓練に出て欲しいんだけども…」
そう言うと赤城は、自分の体を抱きしめるように身を竦めてしまった。
「どうしたんだ?」
「……怖いんです、海が」
赤城はポツリとそう言った。
「軍艦の記憶を持つ兵器……CMSなのにおかしいですよね。でも……怖いんです」
それを聞いて、ルナも複雑な心境になる。
書類上は確かに兵器なのかもしれない彼女達CMSだが、彼女達にも感情や感覚がある。彼女達は生きている。
その上で彼女達は、死と隣り合わせの戦場に駆り出されるのだ。
そう思えるのも当たり前だと思った。
「やっぱり……死ぬかもしれないというのが怖いのか?」
「もちろんそれもあるんですが、そんな事を言ったら、私の素体よりも肉体年齢が低い娘たちに格好がつきません。吹雪ちゃんとかにね」
「それじゃあ……一体……?」
ルナがそう尋ね、赤城が口を開きかけた時、何者かが弓道場に入ってきた。
「それじゃ、多く的に当てて、より中心に近い矢が多い方が勝ちね!」
「望む所よ!負けたら特大パフェよ。分かってるわね?」
「もちろんよ、まぁ今日も勝たせてもらうけどね」
そんな話し声を聞くや否や、赤城が慌てて弓道場を出ていこうとする。
「オイ待て赤城!!話は終わってないぞ!!」
ルナの制止も聞かず赤城は飛び出していく。
すると入ってきた何者かが赤城に気付いたのか声を掛ける。
「あ、赤城さん」
「…………っ!」
赤城はそれにも応えずに弓道場を出て行く。
「赤城さん……」
声を掛けたのは2人の少女達だった。背丈は赤城と同じくらいか?
「アレっ?見慣れない人がいるよ?」
山吹色の少女がそう言う。常盤色の少女も訝しげにこちらを見ている。
そこでルナは2人に近づいて行き、自己紹介をした。
「あぁ~!あなたが例の新人さんなのね!」
「そんな言い方失礼でしょ、私は派遣艦隊の航空母艦『蒼龍』」
「同じく、空母の『飛龍』、よろしくね」
「こちらこそよろしく……ところで、蒼龍、飛龍って言うと『二航戦』の?」
「さっすが少尉!よく知ってますね!」
第二次大戦当時、日本が所持していた、初めから大型の航空母艦として建造されたのが、第二航空戦隊に属していた『蒼龍』と『飛龍』だった。
「でも何で少尉がこんなところに?」
そう2人が聞いてくるので、ルナはカクカクシカジカと今までの経緯をかいつまんで説明した。
二航戦の2人はマルマルウマウマと納得してくれた。
「……ってな理由で赤城が何でああなってしまったか知らないか?」
そうルナが尋ねると2人は顔を見合わせた。
「赤城さんで……となると…」
「多分アレだよね…」
空母艦娘2人の表情に影が差す。
「アレって何なんだ?よかったら教えてくれないかな」
蒼龍と飛龍はもう一度顔を見合わせると、ルナに向かってこう言った。
「「ミッドウェー海戦」」
「ミッドウェーというと確か、日本の空母の大部分が失われて第二次大戦のターニングポイントになったと言われる海戦……」
「そう、そしてこの時の攻撃部隊は一航戦と私達二航戦を基幹とした『南雲機動部隊』……」
「その機動部隊の司令部……つまり旗艦だったのが赤城さんなんです……」
ここでやっとルナにも分かった。部隊旗艦、司令部という重荷、仲間の喪失、作戦失敗の責任、その後の戦況に影響を与える自分達の結果、それら全てが
普段は平静を装っていても、胸の内にはいつもそれらが渦巻いており、海に出るとフラッシュバックしてしまうのだろう。
「成る程……そういうことか……」
「赤城さん、その所為もあってか私達に会うとすぐにどっかに行っちゃうんです」
「多分、責任を感じてるんじゃないかな…私達は大丈夫なのに…」
蒼龍と飛龍はそういうと俯いてしまった。
そんな2人にルナは詰め寄る。
「お願いがある。蒼龍飛龍、自分にミッドウェー海戦について詳しく教えてくれないか?自分は記憶喪失というのもあるんだけど、あまりにも知らなさ過ぎる……だからまずは知りたいんだ。知る事によって見えてくる世界というのもあると思うんだ。だから頼む…!」
蒼龍と飛龍は頷くと、静かに語り出した。
運命の分岐点、ミッドウェー海戦を。
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ーー次の日。
弓道場には赤城の姿があった。
しかし、どうも憂鬱な表情を浮かべている。
(昨日、二航戦のあの娘達に会ったからかしら……どうも気持ちが落ち着かない……)
その時、赤城以外誰もいない筈の弓道場に声が響き渡った。
「ミッドウェー海戦、1942年6月5日に起こった、日米両空母機動部隊による海戦」
赤城は驚いて辺りを見回すが誰もいない。
(今の声は少尉…!?それにミッドウェーって…!)
「攻撃部隊、旗艦は赤城、以下、加賀の一航戦、二航戦と続いた。目的は米空母艦隊の撃滅。
この時、日本軍は勝利を信じて疑わなかった」
赤城の脳裏に蘇る記憶。連戦連勝に酔いしれて驕っていた多くの人々。
「ミッドウェー島への第一次攻撃は成功した。敵航空隊からの反撃も殆どが損害無しで切り抜けた」
「……やめて」
「現地時間10時10分、敵雷撃機部隊が襲いかかる。機動部隊は直掩の零戦隊でこれに応戦、迎撃する」
「もう……やめて……」
「その約10分後、艦隊上空から艦爆隊が迫る。機動部隊は、海上の雷撃隊との戦闘で上空の艦爆隊に対応出来なかった。
これにより、飛龍を除く3空母は大打撃を被り戦闘能力を喪失。飛龍もその後の空襲で同じく喪失。
結果、4空母は全て沈んだ。海戦は敗北し、日本は航空戦力の大部分を失い、その後の戦いの主導権を失う事になる」
「もうやめて!!」
赤城はそう叫ぶと、手で顔を覆ってその場に崩れ落ちた。
上空からの奇襲とも言える爆撃。
目の前で直撃し、燃え落ちる仲間。
その直後だったーー
赤城の頭にかつての、自らの最期の時が鮮明に映し出される。
ルナは赤城の前に姿を現わすと更に続けた。
「敗北の原因は多々あると言われている。
司令部の慢心、情報漏洩、連戦による乗員の疲労、情報共有、索敵不足、装備換装。
そして、その前に勃発したセイロン沖、珊瑚海海戦の反省点を生かせなかった、生かさなかった事」
「…………」
赤城はユラリと立ち上がると、ルナに向かって弓を構えた。
「……逆上か?赤城」
赤城が弦を引きしぼる。
「……あなたに、何が分かるんですか……」
赤城は、そうポツリと言うとルナを睨みつける。
「あの戦争を経験していないあなたに!!私の何が分かるんですか!!」
赤城はルナにそう叫んだ。
「……確かに、自分は赤城の事なんて殆ど知らないに等しいだろう。だけどな、赤城自身にも分かってない事が自分には分かる。
お前さんは現実から逃げている」
赤城がルナをキッと睨む。
ルナはそれを正面から受け止め、臆する事なく続ける。
「過去の出来事がトラウマだからって、壁を作って遮断して、本当の自分からも目を背ける。それはただの逃げだ。何の解決にもならない」
「…………!」
「ちゃんと自分と向き合うんだ、赤城」
赤城はギリリと歯を食いしばり、弓をさらに引く。
「今を見ろ!過去から目をそらすな!自分の生き様を、記憶を、忘れてはいけない!」
「ーーーー!」
赤城はその瞬間、矢を放った。
空を切って飛ぶ矢。それはルナ目掛けて飛んでいく。
しかし、ルナは避けようとしない。
矢はルナの頬を掠めると、小気味良い音を立て、ルナの後ろの木壁にに突き刺さった。
赤城がカランと弓を手放し、床に落とす。
「私だって本当は分かってたんです……現実から逃げてるって事くらい……でも、どうしようもないじゃないですか……!」
赤城は再度崩れ落ち、肩を震わせ涙をこぼす。
「そんなことはないさ」
ルナは静かにそう言った。
「確かに、どんなに悔やんでも過去は変えられない。起きてしまった事を無かったことには出来ない。それは事実だよ。どうしようもない」
「…………」
「でも、『これから』は変えられる。自分達で作っていける。大事なのはそういうことじゃないかな?」
赤城が涙で濡れてクシャクシャになった顔でこちらを見上げる。
「過去を遮断して無かったことにしてはいけない。だからと言って、過去に捕らわれてもいけない。本当に大事なのは、その過去の過ちを素直に受け入れ、未来に向けて一歩踏み出す為の糧に出来るかだよ。
軍艦時代の赤城が過去だとしたら、今の赤城は艦娘だ。そして、君の未来は君自身が作って歩んでいくんだ」
「…………!」
「それに、クヨクヨしてるのは君らしくない。赤城って言ったら、もっとこう……凛とシャンとしてるって感じだから……上手く言えないけど、自信に満ち溢れてる赤城の方がカッコイイと思うんだ」
赤城は一度上げた顔をもう一度落とした。何かを考えている様だ。
しばらく、両者無言の時が過ぎる。やがて赤城がボソッと喋り始めた。
「……少尉は、そう言いますけど……そうやって私が海に出たら……また、あの時みたいに……失態をして……仲間が……沈んでしまうかもしれない……そんなのは……」
「「そんなこと無い!!」」
勢いよく弓道場の扉が開け放たれ、飛び込んできたのは蒼龍と飛龍だった。
「蒼龍……!飛龍……!」
赤城は何故ここに、という驚きを顔に浮かべる。
「少尉!約束通りに連れてきましたよ」
その2人の後ろからひょっこりと吹雪が顔を出す。
「ありがとう吹雪、ナイスタイミングだよ」
蒼龍と飛龍が赤城に駆け寄る。
「赤城さんが悪いわけじゃないよ!」
「そんなに責任を感じないで!」
蒼龍と飛龍が口々にそう言う。
「……だけど、私の所為でみんなが…」
「違う!赤城さんの所為だけじゃない!」
「みんな……みんな悪かったんだよ」
赤城は蒼龍の言葉にキョトンとする。
「赤城さんだけじゃないって事よ。私も、飛龍も、艦隊のみんなの責任。赤城さんが1人自分を責め続けるのは筋違いよ」
「そう!だから心配しないで!多分、多聞丸も加賀さんもそう言ってる!」
赤城はハッと顔を上げる。
「赤城さんがそんなんだったら、僚艦の加賀さんは心配で寝込んじゃうよ」
「かつて戦ったみんなの為にも!赤城さん、行こう!」
蒼龍と飛龍が手を差し伸べる。
赤城は躊躇して、2人に問いかける。
「私はもう一度……海に出ても良いの?」
「何、変な事言ってるの赤城さん。私達は軍艦の生まれ変わり、艦娘でしょ!海に出ないでどうするの!」
「船は海で活躍するもんよ!また一緒に行きましょ!」
蒼龍と飛龍は赤城の手を強引に掴むと、勢いよく引っ張った。
赤城の顔は涙で濡れていた。
だけど、さっきの涙とは違う涙。
「ありがとう……!!」
赤城は精一杯の気持ちを蒼龍と飛龍に伝えた。
空母艦娘3人の顔には笑みが浮かんでいる。
「もう大丈夫みたいですね、赤城さん」
「だな」
少し離れた場所でルナと吹雪が頷き合う。
過去がトラウマで、過去を、自分を、否定していた。
だけど、それだけじゃ何も変わらない。
未来は、これからの自分。
今、自分がどう変われるかで、これからが変わる。
かつて戦って散った仲間の為にも、そして自分の為にも、
過去を、今を、未来を、自分を変える為にも、
この空と海が続いている限り、
私は今、一歩を踏み出す。
赤城はそう、決意した。
to be continued……
ー物語の記憶ー
・粒子装甲防壁
通称、装甲、バリアー。
CMSが海上に浮かぶ原理を応用した防御機構。
海上に浮かぶ為の極荷電粒子を艤装を通じて空気中に放出させ、荷電粒子自体と空気粒子自身が持つエネルギーで局地的力場を発生させ、そのエネルギーフィールドによって、攻撃を防ぐ。
耐久度は艦種によって様々。
防ぐと言うよりは弾く、逸らすと言った方が正しいかもしれない。
・ミッドウェー海戦
日本が米機動部隊を誘引、撃滅するため、ミッドウェー島に進出。これを米国が迎え撃つ形で勃発した海戦。
日本は戦力的優位にも関わらず、様々な要因が重なり空母4隻を喪失するという痛手を受けた。
この海戦が第二次大戦のターニングポイントという説は今尚根強い。
如何でしたでしょうか?
赤城はkaeruが幼少期に大和の次に知った軍艦という事で思い入れが強いです。はい(^^;;
冒頭部分ですが、kaeruの妄想です。間に受けないで下さい。戦闘中にヨークタウンを確認出来たかどうかなんて分かりません。演出と思って下さい。
ミッドウェーについてはkaeruの適当かつ曖昧な主観でのメスを入れてます。間に受けないで下さい。
あと、初見さんにも受け入れてもらえる様、色々簡略してます。ご了承の程を。
出来る事なら評価、感想の方も宜しくです。
次回、例の姉妹と大ゲンカ!!