記憶の海 〜Indelible memory〜   作:Ar kaeru Na

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前回パートの続きです


memory12ー2

「すみません整備主任。無理を言ってしまって……」

 

「あん?あぁ、こっちは大丈夫だが、少尉さんの方は大丈夫なのかい?」

 

 

奄美要塞基地、出撃港内。

 

ルナは上層部の意向を無視して、奄美の艦娘達を出撃させようとしていた。

 

「……動ける部隊が自分達以外いない以上、ここを守る為にはこうするほかありません。責任は全て自分が負います」

 

「チビっこいのにとんでもねぇ事を言うじゃねぇか。まぁ、確かに今ココを落とされるワケにゃいかねぇ。

やっとこさ、本土防衛ラインを構築して、CMSの一般配備で、深海棲艦からの攻撃に耐え得る準備が出来た矢先に、南西ライン方面が陥落しました〜ってこっちゃ話にならねぇ」

 

整備主任は艦娘の艤装をガチャガチャと弄りながら話を続ける。

 

「攻め入る敵を、指くわえて見てろってそんなこと出来るわけがねぇ。

しかし、そんな事を言ってもオレはしがない整備士。船を直したり、改装したり、そんなことしか出来ねぇ。

だが、少尉さん。アンタは違う。アンタには、アンタのもとには、ココを救う事が出来るチカラがある。

例え、上の連中がぎゃーてー言ったってな、ココを救う為に立ち上がったアンタを支える事が出来なきゃあ、整備士の名が廃れるってもんよ」

 

「主任……ありがとうございます」

 

「あと2分待ってくれ、最高の状態で出撃させてやるぜ」

 

整備主任は、油に塗れた手をルナに向かってヒラヒラと振った。

ルナは整備主任に敬礼すると、出撃港内にいる艦娘達の元へ向かった。

 

「君達は大丈夫か?体調が優れない者はいるか?」

 

「no problem!conditionはサイコーネ!!」

 

「何時でも出撃出来ますよー!」

 

「何チンタラしてんだチビ助!さっさと出撃させろ!」

 

奄美の艦娘達は出撃の時を今か今かと待っていた。

艦娘達の記憶の根底にある物は『軍艦』。戦闘目的で作られた船の記憶(データ)を持っている彼女達からすると、戦場で輝ける事が、彼女達の存在理由の1つなのかもしれない。

 

金剛はさも嬉しそうに踊り、

 

青葉はワクワク顔で辺りを見回し、

 

赤城は静かに目を閉じ佇み、

 

天龍は手に持った刀をもてあそび、

 

龍田は天龍の隣にニコニコしながら立っている。

 

そんな中、吹雪の顔だけが暗く沈んでいた。

 

「どうした吹雪?具合でも悪いのか?」

 

「いっ…いえ、そんなことは無いのですが…………私が海に出た時にちゃんと動けるか不安で……」

 

「吹雪なら大丈夫さ、心配することは無い」

 

「ですが……私自身は青葉さんみたいな特別訓練も何も受けてないんですよ?

金剛さんみたいに艤装のせいでもありませんし、赤城さん、天龍さん、龍田さんみたいに、もともと上手なワケでも無いんです……だから……」

 

吹雪は顔を下に向けて俯いてしまった。

 

確かに、緊張しないほうが有り得ない今この状況。自分達の活躍次第で、奄美基地の、さらには日本の、世界の命運が決まってしまうかもしれない。

 

不安を抱くのも仕方のない事だった。

一見、はしゃいでいるように見える金剛達も、心の底では不安と緊張でいっぱいなのであろう。

しかしそこは大型艦のプライド。時化(しけ)た雰囲気を作らない為にも、明るく努めているのだろう。

 

ルナは吹雪の前にしゃがみ込むと、ガシッと吹雪の肩を掴んだ。

驚いて吹雪が顔を上げる。

 

 

「お前は ”強い”!!」

 

 

ルナが吹雪の顔を見てそう宣言する。

 

 

「お前なら ”出来る”!!」

 

 

ドクンと、吹雪の鼓動が跳ねる。

 

「どんな時も近くで他の者の訓練を見ていたのは吹雪自身だろ?それに、1人で自主訓練もしていたんだろ?

なら、”大丈夫” だ!心配することは無い」

 

「少尉……」

 

「『俺はお前を信じてる』」

 

ドクンと、さらに吹雪の鼓動が跳ねる。

体の内から、何か熱いモノがこみ上げてくる感じが吹雪にはあった。

それに今の言葉……何処かで同じ言葉を言われた気がしていた。

軍艦時代かもしれない、思い出せないながらも、確かに同じ言葉で今のように勇気付けられた事があった気がする。

 

「………はいっ!」

 

まだ多少なりとも不安は残るものの、先程までとは違う何かが、吹雪の心の内を満たしていた。

 

『少尉さんよ!準備完了したぜ!』

 

港内のスピーカーから整備主任の声がした。

 

「よしっ」

 

ルナは奄美の艦娘達を見回した。

 

 

「これより、栄ルナの名の下に、独断で奄美要塞基地、及び南西諸島防衛戦……『南一号作戦』を展開するッ!!

現在、基地接続海域エリアBで我が軍が敵深海棲艦と交戦している!

先程、改造護衛艦隊も支援の為に出撃したが、現代艦の攻撃が深海棲艦に効かない事は君達もよく知っているだろう。壊滅も時間の問題だ。

よって君達は戦闘海域に急行し、戦闘で損傷した艦の撤退の援護、敵部隊を撃滅せよ!

旗艦は金剛、戦場での指揮は一任する。

尚、敵に此方の動きは筒抜けの可能性がある。よって無線封鎖は無しとする。

全責任は自分が負う!何としても、深海棲艦を近付けるな!

以上だッ!!」

 

 

「「「「「「了解ッ!!」」」」」」

 

 

艦娘達は「1」から「6」と番号が振ってある場所に並ぶ。

 

『ドック注水開始。CMS、所定位置確認。艤装、着装開始』

 

背後にあったシャッターが上がり、中からは備え付けのクレーンに吊るされた機関部艤装が艦娘達の元へと移動し、艦娘達の背中へと装着される。

 

その間に足下からは、マシンアームで脚部艤装が装着される。

 

『艤装装着。缶、正常に作動を確認。生体同期機能(バイオフィードバックシステム)動作良好(オールグリーン)。メモリーカードの読み込み、及び、攻撃モジュールの記憶領域の反映、着装開始』

 

頭上にあるクレーンや、足下にあるマシンアームによって、艦娘達の攻撃用装備が装着されていく。

装着された瞬間、生体同期機能によって艤装のデータがCMSに反映される。

 

「え?」

 

「この装備は……!」

 

艦娘達が驚きの声を上げる。

 

『ちっと扱い辛いかもしれんが、ただ倉庫の肥やしにしちまうのも勿体無いからなぁ……嬢ちゃん達なら上手く使えるだろう?上手くやってくれや』

 

港内に整備主任の声が響き渡る。

どうやら、通常装備ではない装備を持ってきてくれたようだ。

 

機関部艤装にカードゲームのカードのような物がセットされる。

 

『システムチェックコンプリート。対深海棲艦戦闘補助プログラム起動。データバンクアクセス、コネクト。CMS全工程終了、ドック注水完了、出撃準備完了』

 

ルナが出撃準備が完了した艦娘達に告げる。

 

 

「必ず!!生きて戻って来るように!!

全艦、出撃せよッ!!」

 

 

『各艦の健闘を祈ります。出撃して下さい』

 

ブザーが鳴り、出撃港正面のゲートが開く。

 

「全艦、両舷前進微速。奄美部隊、出撃するネ!follow me!皆さん、ついてきて下さいネー!」

 

「慢心してはダメ……全力で参りましょう!」

 

「青葉取材……いえ、出撃しまーす!」

 

「行くぞ龍田!出撃するぜ!」

 

「ふふっ、天龍ちゃんたら〜」

 

「駆逐艦吹雪!出撃します!」

 

奄美の艦娘達が港から海原へと、滑るように海面を航行していく。

 

ーーーーーーーーーー

 

「全艦、単縦陣!第三戦速!」

 

港を抜けると即座に速度を上げる。

この戦いは時間との勝負と言っても過言ではない。

 

前線で戦っている仲間達がやられてしまえば、本格的に打つ手が無くなってしまう。

 

「アオバ!enemyはドコデスカー!?」

 

「このまま大島海峡を抜けて、皆津崎の南方、距離およそ7,000!!」

 

「艦隊!進路、1ー3ー0!」

 

「進路1ー3ー0、よーそろー!」

 

奄美の艦娘達は敵のいる方向へと進路を取る。

 

「金剛さん!味方部隊を右前方に視認!」

 

吹雪が前方を指差す。そこには、一足先に向かった護衛艦隊や、一番初めに敵を発見した哨戒艦がいた。

 

「流石フブキー!目が良いネー!」

 

どうやら動けなくなった哨戒艦を曳航しつつ撤退をしている様子だったが、そこに派遣艦隊の艦娘達の姿は無かった。

 

金剛は発光信号で護衛艦の一隻と連絡を試みる。

 

タ・ス・ケ・ニ・キ・タ。ジョ・ウ・キョ・ウ・シ・ラ・セ

 

 

ーーカ・ン・シャ・ス・ル。カ・ン・ム・ス・タ・チ・イ・マ・ダ・コ・ウ・セ・ン・チュ・ウーー

 

 

なんて事だ。恐らく、派遣艦隊の艦娘達は航行不能になった哨戒艦の曳航を護衛艦隊に任せ、自分達は深海棲艦を食い止める為にその場に残ったのであろう。

 

金剛は再び発光信号で、退避する旨を伝えると赤城の方を振り向いた。

 

赤城は全てを了承した様に頷くと、矢筒から矢をスッと引き抜いた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

派遣艦隊、第二遠征部隊旗艦『五十鈴』は苦戦を強いられていた。

 

「くっ……このっ!」

 

五十鈴は通常装備である対空機銃で敵艦載機を迎撃する。

しかし、記憶兵装でグレードアップすらしていない機銃では全くもって歯が立たない。

 

五十鈴のすぐ近くに爆弾が投下される。

炸裂した爆風に五十鈴は煽られる。

 

「きゃあぁっ!?」

 

危うくバランスを崩すところだったが、何とかもちこたえた。しかし、直撃が無いとはいえ、多数の至近弾を喰らい続けたせいか、装甲の耐久力は既に半分を切っていた。

 

「五十鈴さん!我々も撤退しましょう!」

 

とある駆逐艦娘がそう進言する。

 

「バカ言わないで!私達が撤退したら、誰が前線を支えるの!?それこそ基地が落ちるわよ!増援が来るまで何としても時間を稼ぐのよ!」

 

そうは言うものの、遠征部隊は満身創痍といって差し支えが無いほどだった。

 

元々、遠征からの帰還途中で燃料なんて殆ど残っていないのだ。それに疲労もある。ましてや、対空兵装なんて積んでいるはずも無い。

 

「第二次攻撃、来ます!!」

 

「考える暇も与えてくれないのね。各艦!回避運動続行!なるべく敵を撹乱させて!」

 

遠征部隊はバラバラに回避運動をとる。五十鈴だけでなく、他の艦娘達も直撃こそ無いものの、至近弾等で相当傷ついている。

直撃なんて喰らったら、一瞬で御陀仏だ。

 

敵機が攻撃を開始する。爆弾や魚雷、機銃掃射などが遠征部隊を襲う。

 

艦娘達は持てる火力全てを空に向け、あらん限りの弾幕を展開しつつ、回避運動を続けた。

 

巧みな操艦で敵機の攻撃を避けていくが、如何せん数が多すぎる。

 

ついに五十鈴の背中に一発の爆弾が命中した。

 

「ーーッ!!」

 

声を上げる間もなく、爆発によって五十鈴は吹っ飛ばされる。

 

「………機関部に被弾……航行不能……か…」

 

爆弾は不運にも五十鈴の艤装の機関部を直撃しており、そのせいで機関の動作が止まってしまっていた。

 

「不味い!」

 

「五十鈴さん!」

 

駆逐艦娘が五十鈴の事態に気づき、助けようとするが、敵の攻撃で思う様に動けない。

 

そんな五十鈴を狙って、敵艦載機が数機、海面近くに降りて魚雷を投下しようとしてきた。

 

即座に機銃を向け発射しようとするが、弾は出ず、ただカシン、カシンと乾いた音が響くだけだった。

 

(そんな!?こんなときに弾切れなんて……!)

 

五十鈴は自らの運命を悟った。

 

敵機がさらに高度を下げ、投下体制に入る。

 

その時だった。

高らかにプロペラ音を轟かせながら、五十鈴の真横を白い何かが高速で通り抜ける。

 

敵機とすれ違うと、敵の艦載機は全て火を噴き、海へと墜落していった。

 

「あれは……!零式艦戦ニ一型(ニイイチ)!?」

 

「大丈夫デスカー!?生きてマスカー!?」

 

五十鈴の背後から声が掛かる。

振り向いてみると、金剛達が手を振っている。

 

「増援……!助かったわ……でもなんで奄美のE型が?戦闘出来ないんじゃないの?」

 

「その言葉、今のお前にそっくりそのままお返しするぜ。いいから俺たちに任せておけ」

 

側にやってきた天龍が五十鈴に肩を貸して立ち上がる。

 

「でも……敵は彼奴らだけじゃないわ。ヤツらの背後に本隊が控えてる。あなた達だけでどうにかなるとは……」

 

「うるせぇ!大破した軽巡がゴチャゴチャ言うな!さっさと駆逐共とこの海域を離脱しな。こっからは俺たちのショーだ」

 

五十鈴は天龍の顔を見ると、ふっと笑った。

 

「あなた、変わったわね」

 

「だーかーらー!さっさと逃げろっつってんだろ!」

 

「……了解したわ。第二遠征部隊はこの海域を離脱します。後は頼んだわ。くれぐれも無茶しないでよね」

 

「誰にモノを言ってんだ。お前こそ、撤退途中で沈むなよ」

 

五十鈴を遠征部隊の駆逐艦娘に引き渡すと、天龍は踵を返し、砲弾を装填する。

 

「派遣第二遠征艦隊は全艦、損傷はあれども離脱を始めたわ〜。私達はどうするのかな〜?」

 

龍田が金剛に状況を報告し、指示を仰ぐ。

 

「決まってるデース!敵艦隊を撃破シマース!」

 

「了解したわ〜。死にたい(ふね)は何処かしら〜?」

 

「吹雪!俺について来い!敵空母の周りにいるヤツらを潰すぞ!」

 

「了解ですっ!」

 

天龍、龍田、吹雪が速度を上げ、敵艦隊目掛けて突っ込んでいく。

 

「チョっ…!チョットぉ!旗艦は私なのにぃ〜!」

 

金剛が先走って行ってしまった天龍達にそう言う。

 

「しょうがないデース……アカギ、彼女らに直掩機を出してあげて下サーイ」

 

「了解、行くわよ零戦(ゼロ)……!」

 

赤城が矢を射る。風を切って飛んでいく矢が光に包まれると、次の瞬間には白い戦闘機になっていた。

 

零式艦戦ニ一型。

整備主任が赤城に渡した艦載機は、九六艦戦ではなく零戦だったのだ。

 

そうこうしてる合間にも、先に放った零戦が敵の艦載機を次々と撃墜していく。

 

「続けて、艦爆隊、艦攻隊!発艦始めっ!」

 

矢継ぎ早とは正にこの事。とてつもないスピードで赤城は矢を放ち続ける。

 

放った矢は『九九式艦上爆撃機』と『九七式艦上攻撃機』となって大空へと飛びだっていった。

 

「制空権確保は確実ですねっ!」

 

青葉が嬉々として飛び跳ねている。

 

「青葉さん、慢心は駄目ですよ。引き続き、対空警戒をお願いします」

 

「青葉、了解でーす!」

 

「これは私も負けていられないネー!艦隊、第五戦速!敵に突っ込むヨ!」

 

金剛達は機関を唸らせ、敵艦隊に突っ込んでいった。

 

 

 

【3に続く】

 

 

 

 




またまた続きます(^^;;
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