記憶の海 〜Indelible memory〜 作:Ar kaeru Na
アレは嘘だ。
とかなんとかいってすみません、予想以上に文字数増えたのでもうちょい続きます(^^;;
次回で!二部!完結に!します!
ー前回のあらすじ的なー
基地に迫り来る深海棲艦を迎撃する為に出撃した奄美部隊。
しかし、撃破した敵部隊はただの前衛で、本隊ではなかった!
新たに現れた『戦艦ル級』率いる敵部隊を迎え撃つ為、奄美部隊は、臆する事なく立ち向かっていく……
memory12-4
「針路3-0-0、速度そのまま!」
金剛達は、ル級率いる敵艦隊の左舷側をすれ違うように進路を取る。
「敵艦種確認、戦艦ル級1、雷巡チ級2、軽巡ヘ級1、駆逐ロ級2です!」
「雷巡とは……先手を打たれると厄介だな」
「出来ればル級と一対一が望ましいのデスが……」
「なら、私達はル級以外をひきつければいいわね~?」
龍田がそう言うのと同時に、チ級が2隻、艦隊から離別して違う方向へと向かって行く。
「不味い……!あの方向は、赤城さんと吹雪ちゃんの……!」
青葉がそう声を上げる。恐らく赤城は修理と補給を終え、今まさに発艦作業へと移っている頃だろう。
その発艦間際の時に雷巡による無数の雷撃をくらえば、かなりの装甲を持つ赤城とはいえ、ひとたまりも無い。
それに2隻ともなると、護衛についている吹雪だけでは対処が出来ない。
「くっ……マズイぞ……!」
「天龍さん、龍田さん、ここはこの青葉に任せて、早く!」
「お前、何言ってんだ!俺らが抜けたら、お前ら2人で4隻相手だぞッ!ランチェスターで言ったら確実に死ぬぞ!」
「それ単純な計算の場合ですよね?重巡の力、今こそ見せてやりますよ。ほら、さっさと行った行った!」
「ちっ……!しょうがねぇ、龍田!」
「沈んじゃ駄目よ~?」
2人はそう言い残すと、チ級を追って艦隊を離脱した。
「……アオバ、旗艦はワタシデスヨ?」
「あっ、いやぁ、スミマセン……でも、大見得切った手前、ちゃんと御守りしますよ!」
「まぁ、どの道そうするつもりでしたケド。それでは、行きますヨ!」
金剛と青葉は、ル級目掛けて突撃をかける。
護衛についていた駆逐ロ級と軽巡ヘ級が、速射性を活かした砲撃で、雨のような砲弾を金剛と青葉に浴びせる。
ル級の砲撃ならいざ知らず、駆逐級や軽巡級の砲撃など、戦艦や重巡の装甲を撃ち破る程の攻撃力は無い。それこそ至近距離で撃たれない限りは。
金剛と青葉は
「これくらいなら至近距離で撃たれてもバイタルは抜かれませんね」
「確かに、砲撃では致命傷は受けマセンが、奴らは魚雷を持ってマース。迂闊に近付けマセン」
金剛が駆逐ロ級に向けて副砲の15.2cm単装砲を速射する。瞬く間にロ級は炎に包まれ爆沈していった。
しかし、ロ級は置土産とでも言うように、沈没直前に魚雷を発射していた。
「sit!取舵回避!」
金剛は左に舵を切って魚雷の合間をすり抜ける形で魚雷を回避しようとする。
青葉もそれに続こうと取舵を掛けた時、青葉の右側に白い
「魚雷っ!?そんな、どこから!?」
見ると航跡の元、敵艦隊から後方に離れた所に軽巡ヘ級が、此方を嘲笑うように見ていた。
現在の距離で駆逐ロ級の雷撃を受けた場合、回避する為には魚雷と並走するしか方法は無い。
そして、並走状態に入ってしまうと、魚雷が通り過ぎるまでは舵が取れなくなる。
敵艦隊はそれを狙って、ル級を囮にし、ロ級からの雷撃で、狙い通りのコースに金剛と青葉を誘導させ、あらかじめ後方に待機させていたヘ級に雷撃による狙撃を敢行させたのだ。
深海棲艦の魚雷は不思議な物で、艦娘に直撃しなくても的確にダメージの入る範囲で爆発する。
その為、ダメージを最小限に抑える為には、
ヘ級の魚雷が青葉に到達し、水柱を上げる。
「ーーッ!アオバーーッ!」
「……そんなに叫ばないで下さいよ金剛さん。
被雷した青葉だったが、幸いな事に浸水も無く作戦続行が可能だった。
「ふふん、重巡の対魚雷防御をなめてはいけませんよ。榴弾装填、一番、発射!!」
青葉は手に持っていた
放たれた2つの砲弾はヘ級を挟み込むように着弾した。
「弾着確認、狙いそのまま、二番、テェーーッ!」
青葉は続けて射撃を行う。一発目が
通常弾よりも炸薬が多い榴弾を使ったかいもあって、へ級は大炎上を起こした。戦闘力を喪失したへ級の沈没も時間の問題であろう。
「huu~♪やりますねアオバ!」
「いや~それ程でも~って、金剛さん、前!前!」
金剛が前を振り向くと、その進路の先にはル級が砲塔を此方へ向けて睨みつけていた。
反航戦状態から敵艦隊のいる方向に舵を取ったため、丁字戦不利の状態で金剛は敵艦隊に接近していたのだった。
漆黒の砲口が金剛に狙いを定める。
「金剛さんっ!危ない!!」
ル級の16inch三連装砲が煌めいたのはその直後だった。
ーーーーーーーーーー
「ちぃッ!あの雷巡速いぞ!」
天龍と龍田は、赤城を狙って艦隊から離別した雷巡チ級2隻を追っていた。
雷巡ーー重雷装巡洋艦とは、その名の通りその身体に大量の魚雷を装備した艦の事を言う。
時として、戦艦すら一撃で沈める事がある魚雷を、通常艦艇の数倍以上も載せているのだ。
すると、2隻の内の1隻がくるりと此方を向き、天龍と龍田へ攻撃態勢をとった。
「おっ、やっこさん、やる気らしいぜ」
「よほど死にたいのねぇ~」
チ級が、装備している5inch単装高射砲を天龍と龍田に向けて発砲する。
「龍田!挟み込むぞ!」
「分かったわ~!」
天龍が右、龍田が左に分かれる形でチ級を挟み打つ。
チ級は龍田を砲撃で牽制しながら、天龍に向かって大量の魚雷をばら撒いた。
「そんな狙わずの魚雷なんて、幾ら撃っても無駄だ!」
天龍は迫り来る無数の魚雷を、スイスイと避けていく。
(おかしい……いくら考えが読めない深海棲艦でも、こんな適当に魚雷をばら撒く筈がない。何が目的だ?時間稼ぎか?)
そんな事を思いながらも、魚雷群を避けつつ、14cm単装砲をチ級に向けて撃つ。
数発がチ級に命中したが、魚雷発射能力を奪うまではいかなかった。
その時だった。天龍の背後に凄まじい衝撃と共に水柱が立った。
その衝撃に天龍の身体が宙に浮く。
「うおぉッ!?何だ!?」
振り返ると、数えられない程の白い航跡がこちらへと向かってきていた。
「魚雷!?まさか、
この魚雷群は間違いなく、天龍と交戦していた個体とは別の、もう1隻のチ級から放たれたものだった。
つまり、挟み打ちをしようと思っていたこちらが逆に挟み打ちを受けてしまったのだ。
「やってくれるじゃねぇか……!」
天龍は魚雷群を振り切ろうと舵をとるが、とても避けきれる数では無い。
天龍は砲を海面に向けたまま、白い航跡から逃れるように突っ走っていたが、数秒後、無数の巨大な水柱に包まれ、姿が見えなくなった。
「そんな、天龍ちゃん……!」
小破したチ級からの5inch単装高射砲の砲撃を受けつつ、天龍の様子を見守っていた龍田は、天龍が被雷したと悟ると、憤怒の眼差しをチ級へと向けた。
「よくも……天龍ちゃんを……!!」
龍田が両手を前に突き出すと、その手にはいつの間にか対艦薙が握られていた。
龍田はチ級の方へ進路を取る。そして、驚異の射撃力で砲弾をチ級へと叩き込んでいく。
チ級はエネルギーフィールドで砲撃を防いでいるが、先のダメージと重なって防御能力は飽和状態に陥っているようだった。
「やああぁぁぁああッ!!」
龍田は舵による旋回と己の薙刀を振るう遠心力を使い、渾身の力でチ級へと斬りかかった。
既に防御能力が消えかかっていたチ級のエネルギーフィールドは完全に粉砕され、深海棲艦用に造られた龍田の対艦薙が、チ級の胴体を一刀の下に両断した。
残った魚雷が誘爆し、チ級は大爆発を起こして爆沈する。
爆風の煽りを受け、龍田も多少のダメージを負ったが、龍田の気はそこには無い。
「天龍ちゃんっ!無事なら返事して!」
「おうおう、ここにいるぜ~」
ハッと声のした方を見ると、天龍がプカプカと海面を漂っていた。
「天龍ちゃん、無事だったのね」
「あの程度で沈む訳無いだろ?ただまぁ、かなり装甲を消費しちまったのと、幾つか装備が持ってかれたな」
背中の艤装をクイっと親指で指差す。見ると、14cm単装砲がひしゃげて使い物にならなくなっている。
「でも、あの魚雷群をどうやって?」
「あぁ、先頭の魚雷を主砲で撃ち抜いて誘爆させてやったのさ。被雷する前にな。しかし、結構爆風が効いたんで、装甲の損傷率は4割超えてる。もうちょいで中破判定だったな」
天龍はへらへらと話しているが、姿を見る限り相当堪えたようだ。
「俺を嵌めるとは中々やるじゃねぇか。御礼詣りに行かなくちゃあな……ところで龍田、もう1隻は?」
「っ!しまったわ、もう赤城達を攻撃できる距離に……!」
「吹雪と一対一か。急ぐぞ龍田!」
ーーーーーーーーーー
「…………来ましたね」
赤城が、矢を肩に装備している飛行甲板艤装に矢をセットしながらポツリと呟く。
飛行甲板艤装にセットされた矢は、暫くの後に、鮮やかに輝き始めた。
「あと、発艦準備が終わってない矢は8本……ギリギリ間に合わないわね」
このままでは、敵からの攻撃が始まってしまい、安全に艦載機を発艦させる事が困難になってしまう。
「こんな時の為に、私がいるんです!」
吹雪が赤城の前にシャキンと立つ。その視線は雷巡チ級を捉えていた。
「ごめんなさい吹雪ちゃん……発艦準備が整うまで、あの深海棲艦を近づけさせないで!」
「了解です!吹雪、行きます!」
吹雪はチ級に向かって突撃を掛けた。
「TtttiiiyyyYYYyyyaaaaAAAAaaaa!!!」
チ級が雄叫びのような声を上げ、砲撃を開始する。
重雷装に改装されていても、相手は巡洋艦級。砲のサイズがほぼ同じとはいえ、射撃管制装置の差で射程距離は駆逐艦の吹雪よりも長い。
頭上から降り注ぐ砲弾を、駆逐艦特有の軽々しい操舵でかわしていく。
砲撃が当たらない事にイラついたのか、チ級はもう一度雄叫びを上げると、大量の魚雷を吹雪目掛けて発射した。
「面舵っ!」
吹雪も予想していただけあって、発射された瞬間に舵を切って、即座に射線から逃れる。
しかし、重雷装の名は伊達では無く、駆逐艦のスピードを持ってしても、数の暴力からは逃れられない。
1本の魚雷が、吹雪をギリギリ捉えるコースにあった。
「後進一杯!!」
吹雪は後進を掛け、急減速を図る。そのおかげで、吹雪の目の前を魚雷が通り過ぎていく。
吹雪がホッと胸を撫で下ろそうとした時、その魚雷が何故か勝手に爆発した。
「っ!?」
その爆圧に吹っ飛ばされ、吹雪は海面を転がった。
そして、不運にも転がった先には雷巡チ級がこちらに魚雷発射菅を向けていた。
モロに爆圧を受けた為にロクな受け身も取れずに海面を転がった吹雪。立ち直るには数秒の時間を必要とした。
しかし、チ級はそんな事御構い無しだ。魚雷発射菅を稼動させ狙いを定める。
復帰が間に合わない。吹雪は戦慄した。
ズガシュッ、とそんな風に音がした。
吹雪は魚雷が発射された音だと思い、咄嗟に目を瞑ってしまったが、いくら待てども魚雷はやって来ない。
恐る恐る目を開けて見ると、チ級の胸の辺りから、トゲのような物が突き出ている。
よくよく見てみるとどうやら対艦ブレードのようだ。
「油断が一番の敵だぜ、チ級よ。最後の最後で油断したな」
チ級の背後から声が聞こえ、対艦ブレードがチ級の身体から引き抜かれる。
チ級はそのまま倒れるようにして沈んでいき、その場には対艦ブレードを携えた天龍が立っていた。
「天龍さん!救援に来て下さったんですね!」
「私もいるわよ~」
龍田が赤城と共に現れる。赤城も発艦準備が整ったらしく、矢の全てが新品同様に光輝いていた。
「本当に助かりました。ありがとうございます!」
「おぅ、大丈夫だ。そして、ひと段落したところ申し訳ないが、今度はウチの旗艦様が危険な状況だ」
金剛の方は、青葉がいるだけであって、とても危険な状態だった。それでいて、ル級を含めた4隻と交戦しているのだ。
「本来なら俺がすぐさまトンボ返りしたいんだが、さっきチ級に喰らった魚雷が堪えてな。速度が出せないし、主砲も
「は、はい!了解しました!」
「いいか吹雪。相手に一番デカイダメージを与える方法はいつの世も奇襲に限る。お前は駆逐艦だから、相手に気付かれにくい。相手の至近距離から ”ソイツ” をお見舞いしてやれ」
天龍は吹雪の太もも辺りに装備されている物を指差す。戦況をひっくり返せる、海戦の
「私も艦載機で吹雪ちゃんをサポートするわ」
吹雪は赤城達に礼を言うと、機関一杯に金剛の下へと疾駆した。
【5に続く】
次回!決着!(本当か?