記憶の海 〜Indelible memory〜 作:Ar kaeru Na
〜前回までのあらすじ〜
突如現れた戦艦ル級率いる深海棲艦の艦隊。
発艦準備中の赤城に向かった雷巡チ級を撃破する為、天龍、龍田が奮戦する。そして吹雪は、ル級と戦う金剛と青葉を助けに向かった。
そんな中、旗艦金剛にル級の凶弾が襲いかかる!
「金剛さんっ!危ないっ!」
青葉が悲鳴にも近い叫び声をあげるとほぼ同時、ル級の砲門が煌めいた。
近距離帯で放たれた砲弾を避けられるはずも無く、金剛は被弾した。
「ぐうぅぅッ!」
運が良かったのか、機関部やバイタルパートに被害は無かったのだが、
(助かりマシタ……でも、装甲損傷率は72%も……16inchのど真ん中直撃で一発轟沈しないだけ重畳デスが、あと一撃喰らえば、装甲は維持出来ずに崩壊しマスネ……!)
金剛は一度距離を置こうと、後退しつつ砲撃を敢行する。
幸いにも、攻撃兵装に目立った被害は無く、戦闘力の低下は見られなかった。
しかし、砲撃1つで金剛の粒子装甲防壁の耐久値の3分の2以上を減らすル級の砲は、恐怖以外の何物でもなかった。
ル級から距離を取ろうとする金剛に対し、ル級は距離を詰めようと接近してくる。
高速戦艦である金剛のほうが速力が高いのだが、ル級の砲撃を避ける為、
「このぉ〜!私だって居るんですよっ!」
周りの敵を蹴散らした青葉が加勢に入る。
効かないと分かっていても、金剛から注意をそらす事が出来ればと、主砲を発射する。
ル級はそれを軽く弾くと、砲塔の1つを青葉に向け、砲を放つ。
一瞬のうちに青葉の周りに水柱が乱立する。
「うわぁぁああ!!」
直撃弾無し。至近弾を数発喰らったに過ぎないのに、青葉の装甲システムは『小破』の判定を下している。
「駄目だ……!とてもじゃないけど接近出来ない……!」
青葉は一度、距離を取るようにル級から離れる。
ル級は青葉を一瞥すると、再び砲塔を金剛へと向けた。
対する金剛もル級に主砲を向けている。
「今度は此方のターンネ、fireーーッ!」
金剛が体勢を立て直し、ル級に一番、二番主砲を発射する。
しかし、放たれた砲弾はル級の手前に着弾し、大きな水柱を立てただけだった。
ル級はニヤリと微笑むと、自身も砲撃を行おうとする。
水柱が崩れ落ち、視界が開いてくると、ル級にとって予想外の一撃が降ってきた。
ル級の
「shit!当たりどころが悪かったネ……!」
ル級はギロリと金剛を睨む。見ると、金剛の三番、四番主砲が煙を吐いている。
金剛は第一射を目眩しに使い、第二射を確実に当てようとしたのだ。
「RrrruuuUUUyyiiGgaaaaaAAAaaa!!!」
ル級は言葉になっていない叫声を上げると、金剛に向け、砲を乱射する。
「アララ……怒っちゃいマシタ?」
金剛の周りに幾つかの砲弾が降り注ぐ。現在の粒子装甲防壁では、至近弾でも
(とにかく、テンリュー達が戻って来るまで……今は引き撃ちしか無いデス)
金剛は日々の猛特訓で培った操艦技術をもって、ル級の砲撃をかわしつつ、自らも砲撃を行う。
「金剛さんっ!大丈夫ですか!?」
「no problem!アオバはル級の射程外に退避していて下サイ!」
金剛はそう答えるものの、ル級の攻撃は一層激しくなり、じりじりと追い詰められている事は明白だった。
(今の旗艦直掩は私だけ……自分が守られるとは、何という不覚……天龍さん達にも言ったじゃない……旗艦を守れずして、何が旗艦直掩か……!)
青葉はぐっと拳を握り締めると、最大戦速、進路をル級に向けた。
「驕るなっ!
ル級は、自ら向かってくる青葉に気付くと、ニヤリと笑い、砲塔をそちらへ向ける。
「アオバ!?何やってるんデスカ!早く退避を!!」
青葉は金剛の制止を聞かずに、更に速力を上げ、ル級との距離を一気に詰める。
ル級は、確実に砲撃を当てる為に砲を微調整している。
青葉は砲門が此方へ向いているのを知りながら、尚も真っ直ぐに距離を詰めていく。
そして遂に、ル級が砲を放った。
「……っ!」
自分の身体を貫こうと飛んできたル級の砲弾を、青葉は装甲を展開し防ごうとするが、容易く貫通され、青葉の後方に着弾する。
「あぁッ!」
その後方からの衝撃で、青葉は前方ーール級の目の前ーーに飛ばされた。
その距離、およそ1,000m。
全ての艦において、外す事が無い、必中の距離。
この距離で、戦艦クラスの主砲に撃たれたのなら、言うまでもなく、消し飛ばされるだろう。
しかし、青葉は笑った。
「この時を待っていました!!」
ル級に16inch三連装砲を向けられ、絶体絶命の中、青葉はその背中の艤装に取り付けられた兵装を、ル級に向け返す。
「再装填は完了済みです!噴進砲、発射ッ!!」
12cm30連装噴進砲から射出された12cmロサ弾が、白煙の尾を引いてル級へと飛んでいく。
しかし、もともと対空武器である12cm30連装噴進砲を、深海棲艦でも最高クラスであるル級の装甲、どころかダメージを与えることすら出来ない。
「Ru……ッ!?」
ダメージが無い事に安心したル級だったが、自らの周りを見て驚愕した。
ル級に向かって飛んできた12cmロサ弾の白煙や炸裂した時の煙で、ル級の周りは煙幕に包まれたようになっていた。
つまり、視界がほぼゼロ、金剛と青葉を
「金剛さん!!今ですッ!!」
何処からか青葉の声が響く。
その声に混乱から脱したル級が、砲撃の風圧で煙を吹き飛ばそうとした時だった。
「うおおおおぉぉぉぉおおおおっ!!!」
ル級の真横から飛び出した金剛、その拳がル級の顔に突き刺さった。
間髪入れずに金剛は
しかしその追撃は、大楯のような主砲塔に防がれた。
防いだ勢いのまま、ル級は金剛を跳ね飛ばす。
再度、砲口を金剛へ向け、消し炭にしようと試みるが、金剛は逃げるどころか、距離を詰めてきた。
ル級は顔を歪ませる。手の届くような至近距離で主砲を放てば、その衝撃で自らも少なからず被害を受けるだろう。
逆に言えば、金剛にとってはル級の
しかしそれは「砲撃」に限った事である。
「ル級よ……
殴り合いの距離までくると、両者とも砲撃が出来ない。自然的に格闘戦となる事は必至だった。
「RuuuuGiiiiiaaaaAAAaaa!!!」
ル級も両手に持っていた主砲塔の1つを海に捨てると、金剛の拳を避け、フックを仕掛ける。
金剛は、艤装を身に付け、体内ナノマシンを覚醒状態にしている身、そのフックを超動体視力で完全に見切ると、空いたル級の脇腹に鋭い横蹴りを叩き込んだ。
「その様子じゃ、格闘戦は不慣れなようデスネ。ニッポンのカラテを得と味わうデース!」
金剛はル級に次々と打撃を叩き込んでいく。
「はぁぁああ……ッ!!」
金剛の裂帛の気合いと共に、鋭いパンチがル級にクリーンヒットする。
ル級がよろめいて後ろに下がる。
「これで終わりネ!」
金剛が、加速の勢いと共にル級に拳を繰り出す。
「rrRuuuuGyaaaAAAAAAaaaaaa!!」
しかし、金剛の拳はル級には届かない。ル級に届く寸前で金剛の拳が止まっていた。
「エネルギーフィールド……!ル級の装甲……デスカ……!?」
金剛は押し切られまいと力を振り絞るが、ル級のエネルギーフィールドが大きく展開され、金剛は逆に吹っ飛ばされ、海面に転がる。
「まさか……装甲の展開の仕方で……こんな方法があるトハ……!」
金剛は既にル級の砲撃を喰らって、装甲はボロボロ。そしてここにきてエネルギーフィールドの展開によって吹っ飛ばされる。
正直、金剛もボロボロだった。今現在向けられている16inch三連装砲を避ける事は、多分無理だろう。
ル級が何度目になるか分からない微笑みを金剛へ向ける。
今度こそ追い詰められた金剛だったが、狼狽えた様子は無い。
それどころか逆に微笑さえ浮かべている。
「それで勝利したつもりデスカー?戦いは最後の最後まで油断してはいけないト、教わりマセンでしたカー?」
ル級は、金剛の態度と言葉に疑念を抱きつつも、勝ちを確信した表情で再び砲口を向ける。
金剛はフゥーと溜め息をつくとル級に向け言葉を投げ掛ける。
「アナタのような強大な戦艦クラスでも、一撃で沈めることのある『魚雷』というものを御存知デスカ?」
ル級は怪訝な表情で手を止めた。
「特に大日本帝国海軍の使用した魚雷は、他の国の魚雷と比べて、速度、威力は桁違いに高く、かつ、推進燃料に酸素を使っている為、本来見える筈の航跡が見えないのデスヨ。だから日本の魚雷は『酸素魚雷』と呼ばれたのデース」
ル級は怪訝な表情を一転させ、顔面を蒼白にする。
「気付きマシタカ、いつからワタシが1人だと錯覚していたのデース?」
ル級はハッと背後を振り向く。そこには、身体は小さくとも、その身に宿る信念は誰よりも強いーー駆逐艦の少女が、こちらを見つめていた。
「金剛さん!!助けに来ましたよ!!」
「フブキ!行くのデース!!」
「ru……rU……RUUuuuGYAAAaaaaaaAAAaaaッ!!」
ル級は吹雪を認めるや否や、その主砲を放つ。
しかし、吹雪はそれを軽々と避けると、その脚に装備された必殺の武器を放つ。
「酸素魚雷、一斉発射よ!いっけぇー!!」
九三式61cm酸素魚雷。
かの大日本帝国海軍が当時、世界で初めて実用化に成功した、最強の槍。
ル級は発射される魚雷を見て、回避行動を取ろうとするが、その魚雷が見当たらない。
「忘れたのデスカー?酸素魚雷は推進燃料に酸素を使用している為、航跡が見えないと言ったのを」
ル級は戦慄する。蒼き悪魔、
しかも発射された距離は必中の間合い。
「最後の最後で油断しましたね。チェックメイトデス、ル級。ワタシ達の勝ちデース」
ル級は、言葉にならない悲鳴と水柱を上げつつ暗い海の底へと消えていった。
ーーーーーーーーーー
「艦隊集合。各艦、被害報告」
戦闘が終了した後、金剛は艦隊収集をかけ、被害を確認していた。
「俺は大丈夫って言いたいところだが、主砲は使いモンになんねぇし、装甲損傷率も中々のもんだ」
「私は大した被害は無いわ〜」
「私もです」
「私もです。吹雪ちゃんが決めてくれたおかげで、艦載機の消耗も無かったです」
「こっちもですねー。ただ、噴進砲の残弾はもう無いです。結構高いらしいのに……」
「そんな事より金剛さんの方が酷いんじゃ……」
見ると、奄美艦隊の中で一番の被害を被っているのは金剛のように見えた。
「まぁ、ル級と殴り合って良く沈まなかったモノデス……自分でも怖いデス……」
「ま、まぁ、勝てたんですしいいじゃ無いですか。それより、ル級を倒した事でジャミングが解除されてる筈です。基地と連絡を取りましょう」
赤城の言葉に頷くと、早速無線機を取り出し、基地と連絡を取る。
「Hello、こちら奄美艦隊旗艦、金剛デース。奄美基地、応答願いマース」
『……っ!金剛か!?心配したぞ!』
「あぁーその声はショーイデスカ。戦果報告するデース。敵本隊の撃滅を完了、ワタシ達の作戦はall completeデース!!」
『そうか!良くやってくれた。埠頭で待ってるから、早く帰投してくれ』
「了解デース」
そんな短いやり取りをした後、金剛は艦隊のみんなを見る。
「それでは帰りましょうカ」
全員が安堵の表情を浮かべ、帰路に着こうとしたその時だった。
「……ん?なんだ、
「どう言う事?天龍ちゃん?」
そこで、赤城が何かに気付いたように空を見上げる。
そこにはゴマ粒のように見える、黒い無数の点が見えた。
「アレは……敵艦載機っ!?」
黒い点はあっという間に奄美艦隊の上空を埋め尽くし、金剛達に攻撃を仕掛ける。
「何で敵艦載機がっ……空母は沈めたハズでは……!?」
「こっ、金剛さん!!敵艦隊視認!相手は……空母ヲ級ですっ!」
「そんな……まさか……!?戦艦ル級の艦隊は囮で……こちらが、敵本隊……!?」
動揺する奄美の艦娘達。そんなことを知るよしも無く、敵艦載機は、艦娘達に攻撃を仕掛けてくる。
「全艦単縦陣!!全速でこの海域から離脱するデース!!」
「おい待て!俺たちが逃げたら今度こそ、基地は壊滅だぞ!!」
「そんな事、百も承知デース!しかし、今は一回体勢を立て直す必要がありマス!全艦、ありったけ出すデース!!」
奄美の艦娘達は、取り乱しながらも退避を試みる。しかし、敵艦載機がそれを許さない。
(やはり、燃料をほぼ使い果たしていて、かつ先の戦闘でのダメージと相まって、逃げ切るのは不可能のようデスネ)
「ならば……対空戦闘用意!」
各艦は持ちうる限りの対空火器を空に向ける。
「うちーかたー始め!絶対に生き残るんデース!!」
「くぅ!こんな事になるなら、噴進砲の弾をもっと持ってくるべきでした」
襲いくる艦載機を、既にボロボロな艦娘達は全力で迎撃する。
赤城も隙を見て零戦を発艦させるが、瞬く間に撃墜されてしまう。
「そんな……ニイイチでは敵わないと言うの……!」
天龍と龍田も、標準搭載の機銃を艦載機に向けて放つ。しかし、通常兵装の武器では全く役に立たない。
「チィっ!こいつら、結構厄介だぞ!」
「突撃を掛けようにも、燃料弾薬共に残り僅か。万事休すかしらぁ〜」
降り注ぐ爆弾や、迫り来る魚雷を吹雪はギリギリでかわしていく。
「ここで私達がやられるわけにはいきません!!」
しかし、いくら迎撃しても敵機の数は減らない。それどころか数を増して、より激しい攻撃を仕掛けてくる。
「マズイ……!もう装甲が持たないデース!」
「くっそぉ!燃料がすっからかんだ!」
「こっちも弾薬が尽きました!」
もはやこれまで、奄美の艦娘達が絶望に飲み込まれる直前、一陣の風が吹き抜けた。
そして次の瞬間には、敵機は爆発四散し、みるみるうちに数を減じていく。
「……何が起こっているの?」
それに応えるように、無線機から声が聞こえてきた。
『二航戦、推参ッ!』
『赤城さーん、助けに来ましたよ!』
「その声は……飛龍と蒼龍!?」
空に二航戦の2人が放ったのであろう零式艦上戦闘機五二型が、瞬く間に敵機を駆逐していく。
『航空戦艦伊勢、只今参上!ヲ級は任せといて!』
『援護に来た。奄美部隊は速やかに戦闘から離脱してくれ。深海棲艦よ、航空戦艦の真の力、思い知るがいい』
「イセ……それにヒュウガも!」
「た……助かった……」
思いがけない援軍のおかげで、奄美部隊は窮地から脱する事ができ、敵本隊も撃破する事が出来た。
今度こそ、奄美部隊は作戦を完了し、基地を深海棲艦から守り抜いた。
艦娘達が帰投すると、基地の人々が、手を振って出迎えてきてくれた。
しかし、その中にルナの姿は見当たらなかった。
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一週間後。
奄美の艦娘達はいつものコテージに集まっていた。
「少尉、帰ってきませんね……」
吹雪が寂しそうにそう言う。
「確かに、島を守る為とは言え、明らかな越権行為でしたからね……」
青葉がうんうんと相槌をうつ。
「良くて謹慎、悪くて左遷か解雇かしらね〜?」
「龍田、それなかなかに洒落になってねーぞ」
「ワタシ達の指揮官、変わってしまうのデショウカ……」
金剛の言葉に、皆黙り込んでしまう。
「あれから一週間、そろそろ何かあっても良い頃ですけど……」
赤城のその言葉の後に、コテージの扉が勢いよく開け放たれた。
見るとそこにはライラが立っていた。
「ライラさん……!」
「総員整列!!」
ライラの掛け声に、艦娘達は横一列に並ぶ。
「まず始めに、先日の基地及び本島防衛戦、奮戦御苦労だった。お前達のおかげで平和は守られた」
口ではそんな事を言うライラだったが、言葉とは裏腹に表情は硬い。
「しかし、だ 、貴様らの行った行動は明らかな越権行為、つまり違反だ。本来なら軍特権持ちのCMSの貴様らにも何かしらの処罰が下るのだが………」
「だが……?」
「貴様らの ”元” 指揮官がその全責任を負うと進言した。よって処罰は取り消されたという事を伝えに来た」
ライラのその言葉に、艦娘達全員に衝撃が走る。
「なんですって……!?」
「ショーイが……っ!?」
「それに元って……」
吹雪が一歩前に出て、ライラに質問をする。
「一体、少尉に何を……!」
ライラは吹雪を見据えると、瞳を伏せ、冷たい声で言い放つ。
「栄ルナ少尉は、本件の全責任を負い、その階級と権限の全てを剥奪。本土送りの禁固刑、というのが『中央』の判断だ」
「そん…な…!」
権限の総剥奪。それが行われれば、ルナは二度と軍人として活動する事は出来なくなる。
「てめぇ……仮にもアイツはこの基地を救ってんだぞ!それが『中央』のやり方かッ!!」
「話はそれだけか?こっちも時間が押してるんでな、次の題に行くぞ」
ライラは天龍の恫喝をさらりと流し話を進めようとする。
「少佐が取り合わないと言うならば、然るべき対応をさせて貰いますよ〜?」
龍田がその手に対艦薙を握り、その刃をライラへと向ける。
「ほう、それは脅しか?本気でやり合うとするならば、覚悟は出来ているのだろうな?」
ライラがサーベルの柄に手を掛ける。それと同時、形容出来ない威圧感と殺気がライラから溢れ出る。
それは龍田のみならず、艦娘全員を後ずさりさせるのには充分だった。
「ふん……話を進めるぞ。指揮官不在の中、貴様らの活動を行う事は難しい。よって、新たな指揮官を連れて来た。これに異論は?無いな、では、入れ!」
ライラがそう言うと、扉を開け、新たな指揮官が入ってきた。しかし、その影は見覚えのあるもので……
「「「…………え?」」」
艦娘達が揃って疑問符を頭に浮かべる中、その新たな指揮官は、いつもと変わらない様子で自己紹介を始める。
「おー君達、元気だったか?改めて自己紹介するけど、 ”正式に” 奄美要塞基地所属、『奄美CMS特別部隊』指揮を任された、栄ルナ少尉です。また宜しくな!」
「しょ……少尉!?」
「hey、ライラ!これは一体ドユコトデスカー!?」
「どうもこうも、そういう事だ」
「意味が分かりません!だって少尉は、責任を負って処罰を受けるハズでは……」
「勿論。但し、先程の内容は『中央』のモノだ。ソイツの身柄は我が奄美基地が押さえていた、よってジジイ自ら『中央』と直談判して、処分の内容を我々が決められる様にとケリを付けてきたのだ」
「まさか……その処分の内容って……」
ライラがそれまでの硬い表情を止め、ニヤリと笑みを浮かべる。
「『栄ルナ少尉の奄美基地への無条件所属、及び基地新設部隊指揮官への強制任命』だよ。全く、あのジジイも粋な事をする」
「まぁ、そんな訳で禁固刑は免れた次第だ。また訓練に明け暮れる日々が続くと思うから、覚悟しろ……ってうわぁ!!?」
ルナの言葉を遮り、吹雪がルナへと抱きつく。
「本当に良かった……良かったよぅ……!」
「あの、吹雪サン?その……気持ちはとっても有り難いんですが、少々行動が大胆過ぎると言うか、いや嬉しいんだけどあのですね」
「成る程成る程、少尉はこういうのに弱いんですか?無頓着かと思ったら、やっぱり少尉も人の子ですねぇ」
いつの間にか近づいてきた青葉が、肩に手を掛けつつ背中に抱きつく。
吹雪もそうだが、抱きつくという事は密着しているという事に他ならない為、何とは言わないが、その柔らかさを物凄く、否が応でも感じることになる。
「お、おい!こら青葉離れろ!」
「えぇ〜?吹雪さんがよくて私が駄目ってコト無いでしょうに〜」
「ズルいデスヨ!フブキ、アオバ!ワタシもショーイに抱きつくデース!!」
金剛がそう言って、ルナのもとに飛んでくる。
比喩は無い。飛びつくとはまさにこの事。
「待て待て待て待て待て待てうわあああああああああああああああ!!!」
ルナはそんな悲鳴を上げつつ、艦娘3人の下敷きとなったのであった。
「全く……」
ライラはギャーギャーとうるさくなったコテージを後にした。
外にはトウが待っていた。
「やはり、賑やかなのは良い事じゃの」
「あれはうるさいと言うんだジジイ。耳と頭も悪いらしいな」
「相変わらず毒舌が冴えきってるのうライラ君。して、『中央』の方はどうなっとる?」
「ジジイの無理難題のお陰様で、大量のラブレターが届いたよ、全部ジジイ宛てにな」
「こりゃこりゃ、返信で忙しくなるのう」
「それと、第一、第二艦隊が戻ってきている。頼まれていた物も一緒に置いてある」
「流石、手際が良いのライラ君。《計画》は順調じゃ。何とか《第二段階》もクリア出来たしのぅ。いやぁ〜、奴を言いくるめるのが一番の仕事じゃったな」
「ふん……総司令相手によくやるもんだ」
「ワシはな、期待しているんじゃよ」
「…………あの素体の
「いいやそれよりも、あの心の内に秘める熱き魂の輝きにな」
トウはコテージの方を見つめる。
コテージからは楽しげな声と嬉々とした叫び声が、いつまでも聴こえてくるのであった。
to be continued……
ー物語の記憶ー
・ECM
電波ジャミングの事。深海棲艦のいる海域では電波が通じない事があり、通常通信が出来なくなる時がある。
・防衛班
奄美要塞基地の主部隊。近海に迫り来る脅威から人々を守る。
主な物として、多目的汎用型の改造護衛艦8隻と固定砲台多数がある。
・バイタルパート
艦で言う、重要防御区画のこと。艦娘だと、生体の胴体、頭部分が該当する。
・ランチェスターの法則
1914年、イギリスのフレデリック・ランチェスターによって発表された、戦闘の数理的なモデルのこと。
最も簡単に例えると、戦力が同じなA軍5人とB軍3人が戦闘を行った場合、A軍が勝利し、2人生き残る、というように、戦闘を数学的にモデリングする事が可能になる。
・酸素魚雷
大日本帝国海軍が使用した、世界最高峰の魚雷。推進燃料に酸素系の物を利用する為、本来、二酸化炭素として排出される魚雷特有の泡の航跡が、海水に溶けて泡が見えなくなり、結果、航跡が見えなかった。
主に、九三式や九五式などがある。
長かった第2章がやっと終わりました。疲れた(^^;;
ルナ「作者がそんな事言うんじゃない」
あ、途中の青葉の台詞は某ツンデレ重巡のをお借りしました。
ルナ「そんな事どうでもいいだろ!次回からは幕間と称して、ほのぼの系を少し入れてく予定だ。次回も宜しく!」