記憶の海 〜Indelible memory〜   作:Ar kaeru Na

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コメディ回です。

それと私事ですが、作中に登場するCMSと、欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(ラージハドロンコライダー、通称LHC)内の、汎用素粒子検出器『CMS検出器』のCMSとは一切関係がありません。

あっちは「Compact Muon Solenoid」
こっちは「Combat-bioroid Memory weapon Storage」
です。

期待してた読者の方々には申し訳ないです

それではどうぞ


memory14「青葉の密着取材」

 

 

memory14「青葉の密着取材」

 

 

 

どうも!皆さんこんにちは!

重巡洋艦青葉と申します!

 

今日は天下の休日ということで、いつもの訓練も無く、とても退屈な1日になりそうなので、独占密着取材と称して、栄少尉の休日を皆さまにお届けしたいと思います!

 

休日は休んだ方が良いとは言いますが、私達は艦娘!月月火水木金金なのですよ!

決して、少尉の弱みを握って、訓練後にデザートとかを奢って貰おうなどとは思ってませんよ?

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

時刻、0600(マルロクマルマル)

 

少尉の部屋の前にやって来ました。

少尉の部屋は私達と同じ、基地庁舎別館、艦娘宿舎の二階の端っこにあります。

 

もともとは唯の用具置き場兼倉庫だったんですけど、空き部屋も無かったので泣く泣くあそこを使ってるって小耳に挟みました。

 

以前まではしっかりと鍵が掛かってましたけど、いつしか私が抉じ開けてそのまんまらしいので、すんなりと中に入れます。

 

少尉の部屋は……からっぽです。何にもありません。

せいぜい、部屋の隅に掃除用具ロッカーみたいのがあるだけです。少尉も居ません。

 

実はこの少尉の部屋(倉庫)、2つあるんです!

 

すっからかんの部屋、入って左手に不思議な扉があって、少尉は主に此方の部屋を使ってるらしいです。

 

それじゃ、おじゃましまうー。

 

隣の部屋は、すっからかん部屋と打って変わり、もうゴチャゴチャです。元々、2つの倉庫に分けて保管していた様々な用具が、今ではこちら側の部屋に詰め込まれている状況らしいですねコレ。

 

当然と言っていい程、しっかりとした家具は何一つありません。段ボールが関の山です。

 

そんなこんなで、少尉ってば、段ボール箱をズラッと並べた上に布団を敷いて、そこで寝ているらしいのです。とんでもない貧乏生活ですね。

 

それでは、少尉の寝顔を拝見したいと思います!

 

 

……こうして見ると、ただの子供にしか見えないんですよね~。どうしてこんな小さいのに軍に入れたのでしょうか?少尉の謎が深まるばかりです。

 

取り敢えず、脅し……もとい証拠資料として写真を数枚パシャリと頂きます!

 

 

写真を撮り終わった直後、部屋にテケリリリリ!とやかましい音が鳴り響きます。

これは……目覚まし時計!?

 

そんなバカな!?忙しい人の休日と言えば、お昼頃まで寝ているというのが普通じゃないんですか!?

そんなことより、青葉最大のピンチです……!早い所トンズラせねば……!

 

今、目覚まし時計を止めたところで恐らく少尉は起きてしまうでしょう。

となればここは三十六計を決め込むに限るのですが、私がこの部屋と向こうの部屋を出る前に姿を見られてまうのもマズイです……。

 

よってここは、ロッカーの中に隠れます!

 

寝起き直後には、目を覚ます為に、この部屋から出て下の階の水道で顔を洗いに行くハズ……その隙に私は脱出してしまいましょう!

 

ちょうど私がロッカーに隠れた時、鳴っていた目覚まし時計の音が止みました。

 

ロッカーの隙間から外の様子を確認してみます。

 

中々少尉が起きて来ないので、まさか二度寝したか?と思ったのですが、物置部屋の扉がガチャリと開き、少尉が起きてきました。

 

……なんかまだ眠そうですね。眠たいのならこんな早くに起きなければ良いのに。

 

窓を開けて、背伸びとかしてますね。なんとも清々しい朝です。私も朝の時間が一番好きですけども。

 

あっ、少尉が部屋から出て行きました!きっと顔を洗いに行ったのでしょう。

タイミングを見計らって、ロッカーから出て、さっさと撤退しましょう。

 

それにしても、休日に早く起きるなんて誤算でした。今度からは気をつけましょう。

 

ガチャリ

 

ガチャリ

 

「…………およ?」

 

「………ん?」

 

ちょうど私がロッカーから出た時、少尉が何故か部屋に戻ってきました。

 

「…………これは夢か?ロッカーから青葉が出てきたんだが……」

 

「あ、あれぇーおかしーなー?部屋のドアを開けたら何故かこんな所に繋がってしまったぞ~あはは……」

 

「ってンな事無いだろ何でそんな所から出てくるんだ青葉ァーー!!」

 

「ひぃ!これはマズイです!くらえ煙幕!」

 

こんなこともあろうかと、今日の私はニンジャ御用達の煙玉を持ってきていたのです!

即座に床に投げつけて、部屋を煙で満たします!

 

「ぐわっ、ゴホッゴホッ、何だこれ!?」

 

「ふはははー!アデュー、少尉!」

 

少尉が怯んでいる隙に、ここから逃げます!

 

「し、しまったぁー!煙で何処が扉か分からないっ!」

 

なんと…!青葉最大の誤算です……!まさか、ここまで煙が出て、視界が奪われるとは思っていませんでした!

あの、港町の雑貨屋め……恐ろしいトコ!

 

そんなことより脱出です。取り敢えず壁つたいに行けば扉まで辿り着くハズ。

 

早速そうやって探し回ると、明らかに壁とは違う感触が!

ヨシキタ!とそこの部分を両手で押そうとすると、不思議な事にそこには何もありませんでした。

 

「アレ?」

 

そのままバランスを崩して倒れ込むと、床が無い。そして浮遊感。

 

「あっ、あれ、まさか扉じゃなく窓!?」

 

そんな思考も一瞬、地上2階、頭から地面に真っ逆さまに落ちていきます。

 

「ひぃぁぁあああああああ!!!」

 

とまぁ、こんな感じで朝の時間は過ぎていきました。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「し…死ぬかと思った……体内ナノマシンを起動出来ていなかったら、確実に一巻の終わりでした……私はまだ二巻、三巻と続きますよ……!」

 

時刻、0700(マルナナマルマル)

 

何とか一命を取り留めた私は、少尉の姿を探します。

流石にもう部屋に侵入は出来ないので、廊下で少尉を待ち伏せします。

 

そろそろ、朝食とかに行っても良い頃……

 

「ヘーイ!アオバー!朝から何やってるデスカー?」

 

「わー!わー!わー!金剛さん、しーっ!しーっ!」

 

「言ってるアオバがしーっデース……それで、何やってるデスカ?」

 

「うむ、実はカクカクシカジカ……」

 

「それが通じるのはマンガとかだけデース」

 

仕方ないので、突然やってきた金剛さんに独占密着取材の話をします。

 

「ナルホド!そーゆーことならワタシにまっかせてくだサーイ!」

 

「何か良い案が?」

 

「要するにショーイをあの部屋から引きずり出せばイイデスネ?」

 

「うわお!曲解にして極論過ぎます!もっと穏便に隠密に……って金剛さーん!?」

 

金剛さんは私の話を聞かずに、少尉の部屋の前で拳を握りしめます。

 

とても嫌な予感が……!

 

「バァァ二ングゥゥ……」

 

「うわわわわストップストップストップ!」

 

「ラアアァァァアアヴ!!」

 

掛け声と共に金剛さんが、扉に向けて拳を振るいます。

CMSのパンチを受けた扉は物凄い音と共にひしゃげ、部屋の奥へとすっ飛んでいきます。

 

扉が粉砕する音に加え「ぎゃああああ!!」という少尉の悲鳴が聞こえた気がしますけど、私は何もやってません。金剛さん、後は宜しく。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

時刻、0800(マルハチマルマル)

 

あの後、鬼の勢いで金剛さんを怒りまくり、部屋の片付けをさせた少尉は食堂に向かっています。やっと朝食のようです。

 

「全く……何で休日の朝からこんなに疲れるんだ……」

 

少尉はそんな事をボヤきつつ、食堂に到着しました。

因みに私たち艦娘は、一般人とは違う食堂、通称『ガンルーム』という場所で食事をします。

え?何故別々なのかって?

 

身分をハッキリと分けるという意味もありますが、一番は食べるモノに違いがあります。

 

艦娘の食事には、体内ナノマシン用の燃料や素材が含まれています。

艤装からのエネルギーで覚醒状態になる体内ナノマシンですが、その活動にはナノマシン内のエネルギーを消費します。

 

つまり、体内ナノマシンを起動させると、自ずとナノマシン内の燃料が消費されるということです。

 

それに、治癒の為の増殖も、モトとなる素材をナノマシンが取り込み、それから増殖するので、いずれにせよナノマシンが活動を行う為には、体内ナノマシンへの燃料補給が必要不可欠なのです。

 

よって、艦娘は生命活動を維持する為の、一般的な食事と一緒に、体内ナノマシンの燃料補給も行っているという訳なのです。

 

そんな訳で、あそこのガンルームにあるお菓子とかも、普通のお菓子とは違い、微粒子レベルの特殊な燃料や鋼材といった素材が入ってたりするので、一般人は食べないように……

 

ってアレ?ガンルーム?何故少尉がガンルームに?まだ寝ぼけてるなんて訳無いですよね?

 

「艦娘は……いないな。前からここにあるお菓子、気になってたんだよなぁ……」

 

あぁ、ヤバイですね。アレ絶対に食べる気ですよ。いや食べますよ。

 

この決定的瞬間はしっかりとこの青葉が捉えておきましょう。

 

そんなことより、艦娘用のお菓子を食べようと……あ、食べた。

 

コレ絶対後で「ウッ!オナカガ!」ってなるパターンですよ。艦娘用の食べ物にはアレをコーしたナニカとか、ソレをアアヤッテ分解した例のヤツとかが含まれているのに、一般人の少尉が食べて大丈夫なんですかね?

 

いや、艦娘用のお菓子に手を伸ばすという点では、もう駄目みたいですね。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

時刻、0900(マルキューマルマル)

 

朝食を済ませた後、少尉は資料室にいます。

 

何やら古びた書物を引っ張り出してメモを取っていますね。

何のメモを取っているかは、私の所からは見えないですが……。

 

でも先日「ライラ少佐に物凄い程のペーパーテストをやらされた」とグチを垂れていましたね。まさか追試とかの為に勉強とか?

 

「あら青葉さん、おはようございます。こんなところで一体何を?」

 

「あ、赤城さん。どうもです。それはマルマルウマウマ……」

 

「それが通じるのはフィクションの中だけですよ」

 

通じなかったようなので、赤城さんにも独占密着取材の話をします。

 

「そうですか、そういう事なら私が聞いてきてあげますよ」

 

「本当ですか?ありがとうございます!」

 

赤城さんは「任せて」というと、少尉の方へ向かっていきます。

 

「おはようございます少尉。朝から勉強ですか?」

 

「ん?赤城か、おはよう。いや、勉強というよりは調べ物かなぁ」

 

「この本は……『帝国海軍艦艇目録図』?私たち艦娘の元の艦艇が載っていますけど、何についての調べ物ですか?」

 

「そりゃ勿論、君たちの過去の戦歴や建造経緯とか、細かい情報だよ。指揮官になったからには、部下の事は良く知っておかないと、と思ってね」

 

「成る程、そうでしたか」

 

はぁ~、そういうことでしたか。なんだかんだで凄い生真面目なんですね。

中学校か高校なら、結構出来る青年としてチヤホヤされそうです。

 

「そもそも、ライラさんのくれた資料は艦娘としての資料が主だったから………結構、歴史とか知らなかったりして」

 

「ほう?それは聞き捨てならないな」

 

な、なんと!?

少尉の声を遮るようにして、資料室の奥からライラ少佐が現れました!

これは嵐の予感です……!

 

「ラ、ライラさん!?何故ここに!?」

 

「貴様より先に資料室に来ていた。それだけの事。それよりも貴様はそんなに私の講義が恋しいのか。そうかそうか、では今からみっちりと貴様に歴史の講義をしてやろう」

 

「いえ!遠慮させて頂きます!」

 

「貴様に拒否権は与えられていない!さぁ、学習室に行くぞ!」

 

「にやあああ!!助けてくれ赤城ぃ!」

 

「すみません少尉……この後二航戦の娘たちと弓の稽古が」

 

少尉がライラ少佐に首根っこ掴まれていますね……。少尉は少尉で「裏切ったな赤城!」とか言ってますけど。

 

「ほう、そうか。なら、そこに隠れている奴はどうだ?」

 

え?隠れている奴って青葉の事ですか?

もしかしなくてもバレちゃってます!?

ここはコッソリコソコソと、この資料室から退散しましょう。少尉、御愁傷様です。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

時刻、1400(ヒトヨンマルマル)

 

お昼抜きでぶっ続け5時間近く絞られた少尉が、やっと学習室から出てきました。

 

いやもう死にかけですね。足取りも何だかおぼつかない様子ですし。

 

「死ぬかと思った……いや、死んだな、精神的に……少し外に出て潮風にでも当たってこよう……」

 

どうやら外に行くようですね。

行き先からして第二演習場。天龍さんと龍田さんのいた秘密のビーチですかね。

 

確かにあそこは綺麗な場所ですし、ゆったりとくつろぐにはちょうどいいかもしれませんね。

 

少尉に見つからないように、後ろから尾行し何とかビーチまでやってきました。私は茂みに隠れて様子を伺います。

 

まだ、昼時とあって暑いですね。やはりビーチは夕暮れ時と相場が決まっているのですが……

まぁ、精神が極限まで削られた少尉にとっては時間など関係ないかもしれませんね。

 

砂浜に座り込んで、水平線を見つめる少尉。

……そんなにライラ少佐の講義が凄まじかったんでしょうか?

 

「んあ?なんでチビ助がこんなとこに居んだよ?」

 

「その声は……天龍か。別に自分がどこに居ようと勝手だろう?」

 

あら、もしやと思ってましたがやっぱり来ましたね天龍さん。

まぁ、もともと天龍さんと龍田さんが見つけた場所ですから、当たり前と言ってはその通りですが。

それにしても、こんな時に鉢合わせするなんて……

 

「ふざけんじゃねぇぞチビ助。そこは俺の場所だ」

 

「どーゆー事だよコノヤロー。こんなに広い砂浜だぞ。あっちに行ってろよ」

 

「んだと?チビ助がむこうに行け。それとも何だ?また俺とやろうってのか?」

 

何だか……だんだんと剣呑な雰囲気になってきましたね……

少尉の精神的疲労が拍車を掛けてます。

 

「分かった分かった、向こうに行きゃいいんだろ」

 

「…………」

 

げしっ

 

「うわっぷ!」

 

て、天龍さんが立ち上がろうとした少尉に足を掛けました!

言うまでもなく、少尉の顔面は砂の中です!

 

「何すんだお前ーー!」

 

「いや、なんとなく」

 

天龍さんが挑発するように少尉を見ていますね。どうみてもチンピラの所業です。

 

「くっこの、最初からそう言えよツンデレ天龍」

 

「今の言葉がチビ助の遺言だな?」

 

両者共に半身に手を出しファインディングポーズ。また、例のケンカみたいになってしまう……

 

「ルールは組手、打撃無し、決められたら負け、天龍はナノマシン起動なしで良いな?」

 

「おう、いいぜ」

 

……どうやら今回はケンカでは無いようですね。なんかルール範囲の広い柔道みたいですかね?

 

2人ともジリジリと間合いを詰めて、取っ組み合いがスタートします。

投げては投げかえし、押さえ込まれる前に立ち上がり、その繰り返し……

 

これは長引きそうですね……

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

時刻、1800(ヒトハチマルマル)

 

あれから数時間、取っ組み合いはまだ続いています。何なんですかあの人たち。

 

「あーもうやめやめ。日も結構落ちたし今日はもう帰るぞ」

 

ふと少尉が構えを解いてそんな事を言います。

 

「あ?馬鹿も休み休み言え!そう言って前も逃げたろうが!今日こそ決着を付けっぞ!」

 

「あの時、天龍が自分に勝った。それだけで充分だろ?ハイこの話しゅーりょー」

 

「なっ、あの時はナノマシンを起動させたからノーカンだ!」

 

「それじゃあな~、暗くなる前に戻れよ~」

 

「オイコラ待てチビ助!」

 

あ、逃げましたね。青葉も追いかけましょう。

それにしても、さっきの話ぶりだと、あのケンカ事件から何回か今みたいに手合わせをしているらしいですね。

 

まぁ、いずれも少尉がトンズラしてるっぽいですがね。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

時刻、1830(ヒトハチサンマル)

 

今度は埠頭に腰掛けています。

もう夕暮れですが、思っていた以上に少尉の休日はスクープに欠けますね。

 

いや待て、逆にスクープだらけな気もしますね……

もしかすると、この後にもっと凄い事が起こるかもしれません!少尉が海に落ちるとか。

 

「あれ、少尉?こんなところで何をしているんですか?」

 

おろ、今度は吹雪さんが現れましたね。

いつもの制服ではなく、動きやすそうな体操服を着ています。

 

「吹雪か?吹雪こそ、夕暮れ時に何を?」

 

「あっ、私は体力強化の為に走り込みを……」

 

「そーなのかー?休みの日くらいゆっくりしてればいいじゃないか」

 

「そ、そうですけど、こういうのは続けていくのが力になると思いまして」

 

「確かにそうだね。まぁほどほどにしっかり頑張って、休憩もちゃんとするんだぞ?」

 

「了解しました!」

 

少尉はビシッと敬礼する吹雪さんを見て苦笑すると再び視線を海へと向けます。

 

「…………少尉」

 

「……ん?どうかしたか吹雪?」

 

「……お隣……宜しいでしょうか?」

 

「うぇ?……あ、あぁ、大丈夫だ」

 

吹雪さんが少尉の隣に座りましたよ!これはアレですか!?フラグイベントですかね?

 

少し薄暗い中、2人座って海を見る。

何処ぞのゲームだったら何か起こる状況ですが、少尉がアレですからねぇ。望み薄です。

 

「……そ、そういえば、この前の南一号作戦、ル級にトドメを刺したのは吹雪だったって話じゃないか。よくやったな」

 

「えっ!?いえ、あれはみんなの力があってこそのものですよ。私1人の功績ではないですよ。それに最後だって、二航戦の御2人や伊勢さん日向さんが来なかったらと思うと……」

 

「あぁ、それか。あれは何かライラさんがやってくれたらしいんだ。編成出撃がギリギリ間に合ったとかって言ってたな……

まぁその後こっぴどく絞られたけどね。ハハハ……」

 

「そうですか……少尉、ありがとうございます」

 

「自分は何もやってないぞ?深海棲艦と実際に戦ったのは吹雪たちだ。礼を言うのはこっちの方だ」

 

「それでも!……それでも言わせて下さい、ありがとうございます」

 

「…………っ」

 

あらら~少尉ってば、吹雪さんの笑顔を直視出来ないようですねぇ。

でもあの笑顔は、流石の私も直視出来ないですね。直視したら襲い掛かってしまいそうです。

その後、しばらくは無言の時が続きましたが、少尉がチラチラと吹雪さんの方を見てますね。

 

「……なんですか少尉?吹雪の顔に何か付いてますか?」

 

「あっ、いや、そのだな……その体操着、サイズは合ってるのか?」

 

「……?一応、ピッタリですけど……」

 

「もう一回り大きいのにした方がいいぞ。そのサイズだと……身体がな……」

 

身体?イキナリのセクハラ発言ですか?

と、思って吹雪さんの体操着をよくよく見てみると……成る程、ピッタリ過ぎて身体のラインがハッキリと分かりますね。

こちら側からは見えませんが、胸部装甲とかハッキリなんでしょうね。

 

吹雪さんが自らの事実に気付き、こちらからでも分かるほど狼狽えています。

 

「なっ……!ななっ……!何をいい言いだすんですかっ!?」

 

そう言って吹雪さんが少尉を突き飛ばします。

因みに私たちの素体は戦闘用に強化されたバイオロイド。

小さい吹雪さんと言えど、その事に変わりはありません。

……つまりそういう事です。

 

「ぐぼっ!がはっ!ブクブクブク……」

 

「わああああ!!すみません少尉!」

 

バシャーンと音を立てて、少尉が海に落っこちます。

この瞬間は間違いなくスクープですね。写真を撮っておきましょう!

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「………寒い」

 

時刻、1930(ヒトキューサンマル)

 

少尉は濡れた服にタオルを被って、廊下を歩いています。

奄美は暖かいとは言え、海に落ちて夜風に吹かれれば、それなりに寒くもなるでしょう。

 

「今日は早めに風呂に入ろう……」

 

そう言いつつ、宿舎の小風呂に入っていきます。

 

宿舎には、艦娘用の大浴場と小さなお風呂の2種類があって、少尉は小さい方のお風呂を使っているのですが……

今日の少尉はトコトンついてないのでここでも何かが起こる予感が……

 

「うわわわわわわ待て待てコレは不可効力……あああああああ!!!」

 

それ見た事か。

扉がズドーンと吹き飛び、転がるように出てきた少尉。

その後ろには、バスタオル一枚を身体に巻いただけの龍田さん。

勿論、手には対艦薙が握られています。

 

「少尉は扉の張り紙が見えなかったのかしらぁ~?

今日は、大浴場が修理で使えないから2000(フタマルマルマル)までは艦娘が使用するって張り紙が」

 

「い、いやぁ気づかなかったなぁ……だからその手の長物をしまって落ち着いてくれ」

 

「私は落ち着いてるわよ~?だからこうして少尉に薙刀を振るっているんじゃないですかぁ」

 

「いや待て龍田、いや龍田さん。確かに負は完全にこちらにある。ちゃんと謝るし然るべき措置も正当に」

 

「然るべき措置は、私に真っ二つにされることです♪」

 

「え?ちょっ……待っ……うわああああああああ!!!」

 

あぁ……あれはもう助かりませんね。

もう少尉は駄目みたいなので、今日の独占密着取材はこれくらいにしましょう。

いやぁ、少尉の周りでは話題に事欠きませんね~。また今度の休日にでも、取材をしましょうかね。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「と、まぁこんな訳で、『青葉新聞』と称しまして、基地内新聞を」

 

「却下だ」

 

ルナの前には、新聞を抱えた青葉が立っている。

 

「そんな、まだ何も言ってないじゃないですか」

 

「うるさい!ってか、いつの間にこんな事してたんだお前は!」

 

「青葉の情報収集能力を甘く見てもらっては困りますよ~」

 

「いいからその新聞を寄越せ!文字通り消し炭にしてやる!」

 

「そうはいきません!くらえ煙幕!」

 

青葉が懐から煙玉を取り出し、床に投げつける。

 

「ゴホッゴホッ!またコレか!!」

 

「既に、提督と少佐には許可を取り付けています!少尉1人なんてことは無いのですよ!

それではアデュー少尉!」

 

「青葉ァ!お前、覚えておけよぉ!!ゴホッゴホッ!」

 

 

 

画して、基地内に掲載することになった『青葉新聞』は、予想に反して大変な人気を博し、れっきとした基地掲示物として認知されるようになり、ルナも容易に撤回出来なくなったとさ。

 

めでたし、めでたし。

 

 

to be continued……

 

 

 




ルナ「どうしてこんなことに…」
kaeru「でも実際、一部の海軍艦艇には艦内新聞があったっていうし」
ルナ「それとこれとは話が別だ!」
kaeru「それでは、次回も宜しくです」
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