記憶の海 〜Indelible memory〜 作:Ar kaeru Na
kaeruセンス爆発してます。読み辛いのはごめんなさいorz
memory15「休日の買い物」
「買い物に行くぞ」
「「「え?」」」
とある日のコテージ。
奄美CMS特別部隊指揮官のルナは、いつも通り訓練内容を言うように、そう宣言した。
「少尉、買い物とは?」
赤城が挙手をし、そう質問する。
「そのまんまだよ。今日はみんなで港町に買い物に行こう。
いつまでも、この折れた軍刀を腰に下げてる訳にもいかないしなぁ。かと言って、同じヤツだとまた龍田に斬られるから、丈夫そうなのを探しに行く」
「少尉はまた私と斬り合うつもりなのねぇ~?」
「念とうどんと駄目は良く押した方がいいって言うしね。備えあれば何とやらだ龍田」
「でも、外出許可証を取らなければ……」
吹雪がそんな事を言う。ルナはふふんと自慢げに外出許可証を見せてみせた。
「もう人数分用意してある。今度また、大きな仕事がありそうって征原司令が言ってたから、休養も兼ねてだとさ」
艦娘たちは、目に見える程に喜びを露わにする。港町に出掛けると分かれば、艦娘たちはワイワイと騒ぎ始める。
「港町なんて久しぶりです!」とか「屋台でなんか食べようぜ」とか「服とか買いましょうか?」とかとか。
この光景を見ると、艦娘ではなく、年相応の女の子にしか見えなかった。
「少尉は軍刀の他に何か買うのですか?」
「あぁうん、自分のあの部屋すっからかんだからなぁ、少し家具でも買おうと。
あと、どこかの誰かさん達のせいで扉が粉砕してるからなぁー?」
ルナが鋭い眼差しを青葉と金剛に向ける。
例によって2人は、口笛を吹きながら視線を逸らした。
「それじゃあ行こうか。みんなくれぐれもハメを外し過ぎないように」
「「「りょーかーい!」」」
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深海棲艦が海に跋扈し、人類は衰退の一途を辿っているにも関わらず、奄美基地外の港町は賑わってた。
港町と言っても、基地備品の大倉庫やコンテナが乱立している合間に人々が集まり住み着き、出店のような屋台や、小さな工場などが集まって出来ている状態だ。
さながら、昔、外国で行われていた祭りのようだ。
「天龍とかはよく脱走してるから、港に詳しいってライラさんが言ってたが本当なのか?」
「脱走とはひでぇなあの人も。……まぁ詳しいのは間違ってないと思うぜ。
ほら、あそこの屋台の焼きトウモロコシは絶品だ」
「確かに、美味しいですね~」
「wow!アカギいつの間ニッ!?」
道の両側には屋台やお店、小さな工場が所狭しと並んでいる。
艦娘たちは屋台に目移りしながら(既に赤城は両手一杯に食べ物を持っている)ルナの後を続いて歩く。
ルナが歩く先は、どんな人混みでも道が開く。ルナとしては、目立つ事があまり好きでは無かったのだが、軍所属の肩書きは小さくないようだ。
立ち寄ったリンゴ飴の屋台でも「御偉方から代金は頂きませんよ!」と言われる程だ。
勿論、キッチリとお金を渡すルナだったが。
「いやぁ~ここに来るのは久しぶりですからね~!新しいお店とかがあるかもしれませんね!」
青葉がカメラ片手にはしゃぎまくっている。確かに、ルナ自身もここに来るのは、基地に初めて来た時以来であったので、何だかんだでルナの内心もワクワク状態だった。
「あの時は、何が何だか全く解ってない時だったからなぁ……今日は楽しんでいくかな」
「少尉少尉!アレ、綿あめじゃないですか!?吹雪、買ってきますね!」
吹雪が目を輝かせて屋台の方にすっ飛んで行く。ルナは苦笑いしながらも、吹雪が戻ってくるのを待ってから、本命の店探しを始めた。
「さっきはああ言ったけど、ここに家具屋的なのはあるのか?見た所、祭り屋台とか出店みたいのしか無いぞ?」
「それはね、海に近いからだよ~。内地の方に進めばあるんじゃないかしら?」
龍田がルナの横からそう言う。ルナは「そうなのか?」と返事しながら、歩を進める。
それにしても、”軍属は金持ちで良い客”という謎の風潮があるらしく、店の前を通るたびに声を掛けられ引き止められそうになる。
ルナとしても、無駄な買い物はしない主義なので、丁重に断って店を後にする。
こうなると分かっていたなら私服で来た方が、とも思ったが、そもそも私服を持っていないことに気付いたので、さほど意味は無いなと結論を出した。
港側から内地側へと向かう途中、ルナの目の前に見覚えのある人物が立ちふさがった。
「よっ!坊ちゃん、探してたぞ~!」
「ゲッ!いつしかの果物屋のおっちゃん!?」
ルナの行く手を塞いだのは、ルナが基地に初めて来た時に出会った果物屋のおっちゃんだった。
「お?何だチビ助、ツキタツの親父と知り合いだったのか?」
「は?何を言ってるんだ?ツキタツ?」
ルナは丸刈り無精ひげのおっちゃんの顔を見る。
「俺はそこで『くだものツキタツ』って店を出してるからな。ここらじゃツキタツで通ってるのよ。まぁそれが名前なんだがな!」
ここでルナも一般常識を欠いていたことに気付き、ツキタツの親父に自己紹介をする。
「申し遅れました。自分は奄美基地所属、栄ルナです」
「栄……ルナ……」
ツキタツの親父は一瞬だけ顔をしかめたが、ニカッと笑うとルナの背中をバンバンと叩いた。
「いやぁ~!こんなチビっこいのに軍属か!信じられねーなぁ!でも、この服と腕章は本物っぽいなぁ!」
「痛っ、痛い!ぽいじゃなくて本物ですから!背中叩かないで下さい!」
ツキタツの親父は「おおスマンスマン」と言いながらガッハッハと笑う。
「天龍ちゃんも久しぶりだな?最近どうしたんだよ、突然来なくなったからおっちゃん心配しちゃったぞ?」
「漫画みたいに不良からヒーローに転職したんだよ。ツキタツの親父こそ、くたばってないか心配してたぜ」
「ガッハッハ!そーかそーか!そーだったか!さしずめ、そこの坊ちゃんにやられたんだろ?」
天龍は顔を赤らめると「んなワケねぇだろ!」と言いながらそっぽを向いてしまった。とても分かりやすい。
「まぁ、みんなウチに来いよ。美味しいフルーツが一杯だぜ?」
そのツキタツの親父の一言に間髪入れずに「行きます!」と即答した赤城を筆頭に、一同は『くだものツキタツ』へ向かった。
店には結構な人だかりが出来ていた。
「大繁盛してマース!凄いデスネ!」
「奄美の気候だと、色んな果物が採れるのよ!……でも深海棲艦の所為でかなり気候変動の影響を受けてるなぁ。これでも今年は不作だよ」
「これで……ですか……」
吹雪が驚くのも無理は無い。屋台には南国のお店並みにフルーツが並んでいたのだった。
「そうだ坊ちゃん、コレ、前の時のお釣りだ」
そう言ってツキタツの親父はルナに8,500円を手渡した。
「あぁ、わざわざありがとうございます」
「取りに来なかったらどうしようかと思ってたよ!これでスッキリしたぜ!さぁ何か買ってくかい?」
ツキタツの親父も例に漏れず、流石商売人という流れで、ルナ達に果物を勧めてくる。
この流れでは買わない訳にいかない。
「じゃあ……普通のリンゴを」
「私はそっちのスターフルーツをお願いします」
ルナと赤城がお金を支払い果物を買う。
「へい!まいどありー!あれなら、そこで食べてきな!」
ツキタツの親父が店の奥を指差す。そこには小さいながらも休憩スペースがあった。
「ショーイ!ワタシ向こうのお店を見てくるネー!」
「あっ、私も一緒に!」
金剛と吹雪がそういって斜向かいの店に行った。どうやら、女の子向けの服を専門に売っている店のようだ。
天龍と龍田はツキタツの親父の店のフルーツを品定めしていた。
「コイツはどうだ?」「いや、こっちの方が良いわよ~」などと、より新鮮なフルーツを選んでいるようだった。
青葉はツキタツの親父を取材している。ツキタツの親父もノリノリで質問に答えている。
「少尉、そろそろお腹が空きませんか?」
「なっ……お前、さっきから食べてばっかだろ!!まだ食べるつもりか!?」
「お昼は別腹ですッ!!」
赤城の裂帛の気合いに押し切られ、昼食を取ることになったルナ達は、ツキタツの親父に良いところはないかと聞いてみた。
「それなら知り合いの良い店があるぞ!丁度、俺も腹が減ってるからな、案内してやろう!」
金剛と吹雪が戻ってくるのを待ち、ツキタツの親父は他の店員に店を任せ、路地の方へ向かった。
すると、古ぼけたトタン板に汚いペンキ文字で『ウカノ』と書かれた掘っ建て小屋を見つけた。
「……オイ親父。ここが店とかぬかすなよ?」
天龍は、若干顔をひきつらせながら、ツキタツの親父にそう言った。
「残念ながらここが俺の知り合いの店だ。外観については皆からも何か言ってくれ」
ツキタツの親父はそう言って戸をガラガラと開けて中に入る。
外観とはうって変わり、中は老舗の食堂を彷彿とさせる机席が幾つかに、厨房と対面したカウンター席のある造りだった。
「いらっしゃーい!……ってアレ?ツキタツさんじゃーん!久しぶりー!」
割烹着っぽいエプロンを身にまとい、厨房で雑誌を読んでいた女性が、ツキタツの親父に気付き声を掛ける。
「おう、メシ食いに来たぞ」
「ってアレアレ!?何その後ろの人たち!?何処の大所帯!?何処のコスプレ集団!?」
「何デスカー?あの人、失礼じゃないデスカー?」
金剛が女性の反応に少しムッとした感じでそう呟く。
「オイオイ、トヨちゃん気を付けなー?ここにいる人達は皆、軍の人だぞー?解ったらさっさとアニキを叩き起こして来い!」
「え?アレ?ウソ!ホント!?に、にいちゃーんっ!!大変だぁーー!!」
その女性はドタバタと慌てて厨房の奥に引っ込む。
暫くすると、ドタバタ音が増えて戻ってき、トンガリ頭の男性が姿を現した。
「ん……!んん~~!?マジか!オイ、ツキタツ!これはどーゆー事だッ!!」
「どーもこーもねぇだろバカ。こっちは客だぞ!さっさとしろよバカ!」
「バカバカ言うなっ!……いやスミマセンお客さん。オイっ!ワク!早く!」
トンガリ頭の男性の背後でビクビクしていた、ウェイトレス姿の小柄な女性が前に出て来た。
「い……いらっしゃいませ……ようこそ『ウカノ食堂』へ……お客様は何名様でしょうか……?」
「ひのふのみ……8人だ」
「は、8人……!?どうしよ、にぃちゃん……席が無いよ……!」
「スミマセンお客さん、カウンターとテーブルに分かれてもらっても大丈夫ですか?」
「大丈夫です。君たちは適当に分かれてくれ」
「私たちはカウンターでいいわよ~?」
結局、ツキタツの親父とルナ、天龍、龍田がカウンターに座り、他の皆はテーブルに分かれた。
「お客さん、ご注文は何にします?」
トンガリ頭の男性が頭に手ぬぐいを巻きながら、そう訊ねる。
「自分は醤油ラーメンで」
「俺らはどーする、龍田?」
「ランチ定食でいいんじゃない?」
「ワタシも醤油ラーメンにするネー!」
「私はチャーハン大盛りをお願いします」
「青葉は普通のチャーハンを!」
「私もチャーハンにしようかな……」
「えーと、醤油ラーメン2つに、ランチ定食2つ、チャーハン3つの内1つが大盛りと。以上で?」
「俺はいつもの!」
「テメェのは言われなくても分かってんよ!!それでは、暫くお待ち下さい」
トンガリ頭の男性と、最初にいたエプロンの女性が厨房で料理を作り始める。
「お……お冷になります……」
ウェイトレスの女性が冷たい水をルナたちに配る。
「あの……失礼を承知で言いますけど、このお店の外観は流石にアレだと思うんですけど……」
外観がアレだと、お客さんもあまり来ないだろうと思い、少し言ってみるルナ。
「す……すみません!色々と事情があって……だからあんまり言っちゃ駄目だよ、ぼく?」
このウェイトレスの女性の完全な子供扱いの言葉にカチーンときてしまったルナは、声を荒げて言い返す。
「子供扱いするなぁ!この腕章が見えないのか!?」
あまり自分の地位を利用するのは好まないルナだったが、子供扱いされたときだけ、話は別だ。
「ひぅ……!少尉の階級章……!大変申し訳ございませんでしたぁ~~!」
ウェイトレスの女性はぴゅーっと店の奥に引っ込んでしまった。
「……ん?普通の人って階級章の区別つくのか、龍田?」
「どうかしらね~?でも、いつの時代にも詳しい人はいると思うわよ?」
ルナが、そんなもんなのか?と首を傾げていると、中華鍋を振るいながらトンガリ頭の男性が話に割って入る。
「あー!はっはっは!スミマセンお客さん!ウチの妹が御無礼を……そこのおじさんの餃子をオマケするから、許して下さい」
「オイバカ、何で俺のを!新しく作れ!」
「だっまーれ穀潰し!……それにしてもかなりお若いのに士官だなんて凄いですねぇ。歳はおいくつなんですか?」
「えっ……と……」
ルナは答えようとして言葉に詰まる。
「青葉、自分って何歳なんだ?」
「え、なんで青葉に聞くんですか。知りませんよ少尉の歳なんて」
「いや青葉なら知ってそうだなと思って」
ルナはうーんと頭を抱えて悩みまくる。
「あーっと!無理に言いませんから!スミマセンね!」
トンガリ頭の男性がそうフォローする。それでもルナの心のモヤモヤは晴れなかった。
そんなやいのやいのと騒いでいる内に、料理が出来上がった。
「へい、お待ちどー!」
「おぉ……!」
「これは中々……!」
出された料理はどれもこれも、今まで食べてきたものとはまた違った存在感を放っていた。
「それじゃ、いただきます!」
皆が一斉に箸を取って食べ始める。
そして、声を揃えて「う、美味い!!」と感嘆の声を上げる。
「あぁ、良かった。口に合わなかったらどうしようかと。腰のサーベルで斬られるんじゃないかと」
「お昼食べに来ただけなのに、そんなことしませんよ。そもそもこの軍刀、折れてますし」
すると、いつの間にか厨房からこちら側にきていた、エプロンの女性が勝手にサーベルを引き抜く。
「あちゃー、本当に折れてますねー」
「あっ、コラ」
「大丈夫、少尉!すぐそこに良いお店があるから後で教えてあげる!」
「オラァ!トヨ!御偉い様に何てこと!!スミマセン、またウチの妹が……」
「い、いえ、お気になさらず……」
ルナは、あまりにもナチュラルに接してきた、エプロンの女性に面食らいながらも、醤油ラーメンを食べる。
ルナはペロリと完食し、スープまで飲み干してしまった。
他の皆もそうだった。赤城と金剛に関しては、おかわりを注文するほどだった。
「ごちそうさまでした。凄い美味しかったです」
「こちらこそどうも!これでウチも箔付きですよ」
「……いや、外観を変えないと駄目ですよ」
ルナは、艦娘たちの分のお代も支払い、エプロンの女性から、先程のオススメの店の地図を受け取った。
エプロンの女性から「『ウカノ食堂』からって言えば、色々とサービス付きますよ?」というアドバイスを貰い、店を出た。
ツキタツの親父は、トンガリ頭の男性と、
「スマンな、またツケといてくれ」
「お前ふざけんじゃねぇぞ!!お前の所為でこっちの商売上がったりなんだよ!!」
という会話を繰り広げた後、達者でなといって自分の店に戻っていった。
「それじゃ、今度は自分の買い物に付き合ってもらうぞ」
「えっと……少尉の軍刀ですよね。このお店に売ってるんでしょうか?」
先程貰った地図を受け取り、一同の案内をする吹雪がそう疑問を口にする。
「と言ってもなぁ、他にアテも無いしなぁ。天龍は良い店知らないのか?」
「ん?ここらで武器を売ってる奴に真っ当な奴はいねぇよ。まぁ、基地の検閲は入ってると思うけどな」
「それ以外は闇市になるわね~」
天龍と龍田がサラッと怖いことを言ったので、適当に相槌を打ち、道を急ぐ。
通りから外れた、倉庫やコンテナの間の路地を数分歩くと、結構しっかりとした造りの店に辿り着いた。
看板には『タテガミ雑貨店』と書かれている。
「真っ当なお店だと良いデスネ」
金剛も不穏な事を言い始めるので、その不安を振り払うように扉を開ける。
昼間だというのに店内は薄暗く、雑貨店の名に恥じない様々な物が置かれていた。
しかし、そのどこにも軍刀らしき物は置いていない。
「吹雪、店を間違えたか?」
「えっでも、地図だとここになってますよ?」
頭を悩ませていると、店の奥から店主らしき女性が姿を見せた。
「あら、いらっしゃい。まぁまぁ、沢山女の子を引き連れて、随分とプレイボーイな坊やなのね?」
どことなく花魁風な気配を持つその女性は、ルナたちを見てそう言う。
ルナは先程の食堂のようにいい返そうとしたが、子供扱いされる事に怒っていては、人生この先が持たないと思い、ぐっとこらえ、女性に話し掛ける。
「奄美基地の者ですが、ウカノ食堂の紹介で来たんですけども……」
「つれないのね……貴方が軍の人っていうのは服で分かるわ。それで、ウカノ食堂の紹介で来たのね?御用件は何かしら?」
「新しい軍刀が欲しいんです。支給品は脆すぎるので」
「そう言う事なら、こちらへいらっしゃい」
花魁風の女性は店の奥にルナたちを案内する。すると奥にはもう1つ大きな部屋があった。そこには……
「な……んだ、ココ?」
壁やショーケース一杯に様々な武器が並んでいる。刃物系から銃火器まで、たくさんの種類があった。
後ろからついてきた艦娘たちも部屋を見るなり驚きの声を上げる。
「ウチってば、軍関係に武器を卸す仕事が主なのよ。そのツテで武器屋も営んでるの。勿論、そこの基地の許可は取ってあるわよ」
「おぉ……これはスゲェな……」
天龍が目をキラキラさせて壁の剣を見ている。
「壊さないでくれれば手にとってもらっても構わないわ。ウカノ食堂とはお友達だから、今日は全品半額で売ってあげるわ。決まったら教えてね」
女性はそう言うと、雑貨店の方へ戻っていった。ルナは早速品定めに掛かる。
「はぁ~~基地の方ってば、こんな店も許可しちゃってるんですかぁ~。ちょっと怖いですよね」
「アオバの言う通り、チョットだけコワイデスネ。でも許可は取ってあるって言ってマシタし、心配しなくても大丈夫デショウ」
青葉と金剛がそんな話をしつつ、ショーケース内の拳銃を眺めている。
「サーベルにスピアー、青龍刀に日本刀……本当に何でもありますね……流石に弓は無いようですけど」
赤城が壁に飾ってある刀の類いを見て、そう呟く。
「確かに、いろんな武器があるなぁ……なんだこのバズーカ砲みたいの。買う人いるのか?」
「それはパンツァーファウストだな。買うんだったらカールグスタフをオススメするぜ」
「なんだそれ……いや、買わないよ天龍……目的は新しい軍刀だ」
「生半可な剣じゃあすぐに折れちゃうから、ここはやっぱり日本刀かしらね?」
龍田が幾つかの日本刀を持ってきて手渡す。ルナは一振り一振り抜いて確かめるが、しっくりくるのが今ひとつ無かった。
「使う時なんてそうそう無いんですし、手頃なのでいいじゃ無いですかぁー?」
「何を言うんだ青葉。たまにしか使わないからこそ、ちゃんとしたのを選んでいるんだ」
「そうだぜ、刀は持ち主の写し鏡って言うし、ここはチビ助にぴったりな奴を選んで貰わなきゃな!」
「……何で天龍さんがそんな張り切ってるんですか……」
天龍に手伝ってもらいながらありとあらゆる日本刀を確かめたが、やはりしっくりくるのが無い。
「うーむ、これもイマイチ……」
「おいチビ助、そいつが最後だぞ?」
「何だって?結局良いのが無かったぞ?」
ルナは腕を組んで悩む。ここは少し妥協して、多少手頃なのを選ぶべきか。
「まぁ、自分に合った刀を探すのは難しいって言いますし、違うお店を探してみますか?」
「そうだなぁ……赤城の言う通り違う店に行ってみるか……」
「少尉!これはどうですか?」
ルナが諦めかけた時、吹雪が布に包まれた一振りの刀を持ってきた。
「……?これどこにあったんだ?」
「一番奥のショーケースに……」
ルナは早速布を取ってその刀を確認してみる。
今の時代では携帯面を考慮し、鞘の部分は炭素系の強化素材が使われているのに対し、吹雪の持ってきた刀は、鞘の部分に木材が使われていた。
「こいつは珍しいな。真っ黒な木の鞘の打刀拵か……表面は、漆っぽいな」
「確かにレトロ感が漂ってくるな……にしてもコイツ日本刀にしては少し短くないか?」
「俺もあんまり詳しくねぇけど、日本刀にはたくさん種類があんだよ。直刀とか太刀とか、聞いたことぐらいあるだろ?
そん中で言うとコイツは脇差の部類に入るんじゃねぇか?
一般の脇差よりはちょいと長いが、大方、中~大脇差って言ったところか?」
ルナはほうほうと相槌を打ち、鞘から刀身を引き抜いた。
「何だこの刀……?」
その刀は普通の刀とは違い、中程までは片刃の一般的な刀の造りを。そして切っ先から少しの部分だけが、両刃になっていた。
そして鞘と同じく、刀身は光り輝く白銀では無く、光を飲み込むような漆黒の刀身だった。
「本当にふざけた刀だな。黒い刀身の小烏丸造りか……」
天龍がさも珍しそうにその刀を眺める。
「この刀身……純鉄じゃないわね?天龍ちゃん」
龍田の問い掛けに天龍は首を縦に振って応える。
「私もそんな刀は初めて見ましたね……武道者として、時に刀を持ちますけど、今まで見たことのない種類です……」
「赤城さんが刀って、全然想像つきませんけどね!」
赤城の言葉に青葉がそう言うと、赤城は「みんなそう言いますよ」と笑って返した。
「…………」
ルナは無言でその刀を自分の
「wow……!ショーイ、coolネー!!」
金剛がルナの姿を見て黄色い声を上げる中、ルナは「よし!決めた!」と言って、その刀を持ち抱えた。
「そのヘンテコ面白刀にするのかチビ助?」
「うん、コイツにする。何かコイツが一番しっくりきたからね」
ルナはそのヘンテコ面白刀を抱えて雑貨店の方へ戻ると、女性にその刀を差し出した。
「この刀を下さい」
「あら……?この刀、何処で見つけたの?」
「何処でって……ショーケースの中に入ってましたよ?布に包まれて」
「あらら、しまい忘れてたのね……ごめんなさい坊や、この刀は非売品で売ってないのよ」
「えぇっ!?そんなぁ!!ま、待って下さい!そこを何とか!」
その刀を抱えて、奥に引っ込もうとする女性をすんでのところで引き止めた。
「待って下さい!その刀じゃないと駄目なんです!どうか自分に譲って下さい!お願いします!」
「そうは言ってもね……この刀はねぇ……」
ルナのあまりの剣幕に、女性も困った顏でため息をつく。
「少尉、別にアレに拘らなくても……」
「だーかーら言ったろ青葉?刀は持ち主の写し鏡!チビ助にはアレじゃないと駄目なんだよ」
「……ですから何でそこで天龍さんが……」
花魁風の女性は、ルナと同じ背丈になるくらいにしゃがむと、目線を合わせてルナに語りかける。
「あのねぇ坊や。この刀は、売り物じゃなくて一時的に預かっているもので、よその人のものなの。だから売ることは出来ないの。申し訳ないけど、諦めて別のにしてくれるかな?」
「じゃ、じゃあ、その持ち主の人と連絡を取って下さい!」
「…………困ったわね~」
女性はルナの顔を見て再度ため息をつくが、ふと何かに気が付いたように、
「……坊やのお名前は何て言うのかしら?」
と訊いた。
その言葉に少し驚いたルナだったが、別段何があるわけでもなく、素直に名乗る事にした。
「栄ルナ……ですけど……?」
「…………少し待っててね」
女性は刀を抱えたまま、店の奥に行ってしまった。
唖然としていたルナだったが、もしや、このまま戻ってこないつもりでは?と思い、慌てて後を追いかけようとすると、女性はすぐに戻ってきた。
「坊や、今日は特別サービスで、この刀を譲ってあげるわ」
「え?……えぇ!?どういう風の吹き回しですか!?それに、持ち主がいるって……!」
「持ち主にはあたしから連絡しといてあげるわ。それ以上とやかく言うなら譲ってあげないわよ?」
「わ、分かりました……それでお代は……」
「それも今は良いわ。持ち主とのお話が済んだら、ね?」
「い、良いんですか?」
「いらないの~?」
「いります!欲しいです!」
「はい、どうぞ。毎度ありがとう♪」
ルナは女性からヘンテコ面白刀を受け取る。
「おお!やったじゃねぇかチビ助!良かったなあ!」
「お、おう…!やっぱり頼んでみるもんだね……!」
「何を刀一振り如きに熱くなるのか、青葉にはサッパリですね」
「「如きとは何だ!!?」」
天龍とルナは声を揃えて、青葉に迫る。当の青葉はあまりの迫力に「ひぃ!」と言って店から逃げ出した。
天龍はすぐさま後を追い、それにつられて龍田や赤城、金剛が飛び出して行く。
ぽつんと残ったルナと吹雪。ハッと今の事態に気付くと、女性に「あ、ありがとうございました!後日ちゃんと御礼を!」といって、ルナと吹雪も飛び出して行く。
「…………嵐……みたいだったわね」
女性も、今まででこんな経験はあまりないわね……と思いつつ、タバコの様な物をふかし始める。
「よぉ、邪魔するぜ」
扉がガチャリと開き、丸刈り無精髭の男性が入ってくる。
「あら、また珍しいお客さんだこと。何をお探しで?」
「茶化すなよ
「もぉ~苗字で呼ぶのはやめてって言ったでしょう?ミツバって呼んで♪」
「死んでも言わねぇよ。ところでさっき、チビっこい坊ちゃんと女の子たちがゾロゾロ来たろ?」
「あら?あの子たちってばツキタツの知り合いだったの?気づかなかったわ~」
「アホ抜かせ。ウカノ食堂からって言ってたろうが」
「そんな怖い顔しないで~。分かってたわよ、あの子たちが
「………あの刀、渡したのか?」
「勿論、”返した”わよ。あの子がムスビの言ってた子でしょう?」
「まぁそうなんだが……やっぱり信じられねぇなぁ……」
「そもそも、私たちにはまだ情報が回ってないでしょう?焦らず待ちましょう?」
「それもそうだな………」
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その後、逃走を謀った青葉はあえなく御用となり、ルナと天龍から刀のロマンを延々と聴く羽目になったのは言うまでもない。
その後、内地方面にあった家具屋で買い物を済ませたルナたちは夕暮れ時になるまで休日を満喫した。
「今日はとっても楽しかったネー!」
「本当ですね!ありがとうございます、少尉!」
「たまには息抜きしないとな?これで明日からまた頑張れるなぁ?」
「あぁーまた少尉が良からぬ事を企んでますよ……」
「何か言ったか、青葉?」
「いいえ~なーんにもー?」
そんなくだらないような会話を楽しみながら、ルナは譲り受けた刀を抱えて、基地への帰り道を急ぐのであった。
to be continued………
ー物語の記憶ー
・小烏丸造り
奈良時代~平安時代付近に造られたといわれる、
切るよりも突くことに特化したという説もある。
天龍「ホントにいい買い物をしたなチビ助」
ルナ「こんないいモノはお目に掛かれないぞ」
kaeru「何かロマンあるよな。こーゆー刀」
青葉「ホント、良く分からないですね……」
天龍・ルナ・kaeru
「「「お前にはもう少し説明が必要だな?」」」
青葉「ひぃぃ〜〜!じ、次回も宜しくです!」