記憶の海 〜Indelible memory〜 作:Ar kaeru Na
気を取り直して、今回から15冬イベ編です。
楽しんで見てくれれば嬉しいです。
それと今回は作戦概要の説明なので文字数少なめ(4600文字強)です。ご了承の程を。
それではでは!
memory17「作戦発動直前」
memory17「作戦発動直前」
呉の鎮守府会議の翌日。
ルナは物凄い困惑した顔で、目の前に立っている艦娘を見つめている。
ルナの後ろにはライラもいたのだが、こちらもやれやれといった表情をしている。
立っている艦娘の足元には蹴破られたコテージの扉。
つい数分前、ライラとともにコテージに赴いたルナは、扉を蹴破って出てきた艦娘と盛大に衝突したのであった。
「…………ライラさん、この艦娘ですか?」
「…………残念ながらその通りだ」
昨晩、2人には、今日基地に戻る予定のトウから「中央より新たなCMSが贈られてくる。配属部隊はルナ君のトコロにするからヨロシク」という電文を佐世保経由で受け取っていた。
「色々と訊きたいけど、先ずは名前から教えてもらおうか」
目の前に立つ、金髪掛かったクリーム色の様な長い髪に、ウサギの耳の形のリボンの付いたカチューシャを身に付けた艦娘は、形だけの敬礼をすると、自らの名を名乗る。
「島風型駆逐艦一番艦、『島風』です。いくら何でも待たせ過ぎじゃないですかぁ~?」
島風と名乗った艦娘は、その不機嫌さを隠す事なく不満を露わにする。
「待たせ過ぎ……いや、定刻通りだろ!」
「遅いったら遅いんです!もっと早く来て下さいよ!」
島風はワーッと愚痴を連ねる。ルナは耳を両手で塞ぎつつ、渋面を作った。
「……奄美のみんな以上にクセの強い娘が来ましたね」
「全くもってその通りだが、積まれているMWはNーⅢ型、性能は折り紙付きだ」
ライラも困惑顔を崩す事なくルナにそう言う。
「でもまぁ、仮にも貴様の指揮官に当たる者に対面早々愚痴を吐き出すのはどうかと思うぞ、島風」
ライラが、そう島風をたしなめると島風は驚いた顔をし、
「まさかとは思ってましたけど、この小さい人が本当に指揮官なんですか?信じられなーい!」
と、またもやワーッと喚き始める。
ルナは顔を引きつらせながらも、島風に言う。
「君が配属された部隊、奄美部隊指揮官の栄ルナだ。何か御不満でも?」
「それはありまくりです」
「こ……んの、言わせて置けばこの減らず口が……!」
ルナは腰の
「落ち着け小僧。新戦力を
「………冗談ですよ」
「冗談には見えない気迫だったがな」
「でもたとえ抜刀しても、島風なら軽く避けられるんじゃないですかね?」
島風は大戦当時、諸説あるものの最高速度40ノット以上を出したと言われる駆逐艦だ。
当時の艦艇の特徴を引き継ぐ現代のCMSなら、この島風も機動力が秀でているのであろう。
「もっちろん!島風は速いんだよ!そんななまっちぃ斬撃なんて簡単に避けられるもん」
「言うじゃないか」
ライラがそう言って島風を見る。ライラも島風のカタログスペックには目を見張るものがあったのか、戦闘能力面では一目置いていた。
「少佐も”そこそこ”速いっぽいけど、島風ほどじゃないね。ざーんねん」
「良し、其処に直れ小娘。私が直々に引導を渡してやる」
ライラは一息の間も無くサーベルを抜き放ち構える。
ルナも慌ててライラの腕に組みつき、必死に止める。
「落ち着いて下さい、ライラさん!」
「………冗談だ」
「絶対本気でしたよね今の」
ライラはコホンと咳払いをすると、島風に向き直り、真剣な表情で語りかける。
「島風、貴様が何と言おうと拒否権は無い。何故なら貴様は『兵器』だからだ。兵器は必要とされなければ廃棄される。その事を忘れるな」
この言葉には流石の島風も堪えたのか、俯いて押し黙ってしまった。
一時、その場が静寂に包まれる。
「ライラさん、前も言ったと思いますけど、艦娘は分類上は兵器かもしれませんが、自分はそうは思いません。ですから、自分の前ではそう言わないで下さい。たとえライラさんでも許しませんから」
この言葉にライラは少し驚いた顔をすると「そうか」と言い、用事が済んだら埠頭に来いとだけ言ってその場を去った。
ルナとしては、良くて嫌味、悪くて懲罰を食らうと思っていたので、何とも言えない気分だった。
ルナと島風がその場に残される。そしてルナは島風に、
「とりあえず、島風の最初の任務は扉を直して、始末書を書く事だな」
と言った。
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奄美基地に扉の予備なんて物がある訳がなく、一先ず、島風が蹴破った扉をそのまま付けておいた。
新しい扉は、また港町に買いに行かないと駄目だからだ。
ルナの収集で集まった奄美の艦娘たちも、穴の開いたコテージの扉を見て、口々に「一体何が……」と言って唖然としていた。
奄美のみんなに新たな仲間である島風を紹介した後、ルナはライラと共に埠頭へと向かった。
別件の用事で佐世保に行っていたトウが帰ってくるからだ。
基地の埠頭に、奄美が所有する改造護衛艦の1隻『ずいせつ』が入ってくる。
降りてきたトウに対し、ルナとライラは敬礼で出迎える。
「出迎え御苦労、ライラ君、ルナ君。帰ってきて早々で悪いが、上層部を集めてくれ。緊急会議を行いたい。
済まないが、ルナ君も会議に出席してくれ」
「その様子だと、何かあったようだなジジイ」
トウは無言で頷くと、足早に庁舎へと向かう。
ルナとライラもトウの後を追い、
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すぐに上層部の人達が部屋に集まり、緊張感が漂う中、会議が始まった。
「諸君、突然の収集申し訳無い。しかし、悠長に事を構えていられなくなった」
「司令……まさか……!」
防衛班が、トウの言わんとしている事を察して声を上げる。
「……深海棲艦どもの活動の活発化に伴い、敵の一大侵攻作戦の予兆が見られた」
その言葉を聴いた部屋の人達がざわつき始める。
ルナもトウの言葉に驚きを隠せないでいた。
先日の呉鎮守府会議で、南方で深海棲艦の活動が活発化しているという事は聴いていたが、こんなにも早く、敵が侵攻をしてくるとは思っていなかったからだ。
「敵の侵攻予測地点は、南方海域『トラック諸島』、及び同島の泊地だと思われる」
トウは壁の地図を指しながら続ける。
「皆も知っての通り、2年前の侵攻により『ショートランド泊地』『ブイン基地』『ラバウル基地』を失った我が方にすれば、トラック泊地は、南方戦線の最前線であると同時に、南方海域の拠点、要でもある。
もし仮に、今回の侵攻によってトラックの泊地機能に甚大な被害、最悪の想定として、陥落し占領された場合、我々は南方海域での作戦行動をとることがほぼ出来なくなる。
そうなった場合、深海棲艦はトラックを足場にし、連続してパラオ泊地に攻撃を仕掛けてくる可能性も否定出来ない。
南方での活動拠点を完全に喪失すれば、我々はこの戦争に勝つ事は出来なくなるじゃろう。
よって中央の下した決断は、トラック泊地を襲撃する敵艦隊を迎え撃ち、撃滅することじゃ」
「迎撃作戦か……それで、参加するのは?」
「ここは定石通り、横須賀、呉、佐世保が迎撃に、舞鶴と大湊が万が一に備え本土待機じゃ」
トウはライラの問いに、地図の各鎮守府を指差しながらそう説明した。
「それで司令、我々は今作戦ではどのような行動をとるのですか?」
幕僚の1人がトウにそう問いかける。
「そう、それなんじゃが……」
トウは歯切れが悪そうにそう言い、髭を撫でる。
「……今回、我が基地には中央から出撃要請がきている」
「それは、我々の護衛艦で輸送を担当するという意味でしょうか?」
「いや……出撃要請がきているのは、ルナ君、君のCMS部隊だ」
部屋の中がざわっとなり、上層部の人々がルナに目線を向ける。
「じ、自分ですか!?」
ルナは突然の話の変わりように追い付けないで狼狽していた。
そんなルナの驚きようを予想していたかのようにトウは概要を説明し始める。
「そうじゃ、先日の南一号作戦がよほど評価されたのぅ。実に嬉しい限りなのじゃが……。
中央の意向として君の部隊には、トラック周辺の対潜掃討、敵先攻部隊の迎撃、連合艦隊が出撃するための橋頭堡を確保してもらいたいそうじゃ。
よーするにこちらの先遣隊を担ってもらいたいってことじゃな」
「先遣隊って……かなり重要じゃないですか」
「まぁそうなるのぅ。戦力に関しては中央の派遣艦隊も出すそうじゃから問題は無い。
後は、ルナ君次第じゃな……タイガの奴もルナ君を気遣ってくれたから、命令じゃなく要請なのじゃろう。無理そうなら断って良いのだぞ?」
ルナはしばし思考すると、トウの目を見据えて答えた。
「断る理由が無いですね。是非ともやらせて下さい」
ルナのその答えに、一部の上層部の人々からは懸念の声が多少なりとも上がったものの、全会一致で奄美基地は迎撃作戦の先遣隊を担う事となった。
一基地がこのような大作戦に参加することは稀であり、基本的には本土防衛の任に当たる。
そんな中、奄美基地は作戦参加を要請されたのだ。ここで戦果を上げられれば、奄美基地としても得るものがあるだろう。
そのような理由もあってか、会議後の基地の中は、ほどほどの活気と緊張感で満ちていた。
早速ルナもコテージに向かい、艦娘たちにこの事を話すことにしたのだが……。
「一体これはどういう状況なんだ……誰か説明してくれ」
コテージの中では、島風と吹雪がお互いに背中を向け、腕組みをし、頬を膨らませて立っていた。
「まぁ少尉がそーなるのも分かりますけど、少尉もこちらがどーなったのか分かるんじゃないですか?」
青葉がにへへ~と変な笑いを浮かべながらルナにそう言う。
ルナにも大体の事は分かっていた。何分、ルナが身をもって島風の性格を体感している。
真面目で一生懸命な吹雪とは噛み合わない事があった事は容易に想像出来た。
「突然やって来て言いたい放題言われては、特型駆逐艦の名が黙っていませんよ!」
「特型って言ってもさぁ、そりゃ当時の話でしょ~?最新型の島風には敵いっこないよ」
「スピードだけが取り柄のくせに良く言いますね?」
吹雪と島風は振り向き睨み合う。今にも飛びかからん勢いだ。
「……なんで誰も止めようとしないのさ」
「何でって、駆逐艦どうしのケンカ程面白いものは無いからな」
「いつも冷静なフブキの珍しい姿が見られるデス!」
天龍と金剛がニヤニヤしながらそう言った。
駆逐艦娘には、駆逐艦魂とも言えるプライドを持っている者が多くいるらしく、その駆逐艦らしい短気っぷりによって、しばしば小競り合いが起こるのだそうだ。
他の艦娘たちは、それを話の種や酒の肴にするのだと言う。
「作戦発動直前だっていうのに、困ったモンだな……」
ルナはポリポリと頭を掻くのであった。
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深く暗い水底。
天上から降り注ぐ月の光。
気が付けばここにいた。そうかも知れないし、そうじゃないかも知れない。
酷く気分が悪い。そのはずなのに頭は冴え渡っている。
目的はただ1つ。自分達の敵を闇に葬り去る、ただそれだけ。
だけども、それを思う度に頭の中で何かが叫ぶ。しかしそれが何かは分からない。分かろうともしない。
そんな事の繰り返し。
この思考に終わりは来るのだろうか。終わるとしたらこの命が尽きる時だろうか。
それでも、命果てるまでに伝えなければならない事がある。
しかし思い出せない。
やはりこれに終わりは無いのかもしれない。
いつの世も自分達は戦い争うだけ……。
その『彼女』は、多数の仲間を引き連れ、ゆっくりと南に進んでいった。
to be continued……
ルナ「何で15冬イベなんだ?」
kaeru「自分が初めて参加したイベントだから、印象が強いんですね」
ルナ「成る程ね〜」
kaeru「次回Eー1、泊地周辺の敵潜を叩け!お楽しみに」