記憶の海 〜Indelible memory〜   作:Ar kaeru Na

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15冬イベEー1編です。色々変更してる点はありますが(^^;;
それでは!

〜前回までのあらすじ〜
記憶喪失の栄ルナは、正式に奄美基地所属になり、艦娘達と訓練の日々を過ごしていた。
そんな中、中部太平洋にある『トラック泊地』に敵艦隊の侵攻が予測され、中央は迎撃作戦を開始した。
ルナの所属する奄美基地も、先遣隊として作戦に参加することになったのであった。


memory18「敵潜を叩け」

 

memory18「敵潜を叩け」

 

 

 

「おっそーいっ!日が暮れちゃうよー!!」

 

「こら、島風ちゃん!隊列を乱さないで!」

 

先走る島風に向かって、吹雪がそう注意する。

 

「別に急ぐ必要は無いわ。それに速度を上げたら自分のタービン音とかで水中の音が聞こえないでしょ?」

 

「五十鈴さん……」

 

トラック環礁北側の海域。

 

派遣艦隊所属の五十鈴を旗艦にして、同じく派遣艦隊の巻雲、佐世保の白露、時雨、そして奄美の吹雪と島風は『先遣対潜部隊』としてトラック環礁周辺の敵潜水艦掃討戦を展開していた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

数時間前。

 

横須賀、呉主体の連合艦隊本隊に先立って奄美と中央派遣の先遣隊はパラオ泊地にいた。勿論、指揮官の身としてルナも、奄美の所有する汎用護衛艦『りっか』に乗ってパラオに来ていた。

 

先遣隊の面々はXデーの数日前にパラオ泊地に待機し、作戦発動同時に攻撃を仕掛けられるように準備していた。

 

「そんな訳で、奄美艦娘部隊の君達には先遣隊として、トラック周辺の敵戦力……まぁ本隊の脅威となり得るのは潜水艦だから、まず対潜掃討を行ってもらう。その後、周辺の敵戦力を叩くことになる」

 

ルナたちはパラオ泊地庁舎の一室を借りて、作戦概要を説明していた。

 

「今回は佐世保も、横須賀、呉のサポートに回るとの事らしいので、君達は主に中央派遣と佐世保と連携しつつ、敵トラック周辺戦力の無力化の任に当たってもらう」

 

ルナは壁に広げたトラック環礁周辺の海域地図を指し示しながら説明を続ける。

 

「君達はトラック環礁北側の海域を掃討しつつ、一般航路に使われている西水道から、西水道錨地を経由し、木曜島に向かってくれ。

東、南部は佐世保が請け負うといってたからね。我々はパラオからトラックまでの航路の安全を確保することが目的だ。

次に艦隊編成なんだけど……」

 

海中に潜む潜水艦に攻撃を加えるには『爆雷』という水中で爆発する専用の装備を持っている艦娘か、航空機による対潜攻撃しかない。

 

しかし肝心の爆雷を装備し、対潜攻撃を行うことの出来るのは駆逐艦娘と軽巡洋艦娘、そして一部の空母艦娘だけだ。

 

奄美部隊には駆逐艦である吹雪、島風、軽巡洋艦である天龍、龍田の4人しか攻撃できる艦娘はいなかった。

 

空母である赤城は、対潜攻撃の出来ない空母なので人数に数えてはいない。

 

「奄美部隊からは吹雪と島風を出撃させる。天龍と龍田は待機していてくれ」

 

ルナがそう言うと、吹雪と島風が声を揃えて「えーっ!?」と不満を口にする。

 

「何で島風ちゃんと一緒で、天龍さんと龍田さんは待機なんですか?島風ちゃんだと連携行動に問題があると思います」

 

「ちょっと吹雪!問題があるのはそっちでしょー!」

 

吹雪と島風はうぎぎぎと睨み合う。

ルナはため息を吐きながら理由を説明する。

 

「えっとだねー、まず一回目の出撃は偵察も兼ねる。ここで奄美の戦力を注ぎ込むのは得策じゃない。今回は中央派遣と佐世保が協力してくれるから、その恩恵を十二分に使うべきだと思うんだ。

それでも人数は限られてくる。それならなるべく、戦力は温存しといた方がいいだろ?万が一っていう事もあるからね」

 

吹雪が「ですけど……」と言いかけたのを遮るようにルナは続ける。

 

「編成は、艦隊旗艦を中央派遣の『五十鈴』に。僚艦は五十鈴と同じ中央派遣の『巻雲』佐世保の『白露』と『時雨』を。

ここに吹雪と島風を加えた、計6隻の水雷戦隊を対潜部隊として出撃させる」

 

艦娘の部隊は基本、6隻以下で構成される。

どの様な理屈かは解らないが、6隻を超えて部隊を編成すると、途端に深海棲艦からの発見率が高くなり、隠蔽性が失われてしまうからだ。

 

その為、6隻を超過する部隊を編成するのは、敵に居場所を知られているなりの理由で、隠蔽する必要が無い場合か、隠蔽性を捨て、こちらの最高戦力を持って挑む艦隊決戦の場合しか無い。

 

「ふーん、アイツが旗艦か」

 

天龍が腕組みをしつつそう呟く。

 

中央派遣の五十鈴は、先日奄美に侵攻してきた深海棲艦を、遠征帰還途中で装備や燃料が不足している中、それでも敵部隊を引き止めていた艦娘だ。

それ程の技量の持ち主ならば安心だろうと思って、天龍はそう呟いたのであろう。

 

「五十鈴がな、奄美も作戦に参加するって聞いたら、助けてもらった恩返しにって言って、立候補してくれたんだとさ」

 

そんな話を聞いては吹雪と島風も黙らずにはいられなく、2人とも実にしぶしぶといった形で了承したのであった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「巻雲、時雨、ソナーに反応は?」

 

「今のところは大丈夫ですぅ」

 

薄い桃色がかった髪とだぶだぶの袖、眼鏡が特徴的な夕雲型駆逐艦二番艦、巻雲が自前の『三式水中探信儀(アクティブソナー)』の画面を見てそう答える。

 

「こちらも問題は無いね」

 

黒髪に、同じ黒い制服を着た白露型駆逐艦二番艦、時雨もヘッドホンの様なものを押さえながらそう答える。

時雨は巻雲と違って『九三式水中聴音機(パッシブソナー)』という、三式よりも旧式のソナーを装備していた。

 

「そう、なら丁度良いわ。今から改めて作戦内容を確認するわ」

 

旗艦五十鈴のその声に、一同は緊張の面持ちで耳を傾ける。

 

「トラック迎撃戦、1段階目は同泊地周辺の敵潜を叩く事よ。

大本営からは『重要根拠地であるトラック泊地周辺に展開しつつある敵潜水艦を捕捉し、これを掃討せよ』とのお達しだわ。

私達は、海域エリアEー1北西方面の敵潜を叩きつつ、トラック環境西水道から西水道錨地を経由し、環礁内の木曜島を目指すわ」

 

突発的に出現する深海棲艦は、現在のように、時として大艦隊を編成し、一大攻勢作戦に出る事がある。

そのような時、敵が多数集まっている海域を『E(エネミー)海域』と言って、通常海域と区別する。

 

「しっつもーん!島に着いた後はどうするのー?」

 

元気よく手を挙げ質問をしたのは、白露型駆逐艦一番艦、白露だ。

潜水艦を発見するためのソナーは装備していないが、潜水艦を攻撃するための『九四式爆雷』を大量に積んでいた。

 

「ひとまずは、目標の木曜島まで集中して。取り敢えずその後は、春島錨地を目指して、トラック泊地庁舎に行く事になってるわ」

 

「了解しました!」

 

五十鈴は頷くと、声を張り上げ、こう宣言した。

 

「これより戦闘海域に突入するわ!対潜警戒を厳として、ソナー艦はどんな些細な事も見逃したり聞き逃したりしないで!

他の艦は対潜攻撃がすぐに出来るように準備!水上艦が現れても慌てず対処するのよ!」

 

「「「「「了解ッ!!」」」」」

 

斯くして、戦闘海域に突入した対潜部隊は、巡航速よりも速度を落とし、ソナー感度を高め潜水艦に備える。

 

「流石、中部太平洋最大規模の環礁……!あちらこちらに珊瑚礁が突出してます……

ソナー画面ばっか見てたら座礁しちゃいますぅ……」

 

「うん、気を付けてね。巻雲ちゃん」

 

「はわわわわっ!?ふ、吹雪さんに心配はさせませんので大丈夫ですっ!お気遣い感謝致しますっ!」

 

「そ、そんなにかしこまらなくても……」

 

「いえ!吹雪さんは巻雲よりも先輩ですし、この間の作戦の時も、駆逐艦の(かがみ)のような戦いっぷりだったと聞いています!

かしこまらないワケが無いですよ!」

 

吹雪は巻雲の勢いに圧倒され、苦笑いを浮かべることしか出来なかった。

 

「…………ふんっ」

 

少し離れた場所でそのやり取りを見ていた島風は、面白くなさそうに顔を背けると、自らの後ろについて来ている砲塔のようなものに話し掛ける。

 

「連装砲ちゃん、調子は大丈夫?」

 

島風に『連装砲ちゃん』と呼ばれたものは、手のような部分をパタパタさせ「キュー!」と声を上げ答える。

 

島風の装備は特別中の特別であり、『連装砲ちゃん』と呼ばれる、12.7cm連装砲に海上航行ユニットと自立演算装置、MW技術を人工知能として搭載した自立型CMS支援機体、端的に言うならばロボットが大中小の3機、通常装備となっている。

 

島風の命令通りに動くことは勿論の事、自立演算装置とAI(人工知能)を搭載しているため、自らが考え、(あるじ)である島風のサポートを自動(オート)で行う。

 

その為、本来では難しい多重攻撃(マルチアタック)を島風1人で行うことが出来、敵が1隻ならば、確実に相手の防御を飽和させる事が出来る。

 

島風は連装砲ちゃんが大丈夫そうなのを確認すると、ニコリと笑って前を向く。

 

しばらくはゆったりとした時間が過ぎ、南洋特有の青い空と澄み切った海に心を癒されていた。

 

しかし、そんな時間は長く続かない。

 

「……!ソナーに感有り!2時の方向、敵潜ですっ!」

 

ソナー画面を見ていた巻雲がそう声を上げる。

もう1人のソナー艦である時雨も聴音機を向ける。

 

「敵潜、魚雷発射菅注水音を確認!」

 

「機関第二戦速!!斉六!!」

 

五十鈴は巻雲と時雨を報告を聞くや否や、速度変更と右60度一斉回頭を指示し、敵潜水艦に対して単縦陣から単横陣へと陣形を変更する。

 

「五十鈴さん!正面、潜望鏡です!」

 

吹雪が指差す海面に、細長い潜望鏡がスッと飛び出ている。

吹雪がそれを見つけると同時、白い航跡が扇状に広がりながらこちらへと向かってくる。

 

「魚雷よ!各艦、回避運動!」

 

五十鈴たちは先程の回頭で潜水艦に対して、真横一列に並ぶ『単横陣』という陣形をとっている。

 

この陣形は、被雷面積を少なくすると同時に、爆雷による面制圧が最も効果的な対潜陣形だ。

 

そのおかげもあり、魚雷は各々の間を通り過ぎていく。

 

「今度はこっちの番だぁー!」

 

白露が猛然と突き進み、艤装に装備した九四式爆雷を用意する。

 

敵潜は魚雷が命中しなかったのを見て、慌てて水中に潜ろうとする。

だが、もう遅い。

 

潜望鏡のあった位置に白露が爆雷を投下する。

しばらくは、白い水泡がブクブクとしていたが、水面が盛り上がったと思った次の瞬間、爆音を立てて水柱が立ち上がる。

 

その水柱の中に、黒い髪の毛の様なものや、金属片などが混じっている。

 

「やったぁ!撃破確実だ!」

 

「白露、敵潜は1隻なわけがない。油断禁物だよ」

 

時雨が喜ぶ白露にそう言ってたしなめる。

そして、時雨の言葉を肯定するように白露に向かって魚雷が迫る。

 

「くっそー!当たるもんかー!」

 

白露はその巧みな操艦で、迫っていた魚雷4本をかわしてみせる。

 

「全艦、周辺警戒!巻雲、時雨、なんとしても敵潜を探し当てて!」

 

「了解です!」

 

「わかった」

 

巻雲と時雨は再び速度を落とす。すると、自らの航行音で聞こえなかった音が聞こえてくる。

 

「……9時方向、注水音!」

 

「こちらでも捉えました!深度20、なおも潜行中!」

 

「私が行くわ!みんなは予定進路を!」

 

巻雲から送られてきたポイントに、五十鈴が戦速を上げて向かう。魚雷を発射する兆候は無い。相手は逃げに徹するようだ。

 

「深度調整……良し!爆雷投射!」

 

潜水艦が潜り込んだポイントに、五十鈴は爆雷を叩き込む。

 

数秒の間を空け、巨大な水柱が上がる。

収まった後には、粉々になった金属片や重油らしきものが浮かんでいた。

 

五十鈴は撃破を確認し、部隊へ戻ろうとする。

しかし、その行く手を阻むように何処からか砲弾が飛来し、五十鈴の前方に着弾する。

 

「……っ!水上艦ね!?」

 

五十鈴が、手持ちの双眼望遠鏡(メガネ)で砲弾が飛んで来た方向を見る。

 

「………敵編成は駆逐2に……輸送艦?」

 

普通の深海棲艦とは違って、丸く大きな身体、深海棲艦の輸送、補給、揚陸を担う『ワ級』と呼ばれる個体が、そこに混じっていた。

 

「てことは、あの敵部隊は、ここらに展開する潜水艦隊の補給、支援部隊ってトコね。それにしてはさっきの砲撃の威力が違いすぎるわ……。

この距離なら駆逐級程度の砲なら射程外のハズ……」

 

五十鈴がそう迷ったのも一瞬、先程の砲撃の主がワ級の背後から現れた。

それは、砲塔に人間の上半身を組み合わせたような半人間型(セミヒューマノイドタイプ)の深海棲艦、軽巡ホ級だった。

しかし、普通のホ級とは様子が違う。

その身体からは赤い煙のような、(オーラ)のようなものが立ち上り、身体を覆っている。

 

「軽巡ホ級……elite(エリート)!」

 

通常の深海棲艦よりも戦闘能力が高く、精鋭(エリート)級と呼ばれる、特殊な深海棲艦がそこにいた。

 

ホ級は雄叫びを上げると、五十鈴目掛けて砲を放つ。

 

しかしまだ多少の距離があるため、五十鈴は飛んで来た砲弾を軽々しくかわしていく。

 

「こちら五十鈴。吹雪、そっちの様子はどう?」

 

五十鈴は無線で、先行している吹雪に連絡を取る。

 

『こちら吹雪です。新たに潜水カ級を2隻捕捉、白露ちゃんが攻撃にあたってます』

 

「わかった。こっちにイ級2、ワ級1、ホ級elite1が現れたわ。これから後退を装って、そちらに向かうから、吹雪と島風の2人で挟みうちにしてちょうだい」

 

『了解です』

 

五十鈴は現在、3つの記憶領域(装備スロット)をソナー1、爆雷2で埋めているため、対水上艦装備を積んできていない。

 

通常装備では、敵に被害を与える事が難しい。イ級程度なら何とかなるかもしれないか、elite級がいる以上、五十鈴1人では分が悪いと踏んだのだ。

 

五十鈴はさらに速度を上げ、その場からの逃走を図る。

 

ホ級は、合流される前に沈めたいらしく、躍起になって砲を撃ってくる。

 

「バカね、どこを撃ってるのかしら!」

 

乱立する水柱の間をすり抜けるように避けていく。五十鈴は相手の照準をずらすために之字運動をしながら航行する。

 

その為、相手よりも五十鈴の速度は遅く、遂に横に駆逐イ級が並ぶほどになった。

 

イ級2隻とホ級eliteが示し合わせたように、一斉に魚雷を発射する。

 

後方と横方向から幾筋かの雷跡が五十鈴に迫る。

 

「十字雷撃とは、やってくれるじゃない!」

 

五十鈴は即座に取り舵を切り、魚雷の群れから逃れようとする。

 

しかし、巧妙に放たれた魚雷は五十鈴を絡め止めようと迫り来る。

 

(マズイ、避けきれないっ!それなら、なるべく被雷する本数を少なく……!)

 

五十鈴は舵で自らの位置を調整し、被害を最小限にとどめようとする。

 

そして、一本の魚雷が五十鈴の足に命中する。

爆音を轟かせ、巨大な水柱が上がるが、五十鈴はそれを間一髪で逃れる。

しかし、後方で爆発した衝撃で前方に飛ばされかけ、脚につけている航行用艤装の一部が故障した。

 

「ダメージコントロール!急いで!」

 

五十鈴は応急修理システムでその故障を直し始める。だが、直し終わるのを深海棲艦は待ってくれない。

 

ここが仕留め時だと言わんばかりに、砲を乱射してくる。

 

イ級が砲を放つ……前にそのイ級が砲弾を受け爆発を起こし海に沈んでいく。

 

「五十鈴さん、お待たせしました!」

 

「もう、五十鈴ったらおっそーい!」

 

吹雪が砲を構え、島風が連装砲ちゃんを従えて敵を挟み込むようにやって来る。

 

「助かったわ。応急修理が完了したら、私も加勢する!」

 

「いや……五十鈴が来るのを待ってられるワケないじゃん!私が全滅させてあげる!!」

 

島風は機関出力を大きく上げる。足元の波が大きくなり、島風の速度がどんどん速くなっていく。

 

「し、島風ちゃん!敵部隊のど真ん中で突出すると危ないよっ!!」

 

「うるさいなぁー、それなら止めてみればいいでしょー?」

 

吹雪も、危険覚悟で機関出力を目一杯まで上げ島風に追いつこうとするが、吹雪との距離は開くばかり。

 

(だめっ……!追いつけない!!)

 

向かってくる島風を迎え撃つ形で、イ級が再装填した魚雷をばら撒いてくる。

 

「そんなものっ!連装砲ちゃん、お願い!」

 

島風が自慢のスピードで魚雷の射線を突っ切りながら、連装砲ちゃんを突撃させる。

 

魚雷が島風の後方に全て流れる。

それと同時、連装砲ちゃんが砲を放つ。

3体が一斉に、かつ3方向から攻撃を加える。

 

その攻撃にイ級は耐えることが出来ず、装甲は崩壊し、命中弾を喰らって海に消えた。

 

「次っ!アイツ!」

 

島風の目線の先にはホ級elite。ホ級は雄叫びを上げ、島風から逃げるように進路を取る。

 

「私からは逃げられないよっ!連装砲ちゃん、一緒に行くよ!」

 

島風は連装砲ちゃんと共に更に突撃を掛ける。

いくら精鋭(エリート)級とはいえ、島風のスピードから逃れられる事は出来ず、徐々にその距離は縮まっていく。

 

「追いついた……砲撃始め!」

 

3体の連装砲ちゃんが一斉に砲撃を開始する。

ホ級は装甲を展開し、砲撃を防いでいるが、ダメージが少しずつ蓄積されている。

 

ホ級が連装砲ちゃんたちに気を取られているうちに、島風はホ級に対し有利な位置に移動する。

 

「四連装酸素魚雷、発射!!」

 

島風が背中に装着されていた、魚雷発射管を指向し、発射する。

 

圧搾空気に押し出され、勢いよく発射された魚雷は、狙い違わずホ級へと向かって命中し、大きな水柱を上げた。

 

その水柱が収まった時、そこにホ級eliteの姿は無かった。

 

「ふふん、やっぱね。島風には誰も追いつけないのよ!」

 

島風が、敵部隊を殲滅したことに喜んでいると、吹雪の鋭い声が島風の耳を叩いた。

 

「島風ちゃん!雷跡!」

 

はっとして、島風が海面を見やると、白い筋がこちらにサーッと向かってくるのが見えた。

それも1本や2本では無い。無数の白い航跡が、島風の逃げ道をふさぐようにして迫り来る。

 

「そんな……いつの間にっ!?」

 

「島風ちゃん!止まっちゃ駄目!!」

 

恐怖が押し寄せる島風の耳に、吹雪の声がかろうじて届く。

 

島風は魚雷群を振り切ろうと速度を上げるが、それすらも予測済みとでも言うかのように、魚雷の網は島風を絡め取ろうと迫り来る。

 

幾本を避けても、進む先、進む先に魚雷が迫って来る。

 

(こんな事になるなんて!あのホ級……私を潜水艦隊が潜むポイントに誘導させたの……!?)

 

魚雷の数からみても2、3隻という規模ではない。

確実に、ここには潜水艦の大部隊が存在している!

 

ついに魚雷が島風を捉える。下手に転舵すると速度が落ち、無数の魚雷が襲いかかる危険がある為、舵を切る事は出来ない。

 

「駄目っ!逃げられない!」

 

その時「キュー!」と可愛らしい声を上げ、連装砲ちゃんたちが魚雷と島風の間に割って入る。

 

「連装砲ちゃ……!」

 

島風が呼びかける間もなく、連装砲ちゃんが巨大な水柱に包まれ消える。

 

島風が悲しむ暇もなく、新たな魚雷が島風に迫る。

 

(もう……だめ……っ!)

 

島風が諦めかけたその時、島風の視界外から進む方向とは別の方向に、何かが飛び出していく。

 

深い青色の襟とスカート、白いセーラー服、後ろ髪を小さく束ねたその姿。

 

「……吹雪……?」

 

そう呟く一瞬、吹雪の後ろ姿が白い水柱に消える。

 

その衝撃で島風も吹き飛ばされ、水面を転がる。

 

「そ……んな、吹雪……吹雪ーーッ!!!」

 

水煙が立ち込める水面(みなも)、そこに崩れ落ちる吹雪の背中に、島風はそう叫んだ。

 

 

 

to be continued……

 

 

 

ー物語の記憶ー

 

・トラック環礁

東経150度、北緯7度に位置する、珊瑚礁に囲まれた場所。

第二次大戦当時、大日本帝国が本土以外に持つ泊地では最大。

中部太平洋の要衝、太平洋のジブラルタルとも呼ばれる。

 

↓トラック環礁手描き略図

 

【挿絵表示】

 

 

・爆雷

水中で爆発する爆弾のようなもので、水上から水中の潜水艦などを攻撃する為に用いる兵装。

現代では、探信音誘導式の対潜水艦魚雷を使うが、CMSでは記憶的繋がりが深いこちらが使用される。

 

・九三式水中聴音機

相手の発する音を聞いて、水中に潜む潜水艦などを探知するソナーの一種。

相手の音を聞く、パッシブソナーであるが、大まかな位置と方向が分かる程度である。

 

・三式水中探信儀

探信音と呼ばれる音を出し、その反射音を捉えて水中に潜む潜水艦などを探知するソナーの一種。

こちらから音を出すアクティブソナーであり、パッシブソナーと違い、目標までの深度や距離がそこそこ分かる。

しかし、自ら音を出す為に、敵に自分の位置が知られる危険がある。

 

・連装砲ちゃん

島風が装備する、自立型CMS支援機体の愛称。

この機体には、矛盾論理(パラドックスロジック)も高速で打開する高性能な演算装置と、MW技術を用いたAI(人工知能)を合わせた複合プロセッサが搭載されており、自らの主の行動をサポートする。

姿は、12.7cm連装砲の砲塔基部に、浮き輪のような航行用艤装とフィンスタビライザーに見立てた手と愛くるしい顔がある。

大、中、小の3体がいる。

 

・多重攻撃

マルチアタック。大勢で畳み掛けるようにして、飽和攻撃を仕掛ける方法。

 

・精鋭級

深海棲艦の呼称。elite(エリート)と呼ばれる。通常の深海棲艦よりも戦闘能力が高く、その身体から赤色のオーラのようなものが立ち上っているのが特徴。

 

・記憶領域

装備スロットとも呼ばれる。CMSが装備する攻撃用艤装のメモリーカードをセットする部分。

攻撃用艤装を装備し、メモリーカードをセット、ロードすることによって、CMSは記憶武器を使う事が出来る。

 

・十字雷撃

2方向から十字に雷撃を仕掛ける攻撃方法。

左右どちらに避けても、魚雷が横に来るように迫り来るので、避けるのは困難。

 

 

 

 




kaeru「Eー1です」
ルナ「ブリーフィングのところが難しいかもしれない?」
kaeru「わざとそんな風に書いて雰囲気出してるのでご了承下さい」
ルナ「それと最後の語録の所に、作者手描きのトラック環礁略図があるな」
kaeru「頑張って図書館とか行って調べたんですけど、あの程度の情報量しか見当たりませんでした。スミマセン>_<
尚、電子情報と紙情報のクロスチェックで見つけたものしか描いてありません。ごめんなさい。
少しでも小説の情景を思い浮かべて貰えれば幸いです」
ルナ「ってそれより本編の話!」
kaeru「吹雪は、島風は、一体どうなるのか!?次回、対潜掃討戦、続きます」
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