記憶の海 〜Indelible memory〜   作:Ar kaeru Na

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まだ艦これ要素が殆どないです
いわゆる導入です
気長に見てって下さい


最初の記憶ーープロローグーー
memory1「消えた記憶」


 

 

 

 

 

memory1「消えた記憶」

 

 

 

 

 

 

 

『総員、退避ぃぃい!!』

 

 

夜の闇に染まった漆黒の海に、煌々と輝く紅蓮の炎。燃え落ちる(ふね)

 

燃えているのはこの艦だけではない。

艦隊全てが火の手に掛かっていた。

 

その燃え盛る艦の甲板に自分は倒れ伏していた。

 

周りが炎に包まれているのに、自分の身体は酷く冷たい。否、温かいものが流れ出ていると言った方が正しいか。

 

視界がゆっくりと紅に染まっていく。

 

自分の周りに紅の水たまりが広がっていく。

 

ふと見ると、自分の前には誰かが立っていた。

 

そしてその誰かが、黒く鈍い光を放つものをこちらに向けるのが、感覚で分かった。

 

あぁ、俺は死ぬのか…。そう、脳が判断する。

 

動きたくとも動けない。それにもう、動く気も起きなかった。

 

その誰かが引き金に指を掛ける。

 

撃たれる、と思った瞬間、自分とその誰かの間にもう一人の誰かが割り込んだ。

 

自分は一瞬、思考が停止した。何故、コイツがここに居る。無論、自分を助けに来たのだろう。

 

しかし状況は圧倒的に不利。今ここで助けに来たところで何の意味も無い。犬死にするだけだ。

 

ソイツは両手を大きく広げて、自分の前に立っている。自分からでも、脚が震えているのが見て取れた。

 

ソイツとその誰かが何やら会話をしている。

 

暫く話すとその誰かは後ろを向いて歩き去ろうとする。そして、ソイツも誰かについて行こうとする。

 

待て、ついて行くな、戻ってこい。そう言いたいのだが、口からはただ息が漏れるばかり。

 

数歩、歩いたソイツはおもむろに此方を向いた。ソイツは静かに涙を流し、

 

『ーーーーーーーーー、ーーーーー』

 

自分に向かってそう言った。

 

ソイツは振り向きざまにその誰かに向けて銃を放った。しかし、その誰かは読んでいたように銃弾を躱し、逆に銃口を向ける。

 

アレはマズイ。自分は咄嗟に判断した。そして動かない身体を無理に動かした。

 

死力を尽くして、自分はソイツを突き飛ばした。

 

ソイツが一瞬何が起こったのか解らない顔をするが、即座に状況を理解し、驚きの表情を浮かべる。

 

自分は安堵した。一先ずこの危機からコイツを救えたのだから。

 

ソイツは吹っ飛ばされながらも手を伸ばし、涙を流しながら何かを俺に叫んでいる。

 

大丈夫だ、俺の任務(ミッション)はお前を守ることだからな。

 

その誰かが引き金を引く。

 

自分は最期に、ソイツにこう言った。

 

『ーーーーー、ーーーー』

 

 

 

 

もう既に、痛みは感じなかった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

パチリと目を開ける。

 

白い天井に、白いカーテン。自分はその中の白いベッドに横たわっていた。

 

「ここは……?」

 

辺りを見回す。よくわからない機械類に心拍計や献血の機器がある。

どうやら病院のようだ。

 

先程の事は、どうやら夢だったらしい。かなり現実味を帯びてはいたが。

 

そこでふと思った。何故、自分はこんなところにいるのだろう。

まさか、さっきのは夢じゃなくて、現実だったのか?そうすれば、何故病院にいるのかも説明がつく。それにしては、登場人物が誰一人解らない。夢の中の自分でさえ解らない。

 

頭を抱え、考え込んでいると、一人のナースが病室に入ってきた。

 

「あっ!(さかえ)さま、お目覚めになられましたか?」

 

自分はその言葉に違和感を感じた。

 

(さかえ)さまって…誰ですか?」

 

「それはあなたの事ですよ。寝ぼけているんですね。でも、お目覚めになられて本当に良かったです。一時はどうなることかと」

 

そのナースはクスクスと笑った。

 

おかしい。

 

本来ならばおかしく無いはずなのだろう。

 

でも考えれば考えるほどにおかしくなる。

 

「あの…」

 

「なんですか、栄さま。朝食はもう少々お待ち下さい」

 

「それはいいんですけど……栄って自分ですよね?」

 

「何を当たり前の事を言っているんですか」

 

「名前が……思い出せなくて……」

 

「えっ…!”思い出せない”ですって…!?」

 

ナースが自分の方へ駆け寄ってくる。ひとしきり顔を見たり、目を覗き込んだりしたナースは顔を青くした。

 

「まさか……!スミマセン、直ぐにドクターを呼んできます」

 

ナースは何処かに走り去ってしまった。

 

自分の置かれた状況、ナースの反応の仕方。これらから、自分の身に何が起こったのかを理解した。

 

 

「まさか……記憶喪失……?」

 

 

確かに、思い出そうとしても何も思い出せない。ちょうどその時、白衣に身を包んだのっぽの男性が部屋に入ってきた。さっきナースが呼びに行ったドクターだろう。

 

「やぁ、栄さん。調子は如何ですか?復帰おめでとうございます」

 

「あ……ありがとうございます……」

 

「私が貴方の手術を担当した、ドクターの小池と申します。早速ですが、栄さん、ご自分の名前を言えますか?」

 

「いえ…それが思い出せなくて…」

 

「今現在の西暦などは?」

 

「それも全く…」

 

Dr.小池は持っていたカルテのようなものに何やら書き込んでいく。

 

「率直に言いますと、栄さん、あなたはご自分の記憶について、一部、或いは全て、喪失してしまっていると思われます」

 

「それは、記憶喪失ということですね?」

 

「まぁ、一般的にはそう呼ばれていますね。恐らく栄さんは外傷による逆向性健忘かと……」

 

「外傷?」

 

Dr.小池はあっとした顔になり、カルテに目を落としながら説明を続ける。

 

「説明をしそびれてしまいましたよ。実はこの病院は軍事病院でしてね。もちろん一般の患者様もご利用可能ですが、軍部の方々もご利用なさるのですよ」

 

「軍……、スミマセン、そこら辺もちょっと…」

 

「思い出せないですか。自分は専門外なので軍の事は答えられないのでスミマセンね……さて、話を戻しますが、栄さんは一週間前に、軍の人達に連れられてここに運び込まれたのですよ」

 

「軍の人達に?」

 

「栄さんも軍の人間だったのでは?そこに置いてある服と帽子も貴方のものですし」

 

ベッドの反対側の机をみると、軍服と軍帽のようなものが置いてあった。これは自分のだったのか。

 

「そんな訳で、軍の人達は『意識が戻らない』といって貴方を運び込みました。そして急遽、手術をしたという訳です。

栄さんは、頭部の神経系が一般の方々と比べて少し特殊でして、恐らくその部分で異常が起き、昏睡したのでしょう。そもそも神経なんて人によって微妙に違うんですから大した問題では無いですけどね」

 

「…となると、自分は軍の人間で、何かがあって昏睡し、ここに運ばれたと」

 

「そんなところでは無いかと思ってますよ」

 

「自分はこれからどうすれば……」

 

「あぁ、そういえば、貴方を運び込んだ人達が、栄さんが目覚めたら渡してくれ、と、封筒を置いていきましたよ」

 

Dr.小池は茶色の封筒を(さかえ)に手渡した。

封筒には軍部とかなんとか書かれていて、大仰に判子が押されていた。

封筒を開き、中身を取り出してみる

中には一通の手紙とそこそこな額のお金が入っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

日本国海軍部司令検栄少尉宛

 

 

(さかえ)ルナ少尉へ

治療が終わり次第、以下の番号に一報した後、以下の場所へ来られたし

 

 

差出人

奄美要塞基地司令、征原(ゆきはら)トウ

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「…………………」

 

手紙にはそんな内容と、電話番号らしきものと地図が書き記してあった。

 

「見た所、軍からの正式な書類のようでしたが、どうでしたか?」

 

Dr.小池がそう聞いてくる。

 

「栄ルナ少尉宛って書いてありましたけど…」

 

その言葉にDr.小池は目を丸くする。

 

「栄さん、少尉だったんですか。少尉というと小隊長クラスですよ。凄いですねぇ。記憶を失う前に何をやってたのか気になりますね」

 

自分はそうなのかと思い、手紙をまじまじと見た。

 

「自分の名前は……『ルナ』って言うんですね……」

 

「そうです。貴方は『栄 ルナ』という名前です。……何か思い出せそうですか?」

 

「スミマセン……」

 

「いえいえ、お気になさらず。…しかし記憶については私もどうしようもないので、自然回復を待つしか無いですね。最悪の場合、戻らない可能性もあります」

 

「……そうですか」

 

「退院後に行く当てはあるのですか?無いのなら、私の知人に軍の関係者がいるので電話を入れておきますが」

 

Dr.小池がそんな事を言う。身元不明の自分にまで気を使ってくれるこのドクターはとても良い人なのだろう。

 

「いえ、手紙に今後の事が書いてあったので、そこの所は大丈夫です」

 

「そうですか。…それでは、私も仕事がありますので今日はこの辺で。退院は3日後を予定しているので御了承を」

 

「わかりました。わざわざありがとうございました」

 

Dr.小池は一礼すると部屋を出て行った。Dr.小池と入れ替わるようにして、さっきのナースが朝食を持ってきた。病院特有の(色んな意味で)体に良さそうな食事だ。

 

考えることは山積みだが、取り敢えず、この如何にもなモノを平らげようとするのであった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

3日後、

 

ルナは退院の準備を進めていた。

 

この3日で分かった事は主にこんな事だ。

 

一つ目が、自分の記憶は何一つとして覚えていないこと。正確には手術以前の記憶が思い出せない。

 

二つ目が、その他の記憶も断片的に喪失していること。例えば、国などの地名は覚えているが、世界の情勢などは覚えていない。

 

三つ目が……背が低いということだ。

潜在意識的なもので自分はもう少し背が高かった気がしていた。今の姿を鏡で見ているとかなりサバを読まないと大人には見えない。

いや、大人には見えないな。

 

もしかして自分は元々子供だったのか?

 

そんな事を思うが、子供が軍にいる訳がねぇとその考えを一蹴する。

兎に角、そんなこんなで、服がかなり大きくサイズが合わなかった。

 

黒の長外套(ロングコート)に黒の軍帽、黒の軍服上下、その全てが既にボロボロだった。

 

(自分は、以前に何をやっていたんだ…?)

 

そんな疑問を抱きつつ、Dr.小池に挨拶をし、受付で退院手続きを終了した。

 

 

先ずは、手紙に書かれていた番号に電話をかけてみようと思い、公衆電話から電話をかける。しかし、数回、ベルが鳴ったと思ったら直ぐに切れてしまった。

 

「……?」

 

かけ直そうとするが、今度は『この電話番号は存在しません。もしくは……』と繋がりもしなかった。

 

仕方なく、電話をかけるのを諦め、手紙に記されている場所まで行く事にした。

その場所には、どうやら交通機関を使わないと行けないらしかった。

とはいえ、近くに駅など無い。

そこで、病院の前に止まっていたタクシーで向かう事にした。

 

最初は運転手に『子供はちょっとなぁ…』と断られたが、軍服とそれ相応の金額を見せたら、すぐに乗せてくれた。

 

「いやぁ、最近の軍隊は子供も雇う程、人手不足なのかい」

 

タクシーの運転手がそう言う。

 

「いやだから子供じゃないですって」

 

ルナがそう言うと運転手はケラケラと笑う。

 

「子供はみんなそう言うよ。しっかしまあ、こんなご時世にタクシーを利用する人がまだいるとはなぁ」

 

運転手がしみじみと言う。ルナはその言葉に引っかかるものを感じた。

 

「……タクシーを使う人は少ないのですか?」

 

ルナは思わずそう聞いた。その時、自分は以外とおしゃべりなのか、と気付いた。

 

「そりゃあ、お前さん考えてもみてくれよ。海に怪物が現れるようになってから、日本の経済なんてガタガタよ。なんせ…」

 

「ちょちょちょちょっと待って下さい!『海に怪物が現れる』ってどういうことですか!?ファンタジーか何かですか!?」

 

そこで運転手が怪訝な顔をする。

 

「お前さん……まさか、『深海棲艦』を知らないのか?」

 

ルナは運転手に病院での経緯を話した。

 

「なるほど……記憶喪失かい。そりゃ難儀なこった」

 

「そうなんです。そのせいで世界やこの国の事とかも記憶が無くて……宜しかったら、詳しく教えてくれませんか?」

 

運転手はしばらく無言でハンドルを切る。

 

「もう10年くらいになるかな……怪物が最初に目撃されてから」

 

そんな風に運転手はルナに説明をしてくれた。

 

「当時はUMAじゃないかって騒いでたのよ。それで捕獲を試みた漁業団体の船が沈められたんだよ、その怪物に。それを境に、漁船や輸出入用のタンカーなどがことごとく沈められたのだよ」

 

運転手は、目的地に車を走らせつつ、話を続けた。

 

「そこで当時の海軍……海上自衛隊が事態の収拾に動いたんだが、これも沈められてな。なんと、その怪物が海自の船に向かって砲撃したんだと」

 

「………それ、本当の話ですか?」

 

この事を初めて聞くルナにとっては、信じられない話だった。

 

「それが本当なんだよ。その怪物はその後、至る所に出没しては、船を沈め、ついには世界の海上交通網(シーレーン)を断絶させるまでに至ったんだよ。そのせいで世界経済はめちゃくちゃ。日本も例外じゃないって訳だ」

 

「何故、抵抗しないんですか?」

 

「噂によると、こちらの攻撃が全く効かないらしい。そのせいで、どこの国も一方的にやられたんだと」

 

「そんな……どうしようもないじゃないですか」

 

「それでも最近になって太刀打ち出来るようになったのかな?最近、被害のニュースが少ないからな。……まあそれで、その怪物達は、海の底から出てくるらしい。それでもっていつしかの軍艦並みの攻撃力を持っていて(ふね)を沈めるから『深海棲艦』と呼ばれるようになったのさ」

 

ルナが聞き返そうとした時、ちょうど車が止まった。

 

「さぁお客さん、目的地に着いたよ」

 

着いた先は、小規模な軍の駐屯地だった。

 

ルナは代金を支払い、車を降りた。

 

まさか軍の駐屯地が地図の場所だったとは、と、しばらくポカーンと立ち尽くしていたルナに気付いたのか、門番らしき人がこちらに歩いてきた。

 

「君、どうしたんだ。こんな辺鄙(へんぴ)な所に。子供が来るとこじゃないぞ。早く帰るんだ」

 

「ま……待って下さい!自分はここに来いと言われて…」

 

そういって例の手紙を門番に見せる。それを見た門番が顔を変える。

 

「君が、栄少尉なのか?……たしかに、少し古いが着ているのは正規の服だしな……いや、済まなかった、イメージと違いすぎていてな。連絡は受けているから、中に入ってくれ」

 

門番は綺麗に敬礼をした。ルナも慌てて、見よう見まねで敬礼をし返す。

 

門番に連れられ駐屯地内に入ると、一機のヘリコプターが準備されていた。

 

「栄少尉はこれに乗ってくれ。その後は現地に案内がいるはずだ」

 

門番はそう言うと、仕事に戻っていった。

すると、ヘリコプターの脇から軍の人が出てきて、ワケもわからず、ヘリコプターに乗せられた。

 

(一体、自分は何処へ連れて行かれるんだ……)

 

ルナのそんな気持ちも余所に、ヘリコプターは飛び立って行くのであった。

 

 

《続く》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回まで導入の予定です
世界観を話したいと思います
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