記憶の海 〜Indelible memory〜   作:Ar kaeru Na

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家庭の事情で投稿が1日遅れて申し訳在りませんでした……

今回は怒涛の18,000文字超え!!
なので半分に分けて2話連続投稿致します。
そして今回でトラック泊地編完結です!

それでは!


memory23「敵機動部隊を捕捉せよ」

 

 

memory23「敵機動部隊を捕捉せよ」

 

 

 

まだ夜が明け切らない時間、トラック泊地は既に慌ただしく動いていた。

 

「全艦、準備が整いしだい出撃ポートに集合しろ!夜明けと共に出撃だ!」

 

連合艦隊旗艦の長門が、連合艦隊所属の他のCMS(艦娘)に指示を飛ばしている。

 

いよいよ、トラック泊地の命運を賭けた決戦が始まろうとしているのだ。

 

敵本隊にはイレギュラー個体『戦艦棲姫』の新上位個体、公式名称『戦艦水鬼』が含まれているのが事前偵察で分かっている。

 

一騎当千の長門たち連合艦隊の戦艦勢でも二の足を踏む『戦艦棲姫』の上位個体。

苦戦は必至、だが負けるわけにはいかない。

勝率を少しでも上げる為に、連合艦隊の面々は残された時間を過ごしていた。

 

静かに待つ者、装備を確認する者、直前まで訓練をする者、腹が減っては何とやらと食事をとる者。

 

奄美部隊も例外ではない。

一同は香取に連れられ、装備などが保管されている工廠に来ていた。

 

「昨日の海域エリアEー2方面での戦闘……奄美部隊が偶然遭遇したイレギュラー個体『空母棲鬼』の動向が気になります。

奄美部隊の皆さんには連合艦隊とは別方面への出撃をお願いしたいのですが……」

 

「それはつまり威力偵察ってことか?」

 

奄美CMS特別部隊指揮官であるルナが香取にそう問う。

 

「威力偵察よりは遊撃偵察に近いですね。泊地部隊も展開しますが、連合艦隊不在の時を空母棲鬼などの強力な個体に襲われては、泊地が壊滅するのは明らか。

なので連合艦隊出撃と同時、先日空母棲鬼が確認されたエリアEー2の深部、エリアEー4方面に向かっていただきたいのです」

 

「文字通り遊撃隊って事か。君たちはどうする?」

 

ルナは自らの後ろを見てそう言う。

後ろに立っていた奄美部隊のCMS(艦娘)たちは「そんな事決まっているだろう?」といった眼差しをルナに向ける。

 

「……分かった。それじゃあ奄美部隊はEー4に出撃させる。目標は空母棲鬼で良いのか?」

 

「はい。空母棲鬼率いる敵艦隊は恐らく、敵本隊とは別の攻略部隊だと睨んでいます。

だとすれば、連合艦隊が出撃したのを見計らい泊地に攻撃を仕掛けに来るハズです」

 

「了解したよ。………だけど、奄美部隊だけでイレギュラー個体である空母棲鬼をどうにかするのは難しいと思うぞ?

他の艦娘も連合艦隊の支援艦隊や泊地防衛で、こちらにまで回す事は出来ないだろう?」

 

「承知しています。なので奄美部隊の皆さんには2つ程こちらから託したいものがあります」

 

「託したいもの?」

 

奄美の全員が頭の上にハテナマークを浮かべる中、香取はそこそこの厚さの書類をルナに手渡す。

 

「香取、これは?」

 

「奄美の皆さんの”第一次改装”案です」

 

「第一次改装?」

 

「つまりは艤装の改造です。今使用している機関部艤装に手を加え、従来スペック以上の性能を引き出します。これによって今まで以上の戦闘能力を発揮する事が出来ると思います。

本来なら第一次改装時には、それまで行ってきた艤装の小さな改修部分を全て取っ払ってから改造を行うので、改造直後の艤装性能は以前よりも落ちてしまうのですが、今回は必要分の近代化改修も同時に行います」

 

「よーするに前より強くなれんだな!?」

 

話を聞いていた天龍が、身を乗り出してそう言う。

 

「いやぁ、カッコイイじゃねぇか!第一次改装、改造って!そう思わねぇか龍田!」

 

「ふふ、そうね〜。今まで以上に強くなれるなら素敵ねぇ」

 

天龍と龍田の言葉に他のCMS(艦娘)たちも声を上げる。

 

「良いデスネー!これで他のbattleshipにも負けないデース!」

 

「島風がもっともっと速くなっちゃうって事ね!楽しみ〜!」

 

「成る程ね、それが言っていた1つか。じゃあもう1つは?」

 

ルナがそう訊ねると香取は一同を工廠奥へと連れていった。

工廠奥には何やら大きな布で覆われた物がいくつかあった。

香取はその中の1つの布を取り外す。

 

「これは……!」

 

赤城が声を上げる。布の下にあった物はラジコン程の大きさの濃緑色の機体、CMS(艦娘)用の艦載機だった。

 

あまり知識の無いルナはこの機体を見てもイマイチピンと来なかったのだが、空母艦娘である赤城にはどうやら分かった様だった。

 

「これはまさか……『烈風』!?」

 

香取はコクリと頷き首肯する。

 

「赤城さんの言う通り、その機体は『烈風』。過去の大戦では零戦の後継機として開発され、ついに実戦配備されなかった幻の機体です。

しかもその機体はただの烈風ではありません。

かつて帝国海軍航空隊でも随一と謳われた『第六〇一航空隊』の記憶を搭載した機体です」

 

 

第六〇一航空隊。

ミッドウェー海戦で沈没した赤城、加賀たち一航戦の跡を継いだ翔鶴や瑞鶴、大鳳、雲龍型空母所属になり、当時の最新鋭機体が配備され、パイロットたちの技量も総じて高く、海軍最強とも称される母艦航空隊。

 

 

「勿論、過去の大戦時には烈風も完成していませんし、六〇一空の所属する空母起動部隊も、マリアナ沖海戦後再建されていませんので、この装備は『もし空母起動部隊が再建され、六〇一航空隊に最新鋭機体烈風が配備されたら』という完全な”if装備”となります」

 

赤城は烈風六〇一空をまじまじと見ている。

 

以前にライラも言っていたが、最前線であるトラックでは対深海棲艦の研究が本土よりも進んでいる。

この烈風六〇一空もその過程で生み出された産物だと言う。

 

「それにしてもif装備か……しかも当時未完成の烈風に六〇一航空隊の記憶を上乗せしてるなんて……」

 

「えぇ、本来MW技術による記憶は実際に歴史に刻まれている物の方が効力が強いのです。

実際に起こった出来事ですからね、その記憶を持つ物も、その事象を確認することは容易でしょう。

しかし、ifの記憶は実際には存在しない記憶の為にかなり不安定なのです。なので、使用した場合、予期せぬトラブルや、思わぬ被害を被ることがあります。

勿論、そうならないようにこちらでも善処しているつもりなのですが……

それでも良ければ、その機体を赤城さんに託します」

 

赤城は暫し沈黙し、烈風六〇一空を見つめた後、覚悟を決めた顔で香取に言う。

 

「この(烈風)なら、あの空母棲鬼とも互角に戦えるかもしれない……!

香取さん、ありがたく受け取ります!」

 

「分かりました。それでは皆さんの艤装の第一次改装も始めてしまいます。

連合艦隊が出撃するまでには仕上げますので、それまで、最後の休息を」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「連合艦隊、この長門に続け!!」

 

暁の水平線に長門の怒号が響き渡る。

トラック泊地の出撃ポートから、連合艦隊が出撃する。

彼女らはこのトラック泊地に攻撃を仕掛けた深海棲艦の本隊に勝負を掛けるのだ。

 

そんな雄大な出撃の光景とは裏腹に、別の場所、通常の埠頭から奄美部隊は出撃していた。

 

奄美部隊の目的は、別の敵攻略部隊を捕捉するため、連合艦隊とは別方面への遊撃偵察を行うというものだった。

 

編成は旗艦赤城、金剛、青葉、島風、吹雪の奄美のCMS(艦娘)に泊地の那珂を加えた6隻。

 

天龍、龍田がリーダーとして、泊地の駆逐艦娘を率い、赤城たちを支援する前衛支援艦隊。

 

この2つの艦隊が遊撃偵察へと赴く事になった。

 

「今回も先日の戦いと同じように、敵の哨戒部隊をすり抜けてEー4深部を目指します。

飛鷹、隼鷹、聴こえる?」

 

『艦隊無線感度良好。聴こえてるわ』

 

『おーぅ!バッチリ聴こえてるぜー!』

 

「索敵機を発艦させて下さい。なるべく広範囲に展開させるように。敵艦隊を発見したら即座に報告、索敵機を引き返させて下さい」

 

『了解!』『おーけー!』

 

前方を先行する前衛支援艦隊から艦載機が飛び立つのが確認出来る。

 

「天龍さん、龍田さん」

 

『なぁに〜?艦隊旗艦?』

 

『聴こえてるぜ』

 

「今作戦では私たち遊撃部隊主力の戦力を低下させる事なく最終(ボス)戦まで到達するのが重要です。ですから申し訳無いのですが……」

 

『分かってるわ。ザコは私と天龍ちゃん、駆逐艦のみんなに任せておいて』

 

『龍田の言う通り百も承知だ。心配すんな』

 

天龍と龍田は頼もしくそう言う。

赤城は少しはにかむと、自分の後ろを航行する艦隊の皆に指示を出す。

 

「空母棲鬼と会敵し戦闘に突入した場合、我々は漸減(ぜんげん)攻撃を行います」

 

「ぜんげん……って何?」

 

「艦隊決戦の前に、予め敵戦力を削っておいて、艦隊決戦を有利に進めようっていう戦法だよ」

 

島風の質問に、隣を並航していた吹雪がそう答える。

 

「じゃあ、赤城さんの航空攻撃、水雷戦隊の突撃、最後は金剛さんの砲撃で敵に攻撃を?」

 

漸減攻撃は最後の、戦艦などの戦力の大きい艦艇どうしの殴り合い、艦隊決戦までに、航空攻撃や特殊潜航艇の雷撃、水雷戦隊の突撃などで敵戦力を削る事が重要となってくる。

 

「いえ、今回は長射程の攻撃から順に……つまり、私、金剛さん、青葉さん、最後に那珂さんと吹雪ちゃん、島風ちゃんが肉薄して雷撃をお願いします」

 

「つまり那珂ちゃんが大トリって事だね!やったぁ!吹雪ちゃん、島風ちゃん!バックダンスは任せたからね!」

 

「バックダンスって何ですか……」

 

今回、奄美部隊に泊地の那珂がいるのは、以前Uー511を救出した時のように、トラック周辺に詳しいからだ。

那珂なら、敵艦隊が潜んでいそうな所を知っているので、先手を取る事ができ、大きなアドバンテージとなる。

 

『索敵機より入電、12時方向、距離200,000に敵艦隊。速力15でこちらに向かって来ています』

 

「艦隊、0-2-0に転針。索敵機は敵艦隊に発見されないように帰還させて下さい」

 

こうして奄美部隊は敵の前線部隊を避けながら進軍していく。

そして幾度かの転針の後、奄美部隊に不思議な現象が起きる。

 

「あっ……れぇ……?おかしい……?」

 

「青葉さん、どうかしましたか?」

 

「羅針盤が……正確な方角を示さない!」

 

青葉の持っていた方角を示す羅針盤の針がグルグルと回って正確な方位を示さなくなっていた。

 

「他の機器はどうですか?」

 

「軒並みダメですね……位置や方位の機器やシステム類だけ異常(エラー)を出してます……」

 

青葉だけではなく他のCMS(艦娘)もそうだった。位置システムなど、自分たちがどこにいるのかを示す機器類が全て狂っていた。

 

「これは一体……!?」

 

「あー……これは深海棲艦の支配海域に入ると起きる現象だねー」

 

那珂がグルグルと回る羅針盤を見てそう呟く。

 

「制海権を深海棲艦に奪われている海域に突入すると毎回決まってこうなるんだよ。

本土の方や泊地周辺はコッチの海だからこんな事にならないんだけど」

 

「……深海棲艦側の妨害工作ですか」

 

「それで那珂さん、この状況を打破する為にはどうしたらいいのですか?」

 

「それはねー、勘と運!」

 

「方法は無いって事ですか……」

 

太陽の向きから方角を割り出そうとしても、空には暗雲が立ち込めている。

 

「ナカはここがどこらへんか分からないのデスカー?」

 

「さすがの那珂ちゃんもこーなっちゃうとお手上げだねー」

 

「それついて来た意味……」

 

島風がボソッとそう言う。吹雪が慌てて島風の口を塞ぐが那珂には聞こえていたようだ。

 

「むー!一応オカルトだけど方法はあるんだよ!」

 

那珂は羅針盤の針を思い切り弾いた。針が今まで以上にグルグルと回る。

しばらくすると、針は速度を落としてピタリと止まった。

 

「羅針盤の針を回すと、何故かこう、ピタッと止まるんだよ。どの羅針盤でやっても多分同じ所に止まると思う。ちょっとやってみて!」

 

赤城たちも自らの羅針盤の針を回すと、皆同じ方向に針は静止した。

 

「どういうことなんでしょうね?」

 

「わかんないけど、迷った時はこの針の方に進むって泊地では言われてるよ?」

 

吹雪が首をかしげて羅針盤を見ている。

しかし今は、今までの航行状況から位置を推測するのが精一杯。ある程度方角を絞り込むと羅針盤が示す方向へと舵を取る。

 

『おい赤城、こんなんで本当にいいのか?』

 

艦隊無線から天龍の声が聞こえてくる。

 

「位置情報を示す計器が狂ってしまった以上、ここは天命を任すしかありません」

 

『それもそうね〜、飛鷹と隼鷹には引き続き索敵を続けさせるわ』

 

その後も敵の少数部隊を避けつつ羅針盤の針が示す方向に向かっていく。羅針盤が狂えば針を回し、指し示した方向へ進軍する。

 

天気も悪い方にに向かっているらしく、進むにつれて暗くなっていく。

 

「これ、方角は合ってても潮流とかで流されてる可能性ありますよね?」

 

「……そうですね」

 

青葉の問いに赤城がそう答える。心なしか2人とも声が小さくなっている。

 

「本当にこっちであってるのかな……?」

 

島風も不安そうに呟く。その時、広域無線に通信が入った。どうやら連合艦隊が敵本隊を捕捉、交戦に入ったようだった。

 

「あー!もう向こうは始まっちゃったの?那珂ちゃんも活躍したいのになー」

 

赤城は通信を聴き終わると、暫し考え込み、艦隊無線を開いた。

 

「飛鷹、隼鷹、作戦を変更します。索敵機の高度を下げて、更に広範囲に拡大します。私も艦載機を出しますので。

お願い出来ますか?」

 

『了解。じゃあ私達は右舷側を担当するわ。隼鷹、後方は頼んだわ』

 

『はいよ〜』

 

赤城も索敵機を発艦させようと矢筒から艦載機用の矢を引き抜いた時、事態は急変した。

 

「3時方向上空!敵機!」

 

突如吹雪がそう叫ぶ。赤城は即座に全艦対空警戒の命令を出す。

 

「どこ!?吹雪ちゃん!?」

 

「雲の中に入られました。恐らく敵の偵察機、島風ちゃんも見てたよね」

 

「うん、3機飛んでたと思う」

 

赤城は小さく声を漏らすと、索敵機ではなく戦闘機を発艦させる。

 

「艦隊、第二戦速。三方(左30度方向転換)

 

奄美部隊が針路を変え、左に舵を切った時、艦隊の真上から低いエンジン音と風切り音が聞こえてきた。

 

「……!? 敵機直上!!」

 

敵の艦爆機が艦隊上空の雲間から急降下してくる。奄美部隊は咄嗟に回避行動を取り、爆撃の直撃を免れる。

 

しかし至近弾を幾つか喰らい、CMS(艦娘)たちは海水を頭から被った。

 

「もぉー!メイクが落ちちゃうでしょー!」

 

「バカな事言ってないで被害確認して下さい!」

 

那珂と青葉が滝の様な海水を浴びながら、隊列を組み直す。

 

「そうか……!攻撃隊を雲の上に待機させて、奇襲を狙ったんデスネ!」

 

「敵の母艦はどこですか!?」

 

「敵空母、4時方向距離およそ5,000!」

 

吹雪の声につられ赤城がその方向を向くと、赤いオーラをまとった空母ヲ級が艦載機を発艦させていた。

 

「ヲ級eliteですか……なら私の戦闘機隊で……!」

 

「赤城!ヲ級eliteが敵艦隊後方にもう1隻!」

 

島風が指差す先には、旗艦であろうヲ級eliteの陰に隠れて、もう1隻のヲ級eliteが見て取れた。

 

「ヲ級eliteが2隻デスカ……!」

 

「いえ金剛さん、随伴艦も一部精鋭(elite)級です。重巡1駆逐2……計5隻ですかね」

 

青葉が双眼鏡(メガネ)を覗きながらそう報告する。

 

「ヲ級elite2隻でも制空権は取れますが……艦載機の消耗がこちらとしては痛手です。

痛手ですが……致し方ありません」

 

赤城が上空で空中集合を終えた戦闘機隊に突撃の命令を掛けようとした時、艦隊無線から天龍と龍田の声が聞こえてきた。

 

『おい赤城!こいつらは俺たちに任せろ!』

 

『ここで貴方たちを消耗させる訳にはいかないわ〜。ここは私達が食い止めるから、先に行って頂戴』

 

「ですが……!ヲ級eliteが2隻もいるんですよ!?」

 

『ちょっと赤城、私たちがいるのを忘れないでよ』

 

『商船改造型を舐めてくれるなよぉ!』

 

飛鷹と隼鷹も声を上げる。赤城は迷ったがそれも一瞬、麾下(きか)CMS(艦娘)に通信を入れる。

 

「天龍さんたち前衛支援艦隊の皆さん、そちらの敵部隊はお任せします!

奄美部隊、Q斉回H(左45度一斉回頭之字運動H法)!」

 

奄美部隊は一斉に敵部隊に背を向ける。それと同時、天龍の怒号と共に前衛支援艦隊が敵部隊へと突っ込んでいく。

 

「天龍さん、龍田さん……どうか御無事で」

 

「少尉の手を焼かせる2人ですからね!そう簡単にはやられませんよ!」

 

奄美部隊は尚も追いすがる敵艦載機を迎撃しながら、敵部隊から距離を取るように離れていく。

 

「もぉー!この艦載機、何処まで付いてくるの!」

 

島風がそう愚痴を言いながら、自らの機銃を空に向けて乱射する。

 

艦載機はCMS(艦娘)の弾幕をすり抜けて、爆弾や魚雷を投下する。

 

だがCMS(艦娘)たちはそれらを難なく避ける。伊達に基地で毎日訓練を行っているわけでは無い。

 

しばらくすると敵の艦載機も少なくなり、奄美部隊に静寂が訪れた。

 

「……どうやら逃げ切れたようですね」

 

「そのようね……」

 

赤城は船脚を止めると、現在位置の確認をする。

敵の部隊と会敵し、咄嗟に反転退避したため元々予定していた航路から外れている事は明らかだった。

そもそも、羅針盤などの計器が狂っているために予定の航路を進んでいたのかも分からないが。

 

「……やはりもう、自分たちが何処にいるかを正確に知る事は出来ないようですね」

 

「やっぱり羅針盤を回すしかないんデショウカ?」

 

「立ち止まるよりは余程良いでしょう」

 

赤城が羅針盤を取り出し、針を回そうとした時、空を切る甲高い音が何処からか聞こえてくる。

 

「………何?」

 

赤城がふと真上を見上げると、そこには爆弾を抱えた敵の艦載機が急降下を掛けている所だった。

 

「そんなっ!?」

 

恐らく敵機は雲の中か上で触接しながら機会を窺っていたのだろう。

 

今の止まっている状態から動こうとしても、赤城のような大型艦は動き始めるまでに多少の時間を要する。

 

直撃を免れても、その爆圧で被害を受けるのは必至。

 

赤城が呆然と立ち尽くす。爆弾が投下され赤城に命中する一瞬の間に、吹雪は動いていた。

 

「赤城さんッ!危ないッ!」

 

吹雪は機関全力に赤城を突き飛ばす。

 

そして爆弾は吹雪に命中した。

 

轟音を立て、真っ赤な火炎と黒い煙が同時に周囲を包む。

 

一瞬何が起きたか理解出来なかった赤城も、即座に我を取り戻す。

 

「吹雪ちゃん……?吹雪ちゃん!!」

 

吹雪はその場に崩れ落ちる。

寸前で那珂が抱きとめるものの、吹雪は力を無くしたようにぐったりとしている。

 

「吹雪ちゃん!しっかり!」

 

那珂が身体を揺すっても目覚める気配は無い。

 

「そんな……まさか……!」

 

「大丈夫だよ島風ちゃん、死んでは無い。

だけど……多分損害判定は大破、粒子装甲防壁(バリアー)で弾き切れなかったダメージを受けてる。

艤装の一部や衣服がクラッシャブルシステムで肩代わりしてくれてるとは言え、危険な状態には変わり無いよ」

 

那珂がいつもとは違う真剣な顔でそう伝える。

 

「赤城さん……」

 

青葉が指示を求める様に赤城を見る。

赤城は無線封鎖を解除し、泊地に向けて回線を開いた。

 

 

 

 




続きます
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