記憶の海 〜Indelible memory〜   作:Ar kaeru Na

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タイトルからわかる通り伏線回です。
今回はあのジジイ視点!

それでは


ー幕間ー
memory24「計画準備」


 

 

memory24「計画準備」

 

 

とある日、

 

奄美CMS特別部隊指揮官、栄ルナは奄美大島要塞基地司令、征原トウに呼び出されていた。

 

「休暇……ですか?」

 

「そうじゃ」

 

ルナは一枚の紙を受け取る。ルナを含めた奄美のCMS(艦娘)たちの外出許可がズラリと書かれている。

 

「ちょいと急用が出来てしまっての?ワシはライラ君と共に佐世保の方へ行ってくる。

その間、この基地の中でCMSの資材管理をできる者が居なくなってしまうのじゃ。

なので、今日と明日の2日間。CMSの活動は、深海棲艦が来襲するなどして緊急出動する場合以外は全面停止する。

早い話、演習とか訓練しなくて良いぞ〜って事じゃの」

 

「は、はぁ……」

 

「事務仕事は上層部に任せる事になっておるので、ルナ君にはCMSたちの外出確認だけ行ってもらいたい」

 

「派遣艦隊のCMSたちには既にその旨は話してある。外出する時は貴様に伝える様に言っているから、しっかりチェックするんだ。分かったな?」

 

トウの横に立っていた中央派遣艦隊指揮のライラ・トイライン=ハムがルナに有無を言わさぬ口調でそう言った。

 

ルナは了解の意を伝えると提督室を出ていった。しばらく無言のトウとライラだったが、トウが一息ついてポツリと言う。

 

「……何とかなったようじゃの」

 

「……正直に『加賀の消費資材が多いから、演習を止めろ』と言えば良かったんじゃないか?」

 

先日のトラック泊地防衛戦後、奄美部隊に加わった新たなCMS(艦娘)、加賀。

 

彼女は過去、赤城と共に第一航空戦隊を担い、帝国海軍でも随一の航空母艦だった。

 

そんな一航戦の片翼はCMS(艦娘)となっても艦艇時代と同じように、赤城と共に日々の訓練に励んでいる。

 

「バカ者!ライラ君は、あんなに嬉しそうに訓練に励む加賀と赤城の顔を見た事は無いのか!

仲睦まじく2人で一緒にいる姿は眼福……じゃない、見た事は無いのか!

そんな……そんな2人に訓練をするなとか、しても良いがゴハンのおかわり禁止とか……。

そんな残酷な事、言える訳無いじゃろ!!」

 

そうなのだ。

 

加賀は赤城や奄美の皆に追いつこうと、足手まといにはなるまいと、誰よりも訓練や演習に打ち込んでいるのだ。

 

それに赤城や奄美の皆、ルナも賛同し、ここ最近は前にも増して訓練をし、派遣艦隊と演習をするなど、その努力と頑張りは素晴らしいものだった。

 

しかしそれに比例して増えるのが彼らの補給資材。

訓練をすればする程、燃料と弾薬は消費され、食べるゴハンの量は以前の数倍にもなる。

勢いを増して減っていく資材。

 

要するに供給量と消費量が釣り合っていなかったのだ。

 

このままの状況だと、基地のCMS(艦娘)用資材が底をついてしまう。

 

「……と、言うワケで佐世保に資材をせびりに行くぞい」

 

「本当にゲスいなジジイ」

 

「明日の資材にも困る今の状況で、なりふりなど構っていられるものか。

それに、あの(ふね)を見に行く良い機会じゃ」

 

トウは席を立ち、外出用の服を取り出しながらそう言った。

 

「修理、終わったのか?」

 

「いや、修理自体は3年前に終わっとる。去年にやっと改造が終わり、今は新武装を装備されとるとこじゃ」

 

「そうだったのか。ただの護衛艦にしては整備期間が長いと思ったら」

 

「まぁ一応、特級極秘事項じゃからの」

 

トウはそう言うと提督室を出る。ライラもその後に続く。

 

庁舎を出てこっそりとコテージを覗くと、ルナがCMS(艦娘)たちに向かって何かを話している。

大方、先程のトウの話を伝えているのだろう。

 

「ふっふっふ、後で驚くじゃろうなぁ。加賀の他にあと2隻増えると知ったら」

 

「派遣艦隊の編入はともかく、もう1隻は実験艦隊という名目の厄介払いだろ?」

 

「そんなこと言うでない。外国の記憶技術、楽しみじゃないか」

 

トウはそう言いつつ歩き出す。ライラはため息をつきながらあとに続く。

 

「で?どうせアイツらも連れてくんだろ?」

 

「分かってるじゃないかライラ君」

 

トウとライラは出撃ポートに向かう。

出撃ポートには整備主任が待ちくたびれたように待っていた。

 

「やぁやぁ提督殿、御機嫌麗しゅう」

 

「ヤメロ気持ち悪い。何でお主はいつもそうなんじゃ」

 

「そりゃ何年も整備士やってたら頭のネジの1本や2本外れるってもんよ」

 

「整備士なら頭も治さんかい!全く……」

 

整備主任はひとしきり笑った後、トウにこう訊ねた。

 

「それで提督、トイラインのお嬢さんまで連れて、オレに何か用かい?」

 

「オイ、ムスビ。トイラインと呼ぶな」

 

整備主任はライラの言葉を口笛を吹きながら聞き流す。

トウは額に青筋を浮かべたライラをなだめつつ整備主任の質問に答える。

 

「整備主任のお主なら分かってるじゃろうと思うが、基地の資材が底をつきそうなんでの。

ちょいと佐世保に資材をもらいに行くのじゃ」

 

「成る程成る程、そのついでに『とがくし』を見に行くって事かい」

 

トウは「さすがじゃの」と笑うと、停泊している多目的汎用護衛艦『はだれ』に向かう。

 

トウ、ライラ、整備主任は『はだれ』に乗り込む。暫くしてラッパの音色がポート内に響き渡り、一行を乗せた護衛艦は奄美を後にした。

 

3人が艦橋へ向かうと、そこには『はだれ』の乗組員の他にどこかで見たような顔ぶれが3人を待っていた。

 

「おう博士!久しぶりだな!」

 

「よっ。アレ、トイラインもいるじゃねーか」

 

「あら、遅かったのね」

 

「久しぶりじゃの。ツキタツ君、シナ君、ミツバ君」

 

トウ達を待っていたのは、『くだものツキタツ』の店主と『ウカノ食堂』の兄と呼ばれていた料理人、『タテガミ雑貨店』の女店主だった。

 

「オイコラ、シナ!トイラインと呼ぶな!」

 

「あん?何でだよ?十数年間そう呼んでたじゃねぇか」

 

シナと呼ばれたウカノ食堂の兄料理人がライラにそう言う。

ライラはその後も何か言っていたが、その内諦めた様に「勝手にしろ」と言ってそっぽを向いてしまった。

 

「ガッハッハ!いつまで経っても変わらないなぁ!」

 

ツキタツの親父は1人でガッハッハと大笑いしている。

 

「なんだいなんだい提督!特験隊(とっけんたい)の奴らみんな呼んでたのかい!

ってことはサンタは?」

 

「予想通り、てっぺんで見張りをしておるよ。レーダーがあるからやらなくて良いと言っておるのに」

 

「無駄ですよ征原博士。あの子は自分の目で見たモノしか信じないんですから」

 

どこか花魁風な女性、タテガミ雑貨店の女店主がトウにそう言った。トウはやれやれと首を振ると椅子にどっかりと腰掛けた。

 

「そういえばミツバ。何故アイツにあの刀を渡した!」

 

そっぽを向いて拗ねていたライラが思い出したようにタテガミ雑貨店の女店主に言い迫る。

 

ミツバと呼ばれた女店主は「あら?」と、とぼけた顔をする。

 

「持ち主に返して何が悪いのかしら?私は預かっていただけだもの」

 

「いやっ……!それもそうだが、よりによってあのヘンテコとは……」

 

「今も昔も気に入った様子だったわよ?そんなにアレならまた新しく造ってみてはいかが?」

 

ライラはぐぅぅと言い淀むとまたそっぽを向いてしまった。時折「コイツらといると私の調子が狂いっぱなしだ」とブツブツ言っている。

 

そんな雑談に花を咲かせつつ、数時間かけ佐世保に到着する。

朝に出港したにも関わらず、陽は既に傾きかけている。

 

「空で来た方が速いのじゃが……今回はしょうがないの」

 

『はだれ』から降りてきたトウがそう呟く。その後に続いて他の者たちも降りてくる。

 

すると埠頭には、濃い紫色の制服におかっぱのような髪型の女性がトウ達を待っていた。

 

「長旅お疲れ様でした、奄美司令」

 

「なんのなんの、出迎え御苦労、妙高。

アラン君は部屋かね?」

 

「はい。何やら忙しいとの事で……」

 

「構わんよ。突然来たのはワシらじゃからのぅ」

 

妙高に連れられ一同は佐世保鎮守府庁舎へと向かう。提督室の前まで来ると、何の躊躇もなしにドアをノックして中に入る。

 

「……自分の部屋の様に入ってこないで下さい」

 

「そんなカタイこと言わずに、のぅ?」

 

佐世保鎮守府提督、アラン・エイが大きなため息をついた。

 

「資材を持ってくならそれ相応の態度というモノがあるでしょう?」

 

「元科学者にそんなトンチキ通用せんな。それに資材は借りるだけじゃ。永遠に」

 

「これだから科学者は嫌いなんだ」

 

アランは引き出しから書類を取り出し、サラサラと何かを書いてトウに渡す。

 

「取り敢えず、燃料2万、弾薬2万、鋼材1万、ボーキサイト1万……渡せるのはこれが限度です。

タダでさえボーキサイトは手に入りづらいというのに……」

 

「迷惑かけるのぅ」

 

「解ってるなら来ないで下さい」

 

トウはその書類を(ふところ)にしまうと、部屋を出て行く。

 

「……本当に自分勝手で自己中な人だな」

 

残されたアランは、そう毒付くと書類仕事に戻るのであった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「よし、アラン君から書類は貰ったから、資材の積み込みはライラ君と整備主任と艦の者に任せて、ワシらは地下ドックに行くぞい」

 

「……そういう理由で私を連れてきたのか」

 

「え!?オレもやるんかい!?」

 

「CMS方面に明るくて、指揮できる人物など奄美には君ぐらいしかいないからのぅ。

整備主任はそのサポートじゃ」

 

ライラは舌打ち混じりに書類を受け取ると、艦の方へ戻って行った。

整備主任もトボトボのその後をついて行く。

 

「……ありゃあ後で何か奢った方がいいぞ博士?」

 

「そうじゃな、結構拗ねてたのぅ。そんなにアレを見たかったのか。蛙の子は蛙、技術屋の娘もまた技術屋ということかね。

整備主任……もといムスビ君はその内嫌でも付きっ切りになるからいいじゃろ」

 

トウ、ツキタツの親父、ウカノ食堂の兄料理人、タテガミ雑貨店の女店主の4人は佐世保工廠へと向かい、そこからエレベーターを使って地下に降りる。

 

地下は様々なセキュリティが施されており、トウは手順を間違えないようにパスを入力し、迷路のような複雑な通路を通って、やっと大きな空間に辿り着く。

 

「おお……!」

 

「すげぇ……!」

 

ツキタツの親父とウカノ食堂の兄料理人が驚きの声を上げる。

 

巨大な空間には何隻かの艦艇があり、どれも何かしらの修理や改造を受けていた。

 

「ここが……佐世保の巨大地下ドック……!」

 

タテガミ雑貨店の女店主がそう呟く。トウを除く3人が地下ドックに見惚れていると、1人の女性と金髪オールバックの、この場に似つかわしく無い男性がやって来た。

 

「あれっ?征原さん?何でここに?」

 

「おぉ、ヨーコ君。突然スマンの」

 

「やぁジイさん。これまた急な」

 

「ヒノン君も元気そうで何よりじゃ」

 

その2人の姿を見て、ドックに見惚れていた3人が駆け寄ってくる。

 

「ヨーコさん、久しぶりだなぁ!」

 

「お久、ツキタツ、シナ、ミツバ。征原さんも、いつもウチの馬鹿弟どもがお世話になってます」

 

「いやいやお姉さん、俺らにゃ何にもお世話んなってないぜ。なんせ港町で店開いてるだけだからな」

 

ウカノ食堂の兄料理人が軽くそう言う。そこにヒノンと呼ばれた金髪オールバックの男性が近寄る。

 

「やぁやぁシナ君♪妹さん達の様子はどうだい?」

 

「帰れこのチャラ男!!テメェを妹たちにゃ近付かせねぇからな!!」

 

「あらやだ、大声でシスコン宣言してるわ」

 

「変わってないのね、シナ……」

 

少し離れた所でタテガミ雑貨店の女店主とヨーコと呼ばれた女性が冷めた目でその2人を見ている。

 

「ヒノン君、シナ君の妹達はまたも美に磨きがかかったぞ?」

 

「マジっすか征原提督!?」

 

「口を挟むんじゃねぇこのエロジジイがッ!!」

 

「あらやだ、征原博士のエロスイッチが入っちゃったわ」

 

「征原さんはもうダメね」

 

タテガミ雑貨店の女店主とヨーコと呼ばれた女性は、会話に参加したトウをさらに冷たい目で見ている。

 

「そうはいうがなヨーコ君よ。男が女に惹かれるのは太古の昔からの記憶の名残……つまり運命、いやむしろ使命じゃ!

神話を読み解いてもそうじゃ。例えばな……」

 

「そういえばMW技術を使った新歩兵武器のテストがまだだったなぁ……」

 

「ヨーコ君、『とがくし』に案内してくれ」

 

トウはとても真面目な顔になり、威厳のある声でそう言った。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「何だこいつは……まるで新造艦じゃないか!」

 

ウカノ食堂の兄料理人がそんな驚きの声を上げる。

 

「まぁ殆んど作り直したからねー」

 

隣をヨーコと呼ばれた女性が通り過ぎながら言う。

 

「今、極荷電粒子用の加速器(アクセラレータ)を取り付けてるトコ。これが終われば奄美に回航出来るわ」

 

「あとどれくらいなんだ?」

 

「今月中にはそっちに回すわ」

 

「……さすが奴の娘なだけあるのぅ。全体的な予定より半年も早い。何故ナギサの子供らはこんなに優秀なのかのぅ?」

 

「やだなぁ〜照れるじゃないですか」

 

「優秀なのを否定しない辺り、ナギサにそっくりじゃ」

 

トウがそう言い終わるかの内に、ヨーコと呼ばれた女性は、目にも留まらぬ速さでトウに正拳突きを叩き込んだ。

 

トウが「がほっ……!」と呻き、白目をむいてその場に倒れた。

 

「あっ……!つい」

 

トウは何も答えない。どうやら気絶したようだ。

 

「『とがくし』……また俺らはコイツに乗るのかね」

 

「今の状況じゃどうかしらねぇ。ま、そうなってもあたしには断る理由がないわね」

 

「それもそうだな」

 

女店主とツキタツの親父がそう話す中、金髪オールバックの男性はしゃがみ込んでトウを突っついていた。

 

「あちゃー、これ完全に気絶してんじゃん。何ちゅうパンチを出してるんだよヨーコの姉さん」

 

「いやーついカッとなってね」

 

「さすが脳筋」

 

恐るべき速さでその金髪の頭に回し蹴りが迫る。金髪オールバックの男性は上体を反らし、バク転の要領でその殺人級の蹴りをかわす。

 

「よけんなッ!」

 

「当たったら死ぬだろ!?」

 

「じゃあ脳筋とか言うなッ!」

 

「つい好奇心がな」

 

すると、金髪オールバックの男性の腕時計の様なデバイスがブーブーと震えた。

 

「おっと通信か」

 

「タイガか。そういえばワシ、少し話したい事があったんじゃ」

 

「げっ、征原提督。復活早っ!?」

 

「伊達に毎日ライラ君に殺されかけておらんわい。ちっと貸してくれるか?」

 

呆れ顔で金髪男性はデバイスをトウに渡す。

 

『ヒノンか?』

 

「ワシじゃ」

 

『……なぜ征原、お前が応答してるんだ』

 

「丁度、ヒノン君と一緒におってな?」

 

『……で?何を言いたいんだ?』

 

「話が早くて助かる。資材の供給をちと増やしてくれるか?」

 

『どうせ何を言っても無駄なんだろ』

 

「分かっとるじゃないか」

 

『あまり高望みするなよ。この時勢だ、いつ資源地が深海棲艦に襲われるかも分からん』

 

「助かる。それじゃあこちらからも一言、『とがくし』は今月中に奄美に回航する」

 

『予定より大分早いな。ナギサの娘がやったのか。さすがだな……というくだりはもうやったんだろ?』

 

「またパンチの威力が上がっとるわい。そっちの道に行かせた方が良かったと後悔してるとこじゃ」

 

『ふっ……ヒノンに代わってくれ』

 

トウはデバイスを金髪男性に返す。二言三言返答すると、ヒノンと呼ばれた金髪男性は通信を切った。

 

「用事が出来たから俺行くわ。じゃあな特験隊の諸君、ヨーコの姉さん、あとジイさん!達者でなぁ!」

 

金髪オールバックの男性はそう言い残すと風の様に去って行った。

 

「ワシはオマケか……まあ良い、ワシらもそろそろ上に戻るか」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ヨーコと呼ばれた女性は『とがくし』の整備の為に地下ドックに残り、トウたち4人は地上に戻って来る。

 

陽は完全に傾き、空には暗雲が広がっている。

 

「天気……崩れそうねぇ」

 

「うむ、これは船を出すのは待った方が良いかもしれんの」

 

「確かに、荒れそうだな」

 

「くっ……まさか……こんな事になるなら食堂閉めて来るべきだったなぁ」

 

4人がそう言って話していると、ポツポツと雨が降ってきた。4人は急いで佐世保鎮守府庁舎に戻るのであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

その夜、日本防衛軍統括組織『中央』

 

総司令の瀬織津タイガは、椅子に座って物思いにふけっていた。

 

正直、雨と風がうるさくて何も考えてはいないのだが、それでもジッと腕を組んで座っていた。

 

「『方舟計画』は順調な様だな……」

 

おもむろにタイガは1枚の写真を取り出す。

トウも持っていた、3人の白衣を着た人が写っている写真だ。

 

「あの時は俺も征原もナギサも若かった……」

 

しみじみとそう呟く。写真に写っている3人の顔は、自信に満ち溢れている。

 

「今の俺は……昔のように堂々としているだろうか……?」

 

目を閉じ、しばし考えるが、考えるにも値しないと思い、フッと笑った。

 

「自らの過ちは自ら正す。それだけだ」

 

タイガが写真をしまうと同時、窓の外がピカッと光って、部屋の電気が消えた。

 

「珍しいな、停電か」

 

部屋の中が暗闇に包まれる。突然暗くなったので、目が闇に慣れてなく、周りは見えない。

 

そんな中、一陣の風が吹いた。

 

「……誰だ」

 

タイガは立ち上がり身構える。

 

周りは見えない。ドアを開ける音もしなかったが、何かがタイガの前に立っていた。

 

「おやおやぁ、バレちゃったか」

 

暗闇からおどけた声が聞こえる。その声にタイガは顔を歪めた。

自分の声を聞いているかのような声色。

 

「……誰だと訊いている」

 

「酷いなぁ……お前なら声で解ると思ったんだけどなぁ」

 

「貴様……やはり……」

 

「あ、やっぱり解ってたんじゃないか!まぁ忘れる訳が無いよねぇ」

 

「……何しに来た?」

 

「いやいや、その質問はおかしいでしょ!賢いお前なら全て解ってるハズだろ?何故ならお前だからさ!」

 

未だ姿は見えないが、その人物はトンチンカンな事をいいながら笑っている様子だった。

 

「……警備の者はどうした?」

 

「警備?え、警備!?アレで警備してるつもりなの?ただ突っ立ってただけじゃんあいつら。あぁ、怒るなって、大丈夫、何もしてない。僕は堂々とここまでやって来たぞ?」

 

タイガは表情を変えずに、かつ気付かれないようにポケットから何かを取り出す。

 

「まぁ世間話もここまでにして……。

タイガ、お前を殺す」

 

「……まるで悪役の様なセリフだな」

 

「悪役?とんでもない!僕はヒーローさ!地球を救う英雄になるのさ」

 

その人物は笑いながら語る。

 

「いやぁでもさすがお前だよ。普通にやっちゃあ、日本の土を踏む事すら出来なかったからね。アッパレだよ!

だからワザワザ新型を用意して南方に攻め込んだのに、その新型はお前たちに取られちゃったしさ」

 

「人聞きの悪い事を。記憶の浄化中、あの個体のメモリーからはN型の記憶兵器のデータがあった。

解析したところ、それはまだCMSを実戦投入し始めた時に行方不明になっていた 101007001……一番最初に開発した『加賀』のデータだった」

 

「なんだよなんだよ、まるで僕が奪ったみたいな物言いじゃないか。最初に奪ったのはそっちだろ?

まぁお前たちに取られちゃって、お前がそれに熱中してたお陰で、僕はお前の監視の目を盗んでここまで来れたんだけどね」

 

「……トラック空襲は監視を減らすための罠だったのか」

 

「その通り!さすがだね!」

 

「何故こんな回りくどい事を」

 

「ん?いやぁ、僕は賢いからさ。

お前たちが“何を隠し持ってる”か分からないからね?」

 

タイガは額に脂汗をにじませる。やはりコイツは感づいている。

 

「冥土の土産にいい事を教えてあげよう。

もしも、例えばの話だ。

お前たちの希望とやら……えーと艦娘とか言ったか?その強い奴が全員日本を離れて、その主力がいない隙に本土が攻撃されたら?」

 

「何を言っている。そんな事する訳無いだろ。最低1つの鎮守府は本土防衛に当たるのだからな」

 

「例えばって言ってんだろ?テキトーに聴き流してろよ。

まぁでも?総司令であるお前がそう言って実行しちまえば反論は出ないだろ?

それにだな……お前らの艦娘って過去の艦艇のデータを記憶として持ってんだろ?

そうだな……アリューシャン列島とミッドウェー諸島辺りにこちらから攻撃を仕掛けると言えば?

艦娘たちは……どうだろうな?」

 

「貴様、まさか……!」

 

「お?やっと分かったか。賢いお前にしちゃあ、ちょっと遅かったな」

 

タイガの脇腹辺りに鈍痛が響く。

撃たれた、と頭が理解したときには床に倒れ伏していた。

 

「…………」

 

「あれ?死んじゃったか?」

 

その人物が倒れたタイガの首筋に手を当てる。

 

「あちゃー、情報を聞き出したりしたかったんだけどなぁ。暗かったし、しょうがないか……ともあれ……」

 

その人物は両手を広げて、天に示すように高らかに言った。

 

「今から僕が総司令、タイガだ」

 

雷が落ちる。その光に一瞬だけ照らされたその顔は、床に倒れて動かないタイガその者だった。

 

 

 

to be continued……

 

 

ー物語の記憶ー

 

《今までの登場人物》〜人間編〜

 

(さかえ)ルナ

記憶喪失により過去の記憶の一切を憶えていない、見た目青年の少尉。

現在は奄美基地で奄美CMS特別部隊指揮官として日々を過ごしている。

 

征原(ゆきはら)トウ

奄美基地の司令。温厚な性格で、年寄りらしく普段は提督室でのほほんとしている。

セクハラ発言をしてはライラに殺されかけている。

 

・ライラ・トイライン=ハム

奄美基地の中央派遣艦隊の指揮官。トウに代わり基地の細かな業務の全てを仕切っていたりする。

MW技術に関しての何かで博士号を持っているらしい。

 

・整備主任

奄美の整備士たちのリーダー。CMS(艦娘)の艤装のメンテナンスも出来る。

どことなく江戸前口調。

一部の者から『ムスビ』と呼ばれているが……?

 

・見張り員

奄美の見張り員。目がとても良く、自分で見たものしか信じないらしい。

そのせいか、ルナと出会った時、彼を怒らせている。

港町に知人が多いらしいが……?

 

・くだものツキタツの親父

港町で果物屋を営む親父。威勢が良く、豪快に笑う。

トウやライラと知り合いらしいが……?

 

・ウカノ食堂の三兄妹

港町で食堂を営む三兄妹。ツキタツの親父のせいで商売上がったりの様子。

トウやライラと知り合いらしいが……?

 

・タテガミ雑貨店の女店主

港町で雑貨屋を営む女性。裏では基地公認の武器を卸す仕事をしている。一部の者から『ミツバ』と呼ばれている。

トウやライラと知り合いらしいが……?

 

・金髪オールバックの案内人

呉鎮守府会議の時に案内人をしていた男性。

腕時計型のデバイスを愛用している。

トウやタイガと知り合いらしいが……?

 

・アラン・エイ

佐世保鎮守府司令。トウの自己中心的行動に頭を悩ませている。

 

須賀(すが)テンジ

横須賀鎮守府司令。あっけからんとした性格で、少しふざけた様子。

 

八幡(やはた)タカ

呉鎮守府司令。口数が少なく、とても真面目。

 

立橋(たてはし)アメノ

舞鶴鎮守府司令。五大鎮守府の中では唯一の女性提督。物腰柔らか。

 

・ユーカラ・コタン・カロ

大湊鎮守府司令。試される大地方面一帯を守る。名前は普段「ユカル・カロ」と略している。

 

瀬織津(せおりつ)タイガ

日本防衛軍統括組織『中央』の司令。皆から総司令と呼ばれている。

トウとは腐れ縁らしい。

 

 

 

 




ルナ「自分の出番が少ない……」
kaeru「次回は艦娘回だから」
ルナ「次回、レッツパーティ」
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