記憶の海 〜Indelible memory〜 作:Ar kaeru Na
新年早々の投稿遅刻とどうしようもないkaeruですが本年もよろしくお願いしますm(__)m
幕間回ラストです!
それでは!
memory27「前兆」
日本防衛軍統括組織『中央』
「それにしても、こんなに簡単にこの国の中枢に入れるなんて、思っても無かったなぁ」
自らの部屋で、総司令であるタイガは机の上に足を投げ出してそう呟いた。
普段のタイガの姿を知る者が見れば、びっくりして腰を抜かし、声も出ないであろうが、今ここにいるのはタイガであってタイガではない。
タイガになりすました“何か”が、今こうして総司令の椅子に座っている。
その時コンコンコンと扉をノックする音が聞こえた。その後また数回のノック。
総司令は目つきを変え、身なりを整えて「入れ」と言った。
ガチャリと扉が開き、秘書らしき人物が入ってくる。
「何か用か?まだ時間としては早いだろう」
そう言う総司令の姿は、タイガのものと何ら変わりない。
「少し報告したい事がありまして。先日、中部太平洋方面に偵察に向かわせた第六艦隊からの通信です。
総司令の予測通り、中部太平洋海域に深海棲艦の巨大基地を発見しました」
「場所は?」
総司令がそう訊ねると、秘書はゴクリと唾を飲み込んで言った。
「ミッドウェー……諸島です……」
「………そうか、下がってくれ」
秘書は敬礼をして部屋を出ていく。
その足音が遠ざかるのを待ってから、ニヤリとほくそ笑んだ。その下卑た笑いは悪魔と形容するのに相応しい。
「ハハハ……順調、順調。これで艦娘どもをミッドウェーに釘付けに出来る」
絶対にそうなると確信しつつ、総司令は電話を手にとって秘匿回線に繋げる。
「この僕が、世界を創り変えるのさ……!」
ーーーーーーーーーー
その頃、中央工廠鎔鉱炉。
ここでは不要になった武器などを溶かして、もう一度資材に戻して再利用するという事を行っている一般的な鎔鉱炉だ。
その炉の直前のスペースに1人の人影が見えた。
「………危ない所だったな」
身なりは違うがその顔は総司令のタイガであった。
謎の人物の凶弾に倒れたタイガは、即座にポケットから取り出した仮死薬を使って死んだように見せかけたのだ。
「……ぐ」
一応の止血はしたものの、腹部からは未だ血が滲み出している。
「治療をしている場合は無いな。まずは何とかして治療用ナノマシンか」
こんな状況下に置かれてもタイガは諦めなどしない。むしろ好機、向こうからやって来て居座るなど。
ただ心配なのが、他の鎮守府が良い様に利用されてしまう事だが……
「まだ、軍にはあの老いぼれジジイが居る……何の心配も無し……!」
そしてタイガにはまだ打つ手がある。
懐ろから1つの通信端末を取り出す。
(これでヒノンと連絡を取る事が出来れば、まだ何とかなる)
問題はアイツに自分が死んで無い事がバレたら……いや、とっくに気付いているのをワザと見逃しているだけかもしれないが。
タイガは重い足取りで歩き出す。
「ティーガ……お前の思い通りにはさせん……!」
ーーーーーーーーーー
奄美基地。
早朝からルナは基地内を散歩していた。
立場を考えれば当たり前の事だが。
そのような事を考えながら歩いていると、基地の正門の辺りでウロウロしている女性を見つけた。
その女性はルナを見とめると物凄い勢いで走ってきて、ルナの肩をガシリと掴んだ。
「ねぇ君!ここの人だよね!?」
「え!?えぇ、まぁ……」
「工廠まで案内してくれないかな!?かな!?」
「分かりましたっ!分かりましたから手を離して下さい!」
その女性は「あ、ゴメンね」と言いながら手を離す。ルナは息を整えてから工廠へと案内をする。
見たところ、新しく工廠に入る整備士のように見えるその女性は訊かれてもいない事をペラペラとルナに喋る。
「いやぁ、新しい仕事で佐世保からこっちに来たのは良かったんだけど、場所が分からなくてね〜。最初なんて間違えて加計呂麻島の方に渡っちゃったんだよ」
「はぁ……」とルナは話半分で聞き流す。
「そう言えば名乗って無かったわね。新しくここのCMSの艤装整備を担当する事になった『ヨーコ・エイ』よ。宜しくね!」
ルナはその名前に思わず振り返る。
「『ヨーコ・エイ』?エイってまさか……」
「ん?……あぁ、佐世保提督は私の弟よ。トラックでの話は弟から聞いたわよ。栄ルナ少尉?」
ルナは吃驚仰天する。まさかこの女性がアラン提督の姉だったとは。
「し……失礼致しました」
「何言ってんのよ!私よりルナの方が偉いんだから、かしこまらなくても良いのよ」
「そ、そうですか……」
そうは言うわりには名前は呼び捨てか……と思ったルナだったが、この見た目だと呼び捨てにされてもしょうがないだろう。
「ウチの弟が何か迷惑を掛けてないかしら?」
「いえ、とんでも無い。むしろ助けられてばっかりです。トラック防衛戦でも佐世保の戦力をお借りして、御礼がまだ……」
「いいのよ、あんなヤツに御礼なんか。っていうかホラ、いつもムスッとしてて愛想悪いでしょ?」
ルナは苦笑いをしつつ、その話を聞きながら工廠前までヨーコを案内した。
「ここを真っ直ぐ行けば、山の所にありますから」
「ありがとうね、お礼に私の事をお姉ちゃんって呼んでも良いわよ?」
「遠慮します」
何処ぞのぱんぱか重巡洋艦娘のような事を突然言い始めたヨーコの言葉を一刀両断する。
「遠慮しなくて良いのよ?っていうか呼べ!」
「そ、それではヨーコさん、お元気でぇーーッ!」
鬼気迫る何かを感じ取ったルナは、とんでもないスピードでその場から逃走する。
「ヨーコさん、かぁ。お姉ちゃんって呼んでくれても良いじゃない!減るもんじゃないし!」
ーーーーーーーーーー
「何で自分の周りにはおかしな人しかいないんだ……絶対あの人ショタコンでしょう……」
ルナは膝に手を付きながらコテージの所まで逃げてきた。
時計を見ると、良い頃合いだったのでそのままコテージに入った。
「Guten Morgen、ショーイ」
「おはよう、ユー。まだ眠そうだね」
コテージに入ると、寝ぼけまなこをこすりながらUー511がそう朝の挨拶をした。
「あの人たち……朝から」
Uー511が指差す先を見ると、奥の方で青葉と龍田が言い争いを繰り広げていた。
「だから本当ですって!奄美の護衛艦の2倍以上の大きさの艦が、夜中にドックに入ってったんですってば!」
「あら〜、でもドックにはそんな艦無いわよ〜。ただの見間違いじゃないかしら?」
「朝から何をおっぴろげてんだ君たちは」
ルナが呆れ顔でそう話しかける。青葉はズダダダと走り寄るとルナにギャーギャーと何かを説明するが、ルナは聞く耳を持たない。
「あれは護衛艦なんてものじゃなくて……そう!戦時の
「夜中で寝ぼけてたんだろう?」
「ムキー!これだからこのチビ少尉は!」
ルナは青葉の眉間にチョップを叩き込む。
「やられる前にやめろよ!」
「うぅ、写真を撮り損ねた事が悔やまれます……」
そんな会話を繰り広げていると、奄美の
「おい龍田!何で朝起こしてくれねぇんだよ!?」
「いやぁ?気持ちよさそうに寝てたから〜」
「絶対ワザとだろ!?」
「うー、那珂ちゃん朝は弱いの……」
「島風もー……」
「貴女たち、自己管理も出来ないようだと何かあった時に困るわよ」
「まぁまぁ、加賀さん。多めに見てあげましょう?」
「………赤城さんは優し過ぎるんです」
「あとは吹雪と金剛だけど……まだ来ないか?」
全員が椅子に座り、ルナが壁に掛かっている時計を見た時、ちょうど吹雪たちがやってきた。
「good morning、ショーイ!さっきそこでライラと会ったネ!」
「げ、ライラさんに?朝からとは災難な……」
「少尉……私の後ろにいるんですけど……」
吹雪が背後を見やると、そこに腕組みをしたライラが立っていた。
「……おい小僧」
「東部戦線、異常アリマセン!!」
「そんな小説ネタ言っても無駄だ。後で執務室に来い。それでもって、今日はそんな事で来たんじゃない」
「え、それでは何用でしょうか?」
「ワシじゃよ、ルナ君」
トウがひょこりと顔を見せる。ルナと
トウは答礼をすると、コテージに入って一同を見回すとニッコリと笑った。
「みんな良い顔をしておるのぅ。結構結構。そんな君たちも薄々気づいておるかもしれんが、奄美CMS特別部隊は、中央からの意向で『実験艦隊』を兼ねる事になったのじゃ」
「『実験艦隊』?」
一同は首をかしげる。その中で赤城と加賀だけが主旨を理解したように頷いていた。
「成る程、加賀さん、ユーさん、那珂ちゃんが奄美に来たのはそういう理由ですか」
「さすが赤城、鋭いのぅ。加賀、Uー511、おぬしたちは艦隊に正式配属する為には少々難があるようでの?」
「ユーは外国艦だから記憶兵装の不備が無いか、加賀は………まぁそういうことかしら〜?」
「はぁ、それで『実験』と来たか。気に入らねぇな」
「勘弁しておくれ天龍、龍田よ。今は素直に仲間が増えた事を喜ぼうではないか。
あ、ルナ君。これがアホタイガの紙切れじゃ」
ルナは中央の印が捺印された書類を受け取った。
「うわぁ、自分には何が何だか」
「心配するな、書類仕事は私が教えてやる」
「え!?机仕事あるんですか!?」
「中央からの仕事には付き物だからな。良かったな」
ルナは「ぐわぁぁあ!」と頭を抱えて机に突っ伏す。
その時、通信士の女性がトウの下へと駆けてきた。
「提督、こんな所にいらしたんですか」
「どうした、ミカ君。急用かね?」
「佐世保から転送されてきました電信です。中央から各鎮守府へと……」
トウは紙を受け取りその内容を確かめる。読み進める程にその眉間にシワが寄っていく。
「ライラ君、上層部を緊急召集。会議を開く」
「……ジョークを言う暇も無いという訳か。分かった。お前はもう一度佐世保に確認を取れ」
「了解です」
「すまないが、ルナ君。君も来てくれるかの?」
「分かりました……?」
ルナと
ーーーーーーーーーー
「突然集めて申し訳ないのぅ。だがまずは聞いてくれ。
先程、佐世保経由で中央から通信があった。内容は、中央第六艦隊が敵深海棲艦の一大基地を発見したらしい」
トウが開口一言、そういうと室内がざわついた。
深海棲艦の基地だって?
ついに奴らの基地が見つかったのか!
と至る所で声が上がる。
「司令、その発見された場所は……?」
上層部の1人がそう訊ねる。トウはホワイトボードに貼った地図に赤丸を付けた。
「中部太平洋海域、ミッドウェー諸島周辺だそうじゃ」
「ミッドウェー……」
話を聞いていたルナは赤城を説得した時を思い出す。
赤城が海に出る事の出来なくなった原因。運命のターニングポイント。
ミッドウェー海戦。
その戦いが繰り広げられた場所がミッドウェー諸島。そこに深海棲艦の基地があると言う。
「まぁ、基地と言ってもこちらの様に、数あるうちの1つであろうが……敵の基地に間違いはない。
偵察によると、戦艦棲姫などのイレギュラー個体に加え、陸上型のイレギュラー個体も確認されたそうじゃ。
これを受けて中央は急遽、作戦を発動するハラらしい」
トウは地図に2つの矢印を書き込む。
青い矢印は、北海道の北側へ。
赤い矢印は、太平洋へ。
「現在考えられている作戦は、大湊、舞鶴の鎮守府の勢力をもって北方海域、アリューシャン列島にある敵飛行場を叩き、ある程度の敵部隊を誘引、その隙をついて、横須賀、呉、佐世保の鎮守府がミッドウェーの敵基地を破壊する魂胆らしい」
「オイジジイ、その作戦、本気で言っているのか?」
トウは黙ったまま、静かに頷く。
ライラがそう言うのも無理は無い。今、トウが説明した作戦は第二次大戦当時、日本軍が行った方法と何ら変わりないからだ。
ルナもその話を聞いてどこか違和感を覚えた。
なぜ、過去と同じ方法を取ってミッドウェーを攻撃するのか。
「恐らく……CMSじゃろうな。彼女ら記憶兵器に相応しい戦場だからこそ、過去を乗り越える意味合いも込めて、同じ作戦を立案したんじゃろう」
トウがそう解釈する。確かにそう言われればそうなのだが……
「作戦名も……『AL/MI作戦』か。そのまんまじゃないか。作戦発動は一週間後、中々に急じゃの」
トウがそうため息をつく中、逆に部屋の中には活気が満ちていた。
また前の様に戦果を出せたら、この基地の評判も上がる!
敵基地を破壊出来れば、敵の攻撃も少なくなるな!
そのような言葉が部屋を飛び交う。
(全く、他人事みたいに……実際に戦うのはお前らじゃなくて艦娘たちなんだぞ)
ルナは内心そう思いながら頬杖をついていた。
「あー、ゴホン。静かに」
トウがそう言って場を静める。
「やる気があって結構なのじゃが……この件は見送ることにする」
キョトンとした様子でその場にいた全員ーールナやライラも例外では無いーーが耳を疑った。
「司令……今何と……」
「じゃからのぅ……この基地は現段階では、今作戦には参加しない。そう言ったんじゃ」
to be continued……
ルナ「また不穏な雰囲気になってきたな」
kaeru「次回、発動!AL/MI作戦!!」