記憶の海 〜Indelible memory〜 作:Ar kaeru Na
今回より投稿を再開しようと思いますが、投稿ペースが落ちる可能性があります。そうならないように最善を尽くしますがご理解頂けると幸いです。
それでは。
ーこれまでのあらすじー
記憶喪失の青年、栄ルナは奄美基地でCMS指揮官として忙しい毎日を過ごしていた。
AL/MI作戦によりミッドウェー攻略に成功したが、その間隙を突いて深海棲艦が本土に侵攻してきた。奄美部隊は急遽、小笠原基地に展開。改二改装を終えた那珂と吹雪を加え、劣勢の中、迎撃作戦を敢行する。
memory35「哨戒線突破」
「時間は限られています。私たちの消耗を防ぐためにも速攻でいきます!迎撃艦隊、抜錨!」
夜明けの朝。
小笠原基地にいた
迎撃艦隊の中核を成すのは奄美部隊。
旗艦、金剛に青葉、那珂、吹雪、赤城、加賀の6隻。
その周りを取り囲む、少数部隊が4つ。
第一小隊、天龍、島風。
第二小隊、神通、夕雲。
第三小隊、川内、初雪、叢雲。
第四小隊、龍田、長波。
そしてあきつ丸を加えた小笠原迎撃艦隊は一路、硫黄島へと向かう。
「針路、1-8-0。母島を迂回する航路で硫黄島に近付きます」
第二小隊旗艦、神通が隊内無線でそう通達する。艦隊は第一戦速で海上を駆け抜けていく。
「ふぅ……はぁ……」
「大丈夫~?あきつ丸」
龍田が心配そうに、前を進むあきつ丸に声を掛ける。
「御心配をお掛けして申し訳ない龍田殿。あきつ丸は大丈夫であります!」
元々あきつ丸は低速艦であり、高速な艦隊運動は出来ない。
通常ならば艦隊で速度を合わせ、無理のない艦隊運動を行うのが
第一次改装で機関部、航行用艤装ともに強化されたあきつ丸だが、やはり低速艦という足枷は重かったようだ。
「敵空母が攻撃隊を送り込んでくるなら、そろそろの筈です」
「えぇ、直掩隊の発艦準備を始めましょう」
赤城と加賀が矢筒から矢を取り出し、飛行甲板艤装にセットして発艦準備を進める。
「第一から第四小隊は中核部隊を囲むように展開、対空、対潜警戒を厳とせよ」
神通の指示で小隊は辺りに広がる。中核部隊は輪形陣を取り、対空戦闘に備える。
「加賀さん、準備はいい?」
「いつでも大丈夫です」
2隻は頷くと、矢をつがえ、空高く弓を掲げる。
「戦闘機隊、発艦始め」
加賀は澄ました声でそう言うと、大空へと矢を放つ。風を切り放たれた矢は、瞬時にその姿を『紫電改二』へと変え、艦隊の上空で体勢を整える。
「続いて索敵機、発艦!」
赤城が別の矢を放つと、それは『彩雲』へと変化する。
「1-8-0から2-7-0にかけて扇状に展開、低高度から敵艦隊を、高高度から敵艦載機群をお願いします」
赤城から発艦した彩雲10機は了解の意を返すと、指示された方角へと索敵を開始した。
「……戦闘機を出すのは早すぎたかしら」
「いいえ加賀さん、時を待ち過ぎて発艦が遅れ、手遅れになるよりはずっと良いですよ」
「確かに、赤城さんの言う通りです」
まだ敵の勢力圏内に入ってはいないものの、辺りの海は怖いほどに静まり返っている。
「様子はどうデスカー?」
中核部隊旗艦の金剛が隊内無線で確認を取る。
「青葉です、辺りに敵影は見えません。無線の方も特に引っかかるものは無いですねぇ」
「那珂ちゃんだよー!こっちも同じ~」
「こちら吹雪、13号改にも反応ありません」
各々は金剛にそう伝える。航空索敵の方も未だ敵発見の連絡は無かった。
「……那珂ちゃん、吹雪さん、調子は大丈夫ですか?」
右舷前方を先行する第二小隊の神通が無線で問いかける。
本来なら完熟訓練を必要とする中、切迫した状況下の為ぶっつけ本番の形で那珂と吹雪は出撃していたからだ。
第二次改装が戦闘行動に支障をきたす事案は少なく無い。
「大丈夫!那珂ちゃんは何の問題もないよ!きっと整備士のお姉さんの腕が良かったんだね」
那珂は各部の艤装を動かして見せながら言う。
吹雪は少し、小首を傾げつつも問題無さそうに言った。
「艤装のタイプが変わっているのでまだ慣れませんが、今の所問題は無いと思います」
2人とも今の所、第二次改装の悪い影響は出ていないらしく至って普通に航行していた。
しかし川内だけが2人をジッと見つめていた。
那珂がその視線に気付き、そちらを見ると川内はフイと顔を背けた。
「川内お姉ちゃん……」
索敵を始めて暫く航行していく迎撃艦隊だったが、加賀がぽつりと口を開く。
「……おかしい」
「どうかしたんですか?」
対空警戒に当たっていた青葉が振り返って訊ねる。加賀は口元に手を当て、考える素振りを見せてからその理由を説明する。
「航行速度と時間からみてもそろそろ敵勢力圏内に入るはず、なのに何も起こらない。
深海棲艦だって馬鹿ではないのだから、索敵機の1機や2機飛んで来ても不思議では無いはず。
それに敵艦隊には空母棲姫他、多くの空母がいるのにこちらの索敵機には何も引っかからない。
つまり、動きがあっても良いはずなのに何も起こらないからおかしいと言ったの」
「……確かに加賀さんの言う通りです」
隣にいた赤城も加賀の言葉を肯定する。
「俺たちに恐れをなして逃げ帰った、って事は無いだろうしな……何か不自然だな」
「あら~、天龍ちゃんがそう言うのって珍しいわねぇ」
他の
ちょうどその時だった。青葉の監視していた無線に通信が入る。
「むっ、どこかの広域通信を傍受……って、小笠原基地のでした。えーと…………!?」
しばし通信に耳を傾けていた青葉の表情が一転する。それに只ならぬ事態を察した神通が、自らも小笠原基地へと回線を開く。
「基地、東南東方面から敵艦載機群が接近中ですって!?そんな、どうしてっ!?」
艦隊に衝撃が走る。自分たちの艦隊を避けるようにして敵の艦載機群は小笠原基地に迫っていたのだ。
この事から考えられる事柄は1つ。
「私達の作戦は読まれていたのね……」
第三小隊の叢雲がつぶやく。川内が舌打ちをすると、神通に意見を具申する。
「神通!味方の艦載機の一部を基地に振り分けるんだ!今からでもまだ間に合う!」
「分かっています……!赤城さん、加賀さん、戦闘機隊の一部を小笠原基地へお願いします!」
「了解、紫電改二の数部隊を小笠原基地への援護へと回します」
赤城と加賀の紫電改二、合わせて30機程を小笠原基地へと向かわせる。
おそらく敵艦載機群は大編隊。護衛艦のスタンダード
紫電改二が間に合ったとしても、基地に損害が生じるのは明らかだった。
「やってくれるな深海棲艦め!」
長波がこぶしを握り締めて基地の方角を見る。
「作戦第一段階が敵に読まれていた以上、継続する理由は無くなりました。よって第二段階へ移行します」
神通は冷静を装い淡々とそう告げるが、顔には汗がつたっていた。
これ以上迎撃艦隊に出来る事は無い。あるとすれば、紫電改二が間に合い、護衛艦や基地の対空能力を信じて被害が少なく済むよう祈ることしか無い。
一刻も早く敵艦隊を撃滅しなければ。
「艦隊、速度落とせ。ソナー感度上げ、海面の潜望鏡に注意して下さい」
作戦第二段階、ここでは中核部隊を消耗させずに敵本隊にぶつける事が重要となる。
そして既に艦隊は敵勢力圏内に突入している。
ここが一番の警戒区域だった。
「対潜ならこのあきつ丸にお任せあれ!」
突然、中核部隊後方に位置していたあきつ丸が声を上げる。
驚いて皆が目を向けると、あきつ丸は巻物のような飛行甲板艤装を展開した。
「さぁ、カ号のみんな、出番であります!」
あきつ丸はその手に走馬燈のような艤装を持ち、艦載機の絵が描かれた紙をそこにセットする。
すると走馬燈に灯りがともり、その影が飛行甲板艤装に投影される。
走馬燈が回るにつれ、影も動いていくのだが、その影がいつの間にか実体を持ち、赤城や加賀と同じ様に機体となる。
「カ号観測機、発艦!であります!」
通常の艦載機とは随分形状の異なる機体が、空へと上がる。
「オートジャイロですか……!」
青葉が手をひさしのようにかざして空に浮かぶカ号観測機を見る。
「まだまだ!続けて三式指揮連絡機、発艦!」
同じ様にして、あきつ丸は別の機体を発艦させる。
「固定翼機もあるんだよ、であります!さぁ、行くのです!」
あきつ丸の指示で、発艦した2種類の哨戒機が対潜行動を開始する。
その初めてとは思えない手際の良さに、他の
「あきつ丸さん……進化し過ぎじゃないですか?」
「そうでありますかな青葉殿?発艦方法などは記憶としてアップデータされております故、何ら問題はありませんでしたが……」
「でも、思いがけずあきつ丸さんが対潜哨戒を行ってくれるおかげで我々は攻撃に専念出来ます」
神通が装備していた爆雷をいつでも投射できるように用意する。
「潜水艦など、自分がいれば近付けさせないのであります!」
「それは頼もしいですね」
「……多分!」
「なぁ龍田、大丈夫だと思うか?」
天龍が呆れたようにそう言う。神通も苦笑いで返すしかない。
だが、その心配は杞憂だった。
「……!右舷70度、雷跡であります!」
三式指揮連絡機からの通信を受けてあきつ丸が叫ぶ。見ると確かに魚雷の白い航跡が4条迫ってきていた。
あきつ丸の警告のおかげで艦隊は余裕を持って回避する。
「第一小隊、攻撃を!」
「任せろ!行くぞ島風!」
「りょーかいっ!」
天龍と島風が弾かれたように海上を疾駆する。すぐにトップスピードに到達し、連絡機が空中でくるくると旋回し潜水艦を捕捉している場所へ向かう。
「敵潜水艦、潜航中であります!」
「
「おっそーい!」
天龍と島風が敵潜の上を通り過ぎ、その瞬間に爆雷を投射する。
投射された爆雷は調定深度に達すると爆発し、海面が白く盛り上がったかと思えば、ズゥーンといった低い音を響かせ水柱を作り出す。
天龍と島風がターンをして敵潜水艦のいたポイントに戻ってくる。
海面は未だ爆発の衝撃で白い泡が浮かんできていたが、それに混じって重油のような液体も浮かんできていた。
「こちら天龍、敵潜水艦撃沈確実だ」
天龍は隊内無線でそのように報告する。
「ついに敵の哨戒線に突入するんですね……」
「見つかるのは最初から予想済みデスからネ。後はいかにダメージを受けずに戦艦棲姫と勝負出来るかデース」
吹雪のつぶやきに金剛が答える。自分たちの戦いでこの世界の運命は決まるのだ。
「なんかトラック迎撃戦の時と同じ状況じゃないですか?」
「まぁつまり、我々は一度も負けてはいけないという事です」
「深海棲艦の戦力は無尽蔵、それゆえに無謀な作戦も実行出来ますが、こちらの戦力は限られている。
だから私たちは戦力を損耗させる事無く、深海棲艦に勝ち続けなければならないというわけね」
赤城と加賀が青葉に言う。その合間にもあきつ丸の哨戒機は敵潜水艦を発見し、爆雷を海に落としている。
通常の艦載機と違って、ヘリコプターと同じようにホバリングの出来るカ号観測機の対潜能力は目を見張るもので、被害はゼロで敵潜水艦の哨戒線を突破した。
赤城と加賀は直掩の艦載機を収容しつつ、新たな偵察機を飛ばして索敵を図る。
「基地の方は大丈夫でしょうか……」
吹雪の言葉に青葉は無線をいじりながらに答える。
「うーん、さっきから通信が一切入っていないんですよねぇ」
「空襲が始まったのなら、広域通信を発信するはずでは?」
「いつもの深海棲艦による電波妨害ですかね……」
「まさか、空襲によって基地の通信施設が破壊されてたりとかは……」
その一言は、予想し得る中でも最悪のケースだった。もしそうなっていた場合、
「そうなっていない事を祈るしかないデース。アオバは引き続き、無線傍受をお願いするネ」
「了解ですっ」
艦隊はときおり針路を変更しつつも硫黄島へと進んでいく。
海域エリアCポイントを抜けた辺りで吹雪の13号対空電探改に反応があった。
「対空電探に感あり、4時の方向!」
「来ましたね」
加賀がいつもと変わらぬ調子で言う。赤城もこの時を待っていたかの様に、燃料補給の完了した艦載機の矢をスッと引き抜く。
そして神通は艦隊に素早く指示を下す。
「第一から第四小隊は、中核艦隊を中心とした対空陣形の外縁部に展開し、敵機を迎撃、または誘引して下さい」
「神通がリーダーっぽいデスが、艦隊旗艦はワタシなんデスカラネー!
奄美部隊、陣形、輪形陣に移行。対空戦闘用意するデース!」
「「「了解!!」」」
小笠原迎撃艦隊は哨戒線を強行突破し、敵勢力下の海へと突入する。
北西の空からは敵艦載機がごま粒の様に見え始めていた。
to be continued……
kaeru「遅くなりました」
ルナ「なり過ぎだろ。こんなペースで終わるのかよ」
kaeru「記憶の海はまだまだ続きます!じゃあ次回」
ルナ「話をはぐらかすな!」
kaeru「次回、作戦第二段階」
ルナ「おいこら聞け!」