記憶の海 〜Indelible memory〜 作:Ar kaeru Na
ですが未だに厳しい状況が続いています。いつになったらこの小説完結するんだ……
それでは
memory36「作戦第二段階」
小笠原迎撃艦隊の右舷から、
その中には従来のものとは違う、白い球体状の新型艦載機も数機、混じっていた。
「小隊、対空戦闘用意……てぇーーっ!」
一番最初にぶつかったのは、川内率いる第三小隊。川内の掛け声で、初雪、叢雲は空に向けた砲を放つ。
敵機の行く手に対空砲弾が弾けとび、対空陣形内縁部への侵入を拒む。
「初雪と叢雲は敵艦攻を集中的に狙って!高度を下げにきている艦攻ならすぐに撃墜できるはずだ!」
「了解……」
「やってやろうじゃないの!」
第三小隊は押し寄せるように現れる敵機に向かって、ひたすらに砲撃する。
「元第三水雷戦隊をなめるなーっ!」
しかし、別の角度から別の艦載機群が接近し、
「今だ、撃てッ!」
敵艦攻が最後のコース修正をしようと高度を下げた時、その眼前には無数の機銃弾による弾幕が形成されていた。
火を噴き海面に突っ込む敵機。その横を第一小隊の天龍と島風が駆け抜ける。
「いいか島風、こっちに来た奴は全部撃ち落せ!1機も通すんじゃねぇぞ!」
「えぇーー!?いくら私が速いって言ってもさすがにそれは……」
「それぐらいの気持ちでやれって事だよ!」
「あっ、そーゆーことね。それじゃあ連装砲ちゃん、いくよっ!」
第一小隊と第三小隊が奮闘していても敵は多勢、数機、また数機と対空陣形の内側へと侵入する。
しかし、内側へと侵入した艦載機は恐怖した。空母艦娘のいる中核部隊までの間に、1隻の軽巡艦娘が静かに居た。
たかが軽巡、なのにその身体から溢れ出る気迫のようなものはさながら鬼神の様だった。
「敵速確認、相対速度計算完了、仰角良し、信管調整良し、対空弾装填良し」
神通がまるで兵学校で教える教師のように、全てを確認しながら通常兵装の高角砲を指向する。
「……
神通の近くを通ろうとした敵艦載機の全てが爆発、もしくは炎を上げて墜落する。
まるで防空巡洋艦であろうかと思うほどの対空力に、後続の艦載機は反転したり、あらぬ所に爆弾を投下し逃げ帰るものもいた。
「いいですか夕雲さん、今のようにすれば敵の方からこちらの砲弾に突っ込んで来てくれます」
「い、いや……どうでしょうね。夕雲には難しいかも……」
「夕雲さんなら出来ますよ。心配なら私が訓練を付けてあげましょう。大湊の提督にも進言しますよ?」
「だっ、大丈夫ですよぉ。それより、今は防空しないと!」
「あら、私とした事が。確かに、今は対空戦闘中でした。では、戦闘を継続します」
夕雲は神通の見ていないところでホッと胸をなで下ろす。
二水戦の神通の行う訓練がスパルタだということは、この世の駆逐艦娘全員が知っている事だろう。これをいかにかわせるかに駆逐艦娘たちは全力を尽くすと言う。
第二次大戦の時と変わらず、訓練モードの神通は『鬼の二水戦旗艦』とひそかに言われていた。
しかしスパルタで過酷な分、それ相応の実力がすぐに身につく。その為一部の努力家は神通に訓練を直接申し込むという。
神通の実力を察した敵機は、神通のいるところを避け、回り込むように奄美部隊に近づく。
相手だって馬鹿ではない。艦より飛行機の方が速いのは当たり前だ。
「くっ、さすがにこれはどうしようもないですね……」
神通は簡易無線のスイッチを押す。
「金剛さん、こちら神通です。敵機2編隊、数にしておよそ10機余り、そちらに侵入します」
『ヘーイ、コンゴウデース!それだけ減らしてくれれば充分デス。引き続き頼むネ!』
「了解です」
神通から連絡を受けた金剛は赤城と加賀に指示を出す。
「準備は良いデスカー、
「既に直掩機は発艦済み。上空で待機しています」
加賀が金剛に言う。しかし他の艦娘が空を見上げても艦載機の姿は見当たらない。
そのかわりに敵の艦載機の姿が見えた。
「各艦、自由回避許可、対空射撃始め!」
敵機が奄美部隊上空に到達し、艦爆や艦攻が攻撃態勢に入る。
「今よ」
加賀がそうつぶやいた瞬間、敵機が爆散する。
敵機よりも更に上空から『紫電改二』が急降下し撃ち仕留めたのだ。
「止まり木戦法は今の世界でも有効なようね」
加賀の紫電改二のおかげで、敵機は一気に半数以上が消失する。
だが、それをすり抜ける敵艦載機もあった。白い球状の新型艦載機だ。
「今こそ改二のチカラを見せる時だよー!」
那珂が装備していた12.7cm連装高角砲を空に向ける。
低音と金属音の混ざったような音を立て砲弾が発射される。砲弾は信管によって空中で炸裂し、辺りに破片を撒き散らす。
しかし白い球状の新型艦載機はそれらを物ともせずにすり抜けて、那珂に爆弾を投下する。
「とーりかーじ!」
那珂は即座に舵を切る。改二となり航行性能も上がったらしく、寸前で投下されたにも関わらず回避することができた。
頭から海水を浴びつつ、那珂は陽気に言う。
「ふっふーん!トップアイドルはそんな爆弾には当たらないよーだ!」
『ちょっと那珂ちゃん、今の爆撃は危なかったですよ!まさか、改二の影響が……!』
「違うってば神通お姉ちゃん~!新型艦載機の性能が良すぎるの~!」
那珂の無線に神通の心配そうな声が聞こえる。
『練度が足りませんね。そんなようではこの先やっていけませんよ?』
「大丈夫だって、心配無用だよ!」
『はぁ……川内姉さんも何か言って下さい……』
神通がため息まじりにそう言う。川内は無言だった。
『………切るよ』
『ちょっと姉さん……!』
通信が切断され、それ以降何も聞こえなくなる。那珂は心の内に
(やっぱり川内お姉ちゃんは……いや、今はそれよりもこの戦いに勝つ事を考えなきゃ……!)
那珂は再び砲撃を始める。しかしいくら砲を放とうとも、心の
ーーーーーーーーーー
そんな戦闘が繰り広げられている所から少し離れたところに龍田の率いる第四小隊とあきつ丸が待機していた。
「しかし、我々はここで待機していて良いのでありますか?我々も戦闘に参加した方が……」
あきつ丸が龍田に訊ねる。
「私たちはもしもの時に動く緊急用の部隊なの。例えば、誰かが機関故障とかで動けない時に離脱を助けるとか、本隊の手が離せない時に敵別働隊を食い止めるとかかしら~。
だから私たちはいつでもすぐに動けるようにしておかないとダメなのよ?」
「……それ以外にも理由があるのではないのですか?」
「…………」
「一番の理由は自分でありましょう。戦闘艦ではない自分を戦闘に参加させない為、違いますか?」
「それもあるかもしれないわねぇ」
龍田はあきつ丸の言葉をやんわりと肯定した。あきつ丸は顔を歪め、こぶしを握りしめる。
「自分は、自分が情けない!CMSでありながら深海棲艦と戦う事も出来ず、人々を守るハズが逆に守られる。何も出来ない自分が情けないっ……!」
「それはちょっと違うかな~」
「……?」
龍田はいつものニコニコ顔であきつ丸に言う。
「誰しも得手不得手って言うものがあると私は思うんだ~。あきつ丸は、私たちみたいに前線に出て戦う事は出来ないかもしれないけど、逆に私たちに出来ない事をあなたは出来るでしょう?」
「…………!」
「つまり、人によって輝ける場所は違うって事よ。今は何も出来なくても、絶対にあなたの力が必要になる時が来るわ。だからそんなこと言っちゃダメよ~?」
「龍田殿……!申し訳無い、自分はもう大丈夫であります」
あきつ丸はシャキッと背筋を伸ばし敬礼をする。この切り替えの速さもあきつ丸の良い点だろう。
龍田は相変わらず微笑んでいる。そして静かに話を聞いていた長波が声を上げる。
「6時の方向、機影です!」
「敵の艦載機かしら~?」
「いや……どうも様子が……あっ、基地の方へ増派した赤城さんと加賀さんの紫電改二です!」
「ほら~、早速あなたの出番よ」
「は……?」
「今、赤城と加賀は戦闘中で艦載機の収容は出来ないわ。だから飛行甲板を持つあなたが代わりに一時的に収容すれば良いと思うわよ」
「成る程。しかし、自分の格納庫だと10機も収容できませんが……」
「被害の大きい艦載機から収容して、あなたの出来る範囲で整備すれば良いわ。それと、基地の状況も聞くのを忘れないで。空母の2隻も納得すると思うわ~」
「了解であります!」
あきつ丸は信号灯で艦載機に状況を伝え、着艦指示を送る。艦載機から了解の信号が返ってくる。
「長波、対空及び対潜警戒。気を抜いちゃダメよ~?」
「了解、長波サマの腕を信じてくれって!」
ーーーーーーーーーー
「…………」
「どうかしましたか加賀さん?」
「第四小隊
加賀は送られてきた電信を解読する。
「読みます『貴艦の基地に増派した艦載機が帰還したが、本隊は戦闘行動中の為、小隊旗艦龍田の独断で一部をあきつ丸へ収容、整備を行っている旨を報告する。尚、基地の損害は軽微だが、一部施設はかなりの損害を負った模様』以上です」
「了解しました。今の電文を金剛さんに転送して下さい。それにしても、加賀さんは良いんですか?」
「赤城さん、その質問はどういう事ですか」
「いや、自分の艦載機を他のCMSに渡すのって、加賀さん嫌がるじゃないですか」
「……その情報がどこから出てきたのが知りませんが、あきつ丸は芯がしっかりしているから大丈夫です」
「そうですか、ならこちらも頑張りますか」
本隊上空には未だに敵艦載機が侵入してくる。
しかし、赤城と加賀の的確な管制指示によって次々と撃墜されていく。
「なんか、私たちの出番ないですねぇ」
青葉が対空砲火を継続しながらそう愚痴をこぼす。
「ごめんなさい青葉さん、でも私たち空母の戦える場はここしか無いので……」
「ここは譲れません」
赤城と加賀が揃って言う。青葉は苦笑いしながらも「気を付けて下さいよ」と答える。
「私もこの高射装置を使ってみたかったんですけど、なんか使い方が良く解らないですね」
吹雪が腕に装着している94式高射装置を見る。この装備を使いこなせれば、対空戦闘で絶大な効果を発揮する事が出来るのだが、吹雪の対空砲の範囲まで敵艦載機はやって来ていなかった。
「フブキならぶっつけ本番でも大丈夫デスヨ。ところで現在の状況はどうなっていますカ?」
金剛の元に各小隊からの状況報告が届く。
『こちら本隊前方、天龍だ。もう敵機はやって来ないな』
『第二小隊、神通です。左舷側の敵機は全て迎撃完了しました』
『川内、もう艦載機は確認出来ないね』
『龍田だよ~、こちら異常無し』
金剛は報告を確認し、対空戦闘の終了を告げる。小笠原迎撃艦隊は損害確認を急ぎつつ硫黄島へと進路を取る。
「赤城さん、損害状況です」
「受領しました。………成る程、金剛さん」
赤城が旗艦金剛に航空機の損害を伝える。
「報告します。先の空戦で我が方は紫電改二6機を喪失、18機が損傷、未帰還機5、計29機の損失。
小笠原基地に増派した紫電改二は30機中、帰還したのは12機のみ。その内8機はあきつ丸さんが収容。
以上より、赤城11機、加賀18機、合計29機の喪失。損傷機も含めると47機の損耗です」
「了解したデース。航空戦力に支障は無いデスカー?」
「損傷機を修理し、予備の機体を組み立てれば問題無いと思われます」
「どれくらいで修理は完了しますカ?」
「……最低でも15分はみておきたいかと」
赤城は矢の状態に戻った艦載機を見てそう言う。艤装のシステムで修理自体にそれほどの手間は掛からないのだが、どうしても時間は掛かってしまう。
「こちらでも善処しますが、最悪の場合は修理を放棄し、残存戦力で対抗する他に無いと思います」
「……仕方アリマセンネ、そうならないように祈りまショウ。
ナカとフブキにも問題は見られませんシ、艦隊の被害も少ないので今の内に前進を……」
金剛がそう言いかけた時、那珂と吹雪がほぼ同時に声を上げた。
「何これ……!21号電探に感あり、右舷30度!」
「こちらでも捕捉しました!敵機数、およそ……150!?」
「150ですって……!?」
吹雪の言葉に赤城は驚きをあらわにする。
「……前進したかったのデスけど、深海棲艦の通行止めのようデスネー」
金剛が敵機の方角を見る。まだ遠くの空だが、その悪魔のような顔を持った白い球状の艦載機が見て取れた。
to be continued……
ーー物語の記憶ーー
・止まり木戦法
主に艦載機の空中戦で用いられる戦法。敵機よりも高い位置で待機し、上空から急降下、奇襲をかけるという戦法。
太陽の中に入るとより効果的。
ルナ「ふと思ったけど、俺の出番無くないか?」
kaeru「無いです」
ルナ「どこぞの主人公が出ない漫画みたいになってるぞ……」
kaeru「次回、戦艦棲姫登場!」