記憶の海 〜Indelible memory〜   作:Ar kaeru Na

47 / 48
投稿ペースを何とか保ってるkaeruです。
しかしながら次の話は少し投稿が遅れそうです。御容赦下さい、スミマセン!

どんなことでも良いので感想等頂けると嬉しいです(^^;;

それでは!


memory37「作戦変更、敵陣突入」

 

 

 

memory37「作戦変更、敵陣突撃」

 

 

「あの新型艦載機は……空母棲姫のものです……!」

 

敵機を確認した吹雪が言う。敵艦載機に大きな違いは無く、種別以外の個々の識別は困難を極めるのだが、吹雪はひと目で空母棲姫のものだと判った。

 

忘れもしない偵察任務の時、那珂の率いる臨時水雷戦隊を壊滅に追いやった新型艦載機。

 

「攻撃の間隔が短過ぎる……!」

 

川内が睨むように空を見上げながらそう呟く。川内の言葉に、神通が答えるように言う。

 

「一航戦の2人は戦闘機を収容した直後で、燃料補給や修理が終わっていません。そのため、先程のような航空支援は望めません」

 

「それだと一時的にも制空権を失ってしまうじゃないか!」

 

「その通りです。そしてここで制空権を失えば、こちらが艦載機を発艦するタイミングも無くなる可能性もある……!」

 

川内はギリリと歯をくいしばる。2隻の会話を通信で聞いていた奄美部隊、旗艦である金剛も顔を歪めていた。

 

「いくら何でもタイミングが良過ぎるデース。基地の空襲といい手の内がバレまくりじゃないデスカ!」

 

「金剛さん、落ち着いて!」

 

青葉がなだめるように言うと金剛はハッとして「sorry」と謝った。しかし険しい表情はそのままだ。

 

「どうするんですか?今ここで消耗したら、敵本隊との戦闘時に影響がでるかもしれませんよ」

 

「解っていマース。けれどあの艦載機群を無傷ですり抜ける事は恐らく不可能デス。

それはアオバも解るでショ?」

 

「そうですけど……」

 

青葉の言いたいことは金剛にも解っていた。しかし今の状況だとあまりにも打つ手が無さすぎる。

 

「意見具申、よろしいですか?」

 

ふと、赤城が隊内無線で金剛に言う。金剛は「いいアイディアがあるんデスカ?」と反射的に問い掛けていた。

 

「苦肉の策ですが……艦隊を二分して再編、対空母棲姫用の艦隊を作って、中核艦隊が敵本隊と接触するまでの時間を稼ぎます」

 

「それは……」

 

つまりは誘引役、囮であり、身代わりである。作戦に沿うならばその役目は、第一から第四までの小隊の仕事だが、小隊では無く、艦隊単位でそれを行おうと言うのだ。

 

「そして、誘引役には私が」

 

「what's!?アカギがデスカ!?アカギが居なければ艦隊の航空戦力は半減デース!

戦艦棲姫率いる敵本隊にも空母がいる可能性があるんデスヨ!

それに、アカギはどうするのデース!?」

 

「大丈夫、加賀さんならきっとやってくれます。それと、私の事ならご心配無く。トラック防衛戦の時だって空母棲姫と一対一だったんですから」

 

「あの時とは戦力差があり過ぎなんデスヨ!アカギ1人なんて……危険過ぎマス!」

 

「そうです赤城さん」

 

金剛の言葉に便乗して加賀が口を開く。

 

「1人では危険です。私も残ります」

 

「カガまで何を言い出すんデスカー!?」

 

「ここで損害を受け、敵本隊との決戦時に確定的な戦力差が付くよりは、打撃力を多少減じたとしても敵本隊との決戦に可能性を残すのは当然の事では無くて?」

 

「そ……それもそうデスが……」

 

金剛は歯切れの悪そうに言いよどむ。加賀は更に言う。

 

「それに、赤城さん1人では誘引としての効果も小さいでしょう。空母が2隻、別離すれば、敵にとっても格好の(まと)になるのではないかしら」

 

「……アーもうっ!承諾してやるデース!無茶はしないで下さいヨ!!」

 

ついに金剛が折れ、やけ気味にそう言い捨てた。

 

「ありがとう、金剛さん」

 

「むしろ、空母棲姫を退けてそちらに追いついてあげましょう」

 

赤城と加賀は弓を握りしめ、笑みを金剛に向ける。金剛は隊内無線に怒鳴るように言う。

 

「各小隊、今の話を聞いていまシタネ!?艦隊を二分シマス!

アカギ、カガに第一、第二小隊を加えた6隻を誘引部隊とし、空いた中核艦隊の2隻に第四小隊が入ってくだサイ!

アキツマルは第三小隊に異動、第三小隊は引き続き、護衛をお願いするデース!」

 

『こちら天龍、了解したぜ!』

 

『第二小隊了解、こちらは任せて下さい。姉さん、那珂ちゃんを頼みます』

 

『……分かってるよ!川内、了解!』

 

『わかったわ~、天龍ちゃん、気を付けてね?』

 

CMS(艦娘)たちはすぐに隊列を組み直し、艦隊を二分させる。

そして、赤城と加賀率いる誘引部隊が予定航路を外れ、敵艦載機が来る方向へと向かっていく。

 

中核艦隊は単縦陣になり、速度を上げて硫黄島へと急ぐ。第三小隊は中核艦隊の前方に移動し、先遣を担った。

 

誘引部隊がやってくれたのか、中核艦隊は敵艦載機の襲撃を受ける事無く、不気味な程に静まり返った海を進んでいく。

 

時刻は昼を回り、太陽は少しずつ傾き始めている。

 

「金剛さん、海域ポイントEー6ーJに入ります」

 

青葉が航路を確認し、戦闘海域に突入する事を伝える。

 

「索敵機の準備をしてくだサイ。アカギとカガのいない分、念入りに行いマスヨ。センダイも出来ますカー?」

 

『了解、索敵機の準備をするわ』

 

数分の後に金剛、青葉、川内の3隻は零式水上偵察機を発艦させる。

 

「各艦、警戒を怠らず、戦闘準備を整えておいてクダサーイ」

 

「「「了解!」」」

 

ついに中核艦隊は会敵予想海域に突入する。

CMS(艦娘)たちは短距離電探(レーダー)双眼鏡(メガネ)などで周囲の警戒を続ける。

 

先程まで顔を出していた太陽も雲の中に隠れ、まだ日中だというのに薄暗くなってきた。

 

「……荒れそうね~」

 

「うぅ、嵐は苦手だぞ……」

 

最後尾に付いていた龍田と長波が曇天の空を見上げつぶやいた。

 

「金剛さん、索敵機を帰還させた方が良いのでは?」

 

「そうですネ、収容不可能になる前に帰還させマショウ」

 

嵐が来ると踏んだ金剛は、早めに索敵機に帰還指示を出した。

 

 

 

「初雪、叢雲、周辺警戒。あきつ丸は後ろで待ってて」

 

中核艦隊前方、第三小隊。川内は戻ってきた索敵機を収容するために一時停止していた。

 

「はぁ……帰りたい」

 

「アンタいつもいつも言ってるわね。世界の危機だっていうのに、暢気なモンね」

 

「叢雲は帰りたくないの?」

 

「………この戦いが終わったら、提督に休暇届でも出そうかしらね」

 

「それフラグ……」

 

「何よフラグって」

 

「何でもない…」

 

初雪と叢雲がそんな事を話ながら周辺警戒を実施する。索敵機の収容が終わり、再び部隊が前進をしようとした時だった。

 

「あのー、川内殿」

 

「何、あきつ丸?」

 

「赤城殿と加賀殿は未だ戦闘中でありますよね?」

 

「まぁ、空母棲姫の艦載機の追撃が無いからそう考えるのが無難ね」

 

「では3時方向に見えるのは……?」

 

「3時方向?」

 

川内が右舷を振り向く。目を凝らして見ると、空には黒い粒がチラチラと見える。

川内は即座に無線を掴んで怒鳴るように言った。

 

「警報ッ!右舷90度、敵機!!」

 

中核艦隊もそれを確認し、金剛は陣形を輪形陣に変更せよと命令を下す。

 

「敵機群に新型艦載機を視認!艦爆と艦攻です!」

 

「電探でも捉えたよー!数およそ50!」

 

吹雪と那珂が敵機群の編成を報告する。

 

「全艦、戦闘用意!」

 

金剛の一喝でCMS(艦娘)たちは砲弾を装填し空に砲を掲げる。

 

「接触までおよそ2分!」

 

「…………!」

 

CMS(艦娘)たちは顔に冷や汗を流しながら敵機を凝視する。

 

「川内殿……」

 

「あきつ丸は下がって!中核艦隊の後方まで!」

 

「り、了解……!」

 

あきつ丸は第三小隊から離れ、後方に位置する中核艦隊へと急ぐ。

 

「あきつ丸、こっちよ」

 

「龍田殿!」

 

龍田はあきつ丸を呼び寄せる。

 

「いい?あきつ丸。艦載機が爆弾や魚雷を投下する時には必ず突入角度を固定して突っ込んでくるわ。艦爆なら直角に、艦攻なら平行に移動して回避するのよ」

 

「空襲が始まるのでありますか。自分にも何か出来る事は……」

 

「あきつ丸は硫黄島を取り返す事の出来る唯一のCMS、だからまずは自分の安全を最優先するのよ」

 

「しかし!それも奄美の皆さんが損害を受けてしまったら、硫黄島に辿り着く前にやられてしまいます!」

 

「……私たちはそう簡単にはやられないわ。だからあきつ丸は自分に出来る事をやるのよ」

 

龍田の言葉にあきつ丸はハッとする。その言葉は、先の空襲で言われた言葉。

 

「そうでした。自分には自分の、自分にしか出来ないことがある……!」

 

あきつ丸は龍田の前に出る。龍田が危ないと呼び止めるが、その制止の声を聞かずに走り出し、飛行甲板艤装を展開する。

 

「今こそ、その時であります!」

 

一枚の紙を取り出し、それを走馬燈に入れ、掲げる。飛行甲板艤装に投影された影が実体を持ち、浮かび上がる。

 

しかしその機体はカ号観測機や三式指揮連絡機では無かった。濃緑色で4枚羽のプロペラを持ったスッキリとしたボディ。

 

「赤城殿、加賀殿、力を貸して頂きたい……紫電改二、発艦始め!」

 

合成風力を受けて、総数たった8機の紫電改二が空へと飛び立つ。

紫電改二は奄美のCMS(艦娘)たちの頭上を飛び越え、敵艦載機の方へと突撃していく。

 

「あれは……赤城さんと加賀さんの紫電改二!?」

 

後ろにいた長波が驚いて声を上げる。龍田はその様子を感心したように見ている。

 

「あきつ丸はさっき、基地に増派した赤城と加賀の艦載機を収容していたから……それを発艦させるなんてアイディア、よく思いついたわね~」

 

あきつ丸は必死になって艦載機の制御を行っている。制御方法はMW技術によって記憶としてインストール、アップデータされているが、あきつ丸にとって艦載機を扱うのはこの出撃が初めてなのだ。

 

しかも初期装備の艦載機は全て索敵、対潜専用。戦闘機なんて触れた事も無い。

 

「くっ……!」

 

「落ち着いてあきつ丸、あなたならきっと出来るわ。心を静めて、艦載機に意識を集中させて」

 

「そうだぜ!周囲はあたし達に任せなっ!」

 

「龍田殿、長波殿……!かたじけない!」

 

龍田は機銃を空に向けながら無線のスイッチを押す。

 

「金剛~!」

 

「事情は分かりマシタ!タツタとナガナミはあアキツマルを護衛するデース!」

 

「分かったわ~」

 

金剛はふぅと小さく息を吐くと、顔を上げ、キッと敵機を睨みつける。

 

「いつまでも深海棲艦の思う通りにはさせまセン!

FCS(火器管制装置)、観測データをリンク!砲弾装填良し、全砲門開け!」

 

そして、振り上げた手を敵機に向けて振り下ろす。

 

「三式対空榴弾、fireーーーッ!!」

 

衝撃を伴って発射された三式弾が、放物線を描き敵機目掛けて飛翔する。

 

数秒後、信管によって炸裂した三式弾は、燃える弾子を辺りにばら撒く。

 

まるで流星群の様なその炎の雨に貫かれ、敵艦載機群の一部が丸ごと消滅した。

 

「次弾装填急ぐデース!」

 

金剛が次の砲撃の為に有する時間は決して短く無い。その間隙を突いて、敵機は一気に距離を詰める。

 

「そうはさせん!」

 

あきつ丸の操る赤城と加賀の紫電改二が敵機と接触する。

 

「戦闘機どうしのドッグファイトは極力避けるのよ。撃墜する事が目的じゃなくて、攻撃機から攻撃のチャンスを奪うように立ち回るのよ」

 

「了解した龍田殿……!」

 

紫電改二は突撃と離脱を繰り返しながら、敵機群に攻撃を仕掛ける。

紫電改二が無闇に深追いをしないおかげで、敵の戦闘機もこちらを攻撃する機会を掴めないでいるらしく、たった8機という少数にも関わらず互角の勝負を繰り広げていた。

 

(今は金剛の砲撃の影響で敵機の混乱が激しいから互角だけど、向こうが立て直したらこちらの紫電改二はすぐにすり潰される……!)

 

龍田は今の状況をそう分析していた。そしてこの分析は半ば的中していた。

 

今はよく言う『奇襲効果による一時的優勢』と何ら変わりないのだ。

早く次の手を打たなければ、この有利はすぐに崩れ去る。

 

「艦隊、第四戦速に増速!敵陣に斬り込むネー!」

 

金剛は突撃を命令した。時間が掛かれば勝ちの目が無くなる。そう判断しての、ある種無謀な命令だった。

 

しかし、CMS(艦娘)たちはそれに了解と答えた。

苦難を乗り越えて来たCMS(艦娘)たちは、逆境が自らを奮い立たせる事を知っていた。

そこにあるのは決意と覚悟。艦隊は増速をかけた。

 

だが、その時。

 

 

「前方に敵艦隊を視認!」

 

前方にうっすらと大きな黒い影が見える。恐らくあれは硫黄島の影であろう。

 

その手前、身も凍りつくようなオーラをその身体から出している、ひときわ目立つモノがそこに見えた。

 

 

 

『シズメテ……アゲル……!』

 

 

 

敵本隊の旗艦である戦艦棲姫が、脳に直接響くような声でそう発する。

 

「命令の変更は認めず!全艦、突撃セヨ!」

 

「「「了解ッ!!」」」

 

CMS(艦娘)たちは戦艦棲姫に臆する事なく、機関を唸らせ海上を疾駆する。

 

 

硫黄島奪還戦の火蓋が、切って落とされた。

 

 

to be continued……

 

 

 

 




ルナ「やっとボス戦突入か」
kaeru「ここまでが長い。そしてこれからも長い……」
ルナ「ごちゃごちゃ言うな。ほら次回」
kaeru「次回、予想外の出来事」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。