記憶の海 〜Indelible memory〜   作:Ar kaeru Na

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今回からやっと場面に展開が起こると思っとります。
相変わらずの謎展開には目をつぶって下さい。

それでは!


memory4「奄美基地の艦娘事情」

 

memory4「奄美基地の艦娘事情」

 

 

 

 

 

 

「は……!?」

 

ルナは素っ頓狂な声を上げた。

 

「ん?聞こえなかったかの?ルナ君には艦娘達を指揮してもらいたいのじゃ」

 

「いや、聞こえてはいたんですけど、なんと言うか、話がマシンガン過ぎて…?」

 

あまりの混乱っぷりに自分でも何を言っているか分からなくなる。

 

「そもそも、征原司令は『司令』と名乗っているんですから、新たにその……艦娘を指揮する人間は必要ないのでは?」

 

「何を言うかねルナ君。ワシは見ての通りガタが来てる老いぼれじゃぞ?書類仕事で手一杯じゃ。それじゃから、艦娘専門で司令をつけた方が、彼女達にとっても良かろう。

ワシじゃと物忘れも激しいのでのう」

 

「それならライラさんとかは……?」

 

「私か?私は《中央派遣艦隊》の指揮で忙しくてな、無理だ」

 

「言い切られるとは……いやそれより、《中央派遣艦隊》って何ですか?」

 

「《中央派遣艦隊》か?それについて話すとなると、軍の構造を喋らんとな……ジジイ、いいか?」

 

ライラがトウに確認を取る。トウはお茶を注ぎながら頷く。

 

「まず、現在の海軍が五つの鎮守府によって統治されているのは知っているな?」

 

「はい、確か、横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊ですよね」

 

「そうだ、そして海軍にはその五つを統括する《中央》と呼ばれる機関が存在する」

 

「《中央》……?」

 

「昔ながらで言うと『大本営』と言ったところか。日本海軍最高責任者がいる場所とでも覚えておけばいい。

《中央》は海軍最大の機関なだけあり、軍備、技術、それらの規模全てにおいて、各鎮守府を遥かに凌駕する。

その《中央》は軍備が整っていない基地や泊地に軍備が整うまで《派遣艦隊》と言われる艦娘部隊を貸しているのだ。

先程の深海棲艦を沈めたのも私が指揮した、派遣艦隊の戦果だ」

 

「成る程……その話だと、奄美基地はまだ軍備が不十分って事ですか?」

 

「ジジイと違って察しがいいなお前は」

 

「ライラ君……サラッとワシを貶めるのは止めてくれんかね……」

 

トウが渋い顔でライラを見るが、当の本人は完全スルーで話を続ける。

 

「つまりだ、この基地は派遣艦隊が来るぐらい軍備が不十分……要するに『艦娘』が育成しきれていない。

それをお前に任せると、ジジイは責任を丸投げしているわけだ」

 

「ライラ君は言い方が悪すぎるのじゃ。責任はちゃんとワシが持つから心配しなくて良いぞ」

 

トウが慌てて弁明する。

そして、今の話で少し気になることがルナにはあった。

 

「スミマセン、質問いいですか?」

 

「なんだ、何かあるのか小僧」

 

「先程の深海棲艦を沈めたのは、あの放送から聞くに『派遣第一艦隊』って言ってましたよね?それ以外にこの基地に艦娘はどれ程存在するのでしょうか?」

 

「派遣艦隊が主力第一から第四、先鋒隊、遠征隊がそれぞれ第五まで、その他諸々と考えると、中央の艦娘だけで70~80体くらいいるんじゃないか?」

 

「凄い……過剰戦力にも思えるんですが」

 

「これでもまだ少ないほうじゃよ。他の所の基地所属艦娘は100をゆうに超えとるじゃろう」

 

これで少ないとか、深海棲艦はどれだけ強いんだよ!と、心の中でルナは叫ぶ。

 

「それでは……この基地所属の艦娘は?」

 

そう切り出すとトウが困ったような顔になる。

 

「実は……この基地に元々いる艦娘は精々10とちょっとくらいじゃ…」

 

ルナには基準が分からないのでそれが軍備不十分な所において多いのか少ないのかは分からない。しかし、話しぶりから少ないのだろうと判断できた。

 

「しかし、基地所属の艦娘達は……少し変わっていての……」

 

「…と言いますと?」

 

ルナがトウに尋ねると、横にいるライラが答えた。

 

「それについては私が説明する。

まず、艦娘というのは簡単に言って、人造人間だ。そして、艦娘の雛型であるバイオロイドを”造る”技術があるのは、中央と直轄の横須賀、呉、佐世保の四ヶ所しか無い。

実際には、中央は各鎮守府とは別格だから三ヶ所になるな。

他の場所では、その三ヶ所から素体を購入するなどして艦娘を”造る”しか無い。

艦娘を手に入れた後は、各基地によって戦闘技能を磨かれ、深海棲艦と対峙していくことになる。

まあ、ある程度の経験値は記憶兵装によってあらかじめ手に入れて(インストールされて)いるけどな」

 

「それでは、基地所属の艦娘達は戦闘技能が足りないということですか?」

 

「いや、恐らく戦闘技能だけで言ったら彼女達も引けを取らないだろう」

 

「……?それでは何が変わっているのですか?」

 

ライラがトウに聞けとばかりに目線をトウに向けるが、トウは何処吹く風とお茶菓子をつまんでいる。

ライラが机にひと蹴り入れると、トウは慌てて喋り出した。

 

「コホン……実は、基地の艦娘達は”素体が違う”のじゃ」

 

「……どういう事ですか?」

 

「ライラ君の話じゃと先述の四ヶ所でしか素体は製造出来ないといっておったじゃろ?

そこで造られる素体は、モデルネームで言うと《N型》と呼ばれる素体じゃ。

しかし、この基地にいる艦娘の素体は《E型》と言う素体で、通常の艦娘の素体とは違うのじゃ」

 

「それは何故ですか?」

 

「済まんが、まだルナ君にそこまでは話せないのじゃ。概要だけ説明すると《N型》は一般汎用性が高いのに比べて、《E型》は局所性が高いとでも言っておこうかの。

そのせいで、基地の艦娘達の技能向上が難しくての……

今は派遣艦隊のおかげで何とか持っているのじゃが、いつまでもそうはいかんじゃろ?

それだから、ルナ君に任せようと思ったのじゃ。

実際の出撃は派遣艦隊が行うから、危険な目に遭う事は無いじゃろう。

どうじゃ?ルナ君の記憶が元に戻るまでと言ってはアレじゃが、中々良い仕事だと思うぞ?」

 

ルナは一先ず考える。

 

「ならジジイがやればいいだろ」とライラ。

 

「最近、物忘れが激しくてのう」とトウ。

 

「一週間先の夕飯のメニューを覚えている奴がよく言えるな?」

 

「さて、此方の攻防戦も白熱した所で、どうじゃ?ルナ君」

 

ルナはゆっくりと頭の中で情報を整理した上で口を開く。

 

「大変名誉ある仕事だとは思うのですが、些か、今の自分には荷が重いと感じるのですが……」

 

「そんなことないぞ!ルナ君なら出来る!ワシが保証しよう」

 

「ジジイの保証なんぞアテにならん。通販の保証の方が信頼出来る」

 

「ライラ君、話の腰を折らんでおくれ」

 

基地司令が此処まで言ってくれているのに断る事なんて出来ない。しかし、自分には到底出来そうにない。

ルナが二つの気持ちの間に挟まれ葛藤する中、トウはこんな提案をしてきた。

 

「そんなに心配なら、最初の頃は『お試し』感覚、研修期間を設けるのはどうじゃ?」

 

「『お試し』……?」

 

「ルナ君は記憶兵器……もとい、艦娘について忘れて(・・・)おるじゃろ?じゃから最初のうちは艦娘に慣れてもらう所から始めて、一ヶ月程指揮を執ってもらうのじゃ。その後、改めて司令になるかならないかを決めてもらう。どうじゃ?」

 

「………自分はかつて、記憶兵器に何かしらの関係があったのですか?」

 

ルナはトウの言った、『忘れて』という言葉を聞き逃しはしなかった。

トウは一瞬「しまった」という顔をしたが、すぐに表情を戻すと話を続けた。

 

「ルナ君。今、ワシ達がルナ君の過去を話す事も可能といえば可能じゃ。しかし、それによってルナ君が”急に”記憶を思い出すと、脳の神経に負担がかかり、また昏倒してしまう恐れがあるのじゃ。

そんな事を考えると、ルナ君には自然に思い出して貰うのが一番なのじゃ。

さっきのルナ君の質問には答えられん。しかし、記憶を思い出す手掛かりにはなるじゃろう……」

 

ルナはまた、暫し黙り込む。

 

「分かりました。その『お試し』の期間内に是非を決めたいと思います」

 

ルナがそう言うと、トウは心底良かったという顔を浮かべた。

 

「そうかそうか!引き受けてくれるか!それは良かった!

それでは早速、基地の艦娘達に挨拶をして来てほしいのじゃ。

ルナ君が必ず、この仕事を引き受けてくれると思って、既に艦娘達を待機させておる」

 

「準備良すぎじゃないですか!?」

 

どこまで仕組まれたのだろうとルナは不安になる。記憶が此方には無く、彼方にはある事が、さらに拍車をかける。

 

「その場所まではライラ君が案内してくれる。それじゃあ、宜しく頼むぞ!」

 

ルナは何か悪寒を感じつつ、ライラと共に提督室を後にした。

 

まさに嵐のような時間だった、とルナは思いつつ、話された事について情報を整理していた。

 

こちらの武器が殆ど通用しない、突如現れた《深海棲艦》。

 

これに対抗出来るのは、在りし日の軍艦の魂の生まれ変わりである《艦娘》だけ……

 

と、言うのは一般市民達に対する虚偽の情報で、実際には、人の倫理を無視して造られた《記憶兵器》というもの。

 

《艦娘》には《深海棲艦》のテクノロジーが搭載されていて、そのおかげで艦娘の攻撃は深海棲艦に通用する。

 

話をザッと纏めるとこんな感じだろうか。

そこで、ルナはふと思った事をライラに質問する。

 

「ライラさん、ちょっと良いですか?」

 

「何だ」

 

「えっと、あの戦闘なんたら…」

 

「戦闘バイオロイド型記憶兵装保存媒体か?こんな長ったらしい名前なんぞ覚えなくていい。

Combat bioroid Memory-weapon Storage、で、略称はCMS、艦娘だ」

 

「それです。それなんですけど、どうして『保存媒体』って付いているんですか?」

 

「本来、記憶兵装は記憶(それ)自体が兵器になるという……まぁなんだ、難しいから省くが記憶兵装自体は人の身体が無くてもどうとでもなる。

しかし、対深海棲艦用に海上で陸戦の様な動きを作り出す為には人間の身体構造が不可欠だったのだ。

そして、記憶兵装を主に置いているCMSの身体は只の容れ物でしかない。記憶さえあれば、蘇ることも可能だしな。

それらの事から便宜上、名前にstorageと付くのだ」

 

「そんな理由が……」

 

人の身体を只の容れ物として扱う辺り、やはり人道からは逸れた兵器なんだということを実感する。

ルナはもう一つの疑問を口にした。

 

「それでは何故、近代艦艇では無く、第二次世界大戦前後の艦艇データを艦娘の記憶に使ったんですかね?」

 

「そんなこと私が知るか。しかし、予想出来ない事もない。大方、WW2(第二次世界大戦)の艦艇の方が海上戦に長けていたからだろ。それに戦歴もあるしな。

近代の護衛艦なんぞ専守防衛とかで、敵に攻め入る事なんて無かったからな。

まぁ少なからず近代艦艇のデータも持っているだろ」

 

「え、こちら側からも攻め入るんですか?」

 

「いつまでもやられっぱなしという訳にもいかんだろ。それに、真相究明もかかっているからな。一刻も早くこの戦いを終わらせなければ……」

 

ライラはそこまで話すとピタリと足を止めた。

 

「どうしました?」

 

「あのジジイ……何処に艦娘を待機させているか聞いてないぞ……!」

 

「え!?聞いてないんですか!?征原司令はさも知ってる様に言ってましたけど」

 

「小僧、私はちょっとあの老いぼれに喝を入れてくる。また、ロビーで待っていろ」

 

ライラはそう言うと、腰のサーベルに手を掛けながら走り去っていった。

 

ルナは呆気に取られながらも、何とか気を取り直し、ロビーへと向かった。

 

「そう言えば、意外とこの基地広いよなぁ」

 

基地というと、秘密基地みたいなものを思い浮かべていたルナにとって、奄美基地は新鮮だった。

 

そんな事を考えていると、ロビー手前の階段で大量の紙束を抱えた少女を見つけた。

 

(うわ、何だあの書類の量。あんなのを処理するとは、征原司令も大変だな)

 

少女はふらふらしながら階段に差し掛かるも、紙束のバランスは崩れ、紙書類を階段にぶちまけ転んでしまった。

 

目の前で起きる悲劇。見て見ぬ振りは流石に出来るはずも無く、ルナは少女に駆け寄る。

 

「大丈夫ですか?手伝いますよ」

 

「え!?あっ!すみません!ありがとうございます」

 

ルナは少女と共に、散らばった紙書類を集める。

やっとのことで集め終わった紙書類を少女へと渡すルナ。

 

「ご迷惑をお掛けしました!助かりました!」

 

「いえいえ、それじゃ」

 

ルナは人付き合いという物が分からないので、そそくさとその場を立ち去ろうとした。

 

「あのっ…!すみません!」

 

少女の声にルナは足を止めた。

 

「……?何か?」

 

「あの……私と貴方、”何処かでお会いしませんでしたか”?」

 

「何を言って……」

 

ルナが二の句を言おうとすると、ズキリと頭が痛んだ。

咄嗟に頭を抑えると、一瞬の内に沢山の情景が脳裏をよぎった。

 

「……っ!うぐっ……!」

 

大勢の人が整列している風景。

 

一面の海。

 

何処かの港。

 

情景が映し出される度に強烈な頭痛がルナを襲った。

その痛みに耐えられず、ルナは片膝をついた。

 

「だ……大丈夫ですか!?」

 

少女が手に持っていた紙束を投げ捨て駆け寄ってくる。

 

あぁ、また集めなきゃならないじゃないか。

ルナはそう思うと、気を失った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ルナが目を覚ますと、目の前には、心配そうに覗き込む少女の顔があった。

 

「あっ!気が付きましたか!良かったぁ!」

 

ルナはどうやらロビーのソファーに寝かされていたらしい。

 

「やっと起きたか小僧。貴様は何をやっているんだ」

 

反対側に座っていたライラがそう言う。

 

「いや、それが……」

 

ルナは先程起きた出来事をライラに事細かに伝えた。

 

「ほう、それは記憶の再燃現象(フラッシュバック)かもしれんな。

何がトリガーになったのか解らんが、貴様の記憶の一部が脳の表層処理層に大量に送られてきたお陰で気を失ったのだろう。

貴様は、脳神経が常人と異なるのだからそうならないように気をつけていろ」

 

「気をつけろって……そんな無茶な」

 

そこで、側にいた少女が声を掛けてきた。

 

「すみません……私のせいで、栄少尉を危険な目に遭わせてしまうなんて…」

 

ルナはここで「おや?」と疑問を覚えた。自分はこの少女に名前を言った覚えは無い。

ライラの方を見てみるが、ライラは少女に聞けとばかりに顎をしゃくっている。

 

仕方なく少女の方を向く。よくよく見ると着ているのはセーラー服の様で、中学生程にも見える体躯だった。

顔立ちはとても綺麗で整っており、黒髪を後ろで纏めているヘアースタイルだった。

恐らく、美少女と言うのはこの娘みたいなのを言うのだろうとルナは思った。

 

「えと、見た所中学生に見えるけど、何故、俺の名前を?」

 

「なっ…!私は中学生じゃありません!」

 

やばい。開口一言で少女を怒らせてしまった。ということは中学生では無いのか?

 

「この腕章が見えないんですか!?」

 

見ると、その少女もルナと同じ藍色の腕章を腕に付けていた。と言うことは軍人?

ルナが困った顔をしていると、少女はコホンと息をついた。

 

「……すみません、言葉が過ぎました。私は中学生では無く、この奄美基地所属の《艦娘》です!」

 

「!?」

 

流石にこの展開を予測はしていなかったルナは心底驚いた。

アンドロイドだかバイオロイドだかと言っていたので、もっとこうロボットらしいのかと思っていたが、人間そのものじゃ無いのか?と疑いたくなる程だった。

 

(この娘がCMS(艦娘)だと……!?)

 

ルナが驚愕を露わにしている姿を見て、気を良くしたのか少女は続ける。

 

「ふっふーん!驚きましたか?それでは改めまして自己紹介を!

私は特型駆逐艦の『吹雪』と言います!

これからよろしくお願いしますね!栄少尉!」

 

 

 

 

to be continued………

 

 

 

~物語の記憶~

 

・中央

現日本海軍の最高統帥機関である。大本営とも呼ばれる。

どの基地よりも強大な軍備と技術を兼ね備えており、深海棲艦から日本を守る、正に最後の砦とも言える機関である。

また、軍備が不十分な基地等には、軍備が整うまで艦娘部隊を派遣していたりもする。

奄美基地に派遣されている部隊は、第一から第四までの主力艦娘部隊、各第五までの独立部隊(遠征隊や偵察隊など)、その他諸々と総勢80名を超える。

それ程の戦力を普通に派遣する程度には、巨大機関と考えて貰って構わないだろう。

 

 

 

 




質問、意見、感想等お待ちしております!

次回!奄美基地のCMS(艦娘)紹介!
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