記憶の海 〜Indelible memory〜 作:Ar kaeru Na
今回出るのはまだ一部ですが。
最近本で読んで気付いたのですが、奄美基地の元ネタの奄美大島要塞って陸軍のものでした。テヘペロりーん
そんなこんなで5話です。
それでは!
memory5「奄美の艦娘」
「うえええぇぇぇぇえ!?」
ルナはそんな謎の叫び声をあげた。
この目の前にいる少女が
先程、見張り櫓から艦娘を見た時も確かに人が海に立っていたし、トウの話からみても、『人造人間』だとは聞いていたがまさかこれ程とは。
ルナもこの『吹雪』と名乗った少女が自らを艦娘だと言うまでは、只の少女だと思い込んでいた程だ。
「まぁそういう訳だ小僧、貴様がこいつらを指揮するのだ」
「えっと……それじゃあこの
「さっき『宜しくお願いします』と言っていただろうが。聞いていなかったのか?吹雪はこの奄美基地所属のCMSだ」
成る程、そういうことか。どうりで此方の名前を知っている訳だ。
「まさか、こんな娘が艦娘とは……」
ルナがそう呟き吹雪の方を見ると、吹雪が腰に手を当てこう答えた。
「失礼ですね、私だって立派な艦娘です。むしろ私の方が驚いてますよ。私達の新しい司令官が思ってたよりも若いんですもん」
一応、言葉を選んだつもりのようだが、ルナの事を暗に子供と言ってる事が筒抜けだった。
「各自、細かいことは後にしろ。他の奴等が待っているからさっさと移動するぞ」
ライラが立ち上がってそう促す。
まだ頭痛が引かないルナだったが、仕方なく立ち上がる。
吹雪と名乗った少女も、例の紙束を抱え立ち上がる。
「え?その紙書類持ってくのか?」
ルナが吹雪に尋ねる。
「これは元々、ライラ少佐に渡す為の物なので」
吹雪は素っ気なく言うと、スタスタと歩いていってしまった。
やはり、さっきの事を怒っているのだろうか。
それよりも、何故さっき彼女は「何処かで会ったか」なんて聞いたのだろうか。
自分が記憶を失う前に何処かで面識があったのだろうか。
しかし、あの吹雪という少女の反応を見る限り、お互い初対面のようだった。
ルナは頭を傾げつつ、ライラと共に吹雪の後を追う。
「そういえば、ライラさん」
「なんだ小僧、言いたいことがあるならさっさと言え」
「す…すみません…。あの『吹雪』って言った少女……《駆逐艦》とか言ってましたけど、それはどういう事ですか?」
「話してなかったか。基本は、記憶兵装としてインストールされている軍艦のデータの事だ。あのCMS『吹雪』は、大日本帝国海軍の駆逐艦、吹雪のデータがインストールされている。
軍艦のデータ=記憶、人格と考えて貰っていいだろう。だからCMSは皆、自分の事を軍艦の様に言うのだ。分かったか?」
「分かったような……分からないような……?」
「察しがいいのに、頭が固いな貴様は」
そんな話を交えながら暫く歩くと、宿舎とはまた別の建物に着いた。
しかし、ほかの建物とは違って、まるで掘っ建て小屋のような、簡素なコテージのような、そんな建物だった。
第一印象はぼろっちいと言ったところか。
「着きましたよ。少佐、少尉」
吹雪の案内で中に入ると、そこには艦娘と思わしき、腕に藍色の腕章をした少女達が数人程いた。
そこには、基地に来るまで案内をしてくれた天龍と呼ばれていた少女の姿もあった。
「おっ、さっきのチビ助じゃん」
「あらー?あの子がさっき天龍ちゃんが言ってた子?」
天龍ともう一人の紫色のワンピースに身を包んだ少女が、こちらに気づき声を掛けてくる。
「チビ助じゃねぇっつってんだろ!」
ルナは反射的にそう怒鳴っていた。
「ヘーイ!フブキー!何やってたデスカー?少し遅かったデスよ?」
「そうですよ吹雪さん、ちょっと遅すぎやしませんかね?」
若干言葉がカタコトの巫女装束のような服を着ている少女と、藤色の髪の毛とセーラー服が特徴の少女が吹雪に声を掛ける。
「いや…それは…その…」
「まあまあ、吹雪ちゃんにも色々と事情があったのよね?」
朱色の袴に白の道着のような服装の黒髪の少女が吹雪のフォローに入る。
部屋がガヤガヤしてきた所でライラが手を叩き皆の注目を集める。
「全員、横一列!!」
ライラがそう一喝すると、艦娘達は素早い動きでライラとルナの前に横一列に並んだ。
「以前に話したとは思うが、お前達の専属司令とも言える、新たな司令を紹介する。
栄ルナ少尉だ。少尉はこれより1ヶ月と少しの期間、お前達の指揮をすることになる。正式な辞令は、期間内の様子を見て、その後に発表される」
ライラはそう言うとルナの背中をダンッと叩いて一歩前に出させた。
これは、自己紹介をしろってことなのか?
「えと……ライラ少佐からご紹介に預かりました、栄ルナと言います。聞いているかは分かりませんが、自分は記憶喪失で殆ど記憶がありません」
ルナがそう言うと、部屋の中が少しだけざわつく。
「そういうことなのでよろしくお願いします」
そう自己紹介をして一歩下がる。ライラが「この下手くそめ」と顔で語っていたが、見なかったことにしよう。
「それでは、吹雪の方から順にお前達も自己紹介をしてくれ」
ライラがそう促すと、吹雪が一歩前に出て自己紹介を始める。
「先程も名乗りましたが改めて…。
元大日本帝国海軍、連合艦隊第一艦隊直第三水雷戦隊第十一駆逐隊所属、特Ⅰ型駆逐艦、吹雪型一番艦の『吹雪』です!改めてよろしくお願いします!」
「次は俺だな……同じく、元大日本帝国海軍、連合艦隊第四艦隊直第十八戦隊所属、天龍型軽巡洋艦一番艦、『天龍』だ。フフフ……どうだ?怖いだろ?まぁ、宜しくな」
「同じく、元第十八戦隊所属、天龍型軽巡洋艦二番艦の『龍田』だよ~。天龍ちゃんとは姉妹になるわね~。それじゃあよろしくね~」
「ども、恐縮です!元大日本帝国海軍、連合艦隊第一艦隊直第六戦隊所属、青葉型重巡洋艦一番艦、『青葉』ですぅ!少尉、後で一言よろしくお願いしますね!」
「次は私デース!英国、ヴィッカース社で建造された、元大日本帝国海軍、連合艦隊第一艦隊直第三戦隊所属の金剛型戦艦一番艦の『金剛』デース!ヨロシクオネガイシマース!」
「最後は私ですね。元大日本帝国海軍、連合艦隊第一航空艦隊直第一航空戦隊所属、赤城型航空母艦一番艦、『赤城』です。よろしくお願いしますね、少尉」
「と、言うわけだ。覚えたか?小僧」
流石にそれは無理だ。何か凄いごちゃごちゃとみんな自己紹介してくれたが、ルナには何が何やらさっぱり分からない。
今の一回で覚えるのは、初対面のルナには無理がある。
取り敢えず、苦笑いで誤魔化しておく。
「まあ名前はさっさと覚えてやるんだな。ごちゃごちゃ言ってはいたが、全て昔の経歴だ。今は全員《奄美艦隊》所属だ」
「はあ……」
「よし、それでは現時刻を以って奄美艦隊の指揮権限をお前に譲渡する。異論ある奴はいるか?いないな?それじゃあ上手くやれよ小僧」
「えっ…!ちょ…!」
ルナが引き止めるヒマもなくライラはコテージを出て行ってしまった。
唖然とするルナ。艦娘達の方を見ると「まあいつも通りかな」みたいな顔をされた。
上手くやれよとは言うが、何をすればいいか全く分からない、記憶喪失の輩を放置するか普通?と、頭を抱えたくなった。
「で?どーするんだよチビ助……じゃない少尉。今日はもう解散でいいんじゃねぇか?もう夕暮れだし」
そう天龍に言われて外を見てみると、ちょうど日が暮れはじめている所だった。
「確かに……時間もあれだし、細かい事は明日話そうかな」
「おう、分かった。それじゃあな」
「…………え?」
ルナが言うだけ言うと、天龍はさっさとコテージを出て行ってしまった。龍田もその後に続く。
ポカーンとしていたルナだったが、ハッと我に帰り、急いで後を追う。
「おい!待て!明日の集合時間とか決めてないだろうが!」
そう言って、天龍を引きとめようと肩に手を伸ばす。
その瞬間、恐ろしいまでの殺気を感じた。
本能的に伸ばしかけた手を引っ込めた。その判断が命拾いになる。隣にいた龍田が、目にも留まらぬ速さで両手を大上段に構えると、その手にはいつの間にか
正に刹那の時。完全に手を伸ばしていたら斬り落とされていただろう。
(コイツ…!何処からこんな長モノを…!?それに、今のは本気だった…!)
恐怖はそれだけでは終わらない。
振り下ろされた薙刀は、返す刃でルナを斜め下から斬りかかる。
ルナは慌てて後ろへステップでその凶刃を躱す。
当の龍田は少しだけニヤリと笑うと、振り上げた勢いを利用して一回転し、ルナ目掛けて鋭い突きを繰り出してきた。
もう一度追撃が来る事を読んでいたルナは、咄嗟に腰のサーベルを抜き放ち、迫る薙刀をサーベルで防ぎ、薙刀の軌道を逸らした。
顔面を目掛けて突き出された薙刀は、かろうじて頬を掠める程度で済んだ。
それに龍田は、少し驚いた様子を一瞬だけ見せ、薙刀の柄でルナの足元をかすめ取る。
「うおっ!?」
体勢を崩した所に、横一文字に薙刀を振るう龍田。避けられる筈もなく、ルナはサーベルで受け止めようとする。
しかし、サーベルと薙刀が打ち合った瞬間、ルナの持っていたサーベルの刃が宙に舞った。
「なっ…!?」
サーベルの刃が龍田の薙刀に折られたのだ。いや、正確には斬り落とされたと言うべきか。
ルナは迫り来る薙刀を、地面に倒れ込む形で何とか避けた。
ルナが起き上がろうとすると、目前に薙刀の切っ先が突き出されていた。
そして、すぐ真横に斬られたサーベルの刃がストンと突き刺さる。
ルナはこの事態に唾を飲みながら、何とか声を出した。
「なっ……!何をするんだ!」
「あなた、天龍ちゃんに触れようとしたでしょ~?殺されたいのかしらぁ?」
切っ先がズイッとルナに迫る。
「よせ、龍田。やり過ぎだ」
天龍が止めに入ると、龍田はやっと薙刀を下ろした。
すると薙刀は、その形状を崩し、細かな粒子となって龍田の手のひらの中に収まった。
「この件については、少尉の自由で処分してもらって結構ですよ~?除籍でも解体でも好きにしていいですからね?」
「龍田の処分は俺も受ける。俺の妹だからな、連帯責任だ。それじゃあな」
天龍と龍田はルナに背を向け歩き出す。
「くっ…!この!自分の話を聞け!明日は8時に集合だ!分かったな!?」
去りゆく二人に、ルナはそう声を張り上げる。
これに天龍は右手をひらひらと振って返した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あのなぁ龍田。確かに『からかってやれ』とは言ったが、『殺せ』と言った覚えは無いぞ?」
ルナからそこそこ離れた所で、天龍は龍田に声をかける。
「あら~?天龍ちゃんだってあの少尉の事、認めてないんでしょう?」
「まぁな……俺らがいくら”役立たず”だとはいえ、新しい司令がチビ助とは……上は何を考えてやがる」
「……愛想を尽かしたのかもしれないわねぇ……」
「…………」
暫く二人は押し黙る。
「そんなことより龍田、一応だが、上司にあんな事して大丈夫なのか?本当に解体処分になったら洒落にならないぞ?」
「そんなこと言ったら天龍ちゃんだって、私と同じ処分を受けることになっちゃったじゃない」
「龍田が居なくなったら、俺は俺じゃ無くなるからな。今度は一緒だ」
「天龍ちゃんったら……」
「……それにしても、あのチビ助、意外とやるな。たかが支給品の
「う~ん……普通の人には、サーベルの腹で突きの軌道を逸らすなんて芸当出来ないわよ~?」
「……案外、俺らが思ってる以上なのかもしれないな」
「うふふ、そうかもね~」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「くそっ!なんだアイツ!」
ルナは手に持っていた、折れたサーベルを地面に叩きつけた。
「大丈夫ですか!?少尉!」
吹雪達がコテージから飛び出してくる。
「何なんだアイツらは!?仮にもこっちは司令だぞ!危うく殺されるとこだったじゃないか!」
「まぁまぁ落ち着いて下さいよ少尉。それより、龍田さんとやり合ってみてどうでした?この青葉に一言お願いします!」
「記者かお前は…」
「あっ、それあながち間違ってないですよ」
「まじか」
ルナはハァと溜息をつくと、叩きつけたサーベルと折れた刃を拾い上げ、鞘の中に突っ込んだ。もう使い物にならないとはいえ、捨て置く訳にもいかない。
「ショーイもsmallなのに意外とやるデスねー!私、感動シマシタ!」
青葉の隣りにいた金剛がそう言う。
もう、チビ発言にもつっこむ気力が無かったルナはもう一度溜息をついた。
「天龍さんも龍田さんも……昔はああでは無かったのですけれど……」
「……?それはどういう…?」
赤城の発言に疑問を抱いたルナは、咄嗟に聞き返す。
「昔は、どんな人でも思いやって、どんなことでもこなせる、艦娘の中の艦娘って言うくらい凄い人達でした……」
吹雪がしみじみとそう話す。
「じゃあなんで……今はあんな不良みたいになっちゃったんだ?」
ルナの問いに、一同は黙り込んでしまった。
やがて、吹雪が重々しく口を開く。
「それは……私たちが今では必要とされない存在……『役立たず』になってしまったからですよ……」
to be continued…
ー物語の記憶ー
・吹雪(ルナ談
吹雪型駆逐艦『吹雪』のデータを記憶兵装として搭載したCMS。
何となく真面目な印象を受ける
・天龍(ルナ談
天龍型軽巡洋艦『天龍』のデータを記憶兵装として搭載したCMS。
眼帯をしていて、ぱっと見、不良に見える。
・龍田(ルナ談
天龍型軽巡洋艦『龍田』のデータを記憶兵装として搭載したCMS。
イキナリ斬りかかってきた。笑顔が逆に怖い。
・青葉(ルナ談
青葉型重巡洋艦『青葉』のデータを記憶兵装として搭載したCMS。
記者の素質というか気がある。
・金剛(ルナ談
金剛型戦艦『金剛』のデータを記憶兵装として搭載したCMS。
話し方と髪形が凄い特徴的。
・赤城(ルナ談
赤城型航空母艦『赤城』のデータを記憶兵装として搭載したCMS。
お淑やかで思慮深く見える。
艦娘達の元の所属の件ですが、太平洋戦争開戦時のもので統一されています。
例)第三十一駆逐隊=睦月、如月、弥生、望月。
本来であれば如月がウェーク島攻略作戦で沈没し、変わりに卯月が入っています。
今後もそうなることですので御容赦下さい。