記憶の海 〜Indelible memory〜   作:Ar kaeru Na

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やっとプロローグが終わり第2章です。

役立たずと言われた艦娘達がどの様になるのか。
そこらへんにスポットを当てていきたいと思います。
毎度の事ながら、話の展開がオカシイです。スミマセン

それでは!


1つ目の記憶ーー役立たずーー
memory6「その理由」


 

memory6「その理由」

 

 

 

 

やばい、時間に間に合わない。

 

男は廊下を走っていた。廊下を走るな、なんて守る奴はそうそういないだろう。男もそうだった。

 

今日は大事な日。しかも男が主役なのに、自分自身が寝坊するとは。実に笑えてくる。

 

時間はギリギリ。間に合うか、間に合わないかの瀬戸際だった。

しかし、何とか間に合うかもしれない。何故なら目的地は目の前だったからだ。

 

警備員に身分証を見せる……ハズだったのだが、身分証が見当たらない。

 

男は焦った。家を出るときには、確かに所持していたハズ。つまり、ここまで来る時に落としたのかもしれない。

 

今から探していたら、確実に間に合わない。

もう駄目だと諦めかけた時、後ろから1人の女性が駆けてきた。

 

年齢は男と同じくらいだろうか。何処か幼さ残る顔立ちと、黒い髪が印象的だ。

 

女性は男の下まで来ると、息を切らしながら、男の身分証を差し出した。

 

『これ……落としましたよ?』

 

女性は、はにかみながらそう言った。

 

その笑顔に、男は惹かれたのかもしれない。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ルナはパチリと目を開けた。そしてのそりと段ボールベッドから身を起こす。

 

窓の外はまだ暗い。時計を見ると、まだ午前4時くらいだった。

 

何か夢を見ていた気がするが思い出せない。

しかもそのせいで目が冴えてしまった、

 

二度寝をするつもりも無かったルナはぼんやりと昨日の出来事を思い出していた。

 

 

 

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『それは……私たちが今では必要とされない存在……『役立たず』になってしまったからですよ……』

 

『役立たず……?』

 

艦娘達はまた黙り込んでしまった。

 

『あー、いや、辛いことを聞いちゃったみたいだな。明日は朝8時に集合だから、よろしくね』

 

ルナはそう言って立ち去ろうとする。

 

『待ってください少尉』

 

そんなルナを赤城が引き止める。

 

『私達が話し始めたことです。これからの為にも、聞いてください』

 

『……分かった。無理しなくていいからな?』

 

赤城はコクリと頷くと、静かに話し始めた。

 

『まず少尉は、私達が普通の艦娘……CMSとは違うというのをご存知ですか?』

 

『あぁ、なんか征原司令に聞いたぞ。確か……(モデル)が違うんだっけ?』

 

『そうです。 対深海棲艦用に開発されたCMSですが、現在、一般的に活動している《N型》の他に、幾つかの種類がかつてはありました』

 

『”かつては”ってことは今は無いのか?』

 

『はい。かつてのCMSは全て何かに特化した《S型(特化タイプ)》か試作機ばかりでした。それらの良いところだけを残し、平均化、汎用化させたのが《N型》です』

 

『あれ?君らは確か、《E型》とか呼ばれてなかったか?《S型》とは違うのか?』

 

『私達《E型》のCMSは《S型》を更に特化させた(モデル)だと聞いています。詳しいことはあまりよくわかりません。《E型》の建造数はとても少ないらしく、存在自体がとても貴重らしいので』

 

『ほう、そうなのか。じゃあ、君らは凄い特別ってことじゃないか』

 

『そうなのですが……特化してる故か、ここにいる全員が何かしらの欠点を抱えているのです。そのせいで、私達は出撃すらままならない状態になってしまい、『役立たず』の烙印を押されてしまったのです……』

 

『いや、でも特化してる部分があるんだから、そこを伸ばしていけば欠点なんてカバー出来るさ!』

 

『ですが……』

 

『まずは何が出来て、何が出来ないか知る事が大切だな!明日からは早速、訓練をしようじゃないか!』

 

『少尉!?ちょっと待って……』

 

吹雪達の声が届く前に、ルナは宿舎に戻って行くのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ふわぁぁ~」

 

ルナは大きなあくびをしながら段ボールベッドから降りた。

かと言って、何をするわけでも無く、窓から外を眺めていた。

 

すると、外で吹雪がランニングをしているのが見えた。

 

「こんな時間からランニングとは……熱心だな…」

 

ルナは部屋を出て、外に向かった。

 

 

「おーい!」

 

「えっ!?少尉!?」

 

吹雪は足を止めてこちらを振り向くと、また走って戻ってきた。

 

「早朝からランニングとは熱心だな」

 

「少尉こそ、こんな早くにどうしました?」

 

「んー、なんか夢を見ていた気がするんだが……まぁ、目が覚めたのさ。吹雪は何故ランニングを?」

 

そうルナが言うと、吹雪は少しだけ恥ずかし気にこう答えた。

 

「私……艦娘なのにあまり海上戦闘が上手くなくて……だから、せめてもの事でこうやって基礎体力をつけようとしてるんです」

 

「成る程な……良い心掛けだと思うぞ」

 

「ありがとうございます。それではまた後で」

 

「あぁ、邪魔したね」

 

そう言うと、吹雪はまた何処かへ走っていった。

『役立たず』と言われて喜ぶ奴はいない。やはり、悔しいのだろう。吹雪のその姿からも見て取れた。

 

「……今日の訓練は、海上訓練がいいかな…」

 

ルナはそう言うと、訓練の仕方を聞くためにライラの元へ向かうことにした。

 

 

 

「…しまった、ライラさんってどこに居るんだろう?」

 

提督室はもちろん征原司令がいるとこだし、普段、あの人は何をやっているんだろうとルナは思っていた。

 

考えても答えが出る筈もなく、ルナは取り敢えず提督室を訪ねた。

 

 

「おぉ、ルナ君じゃないか。こんな時間にどうしたんじゃ?」

 

あいも変わらず、椅子に腰かけていたトウがルナを迎え入れる。

 

「征原司令も起きていらしてたんですか」

 

「歳をとると早くに目覚めてしまってのぅ……ところで何用かの?」

 

「ライラさんはどこに居るかをお聞きしたくて……」

 

「うむ、ライラ君は大体、執務室におるぞ。執務室が自室みたいなもんになっておる」

 

「あっ、そうなんですか。ありがとうございます」

 

「うむ……ところで、ここの艦娘達はどうかね?上手くやれそうかの?」

 

トウはルナにそんなことを聞いた。

そしてルナは龍田に殺されかけたことを思い出す。

 

「まぁ……えぇ、まぁまぁやっていけるじゃ……うん…アハハ…」

 

ルナは苦笑いしながらそう答えた。

 

「確かに、個性が強過ぎる娘ばかりじゃが……ルナ君になら出来るじゃろう、頑張るんじゃぞ」

 

「どうも……ありがとうございます」

 

 

そうしてルナは部屋を出た。

ルナはどうしても引っかかる事が一つあった。何故、征原司令はルナに、自分の艦娘達を託したのだろうか。

征原司令は自分では指揮出来ないと言う様な事を言っていたが、どうも、ルナに艦娘達を預ける為の口実に過ぎない気がしてならない。

 

ここら辺もまた機会があれば聞こうと思いつつ、提督室を後にし、執務室へ向かった。

 

執務室のドアをノックすると、中から「入れ」というライラの声が聞こえてきた。

 

「こんな時間に何だ?折角、仕事がひと段落ついたと言うのに」

 

「す…すみません……実は今日、艦娘達を海上訓練させたいと思いまして。如何すればいいか分からないもので聞きに参りました」

 

「海上訓練か……人数も少ないし、私の《派遣艦隊》のCMS達も訓練させたいからな……お前達は第三訓練場を使え」

 

「第三訓練場ですか、分かりました」

 

「海上訓練をするなら、CMSのスペック表が必要だろ。丁度良いことに纏めた奴がここにある」

 

ライラはそう言うと、分厚い紙束をルナに渡した。

 

「これ全部ですか……」

 

「そうだ。なんてことないだろ?」

 

無茶言うなと内心思いつつ、ルナは礼を言って退出しようとした。

 

「オイ、小僧。お前、何時から始めるつもりだ?」

 

「えっと、一応8時からですけど……」

 

「そうか、では私も見学するとしよう」

 

「まじですか」

 

「実は、私も奄美の奴らの実力を見た事が無いんだ。丁度良い機会だからな。お前の対応も見られることだしな」

 

ライラの不敵な笑みに背筋を凍らしながら、ルナは執務室を後にした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

AM 08:00

 

 

例のコテージ前に集まった艦娘達に向かって、ルナは今日の活動内容を発表する。

 

「今日は、皆んなの実力を測るということで、海上訓練を行おうと思う。訓練はライラさんも見てるらしいから、気を抜かないように」

 

「oh!初日から海上訓練デスカ!これはウデがなりマスネー!」

 

金剛がそう言って、腕を掲げてみせる。

 

「そういえば、天龍と龍田は?」

 

ルナが見た所、その二人がこの場に居なかった。

 

「まぁ、大方サボりでしょうねぇ」

 

青葉がそう言うと吹雪が「サボっ……!青葉さんがサボっ……!」と震えていたがよくわからなかったのでスルーした。

というか、あの二人め。初日からすっぽかすとは中々の根性だ。

 

「……仕方ない、今のメンバーで実力検査するしかないな。では、各自準備を整えて第三訓練場に集まる事。それじゃあよろしく」

 

「お前は訓練場の場所が分かるのか?」

 

いつの間にか後ろにいたライラがルナに問いかける。

 

「……………案内お願いします」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ルナとライラが訓練場に着いた時には、艦娘達は皆、準備を整えて待っていた。

 

「うわ、凄い。何を装備してるんだ?」

 

「これが《艤装》と呼ばれる物ですよ少尉。これのおかげで私達は深海棲艦と戦えるんです!」

 

吹雪がそう自信満々に答える。

 

吹雪は、軍艦の煙突のような背部艤装を身につけ、手には砲塔を、脚には魚雷発射菅のような物を装備していた。

 

青葉も吹雪と似たような装備をしている。しかし、重巡洋艦と呼ばれるだけあり、吹雪のそれよりも一回り以上も大きかった。

 

それよりも目を引くのが、金剛と赤城の艤装。

 

金剛の艤装は巨大な砲塔と一体化した背部艤装を装備しており、一方の赤城は、身の丈程の和弓と矢筒を身につけている。正に弓道そのものだった。

 

「CMSによって装備する艤装は異なるからな、大体は元になった軍艦の装備を模した、CMS専用の武装が施されている。お前も良い機会だから、よおく見ておけ」

 

ライラがそう説明する。

そしてルナは訓練開始の指示を出した。

 

先ずは吹雪。

艤装を稼働させ、桟橋から海上に出る。

吹雪の体は海に沈むこと無く、海上に浮かび立った。

 

「改めて目の当たりにするとすごいなコレ。本当に海面に立ってる……どういう仕組みなんだろ?」

 

「お前、今朝渡したその手に持ってる紙束に書いてあったろうが。

艤装の動力は【融合炉】だ。太陽とかと同じ核融合の力を使った炉だな。そして融合炉で得られたエネルギーを使って、艤装内で電力を生み出す。

その電力を体内の【ナノマシン】を通して脚部艤装に伝達する。

脚部艤装に伝達された電力の一部は【荷電粒子】に変換され、脚部艤装に搭載されたY(イットリウム)系極伝導体から発生する電磁力場に誘導され脚部艤装等から海面に放出される。

後は、荷電粒子の反発やら作用、反作用やらで海面に立つことが可能という訳だ。

わかったか小僧?」

 

「あとで紙束見返しておきます……というか、艦娘の身体に【ナノマシン】が使われてるとか初耳ですよ?」

 

「言って無かったか?CMSの素体には特別なナノマシンが使われていてな。大体は細胞と一体化して存在しているが、強力なエネルギー等で活性化すると、その素体の身体能力を極限まで引き上げることが出来る。その為、CMS…艦娘達は、ちっとやそっとのことじゃくたばらないというわけだ。極端な話、銃弾くらいなら避けられるくらいにはなるな」

 

「まじですか」

 

「其れ程じゃなきゃ、深海棲艦は倒せないだろ?ほら、吹雪の奴がスタートするぞ」

 

見ると吹雪が丁度海上を疾走し始めた所だった。

 

海上の障害物を避けながら、まるで滑るように海面を疾く。

 

コースアウトしながらも何とか操艦を済ますと、次は手に持っている砲塔を構えた。

 

「いっけぇ!」

 

吹雪が砲を放つ。その大きさからは考えられない程の爆音を出しつつ放たれた砲弾は、目標の的の遥か遠くに着弾した。

 

弾切れになるまで砲撃したが、結局命中弾は十数発程度だった。

 

「ふむ、操艦、砲撃共に平均値を大きく下回っているな。記憶のロードが少し遅いんじゃないのか?」

 

訓練結果をデータと見比べながら、ライラがそう言う。

 

 

続いて青葉。

 

まずは攻撃対象を確認する。

 

「索敵は自信ありますよ!ひぃ、ふぅ、みぃ……いっ!?」

 

索敵に気を取られ過ぎて危うく、障害物にぶつかりそうになる。

その後も何度かぶつかりかけ、最終的には正面衝突を起こした。

 

「うわお」

 

ルナはそんな風に声を上げる。

 

「アイツは操艦がまるでなってないな。基本中の基本だぞ」

 

ライラがそう評価する。

 

 

 

続いて金剛。

 

金剛は操艦はかなり上手かったのだが、問題は砲撃。

 

「撃ちます!fire!」

 

ドォォンと低い地鳴りを伴いながら砲弾が放たれる。

 

「やはり、戦艦は迫力が凄いな……って、金剛のやつドコに撃ってるんだ?」

 

ルナから見ても、とんでもない方向に砲弾は飛んでいく。

その後、砲弾は的外れの方向にばかり飛んでいき、遂に命中弾は無かった。

 

「sit!何で当たらないネー!!」

 

 

「アイツ……狙って撃ってるのか?」

 

ライラは呆れ気味にそう呟いた。

 

 

最後に赤城。

 

しかし、赤城の場合、様子が変だった。

途中のスタート地点まで行くのは良かったのだが、沖合に出ると、ピタリと足を止めてしまった。

 

『どうした、赤城?調子でも悪いのか?』

 

ルナが無線で連絡を取る。しかし、赤城からの返答は無い。

 

「マズイネー。アカギ、トラウマスイッチが入っちゃってるネ」

 

「トラウマスイッチ?金剛、何だそれは?」

 

ルナが金剛に問い返す。

 

「アカギはかつての軍艦時代の記憶が色濃く残ってるネ。特に《例の作戦》時の出来事がトラウマのようになっていて、海上に出ると何時もあんなカンジに……」

 

「………仕方ない、吹雪、青葉、ちょっと助けに行ってくれ」

 

「了解です、少尉!」

 

「青葉、了解しました!」

 

吹雪と青葉が海上に飛び出していく。

 

 

「これじゃあ、訓練にもならんな。どうするんだ小僧?」

 

ライラがそうルナに聞く。

 

「どうしましょうかね………」

 

ルナも流石にこれ程とは思っては無かったので、衝撃が大きかった。

 

ルナは頭を抱えたくなったのであった。

 

 

 

 

そんな様子を離れた場所で、トウが見ていた。

 

 

「あの艦娘たちをどう育てていくのか……見ものじゃな……」

 

 

 

to be continued…

 

 

ー物語の記憶ー

 

・艤装

艦娘達が装備する、対深海棲艦用の武装。これのおかげで、海上に立つことが出来たり、深海棲艦に有効打を与えることが出来る。

攻撃用艤装や航行用艤装等、種類は様々。

 

(登場人物)ー人間編ー

 

(さかえ)ルナ

現在、奄美基地で生活している、見た目少年の軍人。何らかの理由で過去の記憶を失っている。

 

征原(ゆきはら)トウ

奄美基地の司令。いつも椅子に座っていて、何をしているのか不明。いつもライラに痛いトコを突かれている。

 

・ライラ・トイライン=ハム

形式上、トウの秘書に当たるかもしれない女性。《派遣艦隊》指揮官も担当している。性格はかなり冷たく、ビシバシ物を言う。

 

 

 

 




艦娘が海上に浮かぶ辺りの説明は、作者の妄想です。
そこそこ、それっぽく言ってはいますが、
本気にしないで下さいね(^^;;
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