記憶の海 〜Indelible memory〜   作:Ar kaeru Na

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遅くなってスミマセン。16冬イベにうつつを抜かしてました。
この話は先週分なので、今週分はまた後日投稿します。
さて、私事ではありますが、艦これ改を買いました。かなり面白いと思いますね。あとE3ラストダンスが抜けられません。助けてください。

それでは!


memory7「欠点」

 

 

memory7「欠点」

 

 

 

「これじゃあ、訓練にもならんな。どうするんだ小僧?」

 

「どうしましょうかね…………」

 

 

初めての海上訓練。

ルナとしてはここで彼女らの実力などなどを計りたかったのだが、どうやらそれ以前の問題のようだ。

 

ルナが頭を抱えたくなっている中、救助に向かった吹雪と青葉が、赤城を連れて戻ってきた。

 

「戻りました、少尉」

 

「あっ…と、ご苦労様。おーい、赤城、大丈夫か?」

 

ルナはそう赤城に声を掛ける。しかし、当の赤城は、その場に座り込むと、俯いたまま何かをブツブツと呟いている。

 

「赤城ー?」

 

「………………」

 

「赤城ってば!!」

 

「ハッ……!?少尉……私ったら、また……すみません少尉……面目次第もございません…」

 

「いや、事前に確認をしなかった自分も悪い。みんな、すまないが今日の訓練は中止にしよう。各自、身体を休めて明日に備えるようにしてくれ」

 

ルナがそう言うと艦娘達は皆、落ち込んだ雰囲気を残しつつ「了解」の意を示すと、宿舎に戻っていった。

 

 

「ふむ……今のは中々良い判断だな。あの状態、状況で訓練を続行しても何の意味もない。必要なのはこの状況を考える時間だ」

 

隣りに立っていたライラがルナにそう言うと、幾つかの紙束を渡してきた。

 

「……これは?」

 

「アイツらのここ数回の訓練結果だ。今までは私が《派遣艦隊》指揮と兼任していたのでな。見てみろ」

 

ルナが紙束に目を落とすと、そこには先程ライラが呟いた事と殆ど同じ内容が書き記されていた。

 

「アイツらは進歩が無いというか、上達しないというか、とにかく訓練では総じて同じ結果を残している」

 

 

訓練データ曰く、

 

 

吹雪は、カタログスペック上は問題ないのだが、実戦に出るとスペックの半分も出せていないのが現状だった。

 

青葉は、加速、減速、転舵など自身の移動たる操艦に問題があった。なお、艤装自体に問題は見当たらないらしい。

 

金剛は、一見問題が無さそうに見えるのだが、砲撃に極めて難有りと書かれている。過去の訓練では、一度も命中弾を出していなかった。

 

赤城は、実戦においてもスペック上は問題無いはずと書かれているが、特記事項に海上に出ると一種のPTSD(心的外傷後ストレス障害)が表れてしまうと書いてあった。

 

 

「……おぅ」

 

大体合ってる。いや、ライラの言う通りいつも同じ結果になるのだろう。

 

「私がいくら指導してやってもそこだけはどうにもならなくてな。その他は何とかなったんだがな……」

 

「うーん……難しいですね…」

 

ふとルナはその訓練データに、天龍と龍田のデータが無いことに気づいた。

 

「何故、天龍と龍田のデータは無いんですか?」

 

「あの二人か……奴等は訓練自体に殆ど参加しなくてな。いつだったか、私の権限を使って強制させた事があったが、その時は全くもって真面目にやらなかったな」

 

あの二人、ライラさんにまで……と、心の中で思ったルナは、改めてこの仕事の難しさを実感した。

 

「何回も訓練を行なってこの結果となると、一筋縄ではいかなさそうですね」

 

「その一筋縄でいかないのをどうにかするんだ」

 

「……そうは言いますけれど、実際ライラさんも匙を投げたんですよね?」

 

「さて、私からアドバイス出来るとすれば”創意工夫”だ。色んな方法を試すといい。事実、私も数多の訓練方法を試した。その紙束に大体は書いてある」

 

「逃げないで下さいライラさん」

 

「おっと、そろそろ急用が出来そうだ」

 

「急用ってゲームイベントみたいに起こる物でしたっけ!?」

 

「急に出来る用事だから急用なんだろ。指揮権はお前にある。好きにやって頑張れ。それじゃあな」

 

それだけ言い残すとライラはどこかへ立ち去ってしまった。

 

一人残されたルナは、取り敢えず空を仰いだ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

忘我状態からなんとか立ち直ったルナは、一先ず部屋に戻ってライラから貰った訓練データの紙束を見ていた。

 

「しっかし、あんな状態だと、やたらめったらに訓練しても効果は薄いのかなぁ……一人ずつにあった訓練を用意しないと意味がない気がする……」

 

確かに、訓練はやった分だけ力になるとは、ルナも思う。

しかしその訓練も訓練として成り立っているものじゃないと効果が薄いとも思っている。

 

それに、海上訓練は艤装を使うだけあってその分のコストもかかる。

艦娘達のモチベーション等も考えると『質より量』の方式では難しい気がしてならなかった。

 

どうしたものかと悩んでいると、コンコンコンとノックの音が聞こえた。

 

自室兼倉庫を出て、何も無い部屋の扉を開けると、そこには吹雪が幾つかの書類を持って立っていた。

 

「失礼します少尉。ライラさんから届け物を預かって参りました」

 

「あぁ、ありがとう吹雪」

 

「ライラさんが『役立ててくれ』と仰ってましたけど……」

 

ルナは受け取った書類をパラパラと見てみる。

 

「おぅ、これは確かに……」

 

「どうですか?」

 

「『駆逐艦吹雪。ワシントン条約下において、大本営からの無茶な要求に見事応じ造られた、重武装かつ凌波性に優れた画期的な駆逐艦。本艦の登場によって当時の列強海軍に衝撃を与えた。主に南方戦線に従事し、第二次ツラギ夜戦にて沈没。』だと。

そうなのか吹雪?」

 

「確かに軍艦時代の私の戦歴はその通りですけど……その書類に?」

 

「うん、奄美艦隊全員の軍艦の時の情報が書かれてるよ。成る程、これを見て学べということか……」

 

今を変える為にはまず、過去を振り返ってみる。そんなことなのだろう、吹雪から渡された情報には先程の様な軍艦時代の艦娘のデータが書き記されていた。

 

軽いさわりから細かい事まで網羅されており、読破するのは容易な事では無さそうだった。

 

「流石ライラさん。伊達に派遣艦隊指揮官をやってるだけはあるな」

 

「そうですね。それでは少尉、私はこれで…」

 

そう言って吹雪は部屋を出て行こうとする。その姿にズキリと頭が痛んだルナは咄嗟に「ちょっと待ってくれ」と呼び止めてしまった。

 

当の吹雪は「?」という表情でこちらを振り向く。

 

(しまった……!何か呼び止めてしまったけども……えぇとえぇと……)

 

「その……手に持っている本はナンナンダロナーと思ってだな……」

 

内心で焦りつつもそう答える。実際、持っている本も今気づいたのだが。

 

「これですか?これは駆逐艦の兵法を纏めた本になりますね」

 

吹雪が本を開いて中を見せてくれるが、漢字とカタカナのみで書かれており、どうも古くさい。

 

「えと、この本いつのだ?」

 

「これは……大東亜戦争時代の海軍の兵本の写本ですね。私ってば、カタログ上と軍艦時代では高性能駆逐艦って持て囃されてますけど、今の状態では海上に出ると全然ダメなので……せめて基本的な事だけでも覚えておこうと……」

 

「そうなのか……引き止めて済まんかったな。頑張ってくれ」

 

「ハイ、失礼します」

 

吹雪が再度部屋を出て行こうとするが、ここでルナは一つの疑問を覚えた。

 

「ちょっ……ちょっとスマン」

 

ルナはもう一度、吹雪を呼び止めた。

 

「……何でしょう、少尉?」

 

「あ、いや、何度もゴメンナサイ。でも、確か、君達CMS(艦娘)は《記憶兵装》を搭載しているんだよな?」

 

「そうですけど……それがどうかしましたか?」

 

「艦娘の記憶兵装には、かつての軍艦時代の記憶(データ)とそれらの戦闘に関する情報があるんだろ?それなら、今更、兵法を覚える必要なんてないんじゃないのか?」

 

そこで吹雪はハッとした顔になって手を口元に当て、うーんと悩みこんでしまった。

 

「確かに……私達、艦娘の基本概念として『軍艦の記憶と海上戦の基本を記憶として持っている』とされているのに……」

 

「されているのに……どうかしたのか?」

 

ルナがそう聞き返すと、吹雪は驚きの真実を伝えてきた。

 

「私には、海上戦の基本と呼べる記憶情報が余りにも少ない気がします……!」

 

「いや、それでも海上訓練ではしっかりやっていたじゃないか?何か問題があるのか?」

 

「実は……戦闘の基本は全てライラさんから教授されたものなんです。その前は海上に浮かんで移動する。身につけた装備を動かせる程度でした……」

 

「なっ……!それは、吹雪以外の艦娘達もそうなのか?」

 

「少なくともE型のCMS……天龍さん、龍田さん、青葉さん、金剛さん、赤城さんはそうだったと思います。N型のCMSは、全然そんなこと無く、直ぐに出撃しても充分戦闘が成り立ってますし」

 

この事実にルナは驚愕した。もしこの事が本当だとすると、E型のCMSは戦闘技術を殆ど付与されていないという事になる。

 

逆に、それならばこれまでの訓練成果があんまりなのも頷ける。

他の艦娘は戦闘技術をもともと持っていたのに対し、吹雪達は知らなかったようなものなのだから。

 

「今から、戦闘技術を《記憶》として搭載するのは無理なのか?」

 

「いや……出来ないことはないとおもいますけど……厳しいですね」

 

まぁ流石にこれは無茶だと思っていたが。

 

「成る程、みんなの海上訓練の成績があまり良くないのは、この事が要因の一つと見て良さそうだな。だけど、そうと分かれば、幾つか打つ手が見えてきたぞ」

 

「本当ですか!?少尉!」

 

「うん、本当だよ。そうなると……まずは自分が『知る』必要があるな……

吹雪!その本があった場所にちょっと案内してくれ」

 

「あっ、ハイ!了解です!こちらです!」

 

吹雪はビシッと敬礼をすると、駆け足で廊下を歩いていく。ルナもその後に続いていく。

 

 

少しづつ、少しづつだが、解決策が見えてきた気がした。

 

 

 

to be continued…

 

 

ー物語の記憶ー

 

 

 

・PTSD

 

正式名を『心的外傷後ストレス障害』

命の安全が脅かされるような出来事等によって、強い精神的衝撃が心的外傷、つまりトラウマとなって生活に支障が出るストレス障害。

 

 

 

 

 

・第二次ツラギ沖夜戦

 

後の世では『サボ島沖夜戦』とも言われる。

ソロモン諸島の戦いの一つであり、1942年10月11日に勃発。

 

南方戦線の輸送等の活動を安定させる為、南方の米航空基地、ヘンダーソン基地飛行場への艦砲射撃作戦を立案した日本軍は、金剛型戦艦を中心とした【第二次挺身隊】を作戦に投入することにした。

 

それに先駆け、青葉、衣笠、古鷹、吹雪、初雪、叢雲で構成された【第六戦隊】が飛行場砲撃の先兵を任される事となった。

 

同時期、アメリカでは日本の鼠輸送を止める為、サンフランシスコ、ソルトレイクシティを中心とした【第64任務部隊】が南方戦線に展開していた。

 

本隊よりも先に出撃した【第六戦隊】は途中スコールに見舞われ、予定の航路を変更し進軍。スピードは変更しなかった為、予定より早く作戦海域に到着した。

 

スコールが去った後の夜、青葉がガダルカナル島手前に艦影を発見。

この艦影は通商破壊に出ていた米の【第64任務部隊】だった。

 

しかし、青葉はこの艦影を味方輸送船団と誤認する。艦影の中に味方艦らしき物が見えた為、同士撃ちの危険を懸念したのだ。

 

進路そのままに【第六戦隊】は【第64任務部隊】に接近し、味方識別灯を点灯させる。

 

もしもの時の為に、同航戦を取るため右回頭を始めるが、時すでに遅く、米【第64任務部隊】の集中放火を浴びる。この時、米艦隊は丁字戦法を取っていた。

 

この時青葉は自らが同士討ちされていることを疑わず「ワレアオバ、ワレアオバ」との発光信号を送るが、後に敵艦隊と断定、煙幕を展張しながら緊急離脱を図った。

 

旗艦青葉の左前方距離3,000mに展開していた『吹雪』は味方識別の為【第64任務部隊】に接近。サンフランシスコからの探照灯照射により米艦隊から集中放火を受けた。右急速回頭を行い、撤退を図るものの、弾薬庫を撃ち抜かれ爆沈した。

 

旗艦青葉後続の『古鷹』は、放火に晒されながらも、何とか進路転換に成功し、撤退を始めた。

しかし、旗艦青葉に砲撃が集中しているのを見て、青葉と米艦隊の間に割り込むよう進路を取り、青葉を砲撃から庇った。古鷹の奮戦により青葉は撤退に成功するが、古鷹は甚大な損害を受け航行不能、後に沈没した。

 

殿を務めていた『衣笠』と『初雪』は、後続に着いていた為、砲撃を受けず、反航戦を取る形で米艦隊へ砲撃を与えている。

 

この夜戦後、古鷹の乗員救助に駆けつけた『叢雲』が米航空機によって戦闘不能の大打撃を受ける。そしてこれを助けに来た『夏雲』が米航空機によって轟沈。叢雲放棄を決定した第十一駆主計士官により、叢雲は初雪に雷撃処分された。

 

 

 

 

 

 

 

 




サボ島沖夜戦説明の叢雲雷撃処分の部分ですが、処分したのは「初雪」と書いてありますが、「白雪」という説もあります。
しかし、自分が図書館等で調べた文献には「初雪」と書かれていましたし、叢雲艦長の記録でも「初雪」となっているのでそう書かせていただきました。それと、なるべく分かりやすくしたかった為、一部説明におかしな所がありますが、御理解の程を宜しくお願いします。
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