東方畢竟訖 〜in Other Worlds.   作:LOORUME

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遅れてすいま…遅れるってなんでしたっけ(哲学)
とりあえず、これからもこの位のペースになると思います。それでも尚よろしいと言う方、ありがとうございます。

今回はいつもとは違う雰囲気になって(ると思って)おります。今回初登場のオリキャラ、なかなか気に入ったかも。


五話目 下衆姫妹

 

 

──────ぽちゃん。

 

 

 どこからかそんな音が響いた。

 

 

 トンネルはすぐそこで中断しており、あと一歩分前に出ると全く異質の空間にたどり着く。

 

「綺麗………」

 

 そこには、神秘的な地底湖が。エメラルドグリーンの水が湧き出ていた。

 底は深く、二十から三十メートルくらいあるんじゃなかろうか。

 

 逆に天井は…。と見上げてみると、かなり高い。ごつごつした岩の壁には松明が設置されているが、それの火の光が届かないほど高い。

 

 では、広さはどうか。見渡してみれば…いや、見渡せるほど広い。

 

 

──────ぽちゃん。

 

 

 とにかく広い空洞。湖の中心に鎮座するのは、一隻の大きな(ふね)だった。

 

 山の洞窟の地底湖に浮かんでいる船。その名もプロベレビウム号。

 薄汚れた木材からはそれなりに年季があることが伺える。

 

 しかしそれにしても、何故こんな場所に船を浮かばせたのだろうか。犯人らも最近来たって言ってたから、船ごと転移したんだろうけど……。わざわざこんな狭い場所に……─────!!

 

「あら、お客様。姉ちゃーん! 姉ちゃーーん!」

 

 見つかった。即座に報告された。大事だよ、そういうの。だが嬉しくない。

 甲板から見下ろす彼女は、奥に向かって必死に叫んでた。

 

『客ゥ? ああ、侵入者ね。適当にあしらっておいてー』

「ラジャっ!」

 

 奥から、この子のお姉さんとやらの声がしたかと思うと、わたしの撃退宣言。こういうのはもう懲り懲りである。

 

「じゃあ、侵入者さん。済まないけど撃退されてね」

 

 少女は振り返り、満面の笑みでそう言った。

 本当、タダじゃ済ましてくれないようだ。

 

 

BGM:『雨舟 〜 Drive to the Sky』

 

 

 少女、つまり対戦相手なのだが。見た目は幼いと言えど、将来はきっと逸材だろうと確信できるほど美しかった。

 髪は夜の川に似て踵まで伸びる。幽かに乱れた真っ白で真っさらな着物は彼女の黒髪の魅力を引き立てる。

 

「おねーさん、名前はなんてーの?」

「……? 立見 田華です。デカって呼」

「ふーん。わっちは不押火(おさぬい) のれん、って言うの」

 

 遮られた。

 

「実はここだけの話、この異変に賛同してないのよ、わっち」

「はあ」

 

 ふわふわと浮かびながらわたしの方に近づいてくるのれんちゃん。あまり警戒しなくてもよさそうだ。

 それにしても、ここまで来てまさかの戦意ゼロの相手。

 

「だからね、弾幕ごっこはナシでお姉ちゃんの所に行ってもらいたいんだけど───」

「本当ですか!助かります」

 

 

 

 

 

 

「───なわけ無えだろ。被弾しさらせや!」

 まさに外道。

 

 腹部に迸る衝撃は、油断から産まれた自業。安易に、それも戦闘中の妖怪に近づいたのが悪かったのか。

 

 対するのれんちゃんは、先程とは一変した雰囲気を漂わせる。

 髪は逆立ち、まわりには黒いオーラさえ見える。一目見ただけでゲスさが分かるぞ。

 

「まあ、賛同してないってのもあながち嘘じゃないんだけど。なんせ、こんな暗ーい場所で敵を待つなんて、(さが)に合って無ェから」

 

 前を睨みつけると、ゆっくりと敵が近づいてきていた。つまり一発の弾幕に結構吹き飛ばされたのか。通りで痛い訳だ。

 ……でも、身から出た錆、いや自業自得かもしれないけど───。

 

「そんなのも、もう終わり。獲物が来たからにゃ、楽しませてもらうよ」

「神籤《反則結界》!」

「ふげぇッ!?」

 

 ───外道には反則を、お見舞いしてやった。

 

「おめェ、卑怯だぞ!」

「それはどっちですか。あなた(わっち)でしょ。道を外れた者には容赦しませんよ」

「ちッ」

 

 舌打ち、後方に移動し距離をとるのれんちゃん。

 

「碕符《冷血吸血女(コールドハーテッド)》」

 

 そしてスペルカード発動。警戒心を高め、相手を注視する。

 

 彼女からは放射状に黒い小弾が。それも大量に。しかも禍々しい。

 仄暗い洞窟内では弾幕の黒か闇かも分からず、見分けるのに集中しないといけない。

 その上、湖面に当たった弾幕も、岩肌に当たった弾幕も反射する。永久に弾が増え続けるだけ。このまま耐久するには分が悪い。だから、 相手に一発当ててスペカを無効にすることにした。

 

「《ホーミングアミュレット》」

 

 スペカではない。ただの通常弾幕だ。

 わたしが放った幾つかのお札は緩やかに弧をえがきながら相手を追尾し、そして絶対に逃がしはしない。

 

「ぐッ」

 

 着弾。彼女はあと一度でも被弾すれば負けだ。

 

「しゃらくせェ。能力を発動させてもらうぜ」

「!?」

 

 のれんちゃんがこちら側に手の平を差し出すと、彼女とわたしが黒い霧に包まれる。視界が遮られる。

 この霧、触れても大丈夫なのか心配だ。

 

「ふん、こうなったら死なばもろとも、だ。死なないけど、おめェは足止めさせてもらう」

「……?」

 

フワッと霧が吹き飛んだかと思うと、身体から力が染み出るような脱力感。同時に、のれんちゃんの黒いオーラは先程より増していた。

 

「とどの詰まり、あなたの能力は…?」

「『程度を等しくする程度の能力』。それが、わっちの能力さ」

 

 程度。つまり高低、長短、大小、軽重、明暗、厚薄、硬軟、鋭鈍、寒暖、難易、白黒、そして強弱。そういった程度を、二つ或いはそれ以上の物を比較した時に、平均の程度にする能力。と言ったところだろうか、たぶん。

 

 この場合、わたしやのれんちゃんの妖力や霊力を纏めて“力”とすると、それが五分五分になったということか。故に、目標が撃退から引き分けになった。なるほどなるほど。

 

「理解できたかい? お前じゃわっちを倒せないし、わっちもお前を倒せない。精々異変が終わるまで地獄を味わおうぜ」

「異変? あなた達はやるだけやって、何も行動してないじゃないですか」

「うるせェな。ほらスペカだぞ。礒符《綱渡りの索敵(キラー・オン・ザ・ライン)》」

 

 宣言と同時に、ワインダーによって行動が制限される。ほぼ洞窟の壁の色と同化してて狡い。

 その上自機外しの弾幕。迫るワインダーを避けながらも、慎重に偶数弾に当たらないようにする。精神の削れる弾幕だった。

 

「はあ、疲れましたね」

「降参か?」

「違いますよ、決着です。《サブタレイニアンローズ》。地下のあなたには、お似合いでしょう」

「!!」

 

 

 のれんちゃんは最後、赤と青の薔薇の弾幕に横腹と頬を叩かれる事になった。

 

「のれんに腕押しって言うけど、ただ、くぐれば良いだけなのよ」

 

 

「なんで五割の筈なのに、負けたんだ」

 

 甲板にへたり込んだのれんちゃんは、そう呟く。傍らに立つわたしはこう返した。

 

「心の問題なんじゃないですか?」

「ああ?」

 

 おお怖い怖い。でもね。

 

「いい、“引き分け狙い”とか“負ける気”じゃダメなの。“勝つ気”じゃないと。そこらへんでわたしは勝ったんだよ、きっと」

「…………」

 

その沈黙はわたしへの呆れか、それとも。

 

「…まあ、何にせよ、わたしが勝ったんだから、案内してもらうよ」

 

 座る彼女に手を差し伸ばした。

 

「………しょうがねェな」

 

掴む右手は共に力強い。

 




BGMは、11(時依)さんです。
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