東方畢竟訖 〜in Other Worlds.   作:LOORUME

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怒髪心頭(どはつしんとう)
さてさて、一体誰が怒るんでしょうかねぇ。


六話目 怒髪心頭

 

「はぁ、結局あたしが戦わなくちゃいけないじゃないの。あ、のれんは下がってていいわよ、買い被ってたわ。あんたじゃ力不足だろうけど、あたしにゃ役不足だったのよ。ごめんごめん」

 

 気がつくと、のれんちゃんのお姉ちゃんとやらが、やったら長い台詞を言いながら甲板に上がってきた。

 

 灰色の髪を腰まで伸ばしているが、顔はのれんちゃんとそっくり。服もお揃いで白装束だ。血色の良い幽霊っぽい。ついに、最後の敵か。

 

「本当、すまないと思ってるのよ? あたしが貴方の力量を読み間違えていなければ、こんな人間に敗北して屈辱を感じる事も無かったのにねぇ」

 

 嗜虐性たっぷり。三白眼でニタニタ笑いながらのれんちゃんを言葉で責めている。

 

「チッ。まぁいいよ、負けたのは事実だからね」

「あらぁ?やけに素直じゃない」

「それより、この人と戦いなよ。(そして負けろ)

「なにか?」

「なんでもねェよ」

「そう」

 

 お姉さんには聞こえていなかったようだが、わたしにはちゃんと聞こえていた。それでいいのか、反対とは言ってたけど。

 二人の会話をしばし観ていると、唐突にお姉さんがこちらに向き直った。

 

「ところでアナタ、名前は……」

「あっ、ハイ。デカです」

「あたしは真砂(まさご) (みぎわ)。ま、自由に呼んでちょうだい」

「ミギワちゃん?」

「……まあいいけど」

 

 少々不服そうに眉を顰める。でもいいらしいので良しとしよう。

 

 真砂 汀ちゃんと、不押火 のれんちゃんか。二人とも可愛い姉妹だな。あれ、でもなんで苗字が一緒じゃ無いのだろう。

 そう思って質問してみると、大体同じ種族だから何と無く姉妹ってだけで、親が一緒というわけじゃないから苗字も一緒じゃない、だと言う。

 

 大体同じ種族って、妖怪は適当である。

 

「ま、いいのよ、あたし達の事は。異変を解決しに来たんでしょう? だったらさっさと決着をつけましょう」

「……ですね」

 

 ついに、最後の弾幕ごっこである。

 

「スペルカードは四枚。被弾回数は三回よ。いいわね?」

「はい」

 

 兜の緒をば締め直し、気を引き締め、いざ参らん。なんちって。

 

 

BGM:『色あせないの空と海』

 

 

 まず戦局は、相手から攻める形となった。

 

「血影《金切り美人図》」

 

 ミギワちゃんのスペルカードである。

 血痕を模した小中弾が何処からかポタポタと滴り、空中に留まったかと思うと、一直線にわたしを狙う針となって刺し向かってきた。

 

 発射間隔も短く、紙一重で避けるのがやっとだ。

 

 ところでこれ、直撃したら大変なことになりそうなのだが……。

 そう思うと冷や汗が出てきた。肝も冷えた。

 それでも弾幕に集中しなければと、前方に集中する。

 

 

ピーーーー。

 

「?」

 

 何の音だろうかと、音の鳴る方つまり後方へ振り返った。

 

「!!」

 

 驚いた。愕然として、吃驚した。

 

 わたしに回避され、空洞の壁に刺さっていた針弾幕が、今度は一斉に折り返してきたのだ。

 

 

 やんぬるかな、万事休す。

 あれだけの量の針では、隙間を見つけるのも難しい。針も集まれば山だ。

 どう足掻いても串刺しにされるのが落ちだろう。ならばこのまま、ゆっくりと、抵抗せずに───。

 

 

 

 否、一か八か、いや一事が万事にでも避けられるなら、それに賭けるしかあるまい。不可能だって不可逆だって反転して可能にしてやる!

 

 

「《ひらり布》!」

 

 

 『ひらり布』それは、鬼人正邪が使用した反則アイテムの一つ。それを発動させると、相手の弾幕のダメージを一定時間受けなくなる。

 つまり。

 

「な、なによ今のは。弾幕が透けて通ったですって? ありえないわ!」

 

 アイテムも、スペルカードとして再現することで使用することができたらしい。

 ほら、原作ではスペカ発動した時に敵の弾幕消せるしそんな感じそんな感じ。

 

「では次は此方から行きますよ!《風神様の神徳》」

 

 神奈子様のラストスペルカード。

 赤、紫、青、緑、水色の順で大量に繰り出されるお札。そのさまはまるで花のよう。

 

「…ッ。凄い弾幕量。けれど時間いっぱい逃げきってしまえばこっちの勝ちよ!」

「残念、時間制限は無いんですよ」

 

 ニヤリと笑い、わたしは言葉を続ける。

 

「貴方がミスをするか、わたしが被弾するかしか道ははないんです」

「そう。なら大人しく、これに当たりなさい!」

 

 手を掲げ、そこから放出される星屑。キラキラと光っていて綺麗だ。

 

「悪いけど、貴方たちと比べてそこまで大人じゃないんですよね……っと!」

 

 ランダムに降りかかる弾幕を回避しながら、かつスペカは続行中。

 

 だが彼女は気づいていない、大きな失態を冒したことに。

 わたしが移動しなければ、スペルカードに一定の規則性があった。そう過去形だ。

 わたしが移動したことで、弾幕の発車位置がブレ、実質ランダムと変わらない。つまり難易度が格段に上がるのだ。

 そしてそれの意味することとは。

 

「チッ、被弾ね」

 

 真砂汀、残り二回でも当たると負け。スペルカードはあと三枚。わたしは、あと三回と二枚。

 一進一退の攻防と言えるだろう。

 

「ふふっ、今のうちなら降参してもいいんですよ?」

「ほざいてなさい。血光《乱れ染めにし血塗れ屏風》」

 

 煽り方を覚えたということは、だいぶ幻想郷に馴染んできたのだろうか。そういう意味では嬉しくない。

 

 さて、相手方のスペルカードだ。

 相手の背に、屏風をイメージしたであろう山あり谷ありの板状の発光物体が出現した。あれだ、幽々子さまみたいな。

 

 そこから射出されるのはもちろん弾幕で。猛スピードで紅色弾が一斉にばら撒かれる。これはもはや、気合避けである。

 

 しかし、盲点という完全な死角からの弾がわたしに迫っていた。気づいた時にはもう遅く、口惜しくも被弾してしまった。

 

「痛っ…!」

「ふう、やっと当たったわね。血下《発狂絶叫最強吸血女》」

「連続!?」

 

 ちょっと休憩をとりたいものである。外傷こそ無いけれど、かなり疲労が残っている。

 

 たしか蛇神の鏡映さんが、己が力に見合ったスペカしか使えないとか何とか仰ってたような。

 

 そして今まで使ってきたのは大妖怪のスペカばかり。

 だからたぶん、体力を大きく消費してしまっているのだろう。

 

 だがウジウジしていても何か得られる訳ではない。ただただ回避に集中しよう。

 

 まず始めに現れたのは、2-WAY×二方向からの自機外し弾。列と列が交差する所でしか動けないため、あまり急な動作はできない。

 だというのに。

 

「はっ。こんだけで終わりじゃないわよ。食らいなさい」

 

 流石に行動範囲を狭めるだけではこのスペカは終わらないらしい。

 

 それより、ミギワちゃんが手に妖力を集めてるのが目に見えてわかるのだが…。嫌な予感しかしない。たぶん極太レーザーを撃つのだろう。

 そうと分かれば急いで、あとは慎重に移動し、レーザーの軌道から免れなければ。

 

 しかし如何せん行動が制限されている故、何度も言うが素早く移動することは出来ない。

 イライラが募るなか、ついにその瞬間が来た。

 

(はっ)!」

 

 眩い。目眩(めくるめ)く閃光。次の瞬間、わたしは既に光の中に包まれていた。

 

 

 

 

 

 

「ふ、ふふふっ。そろそろ終わりみたいね。降参してもいいのよ?」

 

 ()は、煙る目線の先に向かって呼びかける。

 

 だいぶ手こずったが、敵はあと一回でも着弾すれば終わりである。勝利は目前だ。

 

 相手も体力は残り少ないだろう。普通に倒すことさえ容易い。だがそれではつまらない。

 

 だったらこの際、ラストスペルカードでカタをつけてやろうかと、宣言しようとした時であった。

 

 

 煙の中の、影からの声。

 

 

「………《虹のカケラよ(フラグメントオブレインボウ)、───」

 

 

 どうやら、まだスペルカードを使う余裕くらいはあるらしい。

 

 いいわ、それを華麗に避けてから貴方に最後を贈りますわ。

 

 

「───遠くへ……(トゥーファラウェイ)》」

「!?」

 

 煙たい空気が裂け、一瞬にして空洞内が晴れ渡る。

 

 かと思えば、地底湖にかかる幾本もの虹。足元のそれは、全てが輪ではなく、楕円に見える。つまり、光の屈折を利用したのじゃなく弾幕を利用した具質的なもの。

 

 虹だけだったら綺麗だ。

 だが、スペカ名から察するに……。

 

「弾けろ」

 

 デカの言葉に伴い、虹が次々と爆発していく。その破片は空中を漂い、光の球となって右往左往する。時に壁にぶつかり、球とぶつかり合い。

 跳弾し尽くした弾の規則性はもはや皆無。予測不可能である。

 

 そして、被弾。

 

「チッ。貴方、撃たせておけば調子に乗って…。もう手加減しないわ」

「なにを…?」

「能力発動」

 

 私の能力。それは『程度を操る程度の能力』。妹の上位互換とも言えるだろう。

 

 能力では全ての“程度”という“程度”を操れる。妹が強弱に対して能力を使ったのならば、それは引き分け狙いの諸刃の剣にしかならない。

 しかし私は違う。文字通り操れるのだ。条件を指定すれば、それに見合った奴にだけ発動する。

 ただ一点だけ、弱点があるとすれば………。

 

 ともかく、相手(デカ)の霊力を激減させた。

 

「おろっ…?」

 

 デカが素っ頓狂な声を出しながら、ふらふらと下降していく。それはまさしく力が抜けるように。

 やがて舶の甲板に足をつけると、へなへなと倒れこんでしまった。

 

「何をしたんですか……? 毒…霧…!?」

「なあに、そんな大層なものじゃないわ。能力よぉ」

 

 デカの発する言葉は途切れ途切れで、とても苦しそうだ。

 

 そこを狙い、無抵抗、いや不可抵抗の敵に強力な弾幕をぶち込む。ああ楽しみだ。

 

 もういっそ殺してしまおうか。偶然だと偽れば、大丈夫な筈だ。

 

 …うん、よし、そうしよう。何よりも好きなのは生き血を啜る事だが、この際我慢しよう。

 

「じゃあそろそろ、お別れね。《モルダー・ラヴ・ビ───」

 

 

 

 

 

 

 

 

「みーつけーたー」

 

 

「!? 誰よアナタ」

 

 気づいたら背後から声がした。振り向くと、道士服を着た妖しい金髪の女。見ただけで胡散臭いのがわかる。

 

「八雲紫だよ」

 

 と、外見には似合わない口調で紫が言った。

 

 彼女の後ろにもう一人、白髪で赤い眼をした少女が居るのが目に入った。イメージは白蛇だ。

 

「八雲……? そうか、お前が幻想郷の管」

「拙しお前、げにいまいまし。即刻去ね!」

「はっ」

 

 口から息が漏れた。疑問符さえ浮かばない。

 そして確信した。自分に生きる道は無いのだと。八雲紫は、怒髪天を貫き、怒り心頭なのだと。

 

 そう、彼女から溢れる大量の妖気に包まれながら。

 

 

 

……ただ一点だけ弱点があるとすれば、条件は一つしか指定できないことだ。

 




紫のド怒りシーンは二度と書きたくないですね…。
イメージがあまり湧かせられないというか。

曲は前回と同様、11(時依)さんです。
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