東方畢竟訖 〜in Other Worlds.   作:LOORUME

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今回から新章です。

キャラ崩壊注意、ですよ。特に紫の。

あと今回は、説明も多めです。さらーっと読み飛ばすか、じっくり読んでください。

(修正後)
今回から、(逆効果かもしれませんが)時系列を分かりやすくするため、時間表記を入れました。
XX月は鏡源郷で、YY月は幻想郷です。
あと、設定では鏡源郷の一時間は幻想郷の一日です。

考えるのが面倒であればぱらーっと読み流してください。



第3章 畢竟、此れにて。
一話目 『新たな異変!?』


(XX月20日 19:00) (幻想郷時間ではYY月19日)

 

 全身に襲いかかる脱力感。それだけで、何もしたくないという気持ちになってしまう。

 

 これはミギワちゃんの能力によるものらしい。どういった原理でこれが発動しているかは全く検討もつかない。検討もする気も起きない。

 

「じゃあそろそろ、お別れね」

 

 もういっそその方が、楽かもしれない。

 

 体の中にどんよりとした黒い霧が立ち込めるような、そんな倦怠感に抗えず、わたしはただ最後の時を待つのみだった。

 

「………」

「《モルダー・ラヴ・ビ───」

「………」

 

 だが。

 

「…………?」

 

 その時は訪れなかった。

 

 ミギワちゃんが居る方向に意識を向けると、会話が聞こえる。

 

「八雲紫だよ」

「八雲……?」

 

 その声は、と思い、顔をむくりと動かすと、そこに居たのは矢張り、紫様だった。

 

 紫様が動けたということは他の人も同じだと思う。もはや異変の大部分は解決されたも同然だろう。

 

 とすると彼女の能力は力の増減を操れるか、それ以上の能力ということになるのだろう。そして発動には条件を提示する事が必要なのだと。

 

 たとえば、『幻想郷に来てからまだ間も無い者以外』という条件で発動すれば、わたしや異変に関わった者達は大丈夫ということになる。

 

 逆に、『立見田華』という個人のみを選択することもできるということだ。

 

 でもそうなると、紫様やその後ろの鏡映さんが動けている理由がわからないので、提示できる条件は一つまで。

 

 つまり、ミギワちゃんってばわたしに能力をかけたいが為に他の住人達を解放してしまったってこと。

 

 

 しかし、と少しばかりの違和感が思考によぎった。

 “だよ”? そんな口調紫様から聞いたこともないし、原作でもあるわけ………。

 

 いや、あった。一度だけあった。

 

 それは天子が博麗神社の地中に要石を埋めた時だ。その時は、そう、紫様は激怒していた。

 

 とすると今も、紫様の怒髪天は天を貫いた状態。下手に刺激すれば危険だが、何もしなければ今度はミギワちゃんがどうなるか分かったものではない。

 

 あーだこーだ考えているうちに、話は進む。

 

「そうか、お前が幻想郷の管」

「拙しお前、げにいまいまし。即刻去ね!」

 

 言葉を遮っての古語のお小言。いや大事だけどさ、こんな異変。

 

 やがて怒りは、明らかになっていった。

 

 ミギワちゃんを絡め取り、雁字搦め、じわじわと拡がる妖力。そして空洞全体を包みこんだ。

 

 その妖力には明確な殺気が含まれており、他に有無を言わせない迫力があった。

 

 だが、ミギワちゃんはそれを斥けてみせた。

 

「……アナタ、幻想郷の代表者でしょう」

「…そうだよ」

「ここは鏡源郷よ? アナタの管轄下ではない」

 

 紫様のお仕置きだけは避けたいと思ったのか。まあ確かに、殺されるかもしれないのだ。そう思わせるくらいに紫様は怒っていた。

 

 だが、その返答は酷く冷たいものだった。

 

「五月蝿い黙れ。既に制裁の許可はとってある。全ての罪を償いなさい」

 

「な、何なのよ。それにしても怒り過ぎでしょう?一体どうして…」

 

 語尾は震えている。

 

「何よりも許せないのは、デカを危険に晒したおまえと、それをやむ得ない状況にしたこの私。汚名ならいくらでも被りましょう。だから、おまえを────」

 

 ダメだ。紫様が完全に暴走している。これにも鏡映さんもアタフタ。

 

 

 どうしよう。どうしよう。

 

 

 

○ ○ ○

 

 幻想郷・YY月17日 13:00、異変発生から()()

(デカが重合 叶喜と戦っている頃)

 

 

 

 

 

 異変から数日。解決こそしていないが、何か大きな事件が起こったというわけでもない。

 

 全身にのしかかる倦怠感に慣れてきたのか、日常生活くらいは出来るようになった。

 

 今は昼ごはんのお鍋を作っているところである。もうすぐ完成だ。

 

「魔理沙ー、そろそろ出来上がるわよ」

「うーい」

 

 気だるげな声が今から届く。するとのっそのっそとやってきた魔理沙が気遣いをしてくれた。

 

「鍋、運ぶぜ?」

「いいわよ。それより食器とか箸お願い」

「ああ」

 

 魔理沙は棚から手頃なお椀を慣れた手付きで取り出し、居間へ帰って行った。

 

 そして私はお鍋を運び、食事が始まる。

 

「いただきます」

「いただきます」

 

 腕に具と汁をよそい、魔理沙へ渡す。ありがとう、と聞いて次に私の分も入れることにした。

 

「なあ、霊夢」

「んー?」

 

 木製のお玉を動かしながら耳も傾ける。

 

「何日も泊めてもらっちゃって悪いな」

「ふうん、あなたから『悪いな』なんて言葉を聞くなんて思わなかったわ。それもこんな、ちょびっとの事で」

「いいのか?」

「むしろ、今までの方が悪かったくらいよ」

 

 遠慮ではなく、実際のことだ。魔理沙が先走って何か問題を起こし、それを鎮めた経験は数えきれない。

 例えば、魔理沙がキノコに薬液をかけて、大量発生させてしまった時。あの時は魔理沙の家一帯ごと、落ち着くまで封印させてもらった。

 あとは、私だけで異変解決できるのに、魔理沙が鏡源郷に乗り込んできた時か。

 

 面倒ごとなど、出来ればごめんだ。だがそうさせずに、非日常を引っ張りこんでくれるのも魔理沙の役割だ。

 そういった、暇つぶし係という意味では感謝してもいいのかもしれない。今度してみようか。

 

 

 幻想郷・YY月18日 9:00、異変発生から三日

(デカが不押火のれんと戦っている頃)

 

 晴天。幻想郷の青い空にはひとつの飛行物体が。

 その物体、いや妖精の名前はチルノ。

 

 彼女はこの数日間、幻想郷を飛び回って情報収集に勤しんでいた。

 

 妖怪も巫女も魔法使いも、まともに動ける者はおらず、少なくとも飛べないはずである。

 飛び回り、妖力弾を撃てるのは妖精だけ。ここ数日で手にした唯一の確かな情報だ。

 

 異変発生から三日、解決の糸口は見つからない。それどころか黒幕からのアプローチさえ無い。

 

 一体何がしたいのかと問いたい異変である。

 

 ぶつくさと文句を垂れながらもチルノは、取り敢えず飛んでいた。

 

 そんな時だった。空気が、揺れた。

 

「!?」

 

 眺めていた眼下の木々は大きくしなり、地上では突風が吹いている。家の外にいた人はひとたまりもない。

 

 では、その風の中心は。発生源はどこだ?

 

 と思い、正面を見据えた。

 

「なんだあれ…!」

 

 

 空にはドス黒い雲が侵食し、地上では風が巻き起こっていた。その軸には、龍のように渦巻く黒い雲のかたまり。

 

「ついに、ラスボスだ…!」

 

 チルノは軽くストレッチをし、その黒い龍へと挑んで行った。雄叫びを上げながら。

 

「うおぉぉおおおお!」

 

 チルノが敗退(一回休み)するのに、そう時間はかからなかった。

 

 

 

 

○ ○ ○

 

鏡源郷・XX月20日 19:05

 

 

ドスが効くほど低い、紫様の声。

 

「だから、おまえを────」

 

「待って、ください」

 

 紫様が『殺す』などとおっしゃる前にその言葉を遮った。

 

 必死に立ち上がった私の姿はさぞ滑稽だろう。脚が産まれたての仔鹿さながらにガクガクしている。

 

 誰よりも立ち上がった事に驚いた顔をしているのはミギワちゃんだが、それより心配してくれているのは紫様だった。

 

「デカ! でも、こいつ(真砂 汀)は貴女を…」

「知りませんし、知りたくもありません」

 

 不恰好な体勢で、上にいる紫様に説きただす。

 

「それより紫様、まだ勝負の途中なんですよ。あなたはわたしの信念を捻じ曲げるつもりですか。干渉は終わってからにしてください。公平に行きたいですから」

「でも、その体じゃ…」

 

 ここで、話しかける相手をミギワちゃんに変える。

 

「ですから、この能力は切ってくれますよね? ミギワちゃん」

 

 満面の笑みで。

 

 彼女に断ることはできない。そして私との勝負に勝つこともできない。

 何故なら、彼女は紫様というプレッシャーに苛まれているから。

 

 なんだかんだいって、出来る物なら利用する。それが、普通の人間の勝ち方だ。

 

 さあ、始めようじゃないか。弾幕ごっこを。

 

 

 




短編『アオイ・スイッチ』を投稿いたしました。そちらもご覧になったらどうでしょうか?(誘導)
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