東方畢竟訖 〜in Other Worlds.   作:LOORUME

16 / 22
四話目 『結界と恋』

 

幻想郷・YY月19日 5:00、早朝の博麗神社。

 

 目を覚まし、布団を畳んで押入れの中にしまい、ふと、あることに気がつく。

 

「体が…戻っている…?」

 

 ここのところ、私たち幻想郷の住人を蝕んできた原因が謎の倦怠感が、綺麗さっぱり無くなっている。実際、霊力もいつも通り使えるようになった。

 

 だったら、と思い魔理沙を起こして確かめると、やはり彼女も魔力を使えるようになっていた。

 

「やっとだな」

「ええ」

 

 巫女として解決のために何かしたわけでは無いので釈然としないが、これからその犯人を叩きのめしに行くからおあいこだ。

 

 魔理沙は、空を飛ぶことが不可能なため家に帰る事にも気が進まず、私の家に泊まっていたのだが……。

 活発な彼女にとっては、さぞ辛かったことであろう。やっと解放である。

 

 さて、仕返しするにしても腹ごしらえが必要だ。魔理沙に朝ごはんの用意を頼み、私はウキウキ気分で境内の掃除をした。

 

 すると、お気に入りの歌が脳内再生されるもんだからそれに合わせてハミングするしかない。自動的に箒の動きも激しくなり、気がつけば箒を放っぽってダンスしていた。イェイイェイ。

 

「……霊夢、何してんだ」

 

 そこらに転がっている箒を拾い上げ、無言で掃除を再開する。

 

「…見なかったことにしてやるぜ。朝飯出来たから上がってこいよ」

「は、はーい」

 

 つい上擦った声で返事してしまった。きっと今、私は年頃でもないのに赤面しているのだろう。恥ずかしい。

 

 玄関から入るのも面倒なので、縁側から上がることにした。魔理沙の冷たい視線に見守られながら靴を脱ぐ。

 ご飯の時もこれだったらあまり美味しく頂けそうにないのだが…。

 

 うじうじしていると、魔理沙が何かを発見したらしく、ぽっと呟いた。

 

「……なんだアレ」

 

 一緒にその方向を見ると、一本の黒い雲?のようなものが飛び回っているのが見える。龍のようにも見えるし、実際そうなのかもしれない。幻想郷だからそうだとしてもおかしくはない。

 

「…とりあえず、ご飯を食べ終わったら見に行きましょうか」

「ああ、そうしよう」

 

 というわけで、魔理沙の作った美味しいご飯を急いで食べることになった。魔理沙は食べることに集中していたから、彼女の冷たい視線からは逃れる事ができた。

 

 

 

 

幻想郷・YY月19日 7:00、朝の幻想郷上空。

 

 

 うぐっ。お腹が痛い、すごく。うぐぐっ。

 

 不規則な上下運動によってお腹が圧迫され続ける夢でも見ていたのだろう。きっとそうだ、夢だ。

 

 いたっ、痛い。

 

 やっぱこれ夢じゃない。夢の中でこんな激痛があり得てたまるか。

 じゃあこれは、認めたくないが、現実なのか。

 

 だったらこれはなんだ。こんな痛みは今までの味わった事がない。ちらっと、こそっとだけ目を開けてみよう。

 

ちらっ。

 

「ひっ」

「…ん、早苗。起きたのかい?」

「…………」

 

 起きてませんし、見てません。目を開けたら遥か上空とかでもありませんでした。違います。神奈子様からは何も言われてません。そうです。

 

「素直に起きたって言いなさい」

「…はい」

 

 認めるしかなさそうだ。

 

「ほら、じゃあ下ろすよ」

「え。あちょっ、待ってください! 私、今は飛べませんよ…?」

「何を言ってるんだい。もう力は戻ってるはずだよ」

「そんな、まさか」

 

 神奈子様の肩からぶら下がりながら一個の弾幕を作ってみる。

 

「あ……できた」

「下ろすよ?」

「……はーい」

 

 さらば神奈子様の肩。二度とお腹を圧迫しないでくれ。

 というか神奈子様、どんだけ肩幅広いんですか。

 

 下らない事を考えながら、肩から下りる。そして数日ぶりに空を飛ぶ、という感覚に酔いしれる。

 

 ……やっぱりいいね、空は。吹き抜ける風も、この展望も心地よい。一種の感動さえ芽生えそうだ。

 

「諏訪子ー。早苗が起きたよー」

「わかったー」

 

 遠くにいる諏訪子様に報告が行く。

 

 お二方とも、何処からか飛んで来る弾幕を避けまくっている。私も体を翻し、時々こちらに飛んでくる弾を逃れる。

 

「…ところで、お二方はなんで、私を連れて空に?」

「ああ、酔ってて記憶が無いか」

「何かあったんですか」

 

 少し神妙な顔つきになって、ある方向を目線で示す。

 

「諏訪子が今戦ってる奴、わかるかい?」

「蛇、いや龍…? なんにせよ見ていて快いものではないですね。なんというか、黒くて不気味というか」

「そう、そいつだよ。あいつが、この異変を起こした、もしくは首謀者に大きく関わっている、と思う」

 

 まだ確信までは行かないようだ。私なら一発で犯人だと決めつけそうだが……。

 

 あれ、よく見たら神奈子様の目下に隈ができている。睡眠不足は体に悪いですよ。

 

「いつ頃から戦っているんですか?」

「早苗が酔っぱらってからずっと…昨日の夜から、走り回って飛び回ってるよ」

「だ、大丈夫なんですか?」

 

 普通に心配だ。彼女らに体力が残っているかどうか。できれば早く休ませたい。

 

「ま、大丈夫さ。せめて早苗が起きるまでは耐えようと思ったんでね」

「これって一応弾幕ごっこですよね? 加勢とかしちゃってもいいんですか?」

 

 幻想郷にやって来た最初期に、紫さんから色々教えてもらったが…。かなり聞き流していたのを今でも覚えている。

 人数変更とかは、どうだったろうか。それは覚えてないや。

 

「うーん、スペル枚数も被弾回数も決めてないからこれに限っては弾幕ごっこと呼んでいいのか…。まあ相手も死なない程度には手加減してるみたいだから、そうと言ってもいいんじゃないか」

 

 ああ、よく見たら、龍を違う方向から攻めている人達もいた。妹紅さんと慧音さんですね。

 

「なるほど。でも、だったら勝敗の決め方って…」

「体力」

 

 ははあん、なるほど。

 

 だったら…。

 

「早苗、行きます!」

 

 速度をつけて、相手へ突っ込む。そして弾幕を乱射、乱射だ。

 体力勝負なら、大勢いた方が楽に決まっている。

 

「諏訪子様、しばらく下がって。休んでいてもいいですよ」

「ああ、じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 一息つけたとばかりに後退する諏訪子様。これでもうちょっと弾幕の密度を上げられる。

 

 が、効果はいまいちのようだ。でかい図体のクセして、意外と器用に避けられてしまう。

 逆に、黒い龍は攻撃も上手く、一番厄介な敵だった。

 

 攻防に集中して数十分。不意に私の名を呼ぶ声がした。

 

「さなえー」

 

 霊夢だ、と思って振り向くと彼女に足して魔理沙も向かってきている。

 

 龍の弾幕を軽くあしらっていると、彼女たちがここに来て、事情の説明を要求した。

 

 実のところ私は寝ていたので詳しい事情は知らないとは言えないので、とにかくあの黒い龍が敵だと説明する。

 間違ってはいないはずだ。

 

「まあ、何と無く分かったぜ。行くぞ、霊夢」

「ええ」

 

 というわけで、五対一の大ハンデ弾幕ごっことなった。しかも神奈子様と諏訪子様が後ろから後方支援をしてくださっている。

 

 

 これで、この異変にもカタがつく。

 

 

 そう思った。そう思っていたのに、そう簡単には問屋が卸さなかった。

 

 

 

 

幻想郷・YY月19日 20:00、夜の幻想郷上空。

 

「そろそろ、退いたほうがよさそうね」

 

 と霊夢が呟いた。

 彼女らが戦い始めて、既に十と数時間が経過した。慧音と妹紅に関しては二十時間を突破した。

 これ以上の連戦は、人妖関わらず無茶だと判断したのだ。

 

 だが心の中では、黒い龍が未だに弾幕を放ち続けられていることに、驚きを隠せない霊夢だった。

 

「どこで作戦を立てる? 博麗神社か」

「…そうね、そうしましょう」

 

 巫女装束が汗ばんできて気持ち悪いから風呂に入りたい、そう思っていた彼女にとってはいい案だった。

 

「だけど、他の人達はどうする?」

「己の体調管理くらい出来るだろ。慧音とか妹紅については、かなりテンション上がってるからな。ありゃあ暫らく収まらんぜ」

 

 魔理沙の言葉にも一理はあると霊夢は思った。

 

「…それもそうね。じゃあ、最後に」

「ああ」

 

 

「恋符《マスタースパーク》!」

「大結界《博麗弾幕結界》!」

 

 

 逃げるスカンクの最後っ()だ。あまり侮ってはいけない。




自分で言うのもなんですが、やっぱり本家本元ですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。