東方畢竟訖 〜in Other Worlds.   作:LOORUME

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今回、アクションシーンはありません。説明というか、まとめと思って頂ければ。


五話目 『深夜の博麗神社』

 

幻想郷・YY月20日 1:00、深夜の博麗神社。

 

 

 魔理沙と一緒に神社へ帰り、作戦を立て始めたのが21時ごろ。長い話し合いの結果、決定した戦法は『粘る』こと。相手の体力を消耗させ、弱りきった所を攻めて屈伏させる。

 

 そう、あくまで私たちは殺してはいけない。相手もスペルカードルール(?)に則っている以上、こちらもそれに従うしかないのだ。

 

 魔理沙はこの作戦を聞いて、嫌そうな顔をしていた。私とてスマートじゃない戦い方は好きじゃない。だが、これ以外は思いつかなかった。仕方が無いのだ。

 それほど相手の力は強力で、底が見えなかった。

 

 そうやって結論が出たのが23時ごろ。魔理沙を久しぶりの家に帰らせたり、遅い晩ご飯を作って食べたり、お風呂に入っていたらすぐに0時を回ってしまった。

 

 そして今、布団の中で振り返っているのが1時だ。

 

 長い一日だった気がする。

 

 明日もまた、続けて戦うのだ。備えて眠ろう。

 

 そう思って、少しずつ、思考を闇の中へと沈ませていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ことり。

 

 

 不審者か、と即座に反応した。

 

 近くにあったお札だけを握って立ち上がり、構える。

 

「出てきなさい。今なら一回お仕置きをするだけで許してあげるわよ」

 

 もう一度、がたりと物音がした。

 

 さあ、誰だ。敵か味方か、それ以外か────。

 

 

 

何処か・YY月20日 00:00、深夜。

 

 

「ふぅ、戻ったわね」

 

 紫様と鏡映さんとわたしでスキマを抜けた。その先は、豪華絢爛で金箔ケバケバというわけではなく、それなりに広い上品な和室だ。

 

「いくら広くても、洞窟の中に長く居たくはないですね。閉塞感が…」

「でもあなた、洞窟に行きたいとかって言ってなかったかしら」

 

 そんなこと、言っていただろうか。一日が濃すぎてあまり覚えていない。

 いや、言っていたか。そして、何故そんな事を言ったのか、理由は……。

 

 そうだ、『洞窟いいね』って言う為だ。完全に失念していた。

 これでは何のために洞窟に行ったのか分からないね。もちろん異変解決のためでもあったのだけれど。

 

「いや、まだ間に合う。洞窟いいね」

「言っていることが支離滅裂だわ」

 

 頭に浮かんだ事を適当に言うなんてことは止めて、部屋を見回してみた。

 

 三十畳はある部屋。壁のほとんどは襖と押入れに占拠されている。端には箪笥もあったりする。

中央には横長の座卓が二つ並べられてるが、その上には何も無い。

 

 パッと見た感じは結構簡素だ。

 

「ところで、ここは何処なんです?」

 

 マヨヒガ、とも思ったけど人の気配はしない。あまりその線はあり得ないだろう。藍さまや橙ちゃんには居てほしいのだ。…これはただの願望か。

 

「ここは、幻想郷でも鏡源郷でもないどこか。言うなれば両世界のスキマね」

「へえ」

「ここにアクセスできるのは、ウチと、紫だけだよ」

 

 予想は当たっていた。ただ、どこでも無いなんて、それはそれで不安である。

 窓の外はどうなっているのだろうか。おどろおどろしい色なのだろうか。

 

「ああ、ちなみにこの家には出口が無いの。私達に置いてかれたらずっとここで彷徨うことになるわよ」

「怖っ」

 

 そのネタでホラー映画できそう。

 

「……ん、でもさっき『戻った』と仰ってましたよね。ここは幻想郷じゃないはずでは」

「私が言ってたのは時間の話よ。ほら、鏡源郷は普通の二十四倍の速度で時間が流れてるって…。あら、言ってなかったかしら」

「あー、言ってましたね」

 

 鏡源郷の一時間は幻想郷の一日。

 一日は二十四日。一ヶ月は二十四ヶ月。一年は二十四年。

 鏡源郷に長く居続けるほど、体験した時間の差は広がる。

 

「でも、そう考えると色々大丈夫なんですか?」

「何が?」

「幻想郷の人達ですよ。もしかして、わたしに弱体化の能力がかけられるまでは、何日間もフラフラで過ごしたんじゃ…」

 

 紫様と鏡映さんが弱体化してからわたしだけが弱体化するまで約四時間は経過していた。つまり四日間…。

 

「そうね。その間ずっと、能力は使えないわ、空は飛べないわで色々大変だったでしょうけど───」

 

 

 紫様は、わたしの眼を見て話す。見透かすように、本当のわたしを見るようにして。

 

「そのくらいで(くたば)る奴は、幻想郷には居ないわよ。人も妖怪も神も、みんな逞しいの」

 

 なるほど、と思った。

 

「これまで幾度となく襲ってきた異変を、彼女らが退けてきた……貴女は、それをよく分かっているんじゃないかしら?」

「……ですね!」

 

 そうだ、今まで何度も見てきた。憧れてきた。

 

「ここで二の足を踏んでいても、何も出来ないわ。さあ、帰りましょう」

「はい!」

 

 紫様は再び、スキマを開いた。

 

 

 スキマをくぐると、博麗神社の境内に着いた。

 

「なんだか、久しぶりな気がしますね」

「そうねぇ」

 

 スキマから出てきたのは私と紫様のみ。鏡映さんは鏡源郷に帰ると言っていた。

 

 わたしにとっては朝ぶりの神社。明かりは灯っておらず、どうやら霊夢さんは寝ちゃったようだ。

 

「邪魔しちゃ悪いですし、そーっと入りますか。そっと」

 

 極力音を立てないように戸を開け、抜き足差し足、忍び足で侵入。紫様はいいが、わたしの寝床は唯一ここだけなのだ。

 

 しかし、わたしの布団が敷いてある部屋まで行くには、霊夢さんの寝室を横切らなければいけない。あくまでそっと。そーー……っと……。

 

 

「出てきなさい。今なら一回お仕置きをするだけで許してあげるわよ」

 

 

 部屋の入り口に差し掛かったあたりで、いきなり声をかけられた。

 

 びっくりしすぎて心臓が止まるかと。

 

 急いで弁明しないと。

 

「ち、違いますよ、敵じゃないです。味方ですよ!」

「その声は……デカ?」

「そうです!」

「私もいるわよ」

「紫か…」

 

 溜息と共に、行灯が照る。誰かが着火した様子は無いから、二人のうちどちらかがやったのだろう。

 

「で、どう。デカは怪我は無い?」

「はい、まあ」

「それならいいけど…。どこに行ってたの?」

 

 心配してくれてるみたい。優しい霊夢姐さんである。

 

「鏡源郷で色々と…」

「デカは、弱体化の原因になった奴を倒したのよ」

「!……本当? デカ」

「ええ、まあ」

 

 一瞬驚いた顔をしていたが、そんなにやってはいけない事だったのだろうか。

 

「……話はゆっくり聞くし、話すわ。お茶、淹れてくるわね」

 

 そういって霊夢は、台所へと消えていった。落ち着きたいのはわたしも変わらない。さっきから立ち話ばかりなんだもの。

 

 霊夢の布団は畳んで部屋の端っこに寄せ、逆に退かされていた卓袱台を移動させた。

 

 卓上には、緑茶がみっつ。熱いのだ。

 

 三人とも座り、一口ずつ飲んだところで霊夢が口を開いた。鏡源郷で何があったのだ、と。

 

 わたしは話した。

 紫様と鏡映さんが倒れ、その原因が居る山に向かったこと。

 その山の洞窟の地底湖の上には、大きな船舶があったこと。

 そこにいたミギワちゃんこそが、弱体化の原因だということと、その能力の推測について。

 そして彼女が、色々話してくれたということ。

 

 その話は、ティラ・カンカルという龍の妖怪から誘われこの異変を起こし、自分らはあくまで囮だった、という内容だった。

 

「……なるほど、ね」

「その、龍の妖怪とやらに覚えはありませんか?」

「あるわ」

「えっ」

 

 いるのか。もしかして、知り合いだったりするのだろうか。だとしたら悪いが一回退治しておかないと、こちらの気が済まない。

 

「その、すいませんがその友人さんの居場所を教えて頂けないかと.…」

「え? 友人じゃないけど…」

「えっ」

「えっ?」

 

 

「なるほど…。それは、一度ちゃんとした作戦を立てる必要がありそうですね」

 

 霊夢さんから、黒い雲、龍についての話を聞いた。タイミングからして怪しいし、これで件の奴と違ったら驚きだ。

 

「そう、ね」

「じゃあどんな作戦で……」

「今日はもうやめておきなさい」

「あっ…」

 

 気づけば、既に三時を過ぎている。明日にはこの異変を完全に終わらせるつもりだ。だからあまり夜更かしするのは頂けない。

 

「…わかりました。では、お休みなさい」

 

 そう考えると、一気に疲労が溢れてきた。本当はお風呂に入りたいんだけど…どうやら、そんな気力さえ無いみたいだ。

 

「ええ、おやすみ」

「おやすみ」

 

 立ち上がって、わたしの布団がある部屋へ向かう。意外とフラフラだ。

 

 着いたら布団にダイブ。ああもうだめだ、脱力感に負ける。

 

 ゆっくりと、沈んでゆく感覚に身を任せ。

 

 まったりと、睡魔の心地良さに身を委ね。

 

 ぐっすりと、思考が闇色に塗られ。

 

 

 わたしは、眠りについた。

 





眠いです。
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